令和三年東京都議会会議録第二十三号

○議長(三宅しげき君) 五十三番西崎つばさ君。
〔五十三番西崎つばさ君登壇〕

○五十三番(西崎つばさ君) 都議会立憲民主党の西崎つばさです。
 私は、真に公正、公平な社会と、誰もが自分らしく生きていくことのできる東京を目指す決意を持って、以下、私にとりましては初めての、本日の会議におきましては最後の一般質問をさせていただきます。
 初めに、ジェンダー平等について伺います。
 世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数において、日本は百五十六か国中、百二十位と低迷が続き、全国的な課題となっていますが、この中で、首都東京における初の女性知事が二期目に取り組まれていることの意味は、決して小さくないと考えます。
 そこでまず、これまで知事が進めてこられた、また、これからも進めていかれるジェンダー平等施策の展開について伺います。
 また、我が会派から提案を続けているジェンダー予算に関連して伺います。
 あらゆる予算編成や事務事業が、ジェンダー平等の視点から点検されることは極めて重要です。
 例えば、都は本年四月に新たな交通安全計画を策定しましたが、運転免許の保有率は、全世代において、とりわけ高齢世代ほど男女差があります。
 また、一般財団法人自転車産業振興協会の調査報告によれば、自転車の利用時に車道を走行する割合は、女性の方が低いことが明らかになっています。こうした違いは、果たして考慮されているでしょうか。
 このように、様々なところに潜む性差を捉えて公平な施策を進めるためには、ジェンダー主流化の概念を職員一人一人が理解することが大前提となります。
 そこで、ジェンダー平等に向けた職員への研修等について、都の取組状況を伺います。
 さらに、ジェンダー平等は、女性だけでなく、男性も積極的に取り組むべき問題でありながら、なかなかその機運が高まらないのが課題となっています。
 そうした中で、男性の生きづらさや葛藤に焦点を当てた男性学という学問に注目が集まっています。終わりのない競争に勝ち抜くことを強いられ、辛くても弱音を吐くことや他人に頼ることをよしとされないなど、男性をめぐるジェンダーステレオタイプは、これに適合できない者を苦しめ、相対的に高い自殺率に結びついているとの指摘もあります。
 こうした認識を男性自身が持つことは、ジェンダー施策への関心を高める一助になると考えます。
 ただ、大切なのは、男女どちらかが得か損かと捉えることではなく、多様な性も含め、誰もが自分らしく生きられる社会を実現することであり、誰もが当事者であると理解することです。
 そこで、ジェンダー平等実現のためには、男性がより当事者意識を持って関わることが重要であると考えますが、所見を伺います。
 関連して、性別固定的な役割を見直す観点から、男性職員の育休取得について伺います。
 本年六月の育児・介護休業法の改正もあり、家庭での男性活躍推進がさらに加速することを期待しておりますし、都もこれまで、男性の育休取得を推進してきたことは承知をしております。
 そこで、この分野に関して非常に先進的な千葉市の取組を見てみますと、男性職員は基本的に育休を取得するものとし、しない場合に理由を申告するという方式、いわば育休取得をデフォルト化、初期設定化するという特徴的な仕組みによって、二〇一九年度の取得率は九二・三%と圧倒的な数字を記録しています。これは、人々の行動変容を促すナッジの理論にも通じる取組といえます。
 こうした事例も参考に、男性職員の育休取得率の大幅な向上を目指していくべきと考えますが、所見を伺います。
 ここからは、子供施策について伺います。
 さきの定例会では、我々を含む多数の会派から子供施策の専管部署に関する言及があり、今回の知事の所信表明でも組織再編に触れられておりました。ぜひ、具体的な検討をお進めいただきたいと思いますが、同時に考えるべきは、専門家による独立した人権擁護機関の設置をはじめとした、子供の権利擁護の体制構築です。
 組織改革が検討されつつある今こそ、先行して子供の声を反映する取組の強化が必要であると考えますが、子供に寄り添い、その権利を保護、促進することについて、都の取組状況を伺います。
 次に、子供の安全を守る観点から、事故予防についてお聞きします。
 本年、都内の陸橋において、階段部分の欄干と通路部分の欄干がそれぞれ基準を守って設置されていたにもかかわらず、その接合部において、子供が擦り抜けられる程度の隙間があり、応急措置により隙間を塞ぐことで、安全を確保した事例がありました。
 都が管理する橋梁においては、五年に一度の定期点検を行っているかと思いますが、その際には、構造物としての健全性のみならず、こうした危険箇所も併せて見抜けるような実施を心がけるべきと考えます。
 そこで、安全の観点からの橋梁の点検について所見を伺います。
 子供の事故予防は、科学的、客観的な根拠に基づき、時代に応じて見直していかなければなりません。
 ここで、子供の水難事故の状況を見てみると、件数は二十年近く、死者数も五年ほど横ばいで推移しており、年々減少傾向にある交通事故とは対照的となっています。
 一方で、海中に転落したときの生存率は、ライフジャケットの着用の有無で大きく変わるというデータが国土交通省や海上保安庁から示されていることなどから、近年その重要性が指摘されており、消費者庁も、子供が水辺で遊ぶ際の着用を呼びかけています。
 また、都の生活文化局では、二〇一九年、子供用ライフジャケットの安全な使用に関する調査を行っており、活動内容別の着用率に大きな差があることなどを明らかにしています。
