令和四年東京都議会会議録第三号

○副議長(本橋ひろたか君) 十四番関口健太郎君。
   〔十四番関口健太郎君登壇〕

○十四番(関口健太郎君) 東京都議会立憲民主党の関口健太郎です。
 初めに、精神障害者の医療環境について伺います。
 コロナ禍で都内の精神科病棟でクラスターが発生し、精神障害者の方々に対する医療環境が注目をされました。
 NHK教育テレビでは、精神科病院における新型コロナのドキュメントが放映され、大きな反響を呼びました。その中では、都内でクラスターの起きた精神科病院から都立松沢病院へ精神疾患のある患者が運ばれる様子が映し出されています。
 基礎疾患があるにもかかわらず放置をされ、松沢病院に転院し初めて疾患が判明する患者。新型コロナのクラスターの起きた病院では、南京錠をかけ患者たちを閉じ込める惨状。病院にしか居場所のない患者。逼迫する医療体制の中で葛藤する医療従事者たちなど、コロナ禍における精神科医療の実態が浮き彫りとなりました。
 私は、この間、精神障害者の当事者団体の皆様のお話を伺ってまいりました。その声を届けていきます。
 まず、精神科病棟からの転院についてです。
 精神科病棟にいる入院患者は、精神障害であることを理由に転院先が見つからず、精神科病棟にとどまることがあるようです。とりわけ、コロナ禍の今、新型コロナウイルスに感染した精神障害者の患者は、転院困難となるケースがあります。
 新型コロナウイルス感染症であっても、精神科病院に入院中の精神障害者が身体疾患を併発した場合であっても、適切な医療を受けられるよう求めますが、都の見解を伺います。
 当事者団体の皆様や家族会の皆さんとお話をする中で、衛生環境やプライバシーへの配慮は、精神科病棟の中ではまだまだ大きな課題があると感じました。もちろん全ての精神科病院ではありません。
 都内には、都立松沢病院をはじめとした、精神障害者に対して適切な医療を提供し、衛生環境もよく、高い理念を掲げる病院がある一方で、そうではない病院があるのも事実です。
 そこで伺いますが、精神科病棟は、一般の病院と比べ衛生状態が劣悪な環境にあり、プライバシーに対しての配慮のない病棟も散見されると聞いています。指導監督責任のある都がこうした状況を改善すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 精神障害者の地域移行について伺ってまいります。
 厚労省は、二〇〇四年、長期入院を減少させるため、精神保健医療福祉の改革ビジョンを定め、入院中心から地域生活中心への転換を打ち出しました。
 改革ビジョンでは、長期入院者のうち、受入れ条件が整えば退院可能な者約七万人について、十年後の解消を図るとしていましたが、三十三万人が二十九万人に減少する微減にすぎませんでした。地域移行のための受皿がつくられていないことが大きな要因です。
 さらに、世界の精神科病床の約二〇%は日本にあるといわれています。諸外国では、人口当たりの精神病床数は減少しているものの、日本は、人口一千人当たりの病床数は二・五床と、OECDの諸外国と比較をしても突出しています。
 そこで、都においても精神障害者の地域移行を進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、退院請求や処遇改善請求について伺います。
 令和二年度の実績を見ますと、退院請求は合計で二百十一件、そのうち退院を認められたのは二件であります。処遇改善請求では合計百四件、そのうち現在の処遇が不適当とされたのは四件であり、そもそもの仕組みが形骸化しているという専門家の指摘もございます。
 しかしながら、退院請求や処遇改善請求は入院をしている当事者にとっては重要な機能を果たします。
 ただ、これらの請求は、精神障害者にとってはハードルが高い現状があります。家族が不在であることや、家族の理解が得られないのであればなおさらです。
 退院請求や処遇改善請求などがスムーズに行えるためのサポートや窓口の開設など、都として取組を強化すべきと考えます。都の見解を伺います。
 次に、子育て施策について伺います。
 まず、子育て世帯への臨時特別給付についてです。
 都内は、住居費が高額であることなどに加え、基本的な生活費が高いため、都内の子育てにはお金がかかります。家計の金融行動に関する世論調査によると、年収一千万円を超える世帯であったとしても、預貯金を含めた金融資産ゼロ世帯は一〇%もいる実態があります。
 そうした中、昨年、子育て世帯への臨時特別給付が実施をされました。子育て世帯への臨時特別給付は、モデルケースによって異なりますが、年収九百六十万円以上の世帯は対象外となっています。
 しかし、子育て政策は社会全体でするもの、親の年収によって子供施策を決めてはいけないなど、所得制限を撤廃する自治体が多く見受けられました。
 ただ、所得制限を撤廃する自治体は、対象外となる世帯が少なく、都内をはじめとした都市圏は対象外となる世帯が多い現状です。都内の基礎自治体は、対象外となる世帯への給付は独自財源となることから、所得制限の撤廃に踏み込んでいない逆説的状況にあります。
