令和三年東京都議会会議録第二十三号

○副議長(本橋ひろたか君) 三十一番中田たかし君。
〔三十一番中田たかし君登壇〕

○三十一番(中田たかし君) 都議会立憲民主党の中田たかしです。私は区議会議員時代から地域を歩き、地域の小さな声に耳を傾け、様々な問題の解決に取り組んでまいりました。その地域の声をしっかりと都政に反映させていくべく、また、二人の子供を子育てしている親の観点から、都の取組について質問をいたします。
 まず初めに、新型コロナウイルスに関する差別の問題について質問をいたします。
 新型コロナウイルスワクチンの未接種者への差別を条例で禁止している自治体があります。ワクチンが経済再生の柱となっている中で、未接種者が通常の社会生活を送りづらくなる懸念があります。国や自治体の差別対策も曖昧なままになっており、ワクチン接種が進む中、体調面などからワクチン接種ができない人や、接種の意思がない人への差別への対応は喫緊の課題であります。
 新型コロナウイルス関連の差別解消に向けた東京都の取組について、知事の見解を伺います。
 次に、学校での新型コロナウイルス対策について伺います。
 コロナ禍で子供たちの日常の学校生活を取り戻していくために、様々な面で学校への支援、そして各区市町村への支援が必要です。新型コロナウイルスワクチンは十二歳未満の子供たちには打つことができません。
 ワクチンが打てないがために子供たちに様々な制限がかかってしまい、貴重な校外の体験の場への参加ができないことがないように、しっかりとした支援を求めるとともに、東京都教育委員会としても、ワクチンを打てないことへの差別への対応もしっかりと行っていただきたいと考えます。
 教育活動を安全・安心に行うためにどのような感染症対策を実施しているのか、都の取組について伺います。
 都では現在、区市町村立学校の教育活動におけるPCR検査の実施事業を行っています。この事業の要件は、教育活動において主催者団体や訪問先から参加に当たって検査が求められる場合等に、児童生徒及び教職員を対象にPCR検査を実施するとなっています。
 区市町村教育委員会から保護者へPCR検査の実施を案内し、同意書を取った上で、保護者にPCR検査キットの配布が行われ、保護者は手順に従い、唾液を採取して検査事業者に郵送します。検査結果は、区市町村教育委員会を経由して学校に通知され、保護者に通知されます。
 この区市町村立学校の教育活動におけるPCR検査の実施事業は、実施期間が本年の十二月三十一日までとなっています。しかし、私の地元の渋谷区では、全ての中学校が年明け、受験終了後の三月から修学旅行を予定しています。また、小学校でも年明けに宿泊を伴う校外学習を予定しているため、渋谷区の区議会にも区内の学校のPTAの方々から延長を求める陳情も出ています。
 子供たちが安心して、そして安全に校外での活動ができるよう、このPCR検査の事業の延長をすべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、いじめの問題について伺います。
 いじめが原因と疑われる児童生徒の自殺などの実態解明を行うため、学校や教育委員会が設置する調査委員会において、遺族側の意向を考慮する仕組みが広がっていない現状があります。行政の不適切な対応、いじめの事実を公表しなかったことなど相次ぐ中で、調査に対する遺族らの信頼を確保する仕組みが不十分です。子供を亡くした親の事実を知りたいという切実な思いが、ないがしろにされている現実があり、遺族の要望を聞いたり、遺族が意見を述べたりする仕組みをつくることが信頼につながります。
 群馬県、そして宮崎県、大阪市、神戸市などは、遺族側が調査委員会の委員を推薦することができる規定があり、岐阜県など十一の自治体では、規定はありませんが、遺族側の要望があれば検討するとしております。
 東京都においても、町田市にて遺族から教育委員会に対して、調査に当たる委員の経歴などについて何度も説明を申し入れたが、これまでに具体的な説明がないということで、不透明な状態で調査が進められるおそれがあるとして、文部科学省に対して第三者による新たな委員会の設置を求める要望が行われるという事案がありました。
 このことからも、しっかりと遺族の意向に沿える規定を明文化し、遺族に寄り添う姿勢を東京都としても示していくべきと考えます。いじめの重大事態が発生した場合に、事実関係の解明のために適切な対応が求められてきますが、都の見解を伺います。
 次に、HPVワクチンについて質問いたします。
