令和三年東京都議会会議録第二十三号

   午後五時五分開議
○議長(三宅しげき君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四番吉住はるお君。
〔四番吉住はるお君登壇〕

○四番(吉住はるお君) 二年近くに及ぶコロナ禍は、多くの様々な都民の生活に大きな影響を及ぼしてきました。そのような状況下、私は、地域の中で、特に高齢者を取り巻く課題は深刻化しつつあると懸念しています。
 新型コロナ感染予防の自粛生活により、終日家に閉じ籠もって過ごすことが多かった高齢者は、食生活が乱れ、人と話すことが少なくなり、身体や認知機能が低下するケースが多く見られます。
 都が本年八月に出された未来の東京の実現に向けた重点政策方針二〇二一、政策の強化の方向性、戦略7、誰一人取り残さないサポートプロジェクト等では、実態把握を通じ、それぞれの属性や状況に応じた取組を強化するとしています。
 そこでまず、都では、コロナ禍における高齢者の現状をどのように捉えているのか。また、いわゆるコロナフレイルの増加が懸念される中で、これまでのフレイル予防の取組を一層強化充実する必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 今後、東京都では、高齢世帯は増加し続け、とりわけ高齢者の一人暮らし世帯は大幅に増えることが予想されています。また、コロナ禍は、地域の見守り活動などにも悪影響を及ぼしており、孤立化している高齢者が増えています。今後、都では、AIを活用した高齢者の見守りを都営住宅で実施し、拡大していくとしており、評価しておりますが、見守りを必要としている高齢者は、都営住宅以外にも多くいらっしゃいます。
 現在、都では、高齢者などのデジタルに不慣れな方への対応として、スマートフォン教室の開催などを開始し、今後、区市町村と連携したモデル事業を展開するとしています。
 高齢者がスマートフォンなどに関心を持つ動機づけとしても、遠く離れた親族とつながれる見守りアプリなどを含め、高齢者の見守りにデジタル技術を一層活用すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 コロナ禍で孤立し、日々の生活で孤独感を抱いている高齢者の気持ちを悪用した特殊詐欺は、許しがたい卑劣な犯罪であり、被害件数も再び増加傾向にあると聞いています。
 その一方で、いたちごっこの様相を呈している特殊詐欺への対策は、区市町村単位で対応するには限界があり、警視庁や東京都で広域的に取り組むべき課題だと認識しています。
 そこで、いまだ収束が見通せない特殊詐欺の現状と今後の取組について警視総監に伺います。
 特殊詐欺では、犯行に利用された電話のほとんどが固定電話であり、固定電話で直接応答せずに済む自動通話録音機は、詐欺被害防止に効果があるものと考えます。その自動通話録音機の設置促進に向けた区市町村への補助事業が今年度で終了するとのことです。
 そこで、都における自動通話録音機設置促進事業への評価と特殊詐欺被害防止に向けた今後の都の取組について伺います。
 健康長寿社会の実現へ向けた健康づくりの取組は、高齢者のみならず、全ての都民が将来にわたって元気に安心して暮らし続ける上でとても重要です。
 都は平成二十五年三月に、健康推進プラン21(第二次)を策定し、都民の健康づくりを支援してきました。しかし、全体的には、都が主に区市町村の取組を後方支援する事業が多く、都が前面に出て取り組む事業が少ないように感じます。
 私の地元新宿区では、野菜のヤにちなんで、毎月八日をしんじゅく野菜の日として、区内の学校、事業所などの給食施設やスーパーマーケットなどと連携して情報発信を行うなど、手軽に野菜を取ることができる食環境づくりに取り組んでいますが、スーパーマーケットなどの民間事業者では、区という範囲だけでは、なかなか業務運営上、協力が困難なケースも多く、意欲があっても、協力に応じるのは一部の事業者にとどまっているのが現状です。
 また、現在、都内の自治体が取り組んでいる健康ポイント事業についても、それぞれの自治体が類似の事業をばらばらにシステム構築し、運営していくことは非効率な場合も多く、また、ウオーキングなどの健康づくりは、職場などで友人同士などが情報共有することで意欲が高まり、効果が高まると考えられます。
 区市町村による健康づくりも重要ですが、流動人口の多い東京においては、健康づくりの大切さを都民の共通認識にするとともに、取組の分かりやすい効果検証を行っていく上でも、都が前面に出て、区市町村を横串で通すような取組も必要だと考えます。
 これまで知事は、国に先駆けて受動喫煙防止に取り組むなど、都民の健康づくりに積極的に取り組んでこられました。コロナとの闘いが長期化している今、健康長寿社会への実現に向けて、東京都の主体的な取組が一層重要になっていると考えますが、知事のご所見を伺います。
 次に、連続立体交差事業について伺います。
 連続立体交差事業は、数多くの踏切が同時になくなり、踏切遮断による交通渋滞や踏切事故が解消するなど、踏切問題の解決につながるものです。
 こうしたことから、都内の各鉄道沿線で連続立体交差事業が進み、現在、西武新宿線においても、中井駅から野方駅の区間や東村山駅付近で、連続立体交差事業が行われています。また、井荻駅から西武柳沢駅の区間で、本年十一月に、新たに連続立体交差事業の都市計画が定められ、さらには、野方駅から井荻駅の区間でも、連続立体交差事業に向けた取組が進んでいます。
