令和四年東京都議会会議録第十号

   午後一時開議
○議長(三宅しげき君) これより本日の会議を開きます。

○議長(三宅しげき君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(三宅しげき君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都人事委員会委員の選任の同意について外人事案件六件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(三宅しげき君) 昨日に引き続き質問を行います。
 六十四番川松真一朗君。
   〔六十四番川松真一朗君登壇〕

○六十四番(川松真一朗君) エネルギー施策について伺います。
 小池都知事は、先月、エネルギー等対策本部会議を設置し、エネルギーの安定確保や原材料確保のための事業者支援、経済情勢の悪化などによる影響から都民生活を守る取組を示しました。
 いうまでもなく、ウクライナ、ロシア情勢によるエネルギー危機は長期化の様相を呈しています。また、今年の夏、さらには冬における電力需給については相当厳しいという見通しが示されるなど、今後、電力の需給が逼迫するおそれがあり、エネルギーに関して、これまでとは違う視点に立って捉えていく必要があると考えます。
 首都圏における電力需給の問題は、都民及び都内事業者の生活、業務に直結することから、脱炭素化の視点も踏まえつつ、電力の安定供給を確保するため、都は、東京電力に対する株主提案を実施しました。
 一方、先日開催された知事と経済団体とのオンライン会議の場において、経済団体から安全性を確保した上での原発再稼働についての言及がありました。この点については、小池知事は完全にスルーされましたが、エネルギーの安定供給に向け、各所から原発再稼働を求める声が聞こえてきます。
 最近になってしきりに小池知事は、HTTという標語を前面に出してエネルギー戦略を語られていますが、目の前にある電力の需給逼迫だけでなく、都民、都内事業者を苦しめている電気代高騰もどう乗り越えていくかが、電力の大消費地である都知事の最大の使命であり、東京電力の株主として、今回のような概念論ではなく、より実効性のある具体論を展開すべきであると考えます。
 そもそも、東京都が進めてきたカーボンニュートラル政策と目の前にある電力需給逼迫を一くくりでまとめて、未来のエネルギー戦略を議論するならば、小池知事の各種発言には欠けている前提があります。
 それは、小池知事が都民や議会に示すエネルギー戦略には原発再稼働の可能性が含まれる戦略なのか、それとも一切原発は含まれない戦略なのかという前提が不透明です。これが明らかでない中で互いに机上の空論をぶつけ合っても、その時間は議論のための議論になり、充実したものになりません。
 世界的に見ても、この課題からは目を背けてはいけないのは誰もが分かっているところです。原子力発電の運転可否は、最終的には国などの判断によるのですが、東京都のエネルギー戦略は小池知事の責任と権限の下で策定されます。
 先週六月二日、島根県の丸山知事が、温室効果ガスを減らしながら安価で安定的に電力を供給するには、再生可能エネルギーだけでは限界があるとして、原発の必要性を認め、県議会において中国電力島根原発二号機の再稼働に同意すると表明したところです。
 改めて、エネルギー価格の高騰、そしてこれに拍車をかけたウクライナ情勢、脱炭素化の流れを踏まえた上で、安定供給をどう確保するかが日本全体の課題です。そこで人口や産業が集積する首都東京のトップである小池知事が示されているエネルギー戦略に注目が集まるのは当然です。
 小池都知事の戦略には原発が含まれるのか、含まれないのか、今後の議論の中身を整理する上でも、明確にお示しください。
 東京都の無電柱化事業について伺います。
 これまで東京都は、令和三年二月に無電柱化加速化戦略を策定するなど、無電柱化をスピードアップしていくことを表明しました。無電柱化には地上機器設置が必要であり、電力需要により設置台数や間隔が定められ、東京電力が設置者になっています。
 しかし、時間の経過によって土地利用等に変化が生じると、地上機器が支障となることがあります。例えば、相続した土地を売却しようとした際、地上機器があるために車の出入りができないことで、この土地が売却できないという事例があるのです。現状では、こういったケースにおいて、役所も設置者である電力会社も自己責任ということで対応をしていただけません。
 大前提として、この地上機器を設置している前の家の方々のおかげで新しいまちづくりは進み、無電柱化が実現できたのです。つまり、設置を許可してくださった方々のおかげで電柱倒壊のおそれはなくなり、空を見上げたときの電線がなくなっているものなのです。
 この意味において、本来であればこういった方々には、行政や住民から感謝される対象にはなれど、不利益があってはならないはずです。にもかかわらず、先ほど触れたように、対応しないという姿勢は、まちづくりを推進してきた行政として、あまりにも無責任といわざるを得ません。
 無電柱化事業は都市防災機能の向上など重要な事業であると強力に推進してきたのは、小池都知事や私たち都議会自民党です。制度導入時には想定しなかった現場の課題が見えた今こそ、課題解決の責任を未来に先送りするのではなく、今、一定の方向性を示すべきだと考えます。
 そこで、無電柱化事業を推進している都として、地上機器の設置をはじめとする課題についてどのように考えるのか、都知事の見解を伺います。
 東京都が今回公表した被害想定では、発災後の被害の様相がタイムラインで示されており、その中で、マンションにおける防災対策の重要性が浮き彫りになりました。
 発災から一か月間で起こり得るシナリオの中に、例えば排水管等の修理が終了するまでは、水道供給が再開してもトイレが使えないといった事態が想定されています。それを知らずにトイレを使った場合、下層階で水漏れ等が発生し、被害が拡大する可能性があります。
 そして、マンションで生活される全ての方に認識していただきたいのは、そういったケースだと、損害賠償の責任が上層階の住民に課せられることが予想され、これが大規模災害後の二次的、三次的な災害ということになります。
 それを防ぐためには、災害時に住民一人一人が、排水管の安全が確認されるまではトイレの水は流さず、携帯トイレを使用するといったことを正確に理解し、実施することが重要であります。
 都民の中で約七〇%以上ともいわれるマンションなど共同住宅居住者に対して、大規模地震が起きたらすぐにはトイレの水は流さないを徹底的に浸透させ続けなければなりません。