 子宮頸がんは、日本で年間約一・一万人の患者の方がいて、約二千八百人の方が死亡しております。四十歳までの女性におけるがんの死亡分類の第二位が子宮頸がんとなっています。子宮頸がんは、HPV、ヒトパピローマウイルスへの感染が原因であり、その感染を防ぐのがHPVワクチンです。
 日本のこれまでのHPVワクチンの接種状況は、副反応の疑いがある等の報告があり、平成二十五年六月に厚生労働省は積極的勧奨を差し控える通知を行いました。通常、ワクチンの定期接種については、予防接種法に基づいて、区市町村が接種対象者やその保護者に対して接種を受けるよう勧奨しなければならないものとしています。
 そして、積極的な勧奨とは、区市町村が対象者やその保護者に対して、標準的な接種期間の前に接種を促すはがき等を各家庭に送ることにより、積極的に接種を勧める取組を指します。
 今回、国は、諸外国の状況、そしてエビデンスが積み上がったことによって、積極的勧奨を再開するとしました。再開に伴い、これまで積極的な勧奨の差し控えにより接種機会を逃した方へ対応を行っていくことはとても重要です。
 このキャッチアップ接種、後追い接種については、現在、国の審議会で議論が行われておりますが、キャッチアップ接種の導入は、国の制度に先駆け、補助制度を行っている自治体もありますので、ぜひ東京都としても国へ早期導入の要望を行うとともに、都独自の支援策の導入を要望します。
 そして、定期接種外で接種を行うと、定期予防接種の救済制度の枠から外れてしまいますので、しっかりとした接種者へのフォローを行う体制づくりも、ぜひ国に東京都から要望をお願いいたします。
 また、現在では、各自治体がそれぞれの接種計画に基づいて接種率を出していることから、各自治体の接種状況を正確に把握することが難しくなっています。そのためにも、東京都として統一の基準にすべく、通知を行うべきであると考えます。この点についても、東京都には改善を要望いたします。
 国内で公費負担で承認されているHPVワクチンは、二価と四価の二種類です。海外では既に九つの型のHPVの感染を予防し、九〇%以上の子宮頸がんを予防するとされている九価のHPVワクチンが公費接種されており、日本では二〇二一年二月より接種が始まりましたが、いまだ公費接種は認められていません。
 ワクチンに関しては、世界各国の状況をしっかりと把握していく必要があります。現状、HPVワクチンについては、世界から後れを取ってしまっていることもしっかりと踏まえ、対応していくことが必要です。
 そして、海外では男性の接種も公費負担で進んでいます。性感染症を防ぐことに高い予防効果を示されており、海外では男性に対しての接種も推奨されています。HPVは子宮頸がんだけではなく、男性にも咽頭がんや肛門がん、直腸がんなどの原因になることが分かっており、これらのがんの発症を予防することも示されています。
 このように、海外では、子宮頸がん以外の疾病にも効果があるとされている九価ワクチンの接種や男性を含めた接種が進んでいる国もあることから、都においても、ワクチンの種類や対象者の拡充について検討すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、グリーフケアについて質問いたします。
 グリーフケアの実態調査を行うと国が発表しました。死別を経験した人の喪失感とそれに対して立ち直ろうとする不安定な状態をグリーフと呼び、そういう人たちの援助をすることがグリーフケアです。
 グリーフケアは、阪神・淡路大震災で注目され、子を亡くした悲しみに寄り添う自治体や医療機関、家族の会の支援、さらには流産、死産経験の女性支援も含まれます。この流産、死産を経験した家族のケアについては、国からも不妊治療の支援強化に伴ってきめ細かくケアするようにと今スポットライトが当たっています。
 行政側がこうした家族を支援すべき対象として捉えていない現状があったのが実際で、行政が支援のノウハウを持ち合わせていないことが調査の背景にありました。調査では、全国の自治体や医療機関、家族の会などを対象に、具体的な支援の内容や現場の課題を調べ、分析を行い、結果に基づき自治体や医療機関向けに相談支援の手引を作り、活用を促す方針です。
 現在、東京都では、SIDS、乳幼児突然死症候群をはじめ、病気、流産、死産などで子供を亡くした家族のために電話相談を週一回行っていますが、流産や死産などで悲しみの中にいる家族へのサポートを充実させるためにも、オンライン相談を行ったり、不妊、不育の分野と連携をして家族に寄り添う支援を強化すべきではないでしょうか。また、各自治体、各専門機関との連携状況なども含め、都の取組を伺います。