 しかし、西武新宿線高田馬場駅から中井駅の区間では、連続立体交差事業の都市計画が昭和四十五年に決定されたにもかかわらず、事業は進展せず、現在に至っています。
 現在、高田馬場駅から西側の新宿区内の踏切は十四か所全て、いわゆる開かずの踏切となっており、このうち下落合駅西側直近の上落中通りの踏切は、ピーク時の遮断時間が一時間のうち五十分にも及び、多くの都民の日常の暮らしや災害時の活動にとって大きな課題となっています。
 そのような中、混雑緩和などを目指し決定していた西武新宿線の複々線化の都市計画が、事業費の高騰などにより、西武鉄道が延期表明したことなどから、本年十一月に廃止されました。複々線化の計画が廃止されると、今までどおり全ての電車が地上を走ることになり、開かずの踏切は残ったままとなるため、連続立体交差事業の必要性がこれまで以上に増えていくと考えます。西武新宿線沿線全体において、バランスよく連続立体交差事業を実施し、開かずの踏切対策、快適な道路交通の実現を図ることが望ましいと考えます。
 この高田馬場駅から中井駅の区間での開かずの踏切対策として、連続立体交差事業の実施に向けた検討を行うべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、災害から都民を守る道路整備について伺います。
 都民の生命、財産を守り、行政やインフラなどの重要な機能を維持するためには、防災、減災の取組の加速化、深化を図り、災害に屈しない強靭なまちづくりを進める必要があります。
 幹線道路ネットワークの整備は、災害などによる障害発生時において、一部の区間の途絶などが全体の機能不全とならないよう、避難路やライフライン施設の多重化に不可欠です。首都直下型地震など災害への備えとともに、災害から都民を守る道路整備の推進に向けた都の取組について伺います。
 十月七日の夜に発生した千葉県北西部を震源とする地震では、都内の一部のターミナル駅周辺で帰宅を急ぐタクシー待ちの長い列が発生するなど、改めて帰宅困難者が注目されることとなりました。
 都は、東日本大震災の発生から十年が経過した状況を踏まえ、今年五月に新たに検討会議を設置し、今後の帰宅困難者対策の方向性について、現在検討を進めています。また、国においても、先月、帰宅困難者対策の在り方について検討を行う委員会が新たに設置されたところです。
 帰宅困難者対策は、いうまでもなく、国や都、それぞれ地域の自治体が中心となって進めていくことが必要です。しかし、これら行政による公助だけではなく、個人や企業などによる自助や共助も含め、社会全体で取り組むことがとても重要です。
 例えば、大規模地震などの発生時には、地元の町会、商店街や駅前滞留者対策協議会などと地域に存在する中小企業が連携して、帰宅困難者の誘導などを行うといった対応も必要になってくると思われます。
 今後、帰宅困難者対策をさらに進めていくため、中小企業など地域の事業者に協力を促していくことも必要と考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、東京港の水域の有効活用について伺います。
 東京港では、貨物輸送を担うコンテナ船や旅客輸送を担うクルーズ船など、多くの大型船が往来し、船舶の停泊や入出港のため、港内の水域を利用しています。
 また、港湾工事に使用する工事作業船など、港湾の活動を支える小型船も水域を利用し、船舶を係留しています。
 特に工事作業船については、今後、中央防波堤外側地区などで高規格コンテナターミナルを整備する際も、工事を円滑に進める上で重要な役割を担っていくことになりますが、事業者からは、係留場所が十分に確保できていないという状況も聞いています。
 また、東京港内では、物流構造の変化などにより、十分に活用されていない水域も見受けられ、工事作業船など一部の利用者からは、こうした地域を利用したいという声も上がっています。
 そこで、東京港の機能強化を進めていく上でも、東京港を支える様々な利用者のニーズを酌み取りながら、東京港全体を俯瞰し、水域の有効活用を図っていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 以上で質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 吉住はるお議員の一般質問にお答えいたします。
 健康づくりの推進についてのお尋ねがございました。
 誰もが生涯にわたり健やかで心豊かに暮らすには、都民一人一人が主体的に取り組む健康づくりを社会全体で支援することが重要であります。
 都は、東京都健康推進プラン21に基づきまして、生活習慣病の予防や生活習慣の改善に向けた取組を区市町村や企業などと連携しながら進めておりまして、その中で、地域での健康づくりの取組の紹介であったり、企業などと連携した普及啓発など、都民に直接働きかけているところでございます。
 様々な制約があるコロナ禍でありましても、デジタル技術の活用などの工夫によって、都民の主体的な健康づくりを後押しし、広域的、効果的な施策を推進することで、誰もが元気で心豊かに自分らしく暮らす、まさに長寿社会の実現を目指してまいります。
 その他のご質問は、警視総監、東京都技監及び関係局長からのご答弁といたします。
〔警視総監大石吉彦君登壇〕

