令和四年東京都議会会議録第四号

○副議長(本橋ひろたか君) 十六番玉川ひでとし君。
   〔十六番玉川ひでとし君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○十六番(玉川ひでとし君) 初めに、防災対策について質問します。
 阪神・淡路大震災から二十七年が過ぎ、東日本大震災から間もなく十一年となり、あの関東大震災からは今年の九月で九十九年、来年で百年となります。一九六〇年に、九月一日が防災の日に制定され、台風の来襲も多いこの時期に、地震に加えて広く災害についての認識を深め、災害に対処する心構えをすべく、各地で防災訓練が行われていくようになりました。
 関東大震災から百年という節目に向かって、都として何を発信していくか、今から準備を進めていくべきと考えます。小池知事の見解を求めます。
 東京都では、都知事を本部長として、区市町村と合同での総合防災訓練を毎年実施しており、令和二年度は北区と、令和元年度は多摩市と合同で開催したほか、首都直下地震や南海トラフ地震、大規模風水害等の自然災害を想定した図上訓練を実施するなど、都と区市町村、防災関係機関が手を携えて東京の防災力の向上を図っています。
 町会、自治会、学校など、各地でも恒例行事として防災訓練が行われていますが、このコロナ禍においては、実施を取りやめたり、内容を縮小したり、役員だけの図上訓練に変更したりと、多くの人を集めることができない状況が続いております。
 東京都が毎年実施してきた総合防災訓練も今年度は実施されませんでしたが、コロナ禍に即した訓練の在り方を考え、小池知事を本部長とした東京都の総合防災訓練は実施すべきと考えます。都の見解を求めます。
 地域の防災訓練の課題として、若年層の参加が少ないことが挙げられます。
 若年層に防災の関心を持ってもらうために、地域によっては、防災運動会や防災スポーツなどの新たな取組が進められていますが、防災への意識が低いとされる若年層に向けて、これまでとは違った新たな切り口で、クイズ形式で防災学習ができる東京都防災模試への若者の参加を増やす工夫を凝らすとともに、東京都防災アプリのより一層の普及を図るなどの取組を進めていくべきと考えます。都の見解を求めます。
 防災の普及啓発に加え、幅広い年齢層に対しても防災教育を実施することが重要であります。とりわけ、被災地に学ぶことは大変有意義であります。
 被災者の体験談や、語り部の貴重な経験などを生かすとともに、ご家庭で家族と一緒に防災を学べる取組としていくなど、今後の事業で実施していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 防災の知識だけではなく、体を動かして五感で感じる実践が大事です。その上で、これまでの定型化した防災訓練から、様々な状況を想定した訓練へと変化が求められます。
 私の地元の大田区のある町会では、町会内の公園や隣接する中学校の校庭を会場として、夕方から夜にかけての夜間防災訓練を実施しています。誰もいない夜の学校がこんなに暗いのか、町会で所持している照明器具だけは明かりが足りなかった、物を落としたら探すのが大変だったなど様々な発見があり、その後の備えにつなげることができました。
 また、大田区の嶺町地区では、都立学校が補完避難所開設要請を受け、隣接する中学校から、避難者を引率して体育館まで連れてくるといった防災訓練が行われました。あらゆる状況を想定し、学校の空間や近隣施設を活用する大切さを実感しました。
 このような事例を参考に、まずは夜間の災害発生を想定した防災訓練を実施することの重要性を地域レベルから広く普及すべきと考えます。都の見解を求めます。
 あわせて、都立高校においても、地域と連携した防災訓練のさらなる充実を図るべきと考えます。都教育委員会の見解を求めます。
 続いて、教育現場での防災教育について質問します。
 都教育委員会は、都立高校で、生徒による防災組織、防災活動支援隊を編成し、地域との連携を深める取組を推進してきています。また、防災リーダーとして活躍できる人材育成を目的として、東日本大震災の被災地を訪問し、復興支援ボランティア、地域の学校との交流活動などを行う合同防災キャンプを平成二十八年度から実施してきました。
 私の身近でも、東北の復興支援ボランティアで一緒に参加した高校生が、その後、地元の消防団へ入団したり、防災関連のNPO活動を家族と一緒に立ち上げたりと、被災地での活動経験で得てきたものを地域で生かそうと、積極的に活動する姿を目にしてきました。
 十代の多感な時期に、被災地での活動を経験したことが大きなきっかけになったことは間違いないと思います。
 このような意識変革が期待できる合同防災キャンプは五年計画のため、今年度で終了してしまいますが、都立高校において生徒の防災意識を向上し、防災に関わる実践力を育成することが重要と考えます。都教育委員会の見解を求めます。
