令和四年東京都議会会議録第四号

   午後五時二十五分開議
○副議長(本橋ひろたか君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十四番須山たかし君。
   〔五十四番須山たかし君登壇〕

○五十四番(須山たかし君) 質問に先立ちまして、まず、昨日、ロシアがウクライナに軍事侵攻したと報道されております。軍事侵攻、また侵略行為に強く抗議することを表明し、質問に入らせていただきます。
 初めに、特別活動に関して伺います。
 私の地元八王子市にあります浅川小学校でエブリワン給食という取組が行われております。アレルギーのある児童もない児童も、みんなで一緒に同じものを食べて、おいしいという気持ちを共感する活動を通し、集団性を高め、自分の居場所を実感するための仕掛けとして、特別活動の一環として行われているものであります。
 特別活動は、教科等と位置づけられており、算数や国語といった教科とは違い、児童会や生徒会、学校行事、また、給食といった活動を通して、集団や社会の形成者としての見方、考え方を働かせ、様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら、集団や自己の生活上の課題を解決することを通して、資質、能力を育成することを目指すとされております。
 冒頭の浅川小学校では特別活動を重視した指導を展開しており、児童や保護者、また教員の皆さんからも好評を得ておりまして、エブリワン給食に関しては、報道などにも取り上げられました。
 実際に校長先生から、子供たちに真摯に向き合った指導をされているお話を伺い、また、元気いっぱいな子供たちを拝見させていただき、いい学校が八王子にあるなとうれしく思っておりました。
 このような特別活動は、生きる力、学びのその先へという学習指導要領の理念に最も即したものであり、同時にこれからの社会にとって、とても必要な人間力を育むのではないかと考えます。コロナ禍だからこそ、集団活動など難しい面もあるかと思いますが、一方で、コロナ禍だからこそ工夫して、特別活動を充実させていくことが必要であると考えます。
 先ほど来、スピーキングテストなども取り上げられておりますけれども、教科でやることを増やしていく、そういったことも大事かもしれませんが、その前にもっと基礎的な人間力を育てていくべきだという問題意識を持って、以下、質問をいたします。
 学校教育においては、他人の価値観を尊重し、共感するなど、集団や社会生活を営む上で必要となる力を特別活動を通して育成することが重要と考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 各学校において、特別活動を通して集団や社会生活を営む上で必要となる力を育むことを一層進める必要があると考えます。そのために、教員の指導力を向上させることが必要と考えますが、都教育委員会の取組を伺います。
 続いて、公正な移行に関して伺います。
 東京都環境局は、二〇二二年度の当初予算の予算額で千百八十四億円、そのうち九百三十一億円が温室効果ガス排出量ゼロのゼロエミッションに向けた取組です。
 オリンピック・パラリンピックも終わり、本格的にゼロエミッション社会にかじを切る中で、誰一人取り残さない労働力の公正な移行は喫緊の課題といえます。
 東京都として、二〇三〇年までに温室効果ガスの排出量を二〇〇〇年度比五〇%にするカーボンハーフ、二〇五〇年までにゼロエミッションを掲げたことを評価する一方で、産業構造の急激な変化が予想されます。
 そうした中で、失業などの雇用、経済への負の影響が予見されます。これらを予測し、関係当事者との対話、協議を通じて、労働力の公正な移行を行うことが必要です。
 具体的には、雇用創出や失業なき労働移動、職業訓練、再就職支援、住居、生活の支援が考えられます。こうした予見可能性のある問題、課題への対策は、カーボンハーフ、ゼロエミッションを決めた政治行政が、その責任の上でしっかりと支えていかなくてはならないと考えます。
 そこで、以下、質問いたします。
 カーボンハーフ、ゼロエミッション東京を実現していくためには、環境と経済の両立を図りながら、社会経済構造を脱炭素型に移行していく必要があります。
 日本政府のパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略においても、環境対策は経済社会を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものであるとしております。
 東京都においても、カーボンハーフ、ゼロエミッションの推進に当たり、社会経済の成長につながる取組を進める必要がありますが、知事の見解を伺います。
