令和三年東京都議会会議録第二十三号

   午後三時十分開議
○議長(三宅しげき君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十三番林あきひろ君。
〔四十三番林あきひろ君登壇〕

○四十三番(林あきひろ君) 初めに、カーボンハーフに向けた取組について伺います。
 気候変動に関する政府間パネルが今年の八月に発表しました報告書では、地球温暖化による厳しい未来を予測し、気温上昇抑制の必要性を訴えましたが、先月十三日まで英国で開催された国連気候変動枠組条約第二十六回締約国会議、いわゆるCOP26では、気温上昇を一・五度までに抑制する努力をすることが、世界の共通目標として正式に文書に明記されました。
 現実を知れば知るほど、気候危機への対応は、まさに一刻の猶予もない状況です。都内のCO2排出量の約五割は産業、業務部門によるものですが、都の脱炭素戦略、ゼロエミッション東京戦略において目標とする、二〇三〇年カーボンハーフというターゲットに到達するためには、事業者による省エネへの取組が非常に重要です。
 十一月に開催されました都の環境審議会企画政策部会で示したカーボンハーフの実現に必要なエネルギー消費量の部門別削減目標の素案では、二〇三〇年における産業、業務部門の目標は二〇〇〇年比三五%の削減と、従来の環境基本計画で定める目標をさらに五%も上回る高いものとなっています。
 しかしながら、目標が設定される一方で、事業者の状況に目を向けると、特に中小零細企業、事業所などからは、マンパワーやノウハウの不足から、省エネ対策を行うという前向きの意思があっても、どのように実施してよいか分からないといった声を耳にします。
 さらに、コロナ禍により厳しい経営環境が続いてきたところに、昨今の原油高の影響を受けていることなどから、省エネに向けた設備投資を行う資金的な余裕がないという実情も考慮しますと、都による積極的な支援が必要と考えます。
 そこで、これまで産業、業務部門におけるエネルギー消費量がどの程度削減されてきたのか、また、今後の目標達成に向け、中小企業への支援をどのように展開していくのかについて、見解を伺います。
 次に、連続立体交差化について伺います。
 都内には、現在、約一千五十か所の踏切が残されているとのことですが、調布市においては、京王線の国領駅から調布駅付近で連続立体交差事業が実施され、平成二十四年に十八か所の踏切が解消、南北間のスムーズな交通が確保されるとともに、線路で分断された市街地が一体となったことで、まちがより活性化し、全体のまちづくりに大きな効果を表しています。
 しかしながら、隣接する柴崎駅、つつじヶ丘駅付近には、いまだ五か所の踏切が残されています。これらの踏切は、その全てがピーク時一時間当たりの遮断時間が四十分以上のいわゆる開かずの踏切となっており、本年四月にようやく踏切道改良促進法に基づく改良すべき踏切として指定されたところです。
 柴崎駅に近接する踏切では、朝夕を中心に多くの歩行者や自転車、自動車が錯綜しています。また、鉄道と交差する都市計画道路調布三・四・九号線では、前後の道路の拡幅が完了しているものの、鉄道との交差部だけが狭隘なままとなっており、小学校の通学路にも指定されている歩道の一部にはガードレールも設置されていないことから、大変危険な状態となっています。
 周辺住民にとって、踏切の解消、狭隘なガード下部分の改善は喫緊の課題であり、早期の解決が必要であることはいうまでもありません。
 そこで、京王線つつじヶ丘駅、柴崎駅付近の連続立体交差化についての都の見解を伺います。
 次に、野川について伺います。
 野川の最上流部は、河川整備計画で、親水性など環境にも配慮しながら護岸整備を行うこととなっていますが、未着手の状況となっています。
 先日、地域の国分寺市民の皆様などから、この区間の整備に関する陳情が一万人を超える署名とともに東京都議会議長宛てに提出されました。
 野川は、延長が約二十キロと長く、流域全体として豪雨対策を講じることが、周辺自治体住民の不安の解消につながるものと考えるところです。したがって、未整備区間についても住民の皆様などの意見をしっかりと伺いながら、地元市とも連携するなど、着手に向けた調整を進めていただくようお願いするところです。