 また、都教育委員会は、小学校低学年、高学年、中学生、高校生と四段階に分けた防災ノートを作成し、防災教育に役立てています。自分の命は自分で守る、身近な人を助ける、さらに地域に貢献する、公助の行動を理解し、自ら地域に貢献する、このように、自助、共助への考え方が、それぞれの発達段階に分けて防災ノートの表紙に記載されています。
 災害が起きたときに、この防災教育で学んだ判断力や行動力が生かされることが大事でありますが、自分の命や身近な人の命を守ることの大切さ、困っている人を助けていくといった行動する勇気や思いやりの心などが、有事のときだけではなく、平時から発揮されることによって、自殺やいじめの軽減にもつながっていくのではないかと思います。
 このような、児童生徒たちの成長が、防災教育を通じた共助の精神の学びに期待されるものと考えます。都教育委員会の見解を求めます。
 次に、公衆浴場、銭湯について質問します。
 各公衆浴場では、入場時の検温や消毒、脱衣場の除菌、浴室内では黙って入浴する黙浴を呼びかけたり、営業時間の短縮や入場制限などを行い、銭湯経営者は、エッセンシャルワーカーとの自覚でこのコロナ禍を乗り越えられています。
 さらに、各地域の浴場組合が行っているスタンプラリーなどの各種イベントは、あえて必要以上の宣伝は行わず、粛々と行われている状況です。
 この間、原油高、燃料価格の高騰で、ガス代の値上がりは月約十七万円から二十万円、年間約二百万円近くの値上がりになっていると聞きます。公衆浴場、銭湯を守っていくためには、行政の直接的な経済支援だけでなく、銭湯利用者を増やしていくことが何よりも持続可能な支援策になることと思います。
 コロナ禍で高齢者が外出を避け、銭湯に足を運ぶ常連さんが減ってきている傾向にある中、テレビ、メディアなどで銭湯が取り上げられ、昨今のサウナブームもあり、若者たちの利用が増えてきているとの声もあります。
 実は、私は銭湯を研究していまして、ここ六年間で都内百四十二軒、全国二百軒近くの銭湯を巡って入浴してきています。まだまだその程度ではありますが、ここ最近の客層の変化は入浴するたびに実感しています。
 しかし、ブームが去った後に若者たちが銭湯から離れてしまわないように、若年層のリピーターを確保していくことが大事ではないかと思います。
 民間スポーツ施設とのコラボや、ランナーに着替える場所を提供するランステーションなど、工夫を凝らした取組を行っている銭湯もあります。また、風呂上がりにきんきんに冷えた生ビールが飲めるビールサーバーを設置している銭湯もあります。
 このような客層の変化を捉えて、新たな取組に臨む銭湯に対する支援を強化すべきと考えます。都の見解を求めます。
 これまで、銭湯、公衆浴場について、様々な魅力や可能性が語られてきたことと思いますが、このたび、公衆浴場の関係者が、東京都市大学の早坂信哉教授の指導の下、銭湯通いの効果について調査が行われました。
 週二回、四週間の銭湯通いの結果、筋力やバランス機能が改善されたとの変化が見られ、銭湯通いが介護予防の切り札になるのではないかと、その調査結果が冊子となりました。
 定期的に外出して、入浴をして、人と出会って話をする。これらの一連の行動は、高齢者の肉体面や精神面の健康水準を向上させることにつながるものと考えられます。
 また、独居高齢者は、自宅での入浴時の事故を防ぐためにも、多くの人がいる銭湯での入浴が安全です。銭湯のスタッフが、高齢者の変化を地域包括支援センターにつなげているという事例もあります。
 このように、高齢者の健康増進や介護予防、見守り支援など、地域の高齢者を支えていく拠点として銭湯を活用していくべきと考えます。都の見解を求めます。
 最後に、中央卸売市場について質問します。
 先日、地元の大田市場で働く方々との懇談の折、市場で業務をしている私たちもSDGsを意識して、環境対策にしっかり取り組みたい、そして、そのことをアピールしていきたいとの声を聞きました。
 市場業者がこのような環境への高い志を持って日々の業務を行っていることは、非常に心強いものであります。都内十一か所の中央卸売市場は、それぞれ地域社会を構成する一員であり、事業活動を行っていく上でも、地域の一員として環境配慮に取り組んでいくことが重要です。
 今般、公表された中央卸売市場の経営計画案においても、市場事業のサステーナブル化がうたわれており、ぜひ、中央卸売市場における環境対策への取組を積極的に進めるべきと考えます。都の見解を求めます。
 以上で質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 玉川ひでとし議員の一般質問にお答えいたします。
 震災の節目を捉えた都の取組についてのご質問がございました。
