令和四年東京都議会会議録第十号

○議長(三宅しげき君) 二十番鈴木純君。
   〔二十番鈴木純君登壇〕

○二十番(鈴木純君) 初めに、都と区市町村間の災害時協力協定について伺わせていただきます。
 一昨日、関東甲信越地方も梅雨入りし、いよいよ本格的な大雨シーズンに入りました。地震と違い、風水害は、ある程度は予測、対策できますが、近年は線状降水帯の発生が頻発しており、東京においても、大規模風水害がいつ発生してもおかしくないということを改めて肝に銘じ、昨年度に確保した広域避難先の受入れ体制の準備、新たな広域避難先の確保など、抜かりなく進めていくべきであります。
 一方、首都直下地震、南海トラフ地震の切迫性も依然として高い状態にあり、こうした中、都は、先月二十五日の防災会議において、首都直下地震等による東京の被害想定を取りまとめ、発災後の時間軸に沿って、どのような被害が起こり得るのか、その様相を明らかにしました。
 いつ起こるとも知れない大規模地震に備え、防災対策の実効性を高めるためには、災害現場の第一線で対応に当たる区市町村との連携強化が重要であります。
 昨年の第四回定例会代表質問において、我が会派は、都と区市町村間における相互協力体制の一層の強化を求めた結果、都は、六十二区市町村間で、災害発生時や災害が発生するおそれがある場合に、迅速かつ円滑に相互協力するための協定を締結いたしました。
 今後、都と区市町村間で締結した災害時等協力協定書を基に、支援の受入れや応援などの連携を一層強化すべきと考えますが、小池百合子都知事の見解を伺います。
 次に、富士山の降灰対策について伺います。
 富士山が最後に噴火したのが、一七〇七年の宝永噴火であり、既に三百年以上が経過しています。
 国は、富士山が噴火した際の降灰により、社会的な影響が大きい交通やライフラインへの影響などの基本的な考え方を取りまとめ、現在検討を進めているとのことであります。
 こうした中、都は昨日、我が会派の代表質問に対し、いつ起きてもおかしくない火山噴火などの様々な脅威から、都民の命と暮らしを守る対策を強化するため、都市強靱化プロジェクトを進めていくとの答弁がありました。
 まさに国の動きを待つだけではなく、都としてできることを検討し、富士山の噴火に備えておくことは重要であります。今後、富士山噴火による降灰対策を進めるべきと考えます。見解を伺います。
 次に、災害時における偽情報の対策について伺います。
 災害発生直後の混乱した状況において、被害の全容が明らかにならない中、インターネットによる情報収集は極めて有効である一方、東日本大震災、新型コロナが蔓延する直前など、過去に不確かな情報も広まりました。意図的な偽情報、いわゆるデマといわれる情報については、自治体が火消しを行う事態に発展した様子が報道されたことを覚えております。
 デマ情報の内容によっては、都民の命や財産が脅かされることも考えられるため、今後、都民がデマ情報に惑わされないよう、都としては正確な情報を収集し、適切に発信することが重要であると考えます。見解を伺います。
 次に、無電柱化を進めるための執行体制について伺います。
 都は、昨年六月に、東京都無電柱化計画を改定し、スピードアップを図ることとしており、地中化率は、都道全体で約四割程度まで進んできていると仄聞しております。
 一方で、区市町村道の多くは歩道が狭い、または歩道がない道路があるなどの様々な課題もあり、なかなか無電柱化が進んでいない状況にあります。
 現在、区市町村では、都のチャレンジ支援事業を活用し、無電柱化事業を推進しておりますが、私の住む台東区の区道において、現在、一年に一キロのペースでしか無電柱化が進んでおらず、無電柱化ゼロを達成するには、このペースで単純計算ではありますが、あと二百十年かかることが分かっております。
 先日、現場の工事に携わる施行業者の方からもお話を伺ったところ、電線管理者との調整事項などが多く、地域によって対応が異なり、施行業者が足りていないなど、現場では様々な課題があると伺いました。これからさらなる加速化を図るには、都として執行体制の強化が必要であると考えられます。
 そこで、事業推進を図るための執行体制の強化に向けて、どのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、都区財政調整制度について伺います。
 今年度は、都区間での財調協議の年であります。都区財政調整制度は、昭和三十九年に地方自治法が改正され、特別区税の法制化、福祉事務所の移管等もあり、昭和四十年から調整率二五%から始まり、その後も都区の財政調整について都区間で協議を行い、その配分割合を定めてきた長い歴史があります。近年では、平成十二年度や十九年度に配分割合を変更しましたが、清掃移管や三位一体改革などを受け、都と二十三区で協議をなされた結果であると認識しております。