○警視総監(大石吉彦君) 特殊詐欺の現状と今後の取組についてでありますが、都内における特殊詐欺の認知件数は、本年十一月末現在で、既に昨年一年間の件数を上回っているなど深刻な状態にあります。特に、被害者をATMへ誘導して送金させる還付金詐欺、この被害が昨年に比べ増加をしております。
 こうした中、警視庁では、還付金詐欺被害を水際で食い止めるべく、金融機関と連携し、ATMコーナーでは携帯電話の通話をしない、させない、このことを社会のルールとして定着を図るストップ!ATMでの携帯電話運動を強力に推進しているところであります。
 また、被害者となりやすい高齢者のみならず、子供や孫世代を含めた防犯意識の向上を図るため、あらゆる媒体を活用した広報啓発によりまして、家族ぐるみで特殊詐欺被害を防止する環境づくりの促進を図っております。
 このほか、警視庁犯罪抑止女性アドバイザーの高齢者宅への直接訪問による、留守番電話機能の活用方法の教示をはじめとした防犯活動を推進しております。
 警視庁といたしましては、引き続き関係機関と連携し、特殊詐欺の被害を一件でも減らすための対策を強力に推進してまいります。
〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 西武新宿線高田馬場駅から中井駅間についてでございます。
 本区間では、十一か所全ての踏切が開かずの踏切となっておりまして、踏切対策の重要性につきましては、都としても認識しております。
 連続立体交差化等の鉄道立体化につきましては、地域におけるまちづくりと大きく連動することから、地元区が主体となり、地域の将来像や鉄道立体化を契機としたまちづくりの方針等を検討する必要がございます。また、交差する都市計画道路の整備計画と整合を図る必要もございます。
 このため、地元新宿区が今後設置予定の踏切対策や沿線まちづくりに関する勉強会に都も参画いたしまして、技術的な助言を行うなど、区の取組に都も協力してまいります。
 引き続き、地元区や鉄道事業者と連携し、踏切対策を着実に推進してまいります。
〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、高齢者のフレイル予防についてです。
 都はこれまで、介護予防・フレイル予防推進支援センターを設置し、身近な地域で住民主体の通いの場の拡充を図るため、区市町村に対し、人材育成や専門相談などの支援を行ってまいりました。
 しかしながら、コロナ禍における外出自粛等の影響により、高齢者の心身機能の低下や交流機会の減少などが危惧されておりまして、都の昨年度の調査でもそうした事例が確認されております。
 このため、今年度は新たに、オンラインで仲間と一緒に行う体操や趣味活動などを支援する区市町村への補助を開始しております。既に十三区市で取組が進んでおりまして、これに加え、六区市町村も実施を予定しております。
 今後とも、区市町村と連携し、高齢者の介護予防、フレイル予防の一層の推進に向け取り組んでまいります。
 次に、デジタル技術を活用した高齢者の見守りについてであります。
 都では、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、センサーなどのデジタル機器を活用した見守りの仕組みづくりに先駆的に取り組む区市町村を支援しております。
 また、今年度からは、町会、自治会等の見守り活動などにデジタル技術を活用できるよう、区市町村の補助基準額を引き上げるとともに、新たに、高齢者のデジタルデバイドの解消やQOLの向上を図るため、先駆的、分野横断的に取り組む区市町村への支援を開始しております。
 今後とも、デジタル技術も活用した地域での高齢者の見守りに取り組む区市町村を支援してまいります。
〔都民安全推進本部長小西康弘君登壇〕