 東京は、これまで幾度かの大きな危機を克服しながら発展してまいりました。
 関東大震災から来年で百年、当時、帝都復興院総裁として震災後の復興に当たった後藤新平は、震災の教訓を踏まえ、世界初となる耐震基準の策定を進めるなど、今日の震災復興対策の骨格を築いた方であります。
 巨大地震は、その後も時と場所を選ばず発生してまいりました。
 私自身、阪神大震災のあの悲惨な光景は今でも忘れることができません。いかにして都民の命を守れるのか、その思いが知事としての原動力にもなっております。
 東日本大震災から十一年が経過しようとする今、都の震災対策の礎となる被害想定の見直しに取り組んでいるところでございます。
 今後、この想定を基に、都市の強靱化や災害時のオペレーションの精度を高め、ハード、ソフトの両面から不断に備えを固めてまいります。
 関東大震災から百年の節目を捉え、都の防災対策を効果的、戦略的に発信することによって、都民、事業者、行政が一体となり、東京全体の防災力を高めてまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁をいたします。
   〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、都立高校の地域と連携した防災訓練についてでございますが、都立高校が、発災時の様々な状況において、地域の一員として共に安全を支えるためには、地域の区市町村や関係機関との協力関係を日頃から築いていくことが重要でございます。
 そのため、各学校において、教職員や生徒が区市町村の防災担当や消防団等と協議しながら、避難場所の設営や避難者の誘導、炊き出し訓練などの運営訓練に取り組んでおります。
 今後、都教育委員会は、優れた防災訓練に関する実践発表会を実施し、各学校でその内容を共有して、生徒に被災した際の対応力や地域の安全を支える能力を育むなど、地域と連携した防災訓練のさらなる充実を図ってまいります。
 次に、都立高校生の防災意識と実践力の向上についてでございますが、生徒の防災意識と実践力を高めるためには、各学校が協働的、体験的な防災教育に取り組むことが重要でございます。
 このため、都教育委員会が今年度から指定した研究校では、区市町村の防災担当などと協力し、地域の実情を踏まえた課題解決策を検討、提案する学習を推進して、意識の啓発につなげているところでございます。
 また、全ての都立高校で生徒による防災活動支援隊を編成して自校の防災活動を立案し、地域の防災訓練に参加するなどの取組を行っております。
 今後、各研究校において、大学や被災地等から招いた防災の専門家等との交流の機会を設け、そこで得た専門的な知識や体験を生かした学習内容の充実を図ります。また、その成果を全都立高校に周知し、地域社会に貢献できる生徒の育成を図ってまいります。
 最後に、防災教育における共助の精神の学びについてでございますが、防災教育におきましては、自ら的確に判断して行動する力を育成するとともに、他者や社会の安全に貢献できる資質、能力を育成することが重要でございます。
 都教育委員会は、子供たちが主体的に防災について調べ、考えるための教材、防災ノートを配布しております。学校では、この教材を活用し、避難所で高齢者の話し相手となったり小さな子供と遊んだりするなど、思いやりの心を持つことを学んでおります。
 さらに、高校生が地域の防災訓練に参加し、園児の手を引いたり車椅子を押したりしながら安全に避難するなど、体験活動も行われているところでございます。
 こうした取組を通して、自他の命を守る力を育てるとともに、他者を思いやり、互いに助け合うことのできる豊かな心を育んでまいります。
   〔総務局長村松明典君登壇〕

○総務局長(村松明典君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、防災訓練の実施についてですが、昨年十月、都内で震度五強の地震が発生するなど、大規模な自然災害への備えが喫緊の課題となっております。
 都はこれまで、毎年度、区市町村や関係機関と連携いたしまして、都民参加型の総合防災訓練や、地震、津波、風水害等を想定した実践的な図上訓練を実施してまいりました。
 来年度実施予定の品川区との合同総合防災訓練では、基本的な感染症対策の徹底やコロナ禍での避難所運営など、感染症との複合災害を想定した訓練の準備を進めているところでございます。
 なお、今年度、新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえ開催を見送りました東村山市との合同総合防災訓練は、令和五年度に改めて開催する予定でございます。
 今後とも、防災訓練を継続的に実施し、災害対処における区市町村や関係機関等との連携を強化してまいります。