 本年八月十五日には、調布市や狛江市において大雨警報が発令され、野川の河川水位が上昇しました。しかしながら、工事中の野川大沢調節池で増水した河川から取水するなど、これまで整備してきた護岸やこの調節池が効果を発揮し、幸いにも被害は生じませんでした。
 近年、令和元年東日本台風や令和二年七月豪雨など、全国各地で甚大な豪雨災害が発生しています。こうした豪雨は、いつ東京で発生してもおかしくない状況であり、野川流域に住む都民の安全を確保していくためにも、野川の河川整備をより一層推進していくことが重要であります。
 そこで、野川における河川整備の取組状況について伺います。
 次に、都営地下鉄について伺います。
 新宿線は、京王線に相互乗り入れ、直通運転を行っていますが、十月三十一日の夜八時頃、私の地元であります調布市内を走行中の京王線電車内において、刃物を持った男がほかの乗客を切りつけた上、液体をまいて放火し、十八人が重軽傷を負うという凶悪な事件が発生しました。
 八月六日にも、同じく地元の狛江市を走る小田急線電車内において無差別刺傷事件が発生し、十人が重軽傷を負う事件が起きた直後でしたが、その後の九州新幹線での事件等、連続して発生した凶行を受け、国土交通省は今月三日、鉄道のセキュリティ確保に向けた今後の対策を取りまとめました。
 また、車内の防犯関係設備の充実を求める中で、車両新造時や大規模改修時における防犯カメラの設置を義務づける方針を打ち出しました。来年度中にも、防犯カメラの設置基準等が定められていくこととなるようですが、電車内における犯罪抑止のためにも、また、乗客に危険が迫った場合の現場の特定や車内の状況把握に有効な防犯カメラは、乗客の安心・安全に資する車内装備の柱の一つとして、設置の促進が求められます。
 現在、首都圏の大手鉄道会社の防犯カメラ設置率を調べてみますと、一桁台から一〇〇%まで大きな差があります。平成二十九年、全車両に順次防犯カメラを設置していくことを決定した都営地下鉄ですが、駅構内を含めた防犯カメラの設置状況について伺います。
 また、京王線の事件においてもう一点伺います。
 当該列車は国領駅に緊急停車し、乗客の皆さんは次々と避難をされたわけですが、駅前は避難をされた方と救急車をはじめとした多くの緊急車両で埋め尽くされました。その中には地元の消防団も駆けつけ、懸命に作業をされていました。
 後日、消防団関係者や周辺住民の方々からお話を伺う機会がございましたが、当日、大混乱した現場においては、大がかりな消防体制が展開されていたとのこと。つくづく御礼を申し上げるところでございますが、今後の事故、事件、災害時に生かしていくためにも、検証作業は重要なことと考えます。現場ではどのような活動が行われたのか、活動の概要について伺います。
 電動アシスト自転車について伺います。
 交通事故総合分析センター等のデータによりますと、電動アシスト自転車が関係する事故は、令和二年に約二千六百件発生し、平成二十二年の約一千百件から二倍以上に増加、自転車事故全体は、この十年間で半数以下になっていますが、電動アシスト自転車の事故が占める割合は、約五倍へと膨らんでいます。また、高齢者の転倒事故が目立っているとの報道も見られます。
 警視庁によれば、都内の自転車事故の発生件数は、令和元年は一万一千八百七十四件、令和二年は一万四百七件と、自転車事故全体の件数は減少したものの、急速に普及が進む電動アシスト自転車が事故の当事者となったケースは、令和元年は四百六十四件、令和二年は四百六十三件と同規模で推移していますが、令和三年は十月末時点で既に四百九十六件とのことであり、増加傾向にあることが分かりました。
 電動アシスト自転車は、通勤通学や日々の買物、子供の送迎に加えて、宅配等の業務用、レンタサイクルなど、用途は多岐にわたります。また、高齢者の免許返納後の受皿として、外出の足として利用者は今後も増加していくことが予想されます。
