令和四年東京都議会会議録第三号

○副議長(本橋ひろたか君) 六十番加藤雅之君。
   〔六十番加藤雅之君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○六十番(加藤雅之君) 初めに、防災対策について質問します。
 東京では、人口や資産が集中するエリアを荒川などの大河川に加え、神田川や石神井川などの中小河川が流れており、古くからこれまで多くの水害に襲われてきました。
 その後、都の中小河川整備に加え、国の荒川放水路などの河川整備が進み、被害は大きく減ってまいりましたが、近年、全国各地で大規模な水害が発生し、甚大な被害をもたらしていることを考えると、首都東京を守るためにも、早急に河川の安全度を高める必要があります。
 そのためには、洪水を安全に流下させる河道整備を進めることが大切ですが、整備には多大な時間を要するため、早期に安全度を向上させることが可能な調節池の整備が効果的です。
 加えて、長期にわたりますが、調節池を広域的に連結する地下広域調節池を併せて拡大、延伸していくことがより大きな効果をもたらします。
 このため、都議会公明党は、都議選の公約の一つとして、豪雨に備える調節池の増設を掲げています。
 そこで、都民の命と財産を守るため、都は国と連携し、調節池の整備をより一層推進していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、都議会公明党は、静岡県熱海市の盛土崩落事故を受け、昨年第三回定例会の代表質問で、盛土による土砂災害の未然防止について質問し、都は盛土総点検を行い、危険な盛土の存在が判明した際には、各法令に基づき、速やかに対応策を検討する旨答弁しました。
 そこで、都における盛土総点検の結果と現在の対応状況について見解を求めます。
 次に、国は宅地造成等規制法を改正し、危険な盛土を全国一律の基準で包括的に規制し、安全性の確保、責任の所在の明確化、実効性ある罰則の措置を盛り込む準備を進めています。
 都議会公明党は、盛土による土砂災害の未然防止に向け、現行の法制度で十分対応できない事柄について検討を求め、都は、関係局から成る会議体を早期に設置し、検討していくことになりました。
 都は、国の法改正の動向を把握し、国へ積極的に提言し、さらに、都独自の対策を打ち出すべきであります。都の見解を求めます。
 次に、二〇二〇大会の3Rについて質問します。
 同大会では、使用済携帯電話などに含まれる希少金属を再利用して、メダルやトーチを製作しました。また、選手村ビレッジプラザでは、日本各地の木材を提供してもらうなど、環境に優しい取組に注目が集まりました。
 都議会公明党は、二〇一七年の第二回定例会代表質問で、大会を3Rの視点で推進すべきと訴え、また、オリンピック・パラリンピックの特別委員会では、選手村宿泊棟で利用した給湯器などを都営住宅の建て替え時や修繕の際に活用すべきと提案しました。
 そこで、ビレッジプラザの木材や宿泊棟の給湯器などの再利用の取組について、都の見解を求めます。
 次に、ZEV、ゼロエミッションビークルの推進について質問します。
 トヨタ自動車の電気自動車への本格参入により、国内においても、ZEVの導入が加速すると思われます。それには、充電設備の普及が欠かせません。都も、新年度予算案で充電設備導入を後押しするため、区市町村や民間に設置する予算を大幅に拡充しており、評価いたします。
 今後は、設置可能な場所で補助金が確実に使えるよう、制度的にきめ細かく対応しておくことが必要です。
 これまで都は、国の補助制度に準拠して、建物併設の駐車場と集合住宅のみを対象としておりましたが、コインパーキングや戸建て住宅は対象外となっています。
 また、道路上に充電設備が設置できれば、その普及に大いにつながると考えます。交通の安全性確保は大前提として、海外では一般的であり、国内でも、横浜市が公道における充電設備の実証実験を開始しました。
 そこで、EVの普及を飛躍的に拡大していくには、充電設備の設置可能なスペースをこれまで以上に活用し、その導入を加速させていくべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、私が力を入れて導入を進めてきた広告付上屋の整備について質問します。
 今ではおなじみとなった広告つきのバス停ですが、昨年末時点で都内に官民合わせて約六百八十六棟設置されています。交通局所管では三百七棟であり、このうち、官民連携方式であるパブリック・プライベート・パートナーシップ、いわゆるPPPで設置されたものが百七十一棟となりました。
 このPPPでは、交通局が予算を支出することなく民間が上屋を設置するため、コロナ禍の自動車事業の赤字経営においては貴重な取組です。また、ランニングコストである道路占用料などは一般会計として収益となります。
 都民から寄せられる上屋整備の要望はいまだに多く、今後も歩道幅員や地中埋設物などの設置課題を乗り越えながら、整備を加速していかなければなりません。