 公正な移行とは、脱炭素社会への移行において、誰も取り残されないようにするため、様々な利害関係者、ステークホルダーが実質的に協議に参加し、地域の人々が選択について発言権を持ち、労働者は働きがいのある仕事と安定した収入を確保できるようにすることとされております。
 ITUC、国際労働組合総連合やILO、国際労働機関が提唱し、国連気候変動枠組条約、パリ協定に取り入れられた概念です。
 日本政府のパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略、第五次環境基本計画にも明記されておりまして、カーボンハーフ、ゼロエミッションの推進に伴い、産業が変化し、伸びる企業だけでなく、経営環境の悪化などの負の影響が出ることも予想されますが、東京都は、産業振興の観点からどのように捉え、どのように対策をしていくのか見解を伺います。
 労働力の公正な移行に向けて、国はもとより、東京都や企業、労働団体など、様々なステークホルダーが協議し、実際の職業訓練等における施策へ落とし込んでいく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 続きまして、東京都の政策決定に関して。二月三日、東京都危機管理対策会議において、東京都の緊急事態宣言要請の基準が変更されました。私は、これを聞いて非常に残念だなと思いました。案の定、都の決定は場当たり的ではないかという声も私にも寄せられました。
 都としては、それまで、病床全体の使用率五〇%などを目安に宣言要請を行うとされておりましたけれども、感染状況の拡大により、基準を変更したと聞きます。
 感染状況のすさまじい増加など、状況が刻々と変わっていたことは分かります。一方で、基準というものは、やはり簡単に変えるべきではないと考えます。
 また、感染拡大、医療体制の逼迫などが進めば、命の選択が迫られることすら考えられます。まずはそうならないために、平常時から基準を決めておくこと、そして、それを変えないこと。万一、変えざるを得ないときには、都民への説明がきちんとなされることが何よりも必要だと考えます。
 だからこそ、第五波で得た教訓をしっかりと生かし、第六波でも揺るがない対策や基準を設けておくべきだったと考えます。
 二〇〇六年、WHOの新型インフルエンザ対応策の倫理指針、その作成ワーキングチームに参加をされたという倫理学の広瀬巌マギル大学教授は、その著書の中で、行為や判断は公平なだけでは駄目で、公平だと見られなければならないと論じています。
 なぜこの言葉を引用したかというと、コロナ禍にある今、東京都の施策や方針の決定に、こうした倫理学といった知見を持った専門家の声が必要なのではないかと考えるからです。
 幅広い人文知の専門家の知見をいただくことで、政治の決定にさらに説得力が増すと考えます。国の動きが遅く感じられる今、東京都として国を牽引する対策をしていただきたいと考えます。
 都民がしっかりと理解し、納得できる説明をしていくことが何よりも大切だと考え、以下、質問いたします。
 今までの病床使用率五〇%という基準は、誰がどのように決めたものだったのか、なぜ今になってそれを変更したのか伺います。
 特に非常事態を想定する際に、先ほど申したとおり、公平だと見られなければならないとする中で、政策決定を進める行政や政治は、様々な分野のエキスパートの知見を借りる必要が出てくると考えます。
 コロナ禍において、飲食店の時短などの行動制限については、広く都民、事業者に負担を強いるものであり、理解を得ながら実施すべきものであります。
 そのため、例えば自然科学や法律、経済学はもちろんのこと、哲学や心理学、倫理学といった幅広い人文知、社会科学の専門家の知見も踏まえ、対策を検討すべきですが、その見解を伺います。
 以上で私の一般質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございます。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 須山たかし議員の一般質問にお答えいたします。
 社会経済の成長につながる気候変動対策の推進についてのお尋ねがございました。
 世界をリードする環境施策の推進が未来を開く技術革新や新たな需要をもたらし、持続可能で力強い経済へとつながります。
 都はこれまでも、キャップ・アンド・トレード制度など、先進的な環境施策を講じるとともに、環境性能の高い建築物が不動産市場で評価される仕組みづくり、水素や再エネ施策の推進などにより、優れた民間技術の開発や市場拡大を推進してまいりました。
 今後、再エネ、省エネ設備の導入拡大、新たな3Rビジネスモデルの構築支援など、条例による制度や支援策等の強化拡充によって、脱炭素化に向けた社会基盤を確立し、投資や企業を引きつける持続可能な都市を構築してまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁をいたします。
   〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、社会生活を営む上で必要となる力の育成についてでございますが、学校教育において、子供たちが集団活動の意義を理解し、互いのよさや多様な考えを認め合うことができるようにするためには、特別活動の充実を図り、豊かな人間性や社会性を身につけることが重要でございます。
 そのため、各学校では、学級活動や児童会、生徒会活動、学校行事等の特別活動における様々な集団活動を工夫し、子供たちが周囲との関わりの中で、生活上の課題解決を図ることができるよう指導しているところでございます。
 具体的には、楽しく豊かな学校生活のための学級の決まりについて話し合ったり、学年が違う子供たちと互いに協力し合うことを通して、よりよい解決策を考える力を身につけさせているところでございます。
 次に、教員の指導力の向上を図る取組についてでございますが、子供たちに社会生活を営む上で必要な力を育成するためには、互いのよさや多様な考えを認め合う態度を育むことができる教員の指導力が必要でございます。
 そのため、都教育委員会は、各地区の研究活動の中核となる教員を集めた教育研究員事業におきまして、特別活動の効果的な指導方法等を研究開発するとともに、主体的に合意形成を図る取組など、優れた実践を紹介する研究報告会を都内全公立学校の教員を対象に開催し、その内容を踏まえた授業の実施を促しております。
 今後とも、区市町村教育委員会と連携し、特別活動における教員の指導力向上を図る取組を進めてまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、脱炭素化に伴う経営環境の変化についてですが、中小企業が環境に配慮した事業活動の必要性を理解し、脱炭素化の分野に技術を活用することが必要でございます。
 このため、都は来年度、中小企業に専門家を派遣し、ゼロエミッションの実現につながる経営戦略やロードマップの作成から、それらの実施や定着までをサポートいたします。
 また、中小企業が自らの技術を環境分野に活用できるよう、専門家による助言を行うほか、新製品の開発や販路開拓の支援も行います。
 こうした取組によりまして、中小企業の脱炭素化を後押ししてまいります。
 次に、職業訓練等についてですが、ゼロエミッションの進展に伴い、職場で必要とされる技能を習得できるよう、企業や求職者のニーズに対応した職業訓練等を実施することは重要でございます。
 このため、都は、国が設置する東京都地域訓練協議会におきまして、経済団体や労働者団体、教育関係機関等と職業訓練の実施分野や規模などに関して意見交換を行い、それを踏まえ、毎年度、公共職業訓練の実施計画を策定しております。
 こうした取組によりまして、今後とも職業訓練等を実施してまいります。
   〔総務局長村松明典君登壇〕

○総務局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、緊急事態宣言要請の指標についてですが、昨年十一月、国がデルタ株による感染拡大を踏まえ、基本的対処方針を変更いたしまして、宣言発出の目安を病床使用率五〇%等といたしました。これを基に、都は、緊急事態宣言等の目安ともなり得るレベル分類の考え方を示したところでございます。
 その後、オミクロン株による感染が急拡大したことから、国に対して、その特性を踏まえた対応方針を示すよう要請するとともに、本年一月十三日に、審議会での専門家の意見も踏まえまして、病床使用率が五〇%に達した場合、宣言発出の要請を検討するということといたしました。
 今月三日に公表いたしました新たな指標は、国が宣言発出の基準を示さない中、臨床現場等において少しずつ明らかになってまいりましたオミクロン株の特性等を専門家に評価、検討いただきまして、都として設定したものでございます。
 次に、専門家の知見の反映についてですが、行動制限の要請等については、エビデンスに基づくとともに、都民や事業者の理解と協力を得られる内容とすることが重要でございます。
 そのため、都では、感染症、医療、経済、社会心理学など様々な分野の専門家の知見を踏まえ、感染状況や医療提供体制の逼迫状況に加えて、行動制限による人流抑制の効果や社会経済活動への影響など、多面的に検討を行った上で要請内容を総合的に判断しているところでございます。
 引き続き、対策を検討するに当たりまして、専門家の意見を踏まえて実効あるものとし、都民、事業者と一体となって、感染拡大の防止に取り組んでまいります。

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