 一方で、重量が重く、スピードが出やすいこと、交差点での信号待ちなど、ペダルの足を少し踏んだだけで思いのほか前に出てしまう場合があるなど、停車時、こぎ出し時、走行時、それぞれの場面に応じた乗り方には注意する必要があります。
 そこで、電動アシスト自転車の安全な乗り方について、行政だけではなく、メーカーや販売店とも連携して、安全利用の普及啓発を積極的に行うべきと考えますが、見解を伺います。
 市町村の下水道事業について伺います。
 多摩地域の下水道は、都が管理する流域下水道と市町村が管理する公共下水道が一体となって機能していますが、これまでの両者の連携により、汚水処理の普及率は九九%を超えています。
 しかしながら、昭和四十四年に多摩地域に流域下水道を導入して以来、五十年以上が経過し、維持管理に重きを置く時代において、これまで公共下水道を支えてきた市町村の技術系職員数が大幅に減少しています。
 そして、公共下水道管などの下水道施設の老朽化や耐震化、さらには、汚水管に雨水が流入する雨天時浸入水による浸水被害などの新たな課題が生じています。現在、その対策工事には多額の費用がかかっていますが、市町村では限られた体制で、より効率的に事業運営を行うことが求められている厳しい現状があります。
 そこで、多摩地域の市町村の公共下水道事業の課題解決に向けて、今後、どのように取り組んでいくのかを伺いまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 林あきひろ議員の一般質問にお答えをいたします。
 私からは、京王線つつじヶ丘駅及び柴崎駅付近についてでございます。
 本区間では、五か所全ての踏切が開かずの踏切となっており、踏切対策の重要性につきましては、都としても認識しております。
 これまで、踏切道のカラー舗装による通行帯の明示など、早期に実施可能な踏切対策が道路管理者や鉄道事業者により実施されてまいりましたが、抜本的な踏切対策に向けて、地元調布市は、昨年度から、鉄道事業者と協力し、鉄道の立体化や沿線まちづくりに関する検討を行っております。
 また、来年度から、連続立体交差化に向けた基本的な計画を策定する連続立体交差事業調査を実施するため、市は先般、国に調査費への補助を要望したところでございます。
 都といたしましては、こうした調査検討に当たり、技術的な助言を行うなど、調布市の主体的な取組を支援してまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 産業、業務部門におけるエネルギー消費量の削減実績と中小企業への支援についてでございますが、都内の産業、業務部門のエネルギー消費量は、二〇一九年度速報値で、二〇〇〇年度比約二一%削減となっており、カーボンハーフの実現には、中小企業を含む全ての事業者の削減を加速する必要がございます。
 都は、これまで実施してきた無料の省エネルギー診断等の支援に加えまして、今年度はコロナ禍も踏まえ、省エネ性能の高い換気設備や空調設備の導入を支援する助成事業を実施してございます。
 今後、さらに、原油高を契機として、補助率を引き上げ、支援を強化するとともに、積極的に事業を周知し、利用の促進を図ってまいります。
 こうした取組を通じ、中小企業の省エネに向けた設備投資を加速し、目標の達成を目指してまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 野川における河川整備の取組についてでございますが、水害から都民の命と暮らしを守るためには、河道や調節池の整備を推進していくことが重要でございます。
 野川では、これまで護岸整備を着実に進め、令和二年度末の護岸整備率は八六%となっております。さらに、流下能力を向上させるため、下流から順次、河床掘削を進めてきておりまして、対象延長の約十一キロメートルのうち、約五割が完了いたしました。
 また、野川大沢調節池では、貯留量を従来の一・八倍となる約十六万立方メートルに拡大する工事を実施しておりまして、十一月に取水施設が完成し、本格稼働を開始いたしました。
 今後とも、こうした整備に加え、新たな調節池の事業化に向けた検討を進めるなど、野川のさらなる安全性の向上に向け取り組んでまいります。
〔交通局長内藤淳君登壇〕

