令和三年東京都議会会議録第二十三号

○副議長(本橋ひろたか君) 三十九番うすい浩一君。
〔三十九番うすい浩一君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○三十九番(うすい浩一君) 初めに、リカレント教育について質問します。
 人生百年時代の到来とともに、技術革新等の進展による経済社会の大きな変化に対応するためには、一人一人のライフスタイルに応じた能力、スキルを身につける機会の提供が大変に重要です。
 リカレント教育には、今の仕事に関する学びでキャリアアップを図る、定年退職後の第二の人生で職を得るために学ぶ、子育てなどで長期に離職していた人が必要なスキルを身につけ就職を目指すために学ぶ、仕事とは関係なく心豊かな生きがいのために教養を身につけるなど、それぞれの目的に応じてのパターンがあります。
 二〇一八年に内閣府にて公表された調査によると、学び直しの抱える課題として、プログラムの充実、費用がかかる、時間がない、学習するのに必要な情報が入手できないが上位となっております。
 都庁の各局等で学び直しに役立つ講座等を実施していますが、情報がばらばらで、どこで何を学べるのかが分かりづらい状況です。
 リカレント教育をより一層推進させるために、都として、学び直しを希望する都民が調べやすいように、様々な情報を集約したポータルサイトを構築するべきです。都の見解を求めます。
 また、都立大学における高齢者を対象としたリカレント教育は、一部の方々にとっては敷居が高いと感じるとの声もあります。一こまから受講できる公開講座などの取組を都立大学は進めておりますが、これからリカレント教育を受けたいと思う多くの方が受講できるよう、学習ニーズをしっかりと酌み取っていくべきであります。
 また、講座の実施方法についても、コロナ禍の下でオンライン化が進みましたが、安心して授業が受けられるという声もあれば、対面での実施を望む声もあり、双方のニーズに対応できるよう一層の工夫を凝らしていくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 現在、都内には百四十を超える大学が集積しています。東京の知の財産ともいえる各大学は、それぞれの特色を持ったリカレント教育を展開しております。多くの都民がリカレント教育を享受できるよう、都としても、私立大学等、また、区市町村とも連携をし、支援していくことを要望しておきます。
 人生百年時代を迎え、都民一人一人が学び直しやキャリアアップを必要としています。
 都は、未来の東京戦略において、キャリアアップデートプロジェクトを掲げ、その中では、都立大や都立学校、東京しごとセンターなどがそれぞれにリカレント教育を実施されていますが、まだ道半ばであります。
 現役世代から高齢者まで幅広い層がスキルや知識をアップデートできるリカレント教育は大変に重要であり、都庁が一丸となって体制を組んでプロジェクトを推進していくべきです。知事の所見を求めます。
 次に、がん検診受診率向上について質問いたします。
 今年四月の国立がん研究センターの発表によると、二〇〇八年にがんと診断された人の十年後の生存率は五九・四%であり、患者の生存期間は昨年よりも延びています。
 さらに生存率を伸ばすためには早期発見が重要であり、例えば、胃がんの場合、進行度が早期の一期の十年生存率は九割を超えるのに対し、他の部位に転移した四期では六・九%まで下がりました。早期発見によって救える命を救うためにも、がん検診が欠かせません。
 しかし、昨今のコロナ禍に伴う検診中止や受診控えが原因で、二〇年度のがん検診受診者数は一九年度と比べ約二割減少したことが同センターの調査で公表されました。
 東京大学の中川恵一特任教授は、早期発見できたはずの一万人以上のがんが今も進行している可能性があると警鐘を鳴らしております。
 コロナ禍であっても、命を守るためにしっかりと検診できるよう、区市町村と連携をし、体制の強化を図るべきです。都の見解を求めます。
 また、同センターの調査では、職域検診に比べ住民検診の減少が大きかったことが指摘をされております。
 東京都は、企業等と複数の政策分野にまたがって、包括的、横断的な連携協力を行うために、ワイドコラボ協定を生命保険会社等と結び、がん検診受診率向上のために協力をいただいております。
 私の地元足立区の民間企業の中には、自らがん講座を開催して住民の参加を呼びかけて、がん検診を推奨し、足立区と協定を結んで受診率向上の貢献をしている企業もあります。
 都は、そうした企業とも連携をして、行政の手の届きにくいところに協力をいただき、受診率向上の取組を拡充するべきです。都の見解を求めます。
