令和四年東京都議会会議録第四号

○議長(三宅しげき君) 七十七番竹井ようこさん。
   〔七十七番竹井ようこ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○七十七番(竹井ようこ君) 初めに、ソーシャルファームについてお尋ねいたします。
 ソーシャルファームの認証は、障害者のほか、高齢者、シングル家庭、ひきこもり経験者やニートの方、路上生活者、刑務所出所者など、就労に困難を抱える人が相当数雇用され、他の従業員と共に働いている、また、事業からの収入を財源として運営している、そういった事業者に付与されるもので、社会的意義の高い制度であると考えます。
 しかし、多くの就労困難者を雇用しながら、その経営を維持していくことは、事業者にとっても大きな挑戦です。
 今後、ソーシャルファームの設立をさらに拡大するためにも支援の充実が必要ですが、知事にご見解を伺います。
 現在の補助制度においては、新たに認証事業所を立ち上げる際には、設備の導入経費等の補助が用意されていますが、既存の事業者が認定されてもそのような補助がありません。人件費についても増員した分のみの補助です。新規に立ち上げる際の支援が特に重要であることは理解しますが、ソーシャルファームの概念に沿った取組を既に行っている事業者への認証も増やしていくための支援も必要です。
 規模の小さい事業所では、多くの書類を整えることも負担になります。全国に先駆けて東京で誕生した制度です。認証事業者の皆さん、それから、就労希望者の皆さんからもよくご意見を聞き取り、よりよい制度となるように、常に改善されていくことを要望いたします。
 次に、英語スピーキングテストについてお尋ねいたします。
 都立高校入試において、令和五年度の試験から、英語スピーキングテストの結果を活用する予定とのことで、特に英語教育の専門家や現場の先生方からの指摘、地元中学生の保護者からも多くの意見をいただいています。
 まず初めに、都教育委員会として、グローバル人材育成におけるこれまでの英語教育の取組について伺います。
 スピーキング力の必要性については異論はありません。しかしながら、このESAT-Jといわれるスピーキングテストの点数を、学力検査の得点と調査書点の合計に加える、つまり、都立高校の入試に導入する、そしてその結果、英語のみ配分を高くすることについては、多くの疑問の声が上がっています。中学生のためにも、これらの疑問点に教育委員会は答えていくべきだと思います。
 都教育委員会は、スピーキングテストを実施し、令和五年度都立高校入試選抜から結果を活用するとのことですが、スピーキングテストを実施する目的を伺います。
 疑問の声で多く寄せられるのが採点の公平性の担保です。都内の公立中学校の中学三年生約八万人が本年十一月二十七日に一斉にテストを受け、生徒がタブレットに録音した音声の回答を、フィリピンにおいて、採点者が四十五日間という短期間で採点いたします。この採点システムについては、事業者との協定により明らかにできないとしていて、人数も含め全く不明です。
 また、昨年はプレテストがありましたが、九月から十一月に行われています。採点期間としては四十五日間より長かったことになります。本番さながらには行われていません。
 生徒が受け取る成績表には、スコアとそのスコアの説明、そして三行ほどの学習アドバイスが書かれているのみで、どこでどのように間違えたのかも分かりません。このテストの結果を入学後の高校で指導に役立たせようと思っても、これでは指導もできないのではないでしょうか。
 担当課は、誰が採点しても同じ結果になるとおっしゃっています。当該テストでは、受験生が納得できなくても、採点について情報開示請求ができない、成績表の返却をもって結果を開示とのことですので、初めから疑義を極力生じさせないようにすべきです。誰がやっても同じ結果になるのは、担当においてどのように確かめたのでしょうか。
 こういった様々な疑問に、都教委はどう向き合うのか。ESAT-Jの実施に当たっては、公平性の担保が重要だと考えますが、公平で公正な採点の実施に向けた都教委の取組について伺います。
 採点以外にも、様々な観点から都民の疑問やご意見が届いています。ESAT-Jはアチーブメントテストだと聞いています。達成度を見るテストです。であれば、推薦入試にこそ親和性が高そうですが、都教委は、今は推薦入試には適用しないとしています。
 また、話す力をつけるためには、早期に塾や英会話等に通ったり、事業者が提供する教材で学習できる家庭が有利なのではないか、経済格差による点数の差が開くのではないかという懸念の声がありますが、見解を伺います。
 ESAT-Jは、全生徒を対象に実施するため、特別措置が必要な生徒への対応は不可欠です。