○都民安全推進本部長(小西康弘君) 特殊詐欺被害防止対策に関するご質問にお答えします。
 都は、平成二十八年度から自動通話録音機設置促進補助事業を開始し、区市町村と連携して、これまでに累計約十四万台の自動通話録音機を設置してまいりました。その結果、多くの自治体で自動通話録音機の設置事業が創設されるなど、対策を前進させる効果があったものと考えております。
 一方で、特殊詐欺の手口は巧妙化しており、また、防犯対策の必要性を十分に認識いただいていない高齢者も多いことから、今後は、高齢者の方が被害に遭う危険性をより実感できる取組を検討し、さらに啓発を進めてまいります。
 また、受け子、出し子といった犯罪に若者等を加担させないよう、加害者向け対策も強化してまいります。
 こうした取組を通じまして、被害、加害の両面から、より実効性ある特殊詐欺対策に取り組んでまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 道路整備の推進についてでございますが、道路は、交通、物流機能の強化はもとより、災害時のリダンダンシーを確保し、避難や救急救援活動を担う極めて重要な都市基盤でございます。
 こうした認識の下、都は骨格幹線道路ネットワーク等の整備を推進しておりまして、例えば環状第四号線では、新宿区余丁町から河田町までの約三百三十メートルの区間を来年春を目途に交通開放し、地域の防災性などを向上させます。
 また、千葉県境の補助第一四三号線では、広域的な防災機能の向上を図るため、旧江戸川をまたぐ橋梁整備につきまして、千葉県と役割分担等を定める基本協定を年内に締結し、令和四年度の事業着手に向けて取り組んでまいります。
 引き続き、都民の生命と財産を守る道路整備に全力で取り組み、首都東京の防災力を一層強化してまいります。
〔総務局長村松明典君登壇〕

○総務局長(村松明典君) 帰宅困難者対策についてですが、発災時の帰宅困難者の安全を確保するためには、平時から中小企業等の事業者と協力した取組が重要でございます。
 都はこれまで、地元企業も参加する協議会の場やハンドブックの配布等を通じ、事業者に対して、一時滞在施設の確保や従業員以外の備蓄等について協力を呼びかけてまいりました。
 また、今年度設置した帰宅困難者対策に関する検討会議では、事業者とのさらなる連携を図るため、東京商工会議所に委員として参加いただき、今後の対策の方向性について意見交換を行っているところでございます。
 今後、当該会議における検討結果の報告も踏まえて、一時滞在施設の確保や帰宅困難者の誘導など、地域事業者の協力を一層促すための方策を具体化してまいります。
〔港湾局長古谷ひろみ君登壇〕

○港湾局長(古谷ひろみ君) 東京港における水域の有効活用についてでございますが、多くの船舶が行き交う東京港において、港湾施設の整備を支える船舶が係留できる水域を適切に確保することは、港湾機能の強化と港内の秩序維持の両立を図る上で重要でございます。
 これまで都は、貨物船等の円滑な航行に配慮しつつ、限られた水域の中、作業船等の係留水域を確保してまいりました。
 近年、東京港では、取扱貨物の変化等により、港内の各水域の利用ニーズも変わりつつあることから、狭隘な東京港のエリアの適切な活用に向けては、水域施設の集約化や利用転換を図ることが課題となっております。
 今後とも、都は、東京港全体でのバランスに配慮しつつ、利用者の意見や周辺の土地利用動向も踏まえて、有効な水域活用策について検討を進めてまいります。

ページ先頭に戻る