 そのためには、かねてから申し上げてきた設置場所に応じた小型のタイプも新たに認め、整備を進めるべきと考えます。
 そこで、PPPを導入したことで、これまで交通局の整備費用がどれぐらい軽減されたのか、また、小型の広告付上屋導入に向けた今後の取組について、併せて見解を求めます。
 次に、上屋の設置数を拡大するに当たっては、設置に伴う手続コストを省いていくことも必要です。二年前の予算特別委員会でも指摘しましたが、屋外広告物許可申請に係る電子申請の導入と、許可申請頻度の面では、他都市と比べると遅れているとして、簡略化を求めました。
 具体的には、広告の表示内容を二週間ごとに変更する際、都では、その都度、許可申請と手数料が必要ですが、横浜、名古屋、大阪、福岡と他の大都市では不要であり、一年から三年に一度の申請だけで済んでいます。
 シン・トセイ2における都政の構造改革では、課題を見いだし、制度や仕組みに切り込むとしております。
 そこで、屋外広告物許可申請簡略化の進捗状況と今後の取組について、都の見解を求めます。
 次に、都営住宅の自治会は、共用部分の管理や住民同士のコミュニティ活動を行っており、防災や防犯活動においても地域の中核を担っています。
 しかし、少子高齢化の中で、居住者の高齢化や世帯の単身化が進み、自治会の担い手不足や自治会活動への参加者減少など、地域としてのつながりが希薄になり、コミュニティ活動が停滞してきているとの声を聞いています。
 こうした地域コミュニティの活力低下に対応するため、全国各地では、公共賃貸住宅の空き住戸を大学と連携して、学生向けに活用する取組も行われています。
 都の公社でも、大学と協定を結び、公社住宅に学生が入居し、自治会と学生が協力してコミュニティ活動に取り組んでいます。
 私の地元墨田区にも、都営住宅の周辺に念願の大学が誘致され、大学からも自治会支援に前向きな声をいただいております。
 そこで、都営住宅においても、こうした取組を導入し、活力低下に悩んでいる団地自治会や地域のコミュニティ支援を行っていくべきと考えますが、具体的な取組について見解を求めます。
 次に、地場産業支援について質問します。
 墨田区は、印刷、金属、プラスチック、ゴム、機械、繊維、皮革など、昔からものづくりのまちとして発展してきました。中でも、皮革はリサイクルに優れた貴重な産業であり、東京の出荷額は全国の約二割を占め、兵庫県と並んで一、二位を争い、事業者の大半が墨田区に立地しています。
 都は、この皮革事業者の支援と東京の産業発展のため、皮革技術センターを設置して、製品試験や新商品開発の支援を行ってきたことは評価いたします。
 一方で、TPPやFTAの貿易自由化により、人件費の安いアジア諸国には低価格に圧倒され、高級品はヨーロッパのブランドに占有され、海外と競争していくには、よりサステーナブルな付加価値の高い製品とすることが求められています。
 このため、多くの事業者から、都有地活用での集積で効率化を高めるとともに、環境認証を取得するための設備投資などによって競争力を高めたいとの要望が寄せられています。
 そこで、都は、東京の貴重な地場産業を守り発展させるため、区市町村による地域特性を踏まえた取組を後押しするとともに、都としても、中小企業の競争力を高める取組への支援を充実していくべきと考えます。見解を求めます。
 最後に、拡幅事業中の補助一二〇号線と交差する東武伊勢崎線鐘ケ淵駅の立体化について質問します。
 補助一二〇号線は、木密地域が広がる墨田区の北部エリアにおいて、広域避難場所である白鬚東地区につながる、避難のために重要な道路です。用地取得については、一期区間は完了し、特定整備路線となった二期区間も順調に進んでおります。
 都では、この更地化された事業用地を活用し、整備後の道路をイメージしやすいように仮歩道としていますが、踏切部は、開かずの踏切が開いた瞬間に、人と車がひしめき合う状況が相変わらず続いており、接触の危険が解消されていません。早期に踏切部の安全対策を講じることが重要です。
 区としても、高齢者等の安全対策が必要なことから、都と綿密な連携を図り、踏切部の早期改善に努めたいとして、都へ対応を求めるとしております。
 そこで、道路の本整備に先立ち、仮歩道を整備するなど、早期に踏切周辺の安全対策を行うべきと考えます。見解を求めます。
 また、踏切の立体化を進めるに当たっては、都は区に対して、まちづくりの具現化を求め続けてきました。これについて、墨田区長は、昨年末行われた区議会の公明党議員の質問に答える形で、鐘ヶ淵周辺地区まちづくり計画の改定も視野に入れて、将来的なまちのイメージを描いていく必要があると考え、具体的な方向性を示していきたいと答弁しました。
 そこで、区の描くまちづくり計画の改定を見据え、鉄道の早期立体化に向けた取組を進めるべきと考えます。見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えいたします。