 今回、吃音や発話障害を持つ生徒の保護者の皆さんからご意見をいただきました。当該の生徒に対しては、問題を解く時間を三倍延長する措置が取られていますが、吃音の症状は様々であることから、柔軟な対応を要望いたします。
 特別措置の内容については、今、マイページにのみ記載があり、生徒がマイページを開設するまで分かりません。特別措置の申請期間も十二日間しかありません。親や教師に吃音の悩みを相談できていない生徒は、その期間では申請できないおそれがあります。生徒や保護者への案内をマイページではなくホームページに記載し、いつでも情報を得られるようにすべきです。
 特別措置の必要な生徒も安心して受験できるよう、先生の声かけも含め、特別措置に関する周知を工夫するべきですが、都教委の取組を伺います。
 都民の皆様の様々な疑問の声に基づき質問させていただきましたが、英語、とりわけスピーキングを重視するのであれば、まずは発話機会を増やすために、少人数でしっかり学習できるスピーキング強化の体制を整える、教員を増強するなどの施策を取ることが先決ではないでしょうか。
 都民の理解が進まない中で、様々な疑問を払拭できないのであれば、来年度から都立高校の入試に導入するということは課題が多く、問題であると指摘しておきます。
 吃音のある中学生への支援については、根源的な課題があります。そもそも、東京都内の小学校には七十五校にことばの教室が設置されているのに対して、中学校には設置がありません。思春期にある中学生の場合、周囲に気兼ねして吃音があることを打ち明けられないケースもあり、中学校に上がる段階で支援が途切れてしまうのではないかという心配の声が寄せられています。
 通常の学級にも特別な支援を必要とする児童生徒が在籍しており、個に応じた指導の充実を図ることが大切です。
 先生方から、最近話すことに困っていることはないといった声がけや寄り添う姿勢も重要です。吃音があることで会話がままならない、そのことで自己否定感につながらないようにしていただきたいと思います。吃音のある生徒について、在籍する学級で適切なケアがなされるべきだと思いますが、都教育委員会としてどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、保育所への実地検査について伺います。
 国は現在、保育所など児童福祉施設への実地検査を年一回以上行うことを自治体に義務づけています。現状、コロナ禍にあっては、保護者が保育現場に従来のように立ち入り、保護者の目で確認することが困難になっています。保育の質を担保していくために、行政として担当者が現地に赴き、書類では確認できないことを目視確認することは非常に重要です。
 しかしながら、認可保育所の実地検査の実施率は、都による実地検査と市区町村による実地検査を合わせても、コロナ前の令和元年度において約四〇%、コロナ禍の令和二年度においては約三〇%となっています。この実施率向上については、対象機関が約三千か所ある中で、人員の強化に加えて自治体との連携が不可欠だと考えますが、現状をどのように捉えて、どのように改善していくのか伺います。
 さて、現在、国は、新型コロナウイルスの感染対策の影響もあり、保育所などへの指導監査について、実地に代えて、書面やオンラインでもよいとする施行令の変更を検討しているとのことです。
 やり取りをオンライン上で行うことによって、保育所側、行政側、双方の効率を上げることは行うべきですが、実地検査そのものをやめるべきではありません。実地による指導検査の必要性について見解を伺います。
 実地検査において保育の現場の実態を把握するとともに、現場の声を聞き、新たな支援策につなげていくこともぜひ有機的に行っていただきたいと要望し、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 竹井ようこ議員の一般質問にお答えいたします。
 ソーシャルファームへの支援についてでありますが、ソーシャルファームでは、就労に困難を抱える方々が活躍する場を提供しており、その創設の促進を図っていく必要がございます。
 そのためには、ソーシャルファームの設立に意欲のある事業者に対して、自律的な経営の基盤をつくり上げるサポートを行うことが重要です。
 都は、経済団体に対しまして、ソーシャルファームとの取引促進に向けた働きかけを行うとともに、その製品やサービスを幅広く紹介するなど、販路開拓の後押しをしてまいります。
 こうした取組により、ソーシャルファームの創設の促進を図ってまいります。
 その他の質問につきましては、教育長及び福祉保健局長から答弁をいたします。
   〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 六点のご質問にお答えいたします。