 学校の教育現場に関しては、独立行政法人日本スポーツ振興センターが発行する学校における水泳事故防止必携の最新版が、ライフジャケットの有用性を体験させる指導の意義を示すとともに、全ての水辺での活動における着用が必須であると指摘しています。
 さらに、来年度に向けたスポーツ庁の概算要求においては、ライフジャケット活用などの指導モデル研究を行うため、都道府県教育委員会と連携した事業の実施が想定されています。
 一方で、ライフジャケットを着用させないことには、事故発生時の引率者の訴訟リスクが伴います。二〇一二年、愛媛県西条市の私立幼稚園において、川遊びの最中に鉄砲水に流された男児が亡くなってしまうという大変痛ましい事故が発生しましたが、司法はライフジャケットを着用させる義務があったと認定し、当時の園長に対する業務上過失致死傷罪が確定しています。
 そこで伺いますが、特に小中学校の校外活動などにおいて、川や海などで活動する場合にはライフジャケット着用を必須にすべきと考えますが、見解を求めます。
 同様に、ライフジャケットの使い方や効果、重要性に関する指導を実施することについて、所見を伺います。
 続いて、あらゆる子供の死亡事例を検証し、その予防策を導き出す仕組みであるチャイルド・デス・レビュー、CDRについて伺います。
 昨日、他会派の代表質問においても議論がありましたが、もはやCDRは実装段階が迫っており、早急に体制構築を進めるべきと考えますが、都の取組状況について改めて伺います。
 最後に、環境分野についてお聞きします。
 もはや持続可能性という言葉は、現代のあらゆる分野におけるキーワードといえますが、それは化学物質においても同様です。
 特に、近年問題視されているのが、PFASと呼ばれる四千七百種類もの合成化学物質群であり、フッ素と炭素の強力な結合により、極めて分解されにくい特徴から、フォーエバーケミカル、永遠の化学物質と呼ばれています。
 このうち、PFOSやPFOAについては、都の水道から高い数値が検出されたことが問題となりましたが、その他のPFASも今なお、フライパンのコーティングや水をはじく衣服の生地、食品の紙包装など幅広い製品に使われています。
 しかし、自然界で分解されるのには数千年を要するといわれていることから、環境残留性や生体蓄積性の問題があることに加え、疾患をもたらす疑いや、さらには免疫系を阻害し、子供のワクチン効果を減退させる可能性が指摘されていることなどから、米国やEUでは、具体的な規制を設ける動きが出てきています。
 民間でも、昨年十二月にはアマゾン、今年の一月にはマクドナルドが、全ての食品の包装や容器からPFASを全廃していくと発表しました。ESG投資の観点からすると、今後は国内企業や都の金融戦略にも影響を及ぼす可能性があり、動向を注視する必要があります。
 このように、世界的にPFASに対する規制強化が進められつつありますが、肝となるのは化学物質の領域においても、やはり持続可能性を追求することであると考えます。
 そこで、環境負荷を減らすための、いわゆるグリーンサステーナブルケミストリーについて、都の所見を伺います。
 また、PFASに関する規制が進んでいくと、化学物質を扱う製品の製造や販売に携わっている都内事業者が海外と取引を行う場合、新たな規制やルールに対応することが難しくなるケースも想定されます。
 そこで、現在、中小企業の輸出等に際して、諸外国の規制などへの適合支援を、都立産業技術研究センターがどのように行っているのか伺います。
 以上、私からの質問とさせていただきます。ご答弁のほど、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 西崎つばさ議員の一般質問にお答えいたします。
 ジェンダー平等施策についてのお尋ねがございました。
 全ての都民が性別に関わりなく、その個性と能力を十分に発揮できる社会づくりは重要であります。
 知事就任以来、女性の活躍推進を都政の重要課題と位置づけまして、待機児童対策、女性起業家の支援、都の審議会の女性委員の任用促進など、様々な施策を積極的に展開をしてまいりました。
 今後も、誰もが生き生きと活躍できる社会の実現を目指しまして、取り組んでまいります。
 残余のご質問につきまして、教育長及び関係局長からの答弁といたします。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、ライフジャケットの着用についてでございますが、学校は、校外学習において川や海などで活動する場合には、水難事故防止のために活動内容を限定するなど、安全対策を講じております。
 例えば、河原で活動する際に水につからないことや、海で磯遊びをする際に、水に入るのはくるぶしの深さまでにするなどのルールを設定し、子供が安全に活動できるようにしております。また、船の上での活動の際は、子供にライフジャケットを着用させております。
 今後とも、学校が水辺での教育活動を行う際、活動に応じた安全対策を徹底できるよう、都教育委員会が作成している指導資料等を通じて、学校の取組を支援いたします。
 次に、ライフジャケットの使い方等の指導についてでございますが、都教育委員会は、河川やその周辺の危険情報、ライフジャケットの正しい着用の仕方が示されている国のリーフレット等を、区市町村教育委員会を通じて各学校に配布をいたしております。
 各学校ではこれらの資料を参考に、夏休み等の過ごし方についての指導などの際に、例えば、水辺で活動する際には、周辺の安全を確認するとともに、ライフジャケットを正しく着用すること、天候が急変した場合には、速やかに避難することの大切さを子供に伝えているところでございます。
〔総務局長村松明典君登壇〕

