令和三年東京都議会会議録第二十三号

○副議長(本橋ひろたか君) 十九番たかく則男君。
〔十九番たかく則男君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○十九番(たかく則男君) 初めに、医療的ケア児への支援について質問いたします。
 医療的ケア児とは、人工呼吸器や胃瘻等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童のことで、全国では推計約二万人、都内でも約二千人いるといわれております。
 医療的ケア児に対する支援法は、平成二十八年に児童福祉法の改正で第一歩がスタート。今年六月に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が制定されました。
 この法律は、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資すること、安心して子供を産み育てることができる社会の実現に寄与することを目的としており、医療的ケア児の日常生活、社会生活を社会全体で支援すること、そのための国、地方公共団体の責務、保育所や学校の設置者等の責務が明確に示されました。
 まず、医療的ケア児の通学費支援についてです。
 都立特別支援学校の医療的ケアについては、これまで都議会公明党の要望を踏まえ、人工呼吸器の管理や胃瘻からの初期食注入など、着実に取組が進められてきました。
 また、医療的ケア児の通学は、今まではスクールバスの乗車対象外とされ、保護者が送迎しておりましたが、都議会公明党の提案を受け、新たに乗車看護師、車両を確保し、二〇一八年度から専用通学車両の運行が開始されました。当初八校、十四コースの運用開始から、今年九月には十七校、七十二コースまで拡大してきたことには高く評価いたします。
 しかし、医療的ケア児の保護者からは、専用通学車両に乗車できるようになるまでの間、学校への付添いに必要となる費用への支援について、切実な要望が寄せられております。
 現在、都では、通学が難しく、自宅等で教員の訪問により指導を受けている生徒については、スクーリング時に利用した福祉タクシーの交通費を支援しています。
 そこで、この交通費への支援を、学校に通学している医療的ケア児にも広げるべきと考えます。都教育委員会の見解を求めます。
 次に、医療的ケア児の災害対策についてです。
 日常生活において、人工呼吸器やたんの吸引器などを使用している医療的ケア児の方には、災害による停電で電源が喪失した場合は、医療機器が使用できなくなり、命に危険が生じる大変重要な問題です。
 現在、東京都には、在宅人工呼吸器使用者療養支援事業として、区市町村包括補助事業で自家発電装置を都が補助する制度があります。しかし、この発電機を室内で使用した際、一酸化炭素中毒での死亡例もあったと聞いております。また、屋外で稼働させる際には音がうるさいとの苦情もあり、風水害時には屋外で稼働させることは困難でもあります。
 そのようなことから、在宅で人工呼吸器を使用している医療的ケア児の災害発生時の電源確保のため、蓄電池も補助の対象とすべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、食品ロス対策について質問します。
 国連食糧農業機関の推計によると、世界全体では、生産された一年間の食料の三分の一に当たる約十三億トンの食料が捨てられております。食料の生産から消費に至る各段階では、CO2が大量に排出されており、食品ロス問題は、持続可能な社会を目指す上で喫緊に取り組むべき課題です。
 都議会公明党は、かねてより食品ロスを重要なテーマとして取り上げ、コロナ禍における食を取り巻く状況の変化を見据え、着実に食品ロス削減を進めるよう求めてきました。
 そうした中、都は、二〇三〇年の食品ロス半減に向け、多岐にわたる対策を食品ロス削減推進計画として取りまとめ、今年度から計画がスタートしています。
 都内においては、年間の食品ロスは五十一万トンあり、内訳は、各家庭から発生する食品ロスが十二・五万トン、これに対し、事業活動に伴って発生する食品ロスは三十八・五万トンと、約七割を事業系食品ロスが占めております。事業系食品ロスを削減するために、ICTやAIの活用や食品のロングライフ化など、先進技術の活用も有効であると考えます。
 そこで、都は、二〇三〇年の食品ロス半減に向け、事業者と連携しながら、先進技術の積極的な活用を図っていくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、食の支援について質問します。
 子供食堂やフードパントリー等の食の支援活動は、コロナ禍において困窮する人々のセーフティーネットとして極めて重要な取組であると考えます。
 地域住民が始めた子供食堂は、現在、子供たちを貧困から守ること、地域住民のコミュニティをつくる場所として全国に広がっており、東京都では約五百五十の活動団体の登録数があり、コロナ禍での孤立を防ぐ取組が行われております。
 都は、二〇一八年度より、区市町村が行う、フードバンクと連携して困窮者へ食料を提供し、必要に応じて来所者を相談機関へとつなぐ、地域の支援拠点となるフードパントリー設置事業をスタートさせております。この事業は、フードバンクと子供や生活困窮者をつなぎ、食の支援を通した、地域での支援ネットワークづくりを推進する上で有効な事業と考えます。