 初めに、これまでの英語教育の取組についてでございますが、都教育委員会は、平成三十年二月に策定した東京グローバル人材育成計画に基づき、小中高校における一貫した英語教育を通して、世界で通用する使える英語力の育成を目指し、授業改善を推進しております。
 また、英会話の練習に活用できる映像コンテンツの配信や、体験型英語学習施設TOKYO GLOBAL GATEWAYでの多様な学習プログラムの提供など、英語を学ぶ機会を拡充し、児童生徒の学習意欲を高めております。
 次に、中学校英語スピーキングテストの実施の目的についてでございますが、本事業は、中学校における話すことの学習成果を的確に評価し、総合的な英語力の育成に向けた指導の充実を図るとともに、その結果を都立高校入試に活用することで、高校での英語学習に円滑に接続していくことを目的としております。
 全ての中学生が、英語を学習することの意義や価値を実感し、生涯にわたり学び続ける意欲を高めることができるよう、スピーキングテストを着実に実施してまいります。
 次に、スピーキングテストの採点についてでございますが、採点は、大学の学位や英語教授法の資格を持つなど、高度な英語力と英語教育に関する専門性を有する者が、事前に本テストの採点に係る研修を受講し、基準を満たした者のみが専任で行っております。
 また、情報管理を徹底した環境において、都教育委員会が監修した基準に従い、複数の専任者による採点、審査を経て、結果を確定しているところでございます。
 今後も、都教育委員会は、採点業務を監修し、事業の実施主体としてスピーキングテストを公平、公正に運営してまいります。
 次に、話すことの力をつける学習についてでございますが、中学校の授業では、生徒が事実や自分の考え、意見を英語で伝え合う活動に取り組んでおります。スピーキングテストは、こうした中学校での学習内容から出題し、その成果を測るものでございます。
 また、都教育委員会は、子供たちが興味や関心に応じて、さらに学習に取り組めるよう、本テストの過去の問題や解答例をウェブサイトに掲載するとともに、英語で話すことの練習ができる動画教材を配信しております。
 こうしたことから、中学校で行われている通常の授業と動画教材の活用により、十分に対応できるものとなっております。
 次に、特別措置に関する周知についてでございますが、都教育委員会はこれまで、教員を対象とした説明会や、生徒保護者向けのリーフレットを通じて、特別措置に関する情報を提供してまいりました。
 来年度は、情報をウェブサイトに掲載するとともに、申請の受付期間を延長することとしております。
 最後に、吃音のある中学生への支援についてでございますが、生徒によって言葉の出にくさが異なりますことから、生徒一人一人の状態の理解とともに、適切な配慮を行うことが必要でございます。
 都教育委員会は、区市町村教育委員会に対して、思春期の吃音の特徴や生徒の不安な心情の理解等を促す教員向けの啓発資料を配布しております。中学校ではこれを参考に、生徒が気軽に相談できる体制を設け、教員の話し方や聞き方を工夫し、生徒が話しやすい環境を整え、自信を持って学校生活を送れるよう配慮を行っております。
 今後も、こうした取組を継続してまいります。
   〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、認可保育所の実地検査についてであります。
 都では、新規開設施設や課題のある施設を中心に、児童福祉法等に基づく指導検査を行っておりまして、不適切な保育の通報等があった場合は、速やかに特別指導検査を実施しております。また、区市町村では、子ども・子育て支援法等に基づき指導検査を実施しております。
 都と区市町村の指導検査実施率は、平成三十年度が三二%、令和元年度が四〇%、令和二年度はコロナ禍の影響もありまして三〇%となっております。
 児童の安全・安心の確保に向け、引き続き区市町村職員向けの研修や合同検査の実施など、区市町村と連携した指導検査を実施してまいります。
 次に、実地による指導検査についてであります。
 認可保育所の保育内容や建物設備の安全等の把握には、実地検査が重要であり、都は、区市町村とも連携し、指導検査の際、施設に赴き、運営管理や保育内容、会計経理について検査し、必要な指導を行っております。
 引き続き、実地による指導検査を行うとともに、今後は、デジタル技術も活用して、オンラインによるヒアリング等の手法も必要に応じて用いながら、保育の質の確保に向け、より効果的、効率的な指導検査を進めてまいります。

○副議長(本橋ひろたか君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後二時四十七分休憩

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