 調節池整備の推進についてのお尋ねがございました。
 近年、全国各地で甚大な豪雨災害が発生しております。こうした水害が東京で発生した場合、人的な被害はもとより、首都東京としての機能が麻痺するおそれがあり、その影響は計り知れません。
 そのためにも、平常時から、備えよ常にの精神で準備しておくことが重要であります。
 このため、都は、風水害への備えとして、最先端で調節池の整備を加速してまいります。令和四年度には、目黒川流域の新たな調節池の事業に着手し、将来の地下河川化も見据えつつ、環状七号線地下広域調節池と連結させまして、国内最大の地下調節池として整備をしてまいります。
 また、国に対しましては、今年度工事に着手した荒川第二、第三調節池の着実な整備を求めてまいります。
 引き続き、国と連携して、河川施設の整備を推進いたしまして、強靱な都市東京を形成してまいります。
 その他のご質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁をいたします。
   〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、盛土対策についてでございます。
 都は、熱海市における土石流災害を受け、法令のはざまとなっております課題への対応の在り方などについて検討するため、昨年十二月に、都市整備局、政策企画局、環境局、産業労働局、建設局、さらには港湾局をオブザーバーとした関係六局で、盛土のあり方検討会議を設置し、各局における現行法令の運用上の課題などを共有化するとともに、国の動きの把握などに努めてまいりました。
 国は、関係府省連絡会議の申合せを踏まえ、危険な盛土造成等を規制するための全国一律の新たな法制度の創設に向け、今期通常国会に法案を提出する予定でございます。
 都といたしましては、国の動向を見ながら、必要に応じ、適切に対応してまいります。
 次に、屋外広告物許可申請の簡略化についてでございます。
 バス停上屋広告を含め、屋外広告物の許可申請手続は、許可権者である都と区市町が書面により行っておりますが、都政の構造改革の一環として、現在、デジタル化に向け、調査検討を進めております。
 令和五年度からの運用開始を目指し、来年度はシステム開発に着手するとともに、事務の統一性の確保や効率性の向上などの観点から、区市町に対し、システムの共同化を促してまいります。
 バス停上屋広告につきましては、多くの屋外広告物とは異なる二週間ごとに広告内容を変更したいというニーズを踏まえ、事務の簡略化につきまして、許可権者である区市町と協議を行ってまいります。
 次に、補助第一二〇号線の踏切安全対策についてでございます。
 補助第一二〇号線鐘ヶ淵区間につきましては、現況幅員約八メートルから約二十メートルに拡幅する事業を進めております。
 一方で、交差する東武伊勢崎線の踏切の前後で、放射状に複数の区道が接続し、自動車車両と歩行者が複雑に交錯することから、早期の安全対策が求められております。
 そこで、鉄道事業者をはじめとする関係機関と協議を進めながら、斜めに交差する区道を踏切前後におきまして、補助第一二〇号線と直角になるように付け替えます。
 さらに、踏切近傍の用地取得済みで更地化されている箇所を活用いたしまして、人だまり空間を確保しながら、踏切内の歩行者通路を車道と分離させます。
 引き続き、踏切の安全対策に取り組んでまいります。
 最後に、東武伊勢崎線鐘ヶ淵付近についてでございます。
 鉄道立体化は、交通渋滞や踏切事故の解消とともに、鉄道により分断された市街地の一体性を高めることから、地域のまちづくりと併せて進めていく必要がございます。
 地元墨田区では、これまでに、まちづくりの基本的な計画を策定するとともに、その具体化に向けて取組が進められております。
 また、都が整備を進めております補助第一二〇号線に加え、鉄道と交差する区道につきましても、整備に向けた手続などが進められてきております。
 こうしたまちづくりの進捗状況や交差する道路整備の具体化などを踏まえ、都といたしましては、鉄道立体化に向け、地元区や鉄道事業者と調整を進めてまいります。
   〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 盛土総点検の結果とその対応についてでございますが、盛土に起因する土砂災害を防止するためには、その状況を把握し、必要な対策を実施することが重要でございます。
 都は、土地利用の規制等に関する法律や条例を所管する四局が連携し、盛土による災害防止に向けた総点検を実施しておりまして、昨年末には点検結果の暫定的な取りまとめを行いました。
 点検対象とした約千六百か所のうち、約千五百か所で点検が完了し、そのうち十六か所については、許可、届出等の内容と現地の状況が一致していないなど、是正措置が必要であることが判明いたしました。これらの箇所につきましては、現在、各法律や条例に基づき、事業者に対して是正指示等の適切な対応を行っているところでございます。