 しかし、この事業は、冷蔵庫や運搬車両など、事業立ち上げ時の初期経費を補助するもので、運営費などは含まれておらず、昨年度まで事業を実施しているのは六区市にとどまっております。実施済み、または未実施の区市にヒアリングをしてみましたが、初期経費はもちろん、運営費も都が支援してほしいとの切実な声をいただきました。
 フードパントリー事業に、コーディネートに関わる人件費や諸経費などの運営費も新たにメニューに追加し、さらなる事業拡大につなげるべきと考えます。フードパントリー事業の現在の取組状況を明らかにするとともに、今後の展開について都の見解を求めます。
 次に、循環器病対策について質問をいたします。
 東京都では、今年七月に健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病、その他の循環器病に係る対策に関する基本法に基づき、東京都循環器病対策推進計画を定めました。
 死亡原因における心疾患の割合は、がんに次いで二番目であり、心不全で亡くなる方が多くなっております。近年、心疾患は毎年約一万人の患者数が増加しており、心不全の患者数や死亡者数が急増することにより、医療費の増大や病床、医療体制の逼迫などが懸念されております。
 心不全は、心筋梗塞、心筋症、弁膜症、不整脈などが原因となっております。とりわけ加齢に伴う心臓弁膜症が増加しており、大きな課題となっています。生活習慣に注意するだけではなく、しっかりとした検査と診断により心臓弁膜症に対する適切な治療を行う体制づくりが重要です。
 ある調査では、約八割が検査を受けていないとの報告もあり、都民の命を守るために、循環器病についての知識と普及啓発を図り、確実な検査、診断につなげていく必要があります。
 そこで、東京都循環器病対策推進計画の策定の意義について改めて伺うとともに、循環器病に関する知識の普及啓発を進めるべきと考えます。都知事の見解を求めます。
 最後に、世田谷区内の豪雨対策について質問をいたします。
 近年、気候変動の影響により豪雨災害が激甚化、頻発化しています。河川氾濫を防ぎ、水害から都民の命と暮らしを守るため、都議会公明党は今回の都議選で、東京の未来を開く政策チャレンジエイトの中に、豪雨に備えるための地下調節池の設置促進を掲げ、二〇二五年度までに、国内最大級の環状七号線地下広域調節池の整備をはじめ、都内十か所に新たな調節池などの防災施設の整備を目指していくことを表明いたしました。
 さて、私の地元である世田谷区では、二〇一九年の台風十九号で、多摩川の溢水や内水氾濫など甚大な被害が発生いたしました。そのとき区議会議員だった私は、浸水被害が発生したと聞き、急いで多摩川の被災現場に駆けつけました。その状況を見て、水害対策には今までも取り組んできましたが、さらなる水害対策の必要性を痛感いたしました。
 それ以前にも、区内では浸水被害が繰り返されております。二〇〇五年度の集中豪雨では、世田谷区においても野川沿いなどで多くの住宅が浸水する被害が発生しました。こうした被害を受け、水害に対する安全性を早期に向上させるため、調節池を整備してほしいとの要望を以前からいただいております。
 都は、目黒川流域及び野川流域を対策強化流域と指定し、新たな目標整備水準に対応した調節池の整備を進めることとしております。
 未来の東京戦略においては、二〇三〇年までに百五十万立方メートルの新たな調節池を事業化するとしておりますが、近年の豪雨の状況を踏まえると、目黒川流域及び野川においても、新たな調節池を早期に事業化していくことが重要と考えます。都の見解を求めます。
 また、下水道についてですが、二〇一三年の集中豪雨では、世田谷区内で弦巻地区や深沢地区を中心に甚大な被害が発生、また、二〇一八年にも区内で床上浸水、床下浸水が多数発生しました。
 これまでにも、都では、世田谷区立小泉公園の地下に雨水を一時的にためる下水道の貯留施設を整備、また、弦巻地区や深沢地区を時間七十五ミリ降雨に対応する施設整備を行う重点地区に位置づけ、整備を進めております。
 さらに、二〇一九年東日本台風の浸水被害等を踏まえ、関係局と共に策定した東京都豪雨対策アクションプランにおいて、下水道整備における浸水対策を強化する地区を拡大することを示し、今年三月に策定した経営計画二〇二一において、世田谷区野毛地区などを含む三地区が重点化されております。
 地域住民の不安を払拭するために、新たに追加した三地区の浸水対策を早急に推進していくべきと考えます。都の見解を求めます。
 以上で質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) たかく則男議員の一般質問にお答えいたします。
 循環器病対策の推進についてのお尋ねでございます。
 脳卒中、弁膜症などの心臓病、その他の循環器病は、令和二年の人口動態統計によりますと、悪性新生物、いわゆるがんに続く死亡原因となっております。
 循環器病は、運動不足や不適切な食生活等の生活習慣に端を発しまして、患者自身が気づかないうちに病気が進行することが多いということから、予防、健診の普及、そして知識の啓発が重要であります。
 都は今年七月、循環器病対策基本法に基づきまして、予防から治療、在宅療養、就労に至るまで、総合的かつ計画的に推進することを目的といたしまして、東京都循環器病対策推進計画を策定いたしました。
