令和四年東京都議会会議録第三号

○副議長(本橋ひろたか君) 十八番かつまたさとし君。
   〔十八番かつまたさとし君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○十八番(かつまたさとし君) 初めに、民間医療機関の特別療養環境室に係る費用、いわゆる差額ベッド代について質問いたします。
 入院患者と民間医療機関との間でよくトラブルになるのが、この差額ベッド代です。私は、病院勤務の経験から、前職の区議会議員の時代からこの問題に取り組んでまいりました。
 民間医療機関の差額ベッド代は、特別療養環境室に係る費用として、保険診療の対象外となっています。
 令和二年三月五日付の厚生労働省の通知は、この差額ベッド代料金を患者に求めてはいけない場合として、一、患者の書面による同意がない場合、二、治療上必要な場合、三、患者の選択によらない場合と定めており、差額ベッド代が発生しない部屋が空いていないからという理由で差額ベッド代を徴収してはならないことになっております。
 つまり、病院側は、常に差額ベッド代が発生しない病室と差額ベッド代が発生する病室の双方を用意して患者へ提示し、その選択は、患者自身、もしくはその家族に任せなければなりません。差額ベッド代の適用は医療機関側の都合によるのではなく、あくまでも患者側に選択権があるのです。
 しかし、現実にはその徹底が不十分であり、トラブルになるケースが多々あります。
 先日もある都民の方から、入院時に民間医療機関から、差額ベッド代が発生しない病室に空きがなく、空きが出たら移します、取りあえずベッド代が発生する部屋に入室してくださいとの説明を受け、いや応なしに特別療養環境室への入室希望書に署名したが、その後も部屋の移動はなく、退院時に高額の差額ベッド代を請求され驚いたとの相談を受けました。
 都の患者の声相談窓口での差額ベッド代の相談は多く、担当者によれば、令和二年度の実績で、様々な理由による医療費に関する相談件数が九百件で、そのうち差額ベッド代に関する相談が二百五十五件に上るとのことです。
 今後、私は、我が党の国会議員とも連携してこの問題に取り組む決意ですが、都としても、不適切な取扱いを繰り返す悪質な事例への対処を国に要望し、民間医療機関の差額ベッド代の仕組みを改めて都民へ周知すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、民生委員、児童委員の選任について質問します。
 民生委員、児童委員は、社会奉仕の尊き精神の下、地域住民の立場に立って、無報酬で助言や必要な支援を行う特別職の地方公務員であります。その尊き社会奉仕の精神に敬意を表します。
 私は、区議会議員時代に地元大田区の民生委員推薦会に出席しており、その際、同席していた町会長から、推薦に当たっての年齢制限を緩和するよう再三要望をいただきました。
 そこで、改めて先日、大田区の民生委員、児童委員の会長にお話を伺いましたところ、会長さんは、本人の意思の尊重と健康状態の確認を条件に、年齢制限を緩和すべきではとのご意見でした。
 民生委員の定員に対する充足率で一〇〇%を満たしている都内の自治体は、令和三年四月一日時点で、いまだ三市二町のみという現状です。
 ぜひこうしたご意見も参考に、健康で意欲もある方々への推薦を促進するべく、さらなる年齢要件等の緩和に向け検討を進めるべきと考えますが、見解を求めます。
 一方で、民生委員、児童委員の活動内容が都民に知られていないことが成り手不足の要因の一つと考えます。
 しかし、近年、ボランティアに携わりたいと考えている都民は増える傾向にあります。
 生活文化局の都民生活に関する世論調査によれば、東京をよりよくするために関わっていきたいと思う活動の調査で、町会、自治会活動とその他都内でのボランティア活動を希望する回答の割合は、合計で三六%にも上ります。
 都は、民生委員、児童委員の活動内容の周知において、特にボランティア意識が高いと思われる人々への広報を強め、民生委員、児童委員への関心を広げ、担い手の確保が進むよう取り組むべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、豪雨時の下水道の樋門操作について質問をいたします。
 近年、地球温暖化に伴う気候変動の影響により、集中豪雨や台風による自然災害が頻発をしております。
 令和元年東日本台風の際には、多摩川上流域において六百ミリを超える記録的な大雨となり、多摩川の田園調布(上)水位観測所などでは、多摩川の計画高を上回る水位となりました。
 この結果、多摩川沿いの自治体では、河川からの越水や多摩川の水位上昇に伴う多摩川への排水不良、樋門を閉鎖した地域での内水の停留、あるいは樋門を閉鎖できなかった地域での多摩川の逆流など、様々な要因に基づき、多くの浸水被害が発生をいたしました。