 引き続き、残る箇所の点検を早期に完了させるなど、盛土の安全性確保に向け、取り組んでまいります。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長延與桂君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(延與桂君) 選手村における3Rの取組についてでございます。
 持続可能性に配慮した大会といたしまして、大会時に使用した設備等の3Rを推進することは重要であり、選手村については、その整備前から設備等を大会後も有効利用できるよう、庁内各局等と様々な検討を行ってまいりました。
 ビレッジプラザについては、全国六十三自治体から無償で借り受けた約四万本の木材を大会後に各自治体へと返却し、それぞれの公共施設などにおいて、レガシーとして引き継がれる予定でございます。都が提供した木材についても、地元区の小中学校等において活用いたします。
 また、宿泊棟の給湯器については、都営住宅の計画的な修繕において、約三百台を活用するとともに、大会後の賃貸住宅でも再使用することとしており、こうした取組をはじめとして、選手村における3Rを推進してまいります。
   〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 充電設備の導入拡大についてでございますが、都はこれまで、自動車ディーラーや商業施設、マンション等に対し、施設管理者が原則負担なく充電設備を設置できるよう、導入に当たっての支援を実施し、普及を進めてまいりました。
 来年度からは、これまで補助対象外としていた既存の戸建て住宅や建物併設ではないコインパーキング等の駐車場も新たに補助対象とし、普及を拡大してまいります。
 さらに、道路上の設置につきましても、関係機関と連携しながら、課題の整理等、検討を進めてまいります。
 これらの取組を通じまして、充電設備の設置可能なスペースをこれまで以上に活用しながら、その導入を加速し、EVの普及を飛躍的に拡大してまいります。
   〔交通局長内藤淳君登壇〕

○交通局長(内藤淳君) バス停留所の広告付上屋に関するご質問にお答えいたします。
 交通局では、お客様の利便性、快適性の向上に向け、広告付上屋を自ら設置するほか、官民連携方式により事業協力者の負担で設置しております。この方式で整備しました百七十一棟につきまして、局自ら設置した場合の整備費用で試算いたしますと、約十億円に相当いたします。
 こうした上屋の設置には一定のスペースが必要であり、さらなる整備拡大には、狭い場所にも対応できる小型上屋の導入が効果的であると考えております。広告付上屋の仕様につきましては、都内のバス事業者から成る協議会がガイドラインで詳細な規格を定めており、小型上屋がガイドラインに追加承認されますよう、現在、関係局等と調整しているところでございます。
 来年度には、小型上屋を試行的に設置いたしまして、その効果や課題を整理するなど、引き続き導入に向けて取り組んでまいります。
   〔住宅政策本部長榎本雅人君登壇〕

○住宅政策本部長(榎本雅人君) 都営住宅におけるコミュニティ支援についてでございますが、居住者の高齢化、世帯の単身化が進む中で、団地自治会の活動や地域の活性化を図ることは重要でございます。
 今般、東京都住宅政策審議会から、大学と連携した地域コミュニティへの支援について提言がございました。
 都は、この提言も踏まえまして、都と大学で協定を結び、空き住戸の目的外使用により、団地や地域の活力あるコミュニティの形成に資するよう取組を進めてまいります。
 具体的には、大学の近隣の都営住宅に入居した学生が団地の自治会が行う防災訓練や地域住民との交流等に協力するなど、その活動を支援する仕組みを整えます。
 来年度からこうした取組を開始できるよう、まずは地域への貢献に関心のある大学などと協定締結に向けた協議を進めてまいります。
   〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 地域産業への支援についてでございますが、東京の経済を支える地域の様々な産業の発展に向け、地元の実情に詳しい区市町村の取組を適切に支援することは重要でございます。
 このため、都は、区市町村が地域の特性等を踏まえて作成する産業振興の計画を実行する場合に必要となる経費について、最長三年間にわたる支援を行っているところでございます。
 また、地域で事業を展開する中小企業の競争力を高める取組を個別に支援していくことも必要でございます。
 このため、来年度は、中小企業が競争力の強化に向け、生産性の向上や新たな事業展開のため設備を導入する経費への支援の規模を大幅に拡充いたします。
 こうした取組によりまして、地域産業を支える中小企業の事業活動を適切にサポートしてまいります。

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