 そのためには、都のみならず、区市町村や民間企業等と連携して、様々な媒体を活用した戦略的な情報発信を行っていく必要があると考えます。それは関係者と知恵を絞りながら進めていかなければなりません。加えて、発災後にもマスコミなどと連携し、アナウンスをし続けることを私は強力に求めます。
 今回の被害想定の公表に合わせて、これら都ができることは早急に進めていく必要があります。そのため、こうしたマンション防災に関する普及啓発をしっかりと行う必要があると考えますが、今後の取組について都の見解を伺います。
 来年、令和五年は関東大震災から百年の節目の年となります。今回の被害想定では、関東大震災と同じ地震動である大正関東地震の被害想定を実施しています。
 関東大震災は、近代化した首都圏を襲った唯一の巨大地震です。都内でも約七万人の命が失われましたが、その半数以上が私の地元である墨田区にかつて存在した帝国陸軍本所被服本廠跡地で、そこに避難した住民が火災旋風に巻き込まれたことによるものでした。
 今回の被害想定では、大正関東地震の死者は冬の夕方で約千八百人とされています。被害が大きく減少したのは、この百年の都市計画や都市復興の取組が功を奏したものといえますが、関東大震災から約百年、東日本大震災から十一年が経過し、震災の記憶や防災意識も低下が懸念されます。
 そこで、来年の震災復興百年に向け、防災訓練やシンポジウム、セミナーなど様々な防災に関するイベントが連携し、相乗効果により都民の防災意識を盛り上げていくような工夫が必要と考えますが、見解を伺います。
 さて、東京都では、生活文化局の広報広聴部門を政策企画局に集約し、より戦略的な広報を推進するという考えを基に、新たな組織、戦略広報部を設置しました。
 広報と聞くと積極的に情報を発信するという側面に注目しがちですが、危機管理という視点で捉えることの方がより重要であると考えています。
 そもそも東京都の各局には広報担当が置かれているため、この新組織の役割には当初から疑問符がついていましたが、この点については政策企画局から、各局広報を伝わるの視点で後方支援するための組織になると説明され、その立ち上がりの様子を見ていましたが、私の感想としては実態が伴っておらず、全くもって不満であります。
 例えば、小池知事肝煎り政策とされる新築住宅太陽光パネル設置義務化については、最初のマスコミ報道が衝撃的だったこともありますが、世間では、都内の新築住宅全てに太陽光パネル設置を求めるものと勘違いをされて、環境局のみならず、私たち議員のところにも連日クレームが届いてきます。
 ニュアンスを捉え間違っている報道に対して、早急に打ち消すべきだと私は主張してきましたが、この間、新設の戦略広報が所管の環境局を後押しして、積極的に正しい情報発信をサポートしてきた様子が見えません。
 改めて、都内の全ての新築住宅に太陽光パネルを設置するものではないことなど、都民の皆様に正しく発信するために積極的に動くのが新設された戦略広報部の使命なのではないでしょうか。
 改めて、各局の支援の強化やデジタル媒体の積極的な活用など、都の発信力を高めていくとしていますが、各局の支援を具体的にどのように進めていくのか。特に今例示したように、都の取組について、その事業内容が正確に理解されていないような意見や報道がある場合、戦略広報の立場から各局とどのように関わっていくのかを伺います。
 最後に、水道事業について伺います。
 東京の水道は、都民生活と首都東京の都市活動を支える基幹ライフラインであり、将来にわたり安全で高品質な水を安定して供給していくことが求められています。
 気候変動の影響により頻発化、激甚化する風水害、いつ起きてもおかしくない首都直下地震や火山噴火など、これまで経験したことがない危機に直面する可能性があります。
 特に首都直下地震については、都の被害想定が見直され、地震に対する危機管理対応の重要性を改めて認識したところです。
 大規模地震が発生したときこそ水道は必要とされるものであり、水道施設の被害を最小限にとどめ、可能な限り給水を確保する必要があります。
 中でも、常時水道水を貯留し、地域住民に配る役割を担っている給水所は、震災時には応急給水の拠点となる施設であり、計画的な整備が重要であると考えますが、給水所整備の考え方について伺います。
 また、さらなる給水安定性のためには、給水所の整備に加え、浄水を給水所に送る大動脈となる送水管の整備を進め、災害や事故時においても給水所への供給を確実に行うことが必要です。
 都はこれまでも、送水管の整備を重要施策として取り組んできましたが、送水管は口径が大きく、大規模な道路工事や交通規制を伴うなど、一朝一夕には進まない事業であると認識しています。このため、区部全体を見渡すと、いまだバックアップが行き届いていない地域もあるのではないかと心配しています。
 そこで、給水安定性を向上させるため、区部における送水管整備の取組をお伺いし、私の一般質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 川松真一朗議員の一般質問にお答えいたします。
 エネルギー施策についてのご質問。都は、エネルギーの大消費地として、エネルギー自給率を高め、国際情勢に左右されない都市の底力をつけることが必要です。
 このためにも、省エネ、節電の徹底や再生可能エネルギーの地産地消の推進に全力を尽くし、脱炭素型の社会経済構造への移行に積極的に貢献してまいります。
 厳しい電力需給が想定される中で、都は、東京電力の株主として、運転可能な休停止発電所の再稼働や、試運転開始予定の発電所の確実な稼働等による電源確保に最大限努めることを要請しております。
 原子力発電の運転の可否でございますが、最終的には国等の判断によりますが、まずは地元の理解が得られることが何より大事であります。
 都は、世界的に長期化が予想される厳しいエネルギー情勢を踏まえまして、これまで以上に電力を減らす、つくる、ためる、そのための省エネ、再エネ等の取組を一層加速させてまいります。
 次に、無電柱化についてのお尋ねがございました。
 激甚化する自然災害に備えまして、都民が安全・安心に暮らせるセーフシティを実現していくために、一刻も早く無電柱化を進めなければなりません。
 昨年の六月には、無電柱化をさらに加速するため、東京都無電柱化計画を改定いたしました。
 無電柱化の推進に向けましては、地上機器の設置も含め、沿道の方々の理解と協力を得るとともに、多様な整備手法や新技術の開発などによりまして、効率的に事業を進めていく必要がございます。
 都はこれまで、電線管理者と連携し、地上機器のコンパクト化や新材料の積極的な活用などを図ってまいりました。
 今後とも、こうした創意工夫を重ねながら事業を進め、安全・安心な都市東京を実現してまいります。
 その他の質問につきましては、関係局長からの答弁とさせていただきます。
   〔総務局長村松明典君登壇〕