 令和元年度の協議においては、区立児童相談所の設置に関し、その経費を財調で算定するのか、都区間の配分割合を変更するのかなど議論されました。その結果、特別区の配分割合を令和二年度から令和四年度まで五五・一%とすることを合意しておりますが、今年度の財調協議では、都としてはどのような姿勢で臨むのか見解を伺います。
 次に、国民健康保険について伺います。
 平成三十年度の制度改革により、国保は広域化され、都道府県は財政運営の責任主体として、区市町村と共に国保制度の運営を担うこととされました。
 国民健康保険は、都民の健康を守る重要な役割を担っていますが、加入者の高齢化や医療の高度化により、今後、医療需要の一層の増加が見込まれます。
 令和二年四月からは、予防、健康づくりに関する国の交付金が拡充されるとともに、都道府県は、区市町村が行う保健事業に対して必要な支援を行うよう努めることが定められました。
 今後、医療費の伸びを抑えるとともに、国保加入者の健康増進を図っていくことが重要と考えます。都はどのように取り組んでいくのか見解を伺います。
 また、都が公表しているデータによると、都内の国保加入者一人当たりの所得金額は約百三万円となっており、加入者に占める六十五歳以上の前期高齢者は約三四%、三人に一人以上が前期高齢者となっているなど、国保制度は、低所得者や高齢者の加入者が中心であり、財源の確保など構造的な課題を抱えています。
 そして、東京二十三区では、一般財源から繰入れを行うなど、独自に激変緩和措置を実施しているのが現状であります。
 国保制度については、根本的には国において、持続可能な制度となるよう検討を進めるべきであると私は考えておりますが、今後、国保制度が安定的に運営されるよう、都はどのように取り組んでいくのか見解を伺います。
 次に、東京へのインバウンド誘致について伺います。
 先日、政府は、水際対策としていた外国人観光客の受入れを約二年二か月ぶりに、あさっての六月十日から再開することを発表いたしました。当初は、感染リスクの低い国や地域からのパッケージツアーに限定し、その後、段階的に対象を拡大していくこととしています。都では、同日に、旅行費用を助成する都民割、もっとTokyoの販売を開始し、試験的に再開することも決定がされました。
 浅草、上野、谷中などがある台東区に、コロナ前は、最大で年間約一千万人の外国人観光客が訪れておりました。コロナの影響が長期化したことで外国人観光客が激減し、東京の観光産業は大きなダメージを受けております。今回の緩和措置が順調に進み、コロナ禍以前のように、東京のまちににぎわいが戻ることが期待されております。
 今後、世界の各都市が、観光客の誘致に向けたPRが激化することが見込まれると考えられる中、東京都も、こうした先行きを見据え、しっかりとインバウンドを呼び込んでいくための取組を進めていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、観光資源ともなる伝統的な技術、技能について伺います。
 東京の各地には、伝統的な芸能や技能など、国内外の観光客にとって魅力的な観光コンテンツが数多くあります。
 台東区では、長い歴史を有する工房等もあり、ものづくり体験、見学等が人気となるなど、コロナ禍前までは多くの観光客等でにぎわいを見せておりました。
 しかし、コロナ禍で、イベントの縮小や中止、企業の経営悪化など、観光客を呼び込むためのPRが十分にできず、さらには、廃業にまで追い込まれ、伝統的な技術や技能がついえてしまうのではとの不安を抱える経営者の声を聞いています。
 今後、東京都の貴重な観光資源を絶やさず、生かしていくための事業者へ支援が必要であると考えます。見解を伺います。
 最後に、公衆浴場の利用促進に向けた支援について伺います。
 都はこれまで、都民の日常生活における健康の維持と適正な公衆衛生水準を確保する上で必要な公衆浴場が、年々、浴場利用者の減少や後継者不足等による転廃業により著しく減少しております。
 都内で、平成二十三年には七百六十六か所あった公衆浴場が、今年の四月には四百七十六か所に減り、コロナ禍においてさらに利用者の減少が進み、昨今のエネルギー価格高騰の影響により大きな打撃を受け、入浴料金も上げ続けることもやむを得ない状況が続いております。
 銭湯は、江戸から続く日本の大事な文化であり、厳しい社会情勢の中にあってもしっかりと守って、未来に引き継いでいかなければなりません。そのためには、公衆浴場の利用を促進し、より多くの人に足を運んでもらうことで経営の安定化を図ることが必要であると考えます。