 次に、若年層への防災に関する普及啓発についてですが、地域の防災力を向上させるためには、防災への関心が低いとされる若年層の意識の向上が不可欠でございます。
 都はこれまで、防災への取組を分かりやすくまとめた「東京防災」や防災アプリ等により、広く都民に対し防災行動の事例紹介などを行ってまいりました。
 また、高等学校等に対しても、東京都防災模試のPRを行い、既に八万人を超える都民等の参加を得ているところでございます。
 来年度は、著名人による出題やサイトのデザインの改善を図るとともに、PR動画等をSNSやユーチューブで発信することにより、若年層の模試への参加やアプリの利用を一層促進してまいります。
 若年層に対して効果的な普及啓発を継続的に行い、防災意識のさらなる向上を図ってまいります。
 次に、地域防災力の向上に資する防災教育についてですが、過去の被災の体験から得られた教訓は説得性が高く、こうした教訓を防災教育に生かすことは重要でございます。
 都はこれまで、地域の自主防災組織を対象とした学習セミナーや、子育て世代を対象とした出前教室などにおいて、東日本大震災の被災者の体験などを取り入れた講座を開催してきたところでございます。
 来年度は、各種講座のカリキュラムにおいて、被災者の体験談をさらに増やすなど、内容を充実いたします。
 また、オンラインやDVDを活用し、家族や幅広い年齢層が利用しやすい講義方法とすることで防災意識の向上を図ることとしております。
 今後も、事業に創意工夫を凝らすことを通じまして、さらに実効性のある防災教育を進めてまいります。
 最後に、地域における夜間防災訓練の普及についてですが、災害は昼夜を問わず発生するため、地域の防災力の向上において夜間の災害対応を学ぶことは重要でございます。
 都はこれまで、夜間に発生する災害への心構えを各種の防災講座で呼びかけるとともに、夜間の防災訓練を実施した町会、自治会等の活動を防災ホームページで紹介してまいりました。
 来年度は、町会等を対象とした防災の専門家による学習セミナーで、夜間の発災時における具体的な備えや地域における夜間防災訓練の重要性を取り上げるなど、内容を充実いたします。
 こうした取組を通じて、地域防災力の一層の向上を図ってまいります。
   〔生活文化局長武市玲子君登壇〕

○生活文化局長(武市玲子君) 公衆浴場の利用者拡大のための支援についてでございますが、都はこれまでも、公衆浴場組合が行う利用者拡大に向けた様々な取組を支援してまいりました。
 浴場組合では、都の補助金を活用し、若者や外国人など新たな利用者の拡大に向けて、動画や漫画を用いたPRやホームページの多言語化を行うほか、銭湯の楽しみ方を披露し合う銭湯サポーターフォーラムの開催などを通じて、銭湯の魅力発信に努めてきました。
 さらに、専門家の助言を受け、入りやすい店づくりにも取り組んでいます。
 利用者の増加は経営の安定化に大きく寄与するものでございまして、都は、浴場組合が新たな工夫を凝らして行う取組を支援するとともに、こうした事例を広く発信してまいります。
   〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 高齢者支援におけます公衆浴場の活用に関するご質問にお答えいたします。
 都は、日常業務において高齢者と接する機会の多い事業者や団体と協定を締結して、地域における高齢者の見守りなどを推進しております。
 東京都公衆浴場業生活衛生同業組合とは平成二十八年度に協定を締結し、組合に加入している公衆浴場が、見守りへの協力や認知症の方への支援、消費者被害の防止などの活動に取り組んでおります。
 また、公衆浴場を活用して、栄養指導や体操教室、演芸や趣味の披露など、高齢者の健康増進や介護予防、社会参加の促進に取り組む区市町村を包括補助で支援しており、引き続き、様々な地域資源を活用して高齢者を支える区市町村の取組を支援してまいります。
   〔中央卸売市場長河内豊君登壇〕

○中央卸売市場長(河内豊君) 中央卸売市場における環境対策についてでございますが、市場がSDGsを踏まえ持続可能な社会の実現に寄与していくためには、市場運営に伴う環境負荷の低減に率先して取り組むことが重要でございます。
 このため、大田市場等において照明器具のLED化を拡大するとともに、各市場で使用される発泡スチロール製容器についても、廃プラスチック削減の観点から、リサイクルの高度化に取り組んでまいります。
 また、小型特殊自動車のZEV化を一層推進するほか、市場業者の冷蔵庫等についてグリーン冷媒機器への更新を支援するなど、環境負荷の低減に向けた新たな取組にも着手いたします。
 これらを推進するに当たりましては、市場業者の方々と協力し、普及啓発を図りながら積極的に取り組んでまいります。

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