○総務局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、マンション防災の普及啓発についてですが、新たな被害想定では、発災後、高層マンションのトイレやエレベーターが長期間使用できないことなどが顕在化したため、生活必需品の十分な備蓄や住民同士の共助の必要性について、改めて周知することが重要でございます。
 これまで都は、防災アプリなどを活用し、マンション全般の防災対策について普及啓発を実施してまいりました。
 加えて、今回、東京備蓄ナビに、想定されるマンション特有の被害に対する備えを解説するページを新設いたします。
 また、管理組合などに行ってきたマンションにおける共助の取組や、防災対策を学ぶオンライン講座を個人にも行うことで、より多くの都民の学習機会を確保してまいります。
 こうした取組により、都民一人一人の防災意識を高め、災害対応力の向上を図ってまいります。
 次に、関東大震災から百年に向けた取組についてですが、過去の震災の経験と教訓から学ぶことは、災害に強いまちづくりを進めることはもとより、都民一人一人の防災意識を高める上でも重要でございます。
 都はこれまでも、東日本大震災を踏まえ、防災対策を強化するとともに、震災記憶の風化防止に取り組んでまいりました。
 都民一人一人が災害を自らのこととして捉えられるよう、震災の教訓や、被害想定で示された防災対策による減災効果等を分かりやすく発信してまいります。
 関東大震災から百年の節目となる来年に向け、様々な発信方法を検討してまいります。
   〔政策企画局長野間達也君登壇〕