 そこで、都として、子育て世帯への臨時特別給付の所得制限の対象外となる世帯への支援をすべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、児童手当の見直しがされました。本年十月以降、児童手当は児童を養育している者の年収が一千二百万円以上の世帯が不支給となります。国の枠組みであることは理解するものの、都として独自の取組が必要ではないでしょうか。
 都内の子育てや住居費は他自治体と比べ高額であることを考慮し、子育てを社会で支援する観点から、都として、児童手当の対象外となる世帯への支援をすべきと考えますが、都の見解を伺います。
 いうまでもなく、生活困窮世帯や生活に行き詰まった方々に対しての支援は重視すべきだと考えます。しかし、所得制限を超える制度の対象外となる世帯も、働き、納税し、何よりも必死に子育てをする都民の一人一人であります。繰り返しになりますが、都内は基本的な生活費が高いため、都内の子育てにはお金がかかります。
 家庭の状況にかかわらず、都内で生活する全ての子供を社会全体で育むことが必要であると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、ゼロエミッションビークル、いわゆるZEVの普及について伺います。
 昨年十二月にトヨタは、二〇三〇年までに三十車種のEVを投入して、合計三百五十万台を販売することを発表し、国内に限らず、世界的に大きな衝撃を与えました。こうした動きもあり、EVをはじめとしたZEVの供給体制も大きく変わろうとしています。
 都では、ZEVの新車販売時における補助金があります。しかしながら、ZEVの新車購入費は負担が大きく、多くの都民にはまだまだ浸透しない価格帯であります。多くの都民にZEVに切り替えていただくためには、中古ZEVの普及施策も必要ではないかと考えています。
 ZEVは、中古車販売店などでは電池がどの程度劣化をしているのか把握する手段がなく、適切な価格がつけられないということが課題でありました。
 そうした中、フォード・モーターやデンソーなどの世界百社超の企業、団体が、電気自動車の電池を再利用する際の価値算定基準を共通化します。電池は、EVの原価の三割程度を占める最重要な部品であり、統一した取引基準ができれば中古市場が活性化をし、EVの買換えにも弾みがつきます。
 今後、東京都におきましても、ZEVの中古車市場について施策を強化すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 販売体制を強化するとともに、ZEVに対応し得る環境整備はさらなる加速が必要です。
 都は、都内で新車販売される乗用車に占めるZEVの割合を二〇三〇に五〇%とする目標を掲げています。
 一方、二〇三〇年への目標を達成するためには、ZEVへの環境整備をしなければなりません。急速充電器は、都内では約三百二十基とまだまだ少なく、急速充電器の拡大が求められています。
 ZEV普及における急速充電器の重要性を踏まえ、さらなる拡充に取り組むべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 既存の枠組みで急速充電器を増設していくことも重要でありますが、ZEVに対応するまちづくりを構築するためには、さらなる仕掛けが必要です。
 例えば、横浜市で二〇二一年に実証実験として、急速充電スタンド一基を横浜市内の県道脇に設置をしました。充電スタンドの利用状況によって車の流れが滞らないかなどを検証し、実用化の道筋を探っています。使い勝手がいいために、利用数も多いとのことです。欧米諸国のように公道上に充電スタンドが日本でも置けないのかを検証するいい実証例であると思います。
 また、東京大学の研究チームは、EVを走らせながら充電する仕組みを研究しています。こうした取組は、既にフィンランドやスペインなどでは公道上での実験が始まっており、研究チームは千葉県柏市で二〇二三年から実験を行い、実用化を目指しています。
 こうした観点からも、既存の手法に加え、新たな取組が求められています。急速充電器の取組の強化について、都の見解を伺います。
 以上をもちまして私の一般質問といたします。
 どうもありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 関口健太郎議員の一般質問にお答えをいたします。
 急速充電器のさらなる拡充についてのお尋ねでございます。
 ZEVの普及を加速していくには、短時間で充電可能な急速充電器をインフラとして基盤整備することが不可欠であります。
 このため、都は、都内の公共用急速充電器を二〇三〇年までに一千基整備する目標の実現に向け、導入及び維持管理に係る費用を補助いたしております。
 現在、自動車メーカーにおきましては、新たにEVを開発、販売する動きが活発になっておりまして、自動車ディーラー、商業施設などで幅広く急速充電器の導入支援のニーズが高まっております。
 来年度は、充電時間のさらなる短縮につながる超急速充電器を新たに補助対象とするとともに、急速充電器の補助件数を大幅に拡充してまいります。
 さらに、都自らの率先行動も加速しながら、ZEVの普及拡大に不可欠な基盤整備を強力に推進してまいります。
 その他の質問につきましては、関係局長から答弁をいたします。
   〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、入院中の精神障害者への身体疾患の医療についてであります。
 都は、精神科病院の入院患者が身体疾患を併発し、その病院で対応が困難な場合、精神症状を管理しながら身体治療を行う病院へ転院できる仕組みを構築しております。
 新型コロナウイルス感染症による院内感染が疑われる場合には、必要に応じて都立松沢病院の医師等が赴き、発生状況や転院の優先度等を調整し、速やかな入院調整につなげております。
 今後とも、入院中の精神障害者が、精神疾患と感染症の重症度等に応じた医療を受けられるよう取り組んでまいります。
 次に、精神科病棟の環境整備、衛生管理についてであります。
 都は、清掃マニュアルの整備や、複数患者が入院する病室のプライバシー保護などを記載した病院管理の手引を作成し、都内全ての病院に配布しております。
 また、医療法等に基づき、病院が適正な管理を行っているか定期的に立入検査を実施し、必要に応じて助言指導を行っており、今後とも、病院の適正な管理運営の確保に努めてまいります。
 次に、入院中の精神障害者の地域移行についてであります。
 東京都保健医療計画では、入院後一年時点での退院率の目標を九三%以上としており、都は、都内六つのブロックに地域移行コーディネーターを配置し、病院と地域の関係者との調整などを行っております。
 また、精神科病院に対して精神保健福祉士の配置を支援するとともに、入院患者の退院後の不安を軽減するため、グループホームを活用した体験宿泊なども実施しており、今後とも、精神障害者の地域移行を進めてまいります。
 次に、退院請求等についてでございます。
 精神科病院は、患者本人等が退院や処遇の改善を請求することができ、その窓口としては中部総合精神保健福祉センターであることなどを入院時に書面で伝えております。
 センターは、退院請求等の相談時に患者の状態や要望などを丁寧に聞き取り、弁護士等への相談を希望する場合には、連絡先や費用の助成制度を紹介しております。
 また、国の基準では、院内に人権擁護を担う法務局等の連絡先を掲示することとしておりまして、都では立入検査等で確認をしております。
 今後とも、患者の人権保護の取組を適切に行ってまいります。
 次に、子育て世帯への臨時特別給付金についてであります。
 国では、コロナ禍が長期化する中、子供たちを支援するため、年収等の一定の要件に該当する世帯を除き、子育て世帯へ子供一人当たり十万円を給付することとしております。
 なお、国は、給付金の対象外となる世帯への支援について、区市町村の判断で地方創生臨時交付金を活用することは可能としております。
 次に、児童手当でございます。
 児童手当は、児童手当法に基づく国の制度でありまして、支給対象範囲などは、国において議論すべきものと考えております。
 国は、今回の児童手当の見直しについて、総合的な少子化対策の一環として、子供、子育て支援の効果的な実施を図るために行うものとしていると聞いております。
 最後に、子供、子育て支援についてでございます。
 都では、第二期子供・子育て支援総合計画において、社会全体で子供と子育て家庭を支援するなどの理念を掲げ、福祉、保健、医療、雇用、教育など、様々な分野において多様な取組を推進しております。
 全ての子育て家庭が地域において安心して子育てできるよう、この計画に基づき、区市町村等と連携しながら、地域における切れ目ない支援の仕組みづくりや、子供の成長段階に応じた支援の充実など、様々な施策を展開してまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ZEVの普及と中古市場についてでございますが、都は、ZEVの購入費について、同等のガソリン車と実質負担の差がなくなるよう補助を実施し、普及を着実に進めてございます。
 現在、自動車メーカーにおきまして新たにZEVを開発、販売する動きが活発になる中、来年度は、比較的割安な軽自動車のZEVの販売も予定されてございまして、都は、補助事業の活用等によりZEVの新車販売を促進し、普及を加速してまいります。
 ZEVの新車販売の促進は、中古市場の活性化にも寄与し、ZEVのさらなる普及にもつながるという意味でも重要でございまして、都は、中古市場の動向も注視しながら、二〇三〇年乗用車新車販売一〇〇%非ガソリン化の目標実現に向け、取組を着実に進めてまいります。
 次に、急速充電器普及の取組強化についてでございますが、都はこれまで、自動車ディーラーや商業施設、マンション等に対し、施設管理者が原則負担なく充電設備を設置できるよう、導入に当たっての支援を実施し、普及を進めてまいりました。
 来年度からは、これまで補助対象外としてきた建物併設ではないコインパーキング等の駐車場も新たに補助対象とするとともに、都有施設への設置を加速するなど、普及を拡大してまいります。
 道路上の充電設備の設置につきましては、関係機関と連携しながら、課題の整理等、検討を進めていくこととしており、今後とも、充電設備の設置可能なスペースを最大限活用しながら、その導入を加速してまいります。

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