 大田区は嵐の中、排水ポンプ車を現地に向かわせ、樋門の閉鎖により行き場を失った雨水の排水に努めました。しかし、多摩川が避難水位に達し、やむを得ず、職員の人命保護の観点から排水作業を中止し、撤退をいたしました。
 当日の降雨は、都の雨水の整備水準を大きく上回るものでした。こうした想定を超える雨水にあっても、安全かつ適切に樋門の操作ができるように改善するなど、より一層、浸水被害の軽減を図ることが重要です。
 このため、都が持つ知見を生かし、樋門操作に際しての安全対策の強化など、様々な手法での豪雨対策の強化を図るべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、JR、東急蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐ新空港線の整備について質問をいたします。
 昨年十一月に、森記念財団の都市戦略研究所が発表した世界の都市総合力ランキングにおいて、東京はロンドン、ニューヨークに次いで総合で三位でしたが、交通アクセス分野では五位にとどまっています。国際競争力の観点からも交通基盤の強化が必要であり、羽田空港へのアクセスの改善が不可欠であります。
 この改善策の一つが新空港線の整備であり、国も、国際競争力の強化に資する都市鉄道として位置づけ、平成二十八年の国の交通政策審議会答申百九十八号では、ほかの路線とともに、優先的に検討を進めるべき六路線に位置づけています。
 しかし、その後、新たに二つの新線整備の計画が公表され、新空港線整備の優位性が薄らぐのではとの懸念の声も聞かれています。
 そこでまず、改めて優先六路線の一つである新空港線整備に向けた知事の見解を求めます。
 私の地元大田区が整備に向けて長年取り組んでいる新空港線は、JR、東急蒲田駅と京急蒲田駅の間の僅か八百メートルを鉄道新線の整備で結ぼうとするものであります。
 この鉄道ネットワーク上のミッシングリンクの解消を図る新空港線には、さらなる機能強化が見込まれている羽田空港へのアクセスの利便性の向上はもとより、既存路線との相互直通運転により、首都圏における広域交通ネットワークの一翼を担う役割も期待されています。コロナで落ち込んだ東京の経済の回復のためにも、早い整備が求められています。
 鉄道整備の効果は、立地する自治体にとどまらず、広域に及ぶものです。新空港線についても、広域自治体である都がしっかりと責任を持って進めていく必要があります。
 そこでまず、都は、国の答申での位置づけや他路線での事例なども踏まえ、新空港線整備事業を広域事業として応分の負担に取り組み、広域自治体としての責務を果たすべきと考えますが、都の見解を求めます。
 平成二十八年の答申百九十八号から既に六年が経過をしております。新線の整備を待ち望む地元関係者からは、進展の成果が現れてこないことに対するいら立ちや心配の声も聞かれ始めています。
 現在、都と区の間で行われている協議では、費用負担割合についての都区間の合意がなされておらず、そのために事業化に向けた具体的な準備に取りかかることができません。
 都は、広域自治体としての立場に立って、区との負担割合などの様々な課題の解決に向け積極的に調整に臨み、今年度を目途に、早期に都区間の合意に結びつけるべきです。見解を求めます。
 大田区は、新空港線整備の機会を捉えたまちづくりを予定しています。JR蒲田駅周辺での魅力あるまちづくりや災害に強いまちづくりを実現するため、多くのまちづくりで都市計画的手法を駆使し、実現に結びつけてきた都による区への技術的助言が求められています。
 都区間の合意の暁には、この新空港線事業とその周辺まちづくりを広域に効果が及ぶ事業として都市計画事業に位置づけ、都市計画交付金の対象とすることを強く要望し、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) かつまたさとし議員の一般質問にお答えいたします。
 新空港線についてのお尋ねがございました。
 国際都市東京の玄関口としての羽田空港の機能を最大限に発揮させるためには、鉄道によるアクセスの充実を図ることが重要であります。
 新空港線は、国の答申において、空港アクセスの向上に資するプロジェクトの一つとして示されております。一方で、関係者間で費用負担の在り方などについて合意形成を進めるべきとの課題も示されております。
 このため、都と大田区では、本路線に関する協議の場を開催し、まちづくりの要素等も加味いたしまして事業プランの検討を行っており、その結果を基に、都と区の負担等に関する協議を行ってまいります。
 できる限り早期に協議が調うよう、区と連携して取り組んでまいります。