○政策企画局長(野間達也君) 戦略的な広報の推進についてでございますが、都民や事業者に確実に情報を届けるためには、正しく分かりやすい発信を実践することが重要でございます。
 新しい組織では、都民等への訴求効果を高めるため、各局に対し、広報の専門人材による企画立案や、個人の興味、関心に応じて情報発信するポータルサイトの活用、メディアのニーズに沿った取材対応など、伝わる広報に資する支援を実施しております。
 また、都の事業への理解をより一層深めてもらうため、データを用いた分かりやすい解説資料をメディアに提供するほか、SNSの投稿分析等に基づき、ホームページ等へQ&Aを掲載するなど、現在も各局と連携しながら正確な情報をタイムリーに発信してございます。
 こうした取組によりまして、全庁的な広報力の底上げを図り、都民の理解と共感を得られる広報を展開してまいります。
   〔水道局長古谷ひろみ君登壇〕

○水道局長(古谷ひろみ君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、給水所整備の考え方についてでございますが、給水所は、平常時には地域に安定的に給水する要であり、震災時には給水拠点となる重要な施設でございます。
 このため、水道局では、必要な配水量を確保することを目標として、給水所の拡充や新設を進めております。
 一方、給水所の偏在が解消されていない地域や、老朽化が懸念される給水所が一部に存在しており、給水のさらなる安定性確保に向けた取組が必要となっております。
 こうした状況を踏まえ、現在、都心部の給水を担う和田堀給水所の拡充や、区部西部地域の給水を担う上北沢給水所の新設等を推進しております。
 あわせて、今後必要となる更新についても、予防保全型管理による施設の長寿命化や更新の平準化を図り、計画的に実施してまいります。
 次に、区部における送水管整備の取組についてでございますが、水道局では、災害や事故時においても浄水場から給水所への送水を継続するため、給水所の拡充、新設に併せて管路の二系統化を進めてまいりました。
 一方、既存の給水所の一部には、いまだ送水管が一系統であるため、バックアップ機能の強化が課題となっている施設が存在いたします。
 このため、こうした課題を抱えている区部南部の大蔵給水所に新たな送水管を整備し、これまでの朝霞浄水場からの送水に加え、東村山浄水場からの送水を確保し、二系統化を図ってまいります。
 こうした取組により、着実に水道施設の整備を進め、首都東京の安定給水の確保に努めてまいります。

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