○総務局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、男女平等参画に関する研修についてですが、都はこれまでも、男女平等参画を含めた人権意識の醸成を職員研修における重点事項として位置づけまして、全ての職員を対象として研修を実施しているところでございます。
 研修におきましては、基本的な知識を習得するための講義に加えて、具体的な事例を取り上げて職員同士が意見交換する演習を行うことにより、人権課題に対する理解促進を図っております。
 今後とも、こうした取組を通じまして、職員の男女平等参画に関する意識をより一層高めてまいります。
 次に、男性職員の育児休業取得促進についてですが、都はこれまでも、全ての管理職がイクボス宣言を行い、所属長は配偶者の妊娠が判明した男性職員に対して、面談を行うなどの取組を実施してまいりました。
 令和二年度からは、休暇、休業の取得を前提とした働きかけを強化するため、合計一か月以上を目途とした取得を勧奨するとともに、申請がない場合は、その理由を確認した上で取得を促しております。
 また、職場全体で休業期間中の業務計画を策定するなど、取得しやすい職場環境づくりに取り組んでいるところでございます。
 今後とも、職員が周囲に気兼ねなく育休等を取得できる機運醸成を一層促進し、男性職員の育児休業取得率の向上を目指してまいります。
〔生活文化局長武市玲子君登壇〕