 以上、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 中田たかし議員の一般質問にお答えいたします。
 新型コロナに関する差別解消の取組についてのお尋ねでございます。
 新型コロナウイルスに感染された方や医療関係者、ワクチンを接種できない方などへの誤解や偏見に基づく不当な差別的取扱いは、許されるものではありません。
 都はこれまでも、新型コロナに係る差別等につきまして、専門相談窓口の設置とともに、啓発ポスターの作成や動画を通じましたメッセージの発信など、取組を強化してまいりました。
 今後も、新型コロナに関連いたします差別の解消に向けまして、効果的な啓発等に取り組んでまいります。
 その他のご質問につきましては、教育長、関係局長からの答弁といたします。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、学校における新型コロナウイルス感染症対策についてでございますが、都立学校においては、都教育委員会が作成した新型コロナウイルス感染症対策と学校運営に関するガイドラインに基づき、手洗い、マスクの着用、換気など、基本的な感染症対策を徹底するとともに、学校行事等については、オンラインを活用するなど、内容や方法を工夫して実施しているところでございます。
 また、こうした都立学校の対応につきましては、区市町村教育委員会に対しても周知しております。
 今後とも、学校が感染状況に応じた適切な対策を実施し、教育活動を安全・安心に進められるよう支援してまいります。
 次に、区市町村立学校の教育活動におけるPCR検査についてでございますが、現在、各学校では、基本的な感染症対策を徹底することにより、日常の教育活動を実施しております。
 都教育委員会は、各学校が、感染リスクを可能な限り減らしながら、校外学習などに参加する際に、教職員や保護者の同意を得た児童生徒を対象に、PCR検査を活用できる体制を整備しております。
 本事業の実施期間につきましては、本年度中の学校行事が安全に実施できるよう、令和四年三月三十一日まで延長することといたします。
 最後に、いじめへの対応についてでございますが、いじめにより欠席が長期化するなどの重大事態が発生した際は、学校や教育委員会が法律等に基づき、事実関係の解明や再発防止に向け、それぞれの責務を果たす必要がございます。
 そのため、都教育委員会は、学校等に対し、重大事態が発生した場合の調査組織の委員選任に当たっての留意点、いじめを受けた子供の安全確保の在り方等について示し、教員が確実に対処できるよう支援してまいりました。
 また、区市町村の担当者連絡会において、実際に重大事態の対応に当たった経験を持つ有識者による講演を実施し、各教育委員会の理解を深めてまいりました。
 今後とも、重大事態発生時の対応を徹底し、いじめの解決に向けた取組を推進してまいります。
〔福祉保健局健康危機管理担当局長佐藤智秀君登壇〕

○福祉保健局健康危機管理担当局長(佐藤智秀君) HPVワクチンに関するご質問にお答えいたします。
 定期接種に係るワクチンの種類等につきましては、客観的で信頼性の高い最新の科学的知見に基づきまして、国の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会等の専門家の意見を聴いた上で検討を行うこととしており、都は、こうした国の動向を注視しつつ、適切に対応してまいります。
 なお、予防接種制度全般につきましては、有効性、安全性に関する知見の集積などの状況を踏まえまして、検証を継続的に行っていくことを国に要望しております。
〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 流産、死産や病気等で赤ちゃんを亡くされた方への支援、グリーフケアについてのご質問にお答えいたします。
 都では、妊産婦への支援を担う区市町村の職員等を対象に、小さな子供を亡くした家族への支援などをテーマとした研修を実施しております。
 また、助産師等の専門職や同じ体験をした方による電話相談を実施していますほか、不妊・不育ホットラインで、専門の研修を受けたピアカウンセラーが、妊娠後に流産や死産を繰り返す不育症に悩む方からの相談に対応しておりまして、区市町村等を通じてその窓口を周知しております。
 引き続き、その普及啓発に取り組んでまいります。

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