 次に、公共施設のトイレの大型ベッドの整備について質問いたします。
 私は、一昨年の春に、車椅子を利用されている方から、車椅子を降りたときに座位が保てない人がベッドに横たわって用を足すことのできる大型ベッドを、誰でもトイレに設置をしてほしいという切実なお声をいただきました。早速、その方々と共に小池知事宛てに要望書を提出しました。
 調べてみますと、令和二年度末時点での都立施設、区市町村施設における誰でもトイレの設置数は八千八基で、そのうち大型ベッドが設置されているのは九百七十七基と一二%にとどまる状況です。座位を保てない障害がある方は、トイレに大型ベッドがない場合、トイレの床にブルーシートを敷いて用を足すこともあり、車椅子の高さから床への移動は、利用者にとって心身両面での負担は非常に大きいものがあります。
 都は、計画的に公共施設のトイレに大型ベッドの設置を進めるべきです。都の見解を求めます。
 また、大型ベッドの名称も一定ではなく、大人用ベッド、多目的ベッド、介助シート、ユニバーサルシートなど、名称が様々なために情報共有の妨げになっております。大型ベッドの設置をさらに促進していくためにも、名称を統一するとともに、設置場所の情報提供をしていくべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、高齢者のデジタルデバイド対策について質問いたします。
 都では、行政サービス充実のために、デジタル化を強力に推し進めているところですが、高齢者等の方々が接する機会の多い行政は、東京都よりも身近な区市町村であります。
 区市町村は、介護、医療などの面から高齢者を支える総合相談窓口である地域包括支援センターを運営するなどし、日頃から高齢者の様々な悩みに対応しております。
 そうした悩みの一つが、スマートフォンの使い方であります。コロナ禍の中、高齢者のワクチン接種が始まった当初では、インターネット予約の方が電話よりも取りやすいなどの理由で、スマホを使いたくても使えないという相談が数多く寄せられ、私の地元である足立区では、急遽、ワクチン接種予約の臨時代行窓口を開設し、インターネットによる予約が困難な方に対応したところであります。
 このような高齢者のスマホを使いたいというニーズは、足立区を含め、都内共通のものであり、都が実施しているスマホ教室や相談会を身近な場所での開催を求める住民の声は強いものがあります。
 都は、こうした声を受け止めて、区と連携して、コミュニティセンターや地域包括支援センターなどの高齢者に身近な場所において、スマホ教室や相談会を開催していくべきと考えますが、宮坂副知事の見解を求めます。
 次に、木密地域対策について質問します。
 首都直下型地震等の災害から都民の生命と財産を守るためには、木造住宅密集地域の不燃化対策のさらなる加速が必要です。
 私は、平成三十一年第一回定例会と令和二年第三回定例会の一般質問で、木密地域の権利者や借家人等の移転先の確保の重要性と、民間の力を生かしての魅力的な計画の必要性を指摘しました。都は、都有地を活用した魅力的な移転先整備事業を足立区江北地区で取り組んでいることを高く評価します。
 先月、国の木造先導プロジェクト二〇二一に今回の事業が採択されたと発表されたところですが、魅力がさらに高まると考えます。
 そこで、都が展開している魅力的な移転先整備事業では、この地区ならではの施設整備を行っていくべきと考えますが、具体的な取組について、都の見解を求めます。
 次に、列車内での安全対策について質問いたします。
 十月三十一日夜、東京都内を走行していた京王線の車内で刃物を持った男が乗客を襲う事件が発生しました。鉄道の車内での凶行が相次いでおり、私の地元の足立区内を走る日暮里・舎人ライナーは自動運転走行であり、車内においての防犯対策は喫緊の課題であります。
 事件を防ぐには危険物を持った人物を車内に乗り込ませないことが一番ですが、朝夕は相当な人が乗り込み、改札スペースが狭いなど、手荷物検査は事実上不可能であります。
 警備の強化を交通局に要望したところ、十一月十九日より、巡回警備の時間延長など、対応をしていただきました。
 今後、こうした事件から少しでも利用者の身を守るために、警備の強化とともに、非常通報ボタンなどの周知や事件に対応する危機管理マニュアルなどの整備に取り組むべきです。都の見解を求め、質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) うすい浩一議員の一般質問にお答えいたします。
 リカレント教育についてのお尋ねであります。
 人生百年時代におきまして、幾つになっても豊かな人生を送る上で、テクノロジーやDXの進展、グローバル化の加速など時代の変化に対応して、新たな知識やスキルを身につけるリカレント教育は重要であります。