 今後、利用を促進するためには、個々の浴場自身の経営努力はもちろんでありますが、行政による支援も重要であります。
 都は、本定例会の補正予算案において、公衆浴場関連の予算を計上していますが、都として公衆浴場の利用促進に向けて、どのように支援を行っていくのか伺います。
 以上で質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 鈴木純議員の一般質問にお答えいたします。
 防災対策での区市町村連携についてであります。
 本年三月の福島県沖地震では、福島県二本松市に都の職員を派遣いたしまして、住宅被害の調査や罹災証明の作成など被災地の復旧活動を支援いたしました。大規模災害時に、自治体間で支え合うことの重要性を再認識いたしております。
 都は、昨年の十二月に地震や豪雨など大規模災害時におきまして、都と区市町村との間で職員の派遣や避難先の提供などを行う相互協力協定を締結いたしました。
 今後、本協定の実効性を高めるため、各自治体に対しまして、支援の受入れや災害応援の計画策定などをきめ細かく支援してまいります。
 また、今年度、既に計画を策定している自治体と、支援物資や職員の受入れ等を行う際の具体的な手順を確認するための実践的な訓練を実施いたします。
 これらの取組を通じまして、大規模災害時におけます自治体間の連携を一層強化してまいります。
 なお、その他のご質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁をいたします。
   〔東京都技監中島高志君登壇〕

○東京都技監(中島高志君) 無電柱化における執行体制についてでございますが、昨年六月に改定した東京都無電柱化計画では、都道の年間の整備規模倍増などを掲げておりまして、事業を加速化していくためには、執行体制の強化が重要でございます。
 無電柱化の推進に向けて、都は、建設事務所などの人員を拡充するとともに、政策連携団体の一層の活用や電線管理者への委託規模の拡大を図っております。
 また、区市町村に対しては、事業に関する技術的な支援や職員に対する研修会の開催などを行うことで、執行力の強化を後押ししているところでございます。
 引き続き、こうした取組により、無電柱化を加速し、安全・安心な都市東京を実現してまいります。
   〔総務局長村松明典君登壇〕

○総務局長(村松明典君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、富士山の降灰対策についてですが、富士山の噴火時には、降灰に伴う停電や通信遮断、健康被害など社会経済活動に甚大な影響が生じることが想定され、降灰対策は重要な課題でございます。
 都は、地域防災計画で、富士山の噴火を想定した各機関の役割を定めてきたところでございます。しかしながら、降灰は大量かつ広域に及ぶため、国に、処分指針の策定や、ライフラインなど都市基盤への影響と対策についての検討を求めてまいりました。
 現在、国は、関係省庁で構成する検討会を立ち上げ、富士山噴火時の首都圏の機能維持や停電、断水などの降灰による様々な影響から住民の命を守る方策などについて具体的な検討を進めております。
 今後は、こうした国の動向や都の都市強靱化プロジェクトの検討も踏まえて、具体的な対策を取りまとめてまいります。
 次に、発災時の情報収集及び発信についてですが、大規模災害発生時、都民の不安や混乱を防ぐためには、正確な情報を収集し、発信していくことが重要でございます。
 このため、都は、東京都災害情報システムに、AIを用いた収集、分析ツールを導入し、火災や事故の発生などSNS上の有用な防災関連情報を収集いたします。
 また、必要な情報を防災アプリやツイッター等で発信するとともに、ネット上に疑わしい情報がある場合には、関係機関に確認の上、注意喚起を行うこととしております。
 今後、より一層迅速かつ正確な情報発信ができるよう、分析ツールの活用や情報選別の訓練を行うなど、検証を重ね、対応マニュアルの充実強化を図ってまいります。
 都民への情報収集、発信を的確に行うことで、災害対応力を強化してまいります。
 最後に、都区財政調整制度についてですが、都区財政調整は、基準となる財政上の需要と収入の差を普通交付金とする仕組みでありまして、都区間の配分割合は、中期的には安定的なものを定める必要がございます。
 令和二年度に向けた財調協議においては、児童相談所の運営に関する都区の連携協力を一層円滑に進めていく観点から、特例的対応として、特別区の割合を令和二年度から令和四年度まで〇・一ポイント増やし、五五・一%としたところでございます。
 令和五年度に向けた財調協議では、この特例分も含めて、改めて配分割合の在り方について協議することとしております。
   〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、国民健康保険加入者の健康増進についてであります。
 都は、令和二年度から、区市町村が行う保健事業の実施計画策定やその見直しについて専門家や関係機関と連携して助言しており、区市町村が地域の健康課題に応じて効果的に保健事業に取り組めるよう支援しております。
 また、特に糖尿病は、重症化すると人工透析が必要となるなど生活の質が低下するとともに医療財政も負担となるため、令和四年三月に改定した糖尿病性腎症重症化予防プログラムに基づき、今年度、区市町村と関係機関との一層の連携に向け、医療関係者に対する研修を実施いたします。
 このほか、区市町村には、重症化予防や健診受診率向上等の好事例を情報提供し、国の交付金を活用した事業実施を働きかけるなど、引き続き健康増進に向けた取組を支援してまいります。
 次に、国民健康保険の運営についてであります。
 国民健康保険制度を安定的に運営していくためには、原則として、保険料と公費により必要な費用を賄い、収支が均衡していることが重要であります。
 都は、都内の統一的な運営方針を定め、決算補填等を目的とする一般会計からの法定外繰入れを計画的、段階的に削減することとしており、区市町村は、収納率向上等による歳入確保と併せ、歳出の伸びを抑制するため、保健事業や医療費適正化に取り組むこととしております。
 都は、区市町村に必要な助言を行うとともに、国に対しまして、今後の医療費の増嵩に耐え得る財政基盤の強化や必要な財源の確保等を要望しており、今後とも国民健康保険の安定的な運営ができるよう取り組んでまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、海外からの旅行者の誘致についてでございますが、コロナ禍により東京の観光への影響が長引く中、今後の海外からの旅行者の誘致に向け、PRの強化や受入れの体制の準備を着実に進めることは重要でございます。
 これまで都は、東京が安全で安心な旅行先であることを国際的に有力なメディアを使い発信をしてまいりました。今後は、東京二〇二〇大会のレガシーである競技会場等の様々な魅力をインフルエンサーを活用し、効果的にPRいたします。
 また、外国人旅行者は夜間や早朝の観光を楽しむ場合が多く、そうしたニーズに対応するイベントなどの観光資源を地域の団体と協力し、つくり上げてまいります。さらに、海外の富裕層の対応を適切に行える人材づくりを進めます。
 これらによりまして、海外からの旅行者の受入れに向けた取組を進めてまいります。
 次に、観光資源である伝統的な技術などについてでございますが、コロナ禍の影響が続く中、東京の観光資源である伝統的な技術や技能を守り、それらを今後の旅行者の誘致に結びつけていくことは重要でございます。
 このため、都は、伝統的な技術や技能の実演などにより、集客を行う観光関連の事業者がそれらを維持する取組に対し、支援を開始いたします。
 具体的には、和菓子作りの体験プログラムを行う会場の確保等に必要な資金をクラウドファンディングにより集める場合、その手数料の三分の二を助成いたします。
 また、事業者が、技術等の担い手となる職人の確保や育成に関し、必要となる経費に助成を行います。
 こうした取組によりまして、東京の魅力的な観光資源を守り、今後の旅行者誘致につなげてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長横山英樹君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(横山英樹君) 公衆浴場の利用促進に向けた支援についてでございます。
 都はこれまで、公衆浴場組合が行う銭湯情報の発信やスタンプラリーの実施などへの補助など、公衆浴場の利用促進を図る取組を支援してまいりました。
 これらに加え、今般のエネルギー価格高騰を踏まえ、若者やファミリー層などの利用者を増やすための新たな取組を行います。
 具体的には、都が主催するスポーツ、文化イベントなどの参加者へモバイルによる無料入浴券を配布いたします。あわせて、ラベンダー湯やユズ湯などのイベントを集中的に実施することで、銭湯の魅力をPRし、利用者の増加につなげてまいります。
 都は、利用促進に向けた取組などを通じまして、今後とも江戸から続く伝統文化としての公衆浴場を支援してまいります。

○議長(三宅しげき君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後五時三十九分休憩

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