 今後、医療、保健、福祉の関係者などから成ります循環器病対策推進協議会で具体的な取組を検討いたしまして、区市町村や関係団体等と連携しながら、循環器病の発症、重症化予防等を推進いたしまして、誰もが質の高い医療を受けられ、安心して暮らせる東京の実現を目指してまいります。
 残余のご質問は教育長、関係局長から答弁いたします。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 医療的ケア児の通学費支援についてでございますが、医療的ケア児の学校における学習機会の拡充を図るためには、安心して通学できる手段を確保することが重要でございます。
 現在、都教育委員会では、肢体不自由特別支援学校において、医療的ケア児の専用通学車両を運行しており、ケアの実施体制が整い、乗車できるようになるまでの間は、保護者の付添いによる通学をお願いしております。その際、障害の状態や安全上の理由から福祉タクシーを利用する場合があり、現状においては、その費用は保護者にご負担をいただいております。
 今後は、医療的ケア児支援法の趣旨も踏まえ、子供たちの通学機会の一層の拡充と保護者負担のさらなる軽減を図るため、通学費の支援について検討を進めてまいります。
〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、人工呼吸器の電源確保についてであります。
 都は、災害時に備え、在宅で人工呼吸器を使用する医療的ケア児などに自家発電装置を無償で貸与、給付する区市町村を包括補助で支援しております。
 近年、台風や大雪などの風水害による停電が多く発生しており、自家発電装置等に加え、屋内で安全に使用できる電源の確保が求められております。
 このため、都は、補助対象に蓄電池を加えることについて、過去に大きな被害を受けた道府県の状況や専門家の意見を踏まえながら検討を進めてまいります。
 次に、フードパントリーについてでありますが、都は、生活困窮者等に食料を提供するとともに、適切な支援につなげる地域の拠点となるフードパントリーの設置に取り組む区市町村を支援しておりまして、今年度といたしましては五区市が実施する予定でございます。
 国は、今般の補正予算案において、コロナ禍で困窮するひとり親家庭等の子供等を対象とした子供食堂やフードパントリー等の事業者への支援を拡充することとしております。
 今後、国の動向も注視しつつ、区市町村の状況を把握し、フードパントリーの設置がより一層進むよう働きかけてまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 食品ロス対策についてでございますが、事業系の食品ロス削減に向けては、事業者が有する知見、技術力等を活用した新たなビジネスモデルの創出により、先進技術の活用を推進していくことが有効でございます。
 都は、スーパーの販売実績等のビッグデータをAI解析し、在庫を適正化するモデル事業を行い、食品ロスを四割削減し、その後の社会実装につなげてまいりました。
 今年度は、ロングライフ化を行う事業者を公募し、飲食店で余った食材を急速冷凍技術を用いて自販機で販売する取組や、期限が短い総菜パンの風味を保ったまま冷凍し、販売する取組など、販売時のロス削減を目指す実証事業を行ってございます。
 今後は、得られた成果等を関係事業者と広く共有するとともに、食と先進技術の融合したフードテック等の活用も検討しながら、さらなる食品ロスの削減を進めてまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 目黒川流域及び野川の新たな調節池についてでございますが、水害から都民の命と暮らしを守るためには、護岸の整備と併せて、豪雨に対して大きな効果を発揮する調節池の整備を推進することが重要でございます。
 河川整備計画では、目黒川流域におきまして、上流の支川である蛇崩川、烏山川、北沢川で総容量約四十七万立方メートル、野川におきまして約八十万立方メートルの調節池の整備を位置づけております。
 現在、その候補地となる場所や構造形式の選定などの検討を進めておりまして、このうち、目黒川流域における新たな調節池について、来年度の事業化に向け、関係機関との調整を行っているところでございます。
 今後とも、浸水被害の軽減に向け、こうした取組を着実に推進してまいります。
〔下水道局長神山守君登壇〕

○下水道局長(神山守君) 下水道の浸水対策についてでございますが、下水道局では、早期に浸水被害を軽減するため、経営計画二〇二一において追加した三地区を含めまして、五十七地区を重点化して下水道幹線などの施設整備を進めております。
 地区の追加に当たりましては、流出解析シミュレーション技術を活用いたしまして、広い範囲に浸水被害などが確認された世田谷区野毛地区と目黒区自由が丘、世田谷区奥沢地区の二つの地区を一時間七十五ミリ降雨に対応する対策強化地区といたしました。
 また、近年の浸水被害の状況等を踏まえ、板橋区熊野町、中丸町地区を一時間五十ミリ降雨への対応を基本とする対策重点地区といたしました。
 新たに追加いたしましたこれら三地区につきましては、経営計画二〇二一の期間である令和七年度までの着手を目指してまいります。

○議長(三宅しげき君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時四十分休憩

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