 その他のご質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁をいたします。
   〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、新空港線に係る都区負担についてでございます。
 国の交通政策審議会の答申におきましては、本路線につきまして、東急東横線等との相互直通運転を通じて、国際競争力強化の拠点である新宿や、東京都北西部等と羽田空港とのアクセス利便性が向上するとの効果が示されております。
 一方、空港アクセスの向上に資するプロジェクトとして、本路線のほか、羽田空港アクセス線などのプロジェクトも示されております。
 都といたしましては、答申に示された広域的な空港アクセスの向上に資するとの観点などを踏まえつつ、羽田空港アクセス線の整備による本路線の需要などへの影響も考慮しながら、都区負担に関する協議を行っていく考えでございます。
 次に、新空港線に係る協議についてでございます。
 本路線につきましては、国の答申におきまして、関係者間で費用負担の在り方等について合意形成を進めるべきとの課題が示されております。
 まちづくりの需要等も加味して事業プランを検討し、その結果を基に、都区負担等に関する協議を進めるため、都は、大田区と本路線に関する協議の場を開催しております。
 これまで、蒲田駅周辺のまちづくりとの整合を図りながら、乗換利便性の向上等につきまして検討を進めてきており、引き続き、需要予測及び収支採算性等の精査や都区負担の考え方の整理を行ってまいります。
 できる限り早期に協議が調うよう、区と連携して取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、病院の特別療養環境室、いわゆる特別室の料金です。
 国の通知では、同意書による同意がない場合、患者本人の治療上の必要により入室させる場合、病棟管理の必要性等から特別室に入室させた場合等は、料金を求めてはならないとされております。
 都は、こうした情報を患者の声相談窓口のホームページに掲載し、都民へ周知するとともに、都内病院に対しても情報提供しております。
 また、相談窓口で対応した相談、苦情等のうち、不適切な事例が認められた場合には、厚生労働省へ情報提供し改善につなげるなど、引き続き適切な医療提供体制の確保に努めてまいります。
 次に、民生児童委員の年齢要件についてであります。
 民生児童委員は、都道府県の推薦により、国が委嘱するものであり、国の通知では七十五歳未満の者を選任するよう努めることとされております。
 都は、これを踏まえ、東京都民生児童委員連合会等と協議して、推薦の際の年齢要件を定めておりまして、一定期間の活動が可能となるよう、令和元年度から新任は原則として六十七歳未満、再任は七十五歳未満としております。
 これまでも、充足率等の状況により、年齢要件を適宜見直しており、本年十二月の一斉改選後の充足率も踏まえまして、年齢要件等について関係機関と検討してまいります。
 最後に、民生児童委員の普及啓発についてであります。
 民生児童委員の活動促進や担い手の確保に向けては、地域住民や関係機関等に制度や活動内容を広く周知することが重要であります。
 都はこれまでも、五月の民生児童委員活動強化週間において、パネル展の開催や民生児童委員によるパレードを実施するなど、東京都民生児童委員連合会等と連携しながら、広く都民への普及啓発に努めてまいりました。
 また、今月からSNSを活用し、若い世代に活動内容を紹介する取組を実施しております。
 引き続き、関係機関等と連携いたしまして、効果的な普及啓発に努めてまいります。
   〔下水道局長神山守君登壇〕

○下水道局長(神山守君) 豪雨時における下水道の樋門操作についてでございますが、下水道局では、樋門操作時の安全を確保するため、堤防から河川に張り出した操作盤につながる通路の転落防止柵のかさ上げや、堤防の宅地側からでも操作ができるよう遠隔化を実施いたしました。
 また、多摩川の水位や樋門の開閉状況などの情報を地元区などと速やかに共有するため、情報伝達ルートや共有方法を定めることに加え、樋門の操作を委託している大田区や世田谷区と昨年度から年に一回、合同で操作訓練や情報連絡訓練を実施しているところでございます。
 今後も、より安全性の高い樋門の操作方法などを含め、関係機関と連携いたしまして対策の検討を進め、都民の安全・安心な暮らしに貢献してまいります。

○議長(三宅しげき君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後六時十八分休憩

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