 そのため、未来の東京戦略では、生涯を通じたキャリアアップデートプロジェクトを掲げ、都立大学等で実践的なプログラムを実施するなど、幅広い層の人や社会のニーズに応じた学び直しを推進しているところであります。
 こうした取組を都民に効果的に提供するためのポータルサイトの構築にも取り組んでおりまして、様々な分野について興味を持って学ぶきっかけとなる短編の動画を配信し、都民の方々のさらに深い学びや都の関連事業の利用につなげてまいります。
 現在、組織横断のプロジェクトチームを設置しまして、ポータルサイトの運用に向けた検討を進めております。
 今後、様々な主体との連携を視野にしまして、サイトに盛り込むコンテンツや多様な学びの場の充実を図るなど、政策をバージョンアップしてまいります。
 その他のご質問につきましては、副知事、東京都技監及び関係局長から答弁といたします。
〔副知事宮坂学君登壇〕

○副知事(宮坂学君) 高齢者向けスマートフォン教室等についてお答えいたします。
 今やスマートフォンは、日常生活に欠かせないものとなっています。一方で、国の調査によれば、六十五歳を超える方の約三割の方がスマートフォンを使用しておらず、デジタルの利便性を享受することができていません。このような年齢や能力等による情報格差を是正していくためには、高齢者が身近な場所で、その利便性を知っていただく機会の創出が重要です。
 このため、都では、年度末にかけて、区市町村や自治会と連携し、高齢者が立ち寄りやすい地域センター等を活用して、スマートフォン教室や出張相談会を開催してまいります。教室開催に当たっては、貸出し用スマホを用意するほか、地域のニーズに応じて、時間帯を選べるよう工夫いたします。
 さらに、より多くの方にスマートフォンの利便性を周知するため、都民の皆様の意見等を取り入れたリーフレットを作成し、老人クラブ等と連携の上、二十五万部配布し、教室等への参加やスマートフォンの利用促進につなげてまいります。
 また、先月、相談会に協力いただいている通信事業者やNPO団体、大学生等との連絡会を新設しました。この場では、海外のサポーター制度の事例等を参考にし、今後の支援の在り方について意見交換を行ってまいります。
 引き続き、関係各局とも連携の上、自治体の要望等をしっかりとお聞きしながら、各地域でスマホ教室等を開催し、デジタルに不慣れな高齢者のスマホ利用を促進することで、誰一人取り残すことのないデジタル社会の形成に努めてまいります。
〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 魅力的な移転先整備事業についてでございます。
 木密地域の不燃化を加速するためには、権利者の方々が安心して生活再建できるよう、コミュニティを維持しながら入居できる魅力的な移転先を確保することが効果的でございます。
 足立区江北地区の都有地では、民間活力を生かし、多摩産材を用いた木造の温かな外観に、居住者や地域の人々の交流を促す路地空間やデッキなどを備えた移転先の整備に取り組んでおります。六月には、都と事業者と連携して地元の方に事業内容を説明する機会を設け、その際に出されたにぎわいや憩いの場の創出などの要望を踏まえて、検討を進めることとしております。
 先月、本計画は、耐火性の高い木構造などが評価され、国の補助事業に採択されておりまして、年度内を目途に建設工事に着手し、令和四年度内に入居開始できるよう事業を進めてまいります。
〔総務局長村松明典君登壇〕

○総務局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、リカレント教育のポータルサイトについてですが、都の各局や都立大学等においては、学び直しに役立つ様々な教育コンテンツを提供しており、こうした情報を都民に分かりやすく発信していくことが重要でございます。
 このため、都は今年度、リカレント教育に関するポータルサイトの開設準備を進めているところでございます。サイトの構築に当たっては、各局等で実施する講座等の情報を、部署間の垣根を超え、経営、金融、ものづくりといったカテゴリー別に整理し紹介するとともに、希望する講座等を簡単に探し出せるよう横断的な検索機能の導入を検討してまいります。
 加えて、学び直しの体験談や、専門的な内容をかみ砕いて伝える解説等の動画コンテンツを充実いたします。
 こうした都民の学びを支援する取組を通じまして、誰もがスキルや知識を常にアップデートできる環境を整えてまいります。