○交通局長(内藤淳君) 都営地下鉄の防犯カメラに関するご質問にお答えいたします。
 都営地下鉄では、迷惑行為の未然防止やテロ対策など、セキュリティ強化を図るため、車内や駅構内に防犯カメラを設置してございます。
 車内の防犯カメラは、車両更新に合わせまして設置を進めており、今年度は新たに浅草線五編成、新宿線四編成、大江戸線二編成の計十一編成に設置し、令和三年度末時点で三田線を含みます全百五十二編成中、約四割の車両への設置を完了する予定でございます。
 また、駅構内では、全駅に防犯カメラを設置しており、駅係員等が随時状況を確認できるほか、警視庁と連携し、テロ等発生時にカメラの映像を警察へ送信する仕組みを導入してございます。
 引き続き、防犯カメラも活用しながら、お客様の安全・安心の確保に努めてまいります。
〔消防総監清水洋文君登壇〕

○消防総監(清水洋文君) 京王線で発生した事件での消防活動についてでございますが、一一九番通報の状況から、テロ災害や多数傷者の発生が予想されたため、ポンプ隊に加え、高度な指揮機能を有するコマンドカーや救急機動部隊等を出場させ、消火活動を行うとともに、調布市消防団及び東京DMAT、NBC特殊災害チームと連携し、多数の傷者に対する救護活動及び救急搬送を実施いたしました。
 また、車内に何らかの液体がまかれたとの情報から、化学機動中隊の赤外線分析装置により、有毒な物質でないことを確認したところでございます。
 東京消防庁ではこれまで、東京二〇二〇大会に発生が危惧されていたテロ災害等に備え、消防団をはじめ、警察、医療、鉄道等関係機関との連携訓練を重ねるなど、万全の体制を整えてまいりました。
 今後とも、あらゆる災害を想定し、関係機関との連携をさらに深め、災害対応力の強化に努めてまいります。
〔都民安全推進本部長小西康弘君登壇〕

○都民安全推進本部長(小西康弘君) 電動アシスト自転車の安全利用に関するご質問にお答えいたします。
 電動アシスト自転車は、発進時の加速や車体の重量など、普通の自転車とは異なる特性があるため、その特性を踏まえた安全な利用方法を啓発することが必要でございます。
 都は、電動アシスト自転車を運転する際の注意事項など、具体的に記載したリーフレットを作成、配布するとともに、メーカーのご協力を得て、実際に乗車体験ができる安全教室を市区町村と共同で開催しております。
 また、自転車小売業者等に対して、販売や点検の際に、その特性などを購入者等に説明するよう、業界団体を通じて働きかけております。
 今後とも、市区町村やメーカー、自転車小売業者の皆様等と連携して、電動アシスト自転車の安全利用の普及啓発に努めてまいります。
〔下水道局長神山守君登壇〕

○下水道局長(神山守君) 多摩地域の市町村下水道の課題解決についてでございますが、都はこれまでも、道路を掘削せず、老朽化した下水道管を内側からリニューアルできる効率的な更生工法や耐震化工法などに関する技術支援を実施してまいりました。
 当局が下水道指導事務を所管した今年度からは、雨天時浸入水対策のための市町村との合同調査など、連携した取組を一層強化するとともに、立川市が単独で運営しております下水処理場の流域下水道への編入に向けた取組も充実させております。
 今後も、当局が培ってきた技術面、経営面の知見やノウハウなどを活用しながら、広域化、共同化などの支援に取り組み、多摩地域の市町村の下水道事業が持続的に運営されるよう努めてまいります。

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