○生活文化局長(武市玲子君) ジェンダー平等の実現についてでございますが、日常生活の中で、固定的な性別役割分担意識が根強く残っている現状を解消することは重要でございます。
 このため、都は、夫婦等が共に家事、育児の分担について考えるきっかけとなるシンポジウムなどを開催するなど、意識啓発に努めてまいりました。
 今後も、男女が対等な立場であらゆる活動に共に参画できるよう取り組んでまいります。
〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、子供の権利擁護についてであります。
 都は、子供・子育て支援総合計画に基づき、子供の権利擁護専門相談事業を実施しており、子供本人から、いじめ、虐待、体罰など様々な悩み事について相談を受けております。
 年間千件以上の相談があり、深刻なものについては弁護士等の専門員が子供本人と面接の上、学校や関係機関を直接訪問し、中立的な立場で調査するなど支援を行っております。
 引き続き、区市町村や学校など関係機関とも連携しながら、子供の権利擁護に取り組んでまいります。
 次に、チャイルド・デス・レビューについてであります。
 チャイルド・デス・レビューは、子供の死亡事例について、社会的背景や環境要因等を分析、検証することで、将来に向けた予防につなげるものであります。
 国は、検証制度の構築に向け、令和二年度からモデル事業を実施しており、都は、この状況を把握するとともに、今後、どのような体制で取り組むべきか、区市町村や関係機関等の意見も聞きながら検討してまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 橋梁の点検についてでございますが、橋梁は、河川などで隔てられた地域を結ぶ重要な都市基盤施設であり、適切な維持管理により、常に良好な状態に保つ必要がございます。
 都は、全ての橋梁を対象に、日常点検や五年ごとの定期点検を実施し、必要な維持補修を速やかに実施しております。点検に当たりましては、点検要領に基づき、各部材の健全性や安全性を確認しております。安全性をさらに高めるためには、子供など様々な利用者の目線で、部材の接合部などの状況を的確に把握していくことが重要でございます。
 今後は、こうした認識について関係職員で共有し、点検の精度を高めることにより、誰もが安心して利用できる橋梁の保全に努めてまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) グリーンサステーナブルケミストリーについてでございますが、化学物質のライフサイクルにおいて、人体及び環境への負荷を低減しようとするグリーンサステーナブルケミストリーの視点を踏まえた取組は重要でございます。
 国は、法律による規制等に加え、平成二十四年に国際的な化学物質管理に係る戦略的アプローチの実施計画を定め、ライフサイクル全体にわたる管理等に取り組んでございます。
 都では、平成十三年から、環境確保条例による化学物質適正管理制度に基づき、国の制度よりも対象事業者を広げ、化学物質の使用実態の把握や適正管理及び削減に向けた自主的な取組を促進してございます。この結果、使用量の大幅な削減や有害性の少ない物質への代替が進んでおります。
 今後とも、持続可能な社会の実現に向けて、化学物質による環境リスクの低減に努めてまいります。
〔産業労働局長坂本雅彦君登壇〕

○産業労働局長(坂本雅彦君) 製品輸出に係る海外の規制への対応についてですが、都立産業技術研究センターでは、中小企業が製品を輸出する際に、海外の国や地域が定める規制等に適合できるよう、試験研究機関を持つ近隣の十一の県や市と協力して、幅広く受付体制を設けて支援を行っております。
 具体的には、中小企業からの申出に応じて、海外でのルールに詳しい専門家が、国や地域によって異なる様々な化学物質の規制等に関してきめ細かい相談を行うほか、規制に適合しているかを試験し、その結果を証明することで、中小企業の海外展開のサポートをしているところでございます。
 引き続き、こうした取組によりまして、中小企業の製品輸出の後押しを行ってまいります。

○議長(三宅しげき君) 以上をもって質問は終わりました。

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