 次に、都立大学におけるリカレント教育についてですが、社会人や高齢者などリカレント教育の対象層における学び直しのニーズは多様であり、これらを的確に捉え、効果的な教育プログラムを展開することが重要でございます。
 都立大学では、誰もが気軽に受講できる公開講座を開講しており、受講者アンケートも踏まえ、文化や歴史、健康づくりなど、ニーズの高いテーマを選定しております。
 今後は、公開講座のホームページにおいて、講座に対する意見や要望を集約する機能を新たに追加し、受講を検討中の方なども含めた幅広い声の把握に努めてまいります。
 また、対面方式とそのライブ配信を併せて行う講座の実施方法につきまして、来年度中の導入に向けて検討を進めております。
 こうした取組により、幅広い層に対して多様な学びの機会を提供してまいります。
〔福祉保健局長中村倫治君登壇〕

○福祉保健局長(中村倫治君) 四点のご質問にお答えします。
 まず、コロナ禍におけるがん検診についてです。
 昨年四月と五月に、国の通知を踏まえ多くの区市町村が検診を延期し、その後、全ての区市町村で再開されました。その結果、昨年度の国が推奨する五つのがん検診の受診者の合計は、一昨年度から約二十三万人減少の延べ二百二十二万人となっております。
 都では、区市町村に対し、感染対策を徹底した上で検診を実施するよう重ねて通知するとともに、コロナ禍により受診を控えた住民に対する受診機会の確保や、包括補助等を活用した個別勧奨などに積極的に取り組むよう働きかけております。
 今後、受診率が向上している区市町村の先駆的な取組事例を共有するなど、区市町村と連携して、がん検診の一層の受診率向上に取り組んでまいります。
 次に、企業等と連携したがん検診の受診促進についてであります。
 都では、企業や関係団体等と連携し、都民向け啓発イベントの開催やポスターの配布等を通じて検診受診の重要性を周知するとともに、ワイドコラボ協定を締結している企業のご協力を得て、顧客や従業員に対する啓発を図っております。
 また、本年九月に開設した特設サイト、コロナ禍におけるがん検診受診ガイドにおいて、企業が顧客への啓発に活用できる受診啓発用リーフレット等を掲載しております。さらに、検診会場における感染対策等を盛り込んだ受診促進のための動画を新たに作成し、今月から、本サイトに掲載しております。
 今後、この動画を、SNSなど様々な媒体を活用して広く周知することとしておりまして、企業等と連携して、がん検診の受診率向上に取り組んでまいります。
 次に、公共施設のトイレにおける大型ベッドの設置についてであります。
 都は、福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルで、望ましい整備の一つとして、車椅子使用者用トイレの一か所以上に大型ベッドを設置することとしております。
 これまで、本マニュアルの内容を区市町村との連絡会議で周知するなど、公共施設等のトイレへの大型ベッドの設置を推進しております。
 引き続き、高齢者や障害者、介助者など様々な方の意見も伺い、設置促進に向けた取組を検討し、全ての人が安心して外出できるよう、ユニバーサルデザインのまちづくりをより一層推進してまいります。
 最後に、大型ベッドの名称と情報提供についてであります。
 都は、現在、多様な利用者のニーズ等に配慮したトイレの設置管理に関するハンドブックを作成しているところであり、今後、その中で取り扱う大型ベッドについて、分かりやすい名称を提案し、広く普及を図ることを検討してまいります。
 また、公共施設等のトイレに設置された大型ベッドなどの情報は、とうきょうユニバーサルデザインナビを通じて提供しておりまして、この名称を使用し、設置場所などについて分かりやすい情報提供に努めてまいります。
〔交通局長内藤淳君登壇〕

○交通局長(内藤淳君) 日暮里・舎人ライナーの安全対策に関するご質問にお答えいたします。
 交通局では、テロ対策等に関する危機管理対策計画や各現場の異常時対応マニュアルを定めておりまして、訓練などを通じまして職員の対応力の向上を図ってございます。
 日暮里・舎人ライナーでは、日頃から駅係員等による巡回を実施しており、他社線での事件を受け、現在は緊急対応としまして、巡回時間の延長を行うなど、警備体制を増強してございます。
 また、非常通報器による通報へのご協力につきまして、ポスター等による周知に取り組んでおり、今後は、通報器の位置をより分かりやすく表示してまいります。
 さらに、防護盾等、暴漢対策用具につきまして、各駅への配備を充実することとしており、これに伴いまして、マニュアルをより実践的なものとするなど、一層の安全確保に努めてまいります。

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