令和三年東京都議会会議録第十九号

   午後三時十五分開議
○議長(三宅しげき君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十四番伊藤しょうこう君。
〔四十四番伊藤しょうこう君登壇〕

○四十四番(伊藤しょうこう君) 初めに、新型コロナウイルス対策の切り札といわれてきたワクチン接種について伺います。
 冒頭、医療従事者など、対策に当たる全ての方々に心から感謝申し上げます。
 ワクチン接種は、二月に国立医療機関の従事者に先行接種を行い、その後、遅れや混乱はあったものの順次スタートし、菅前総理が一日百万回の目標等を掲げ、加速化しました。
 対象年齢以上の全国民が対象となる未曽有の事業ですので、現場でのご苦労は多大であったと推察しますが、今後の改善を望むべく質問いたします。
 十月四日時点で、都内の接種対象者の接種率は、一回目が七五・一%、二回目が六五・八%と進んできており、政府は、希望する方全ての接種を十一月には終える方針です。
 都内の市区町村は、人口規模や地域の特性などを考慮し、接種方法を独自で立ち上げ、進めてきましたが、これまでワクチン供給の過不足や、国や都の試算による接種の想定回数と実績が乖離するケースもありました。
 接種完了まで約一か月と近づく中、都が配分調整など広域行政としての役割を果たし、今後、市区町村が希望するワクチンの供給が行われるのか伺います。
 さて、ワクチン接種は、国と都と市区町村が緊密に連携して進めることが重要です。すなわち、三回目の接種に向けても、接種順や対象をきめ細かく制度設計しないと、また現場が混乱します。
 しかし、これまでの間、報道が先行し、自治体には正確な情報が伝わらないことも多く、また、例えば医療従事者の都の予約システムも市区町村に入力負担が生じるなど、課題もありました。
 こうした経過を踏まえ、今後の制度設計に当たっては、着実かつ正確な情報提供の在り方も含めて、国に対し自治体の声を聞くように求めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 さて、都の大規模接種会場の設置は評価する一方で、大学会場はがらがらだったり、中小企業会場は終わっていたりと、ちぐはぐな状況です。よって、より効果的に実施するためには、都が企画段階で該当エリアの自治体と役割分担等の打合せをすることも不可欠です。
 今後、希望する全ての都民が二回の接種を終えても、コロナとの闘いはまだ続くので、これまでの反省や実態を踏まえ、三回目の接種を見据えて市区町村との率直な意見交換を実施するなど、連携を強化すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、コロナ禍での都政運営について伺います。
 都政の最重要課題である新型コロナ対策へ全力で取り組むことは当然です。
 昨年、最初の緊急事態宣言の際には、都も全庁的な応援体制の方針を示し、そして、今年八月には、新規陽性者の爆発的な急増という状況に鑑み、特別体制の再徹底、強化についての指示がありました。
 こうした非常事態にあっては、既存の事業の優先順位を考慮し、都民の命や健康を守るため、全庁的な応援体制を機動的に構築することは適切な対応です。
 その一方で、感染の波は数年続くともいわれていますので、都民生活に必要な業務を継続することも大切です。これまで積み重ねた知見を踏まえた上で、今後どのように対応していくのか、都の見解を伺います。
 続いて、盛土による災害の防止に向けた取組について伺います。
 今年の七月、静岡県熱海市で大規模な土砂災害が発生し、多くの人命が失われました。犠牲者の方には心からご冥福をお祈り申し上げます。
 報道によると、基準を大幅に超える高さの盛土が被害を拡大させたことや、事業者への指導の不徹底も判明し、盛土の監視、規制の在り方が課題として浮かび上がりました。
 国も八月に、この土石流被害を受けて関係府省会議を開き、盛土の崩壊による災害を防止するため、土砂災害警戒区域の上流部などの総点検を実施するとともに、対策工事や土地利用規制などの制度対応も検討することとなりました。
 こうした中、都も、都内に潜む土砂災害リスクの洗い出しを行っています。許可や届出などの有無、また、面積や土量など、手続内容と現状が一致しているかなどが点検のポイントであるそうです。
 都民の安全確保のため、この安全点検を急ぐべきですが、どのように取り組むのか伺います。
 さて、都内には大規模盛土造成地は約千六百か所、土砂災害警戒区域は約一万五千か所もあります。よって、安全性の確認や土地利用規制の改正にも時間がかかることが想定されますので、こうした間にも、いつ土砂災害が発生するかもしれません。
 一方、熱海の災害では、自然地内の不適切な盛土が問題となりました。都は、四年前に八王子市内で発生した盛土の崩落事故を踏まえ、許可基準や監視機能を強化する自然保護条例の規則の改正等を行っており、これに基づく安全対策は一定の効果が期待できます。
 今回の点検で不適切な盛土が確認された場合、近年激甚化する自然災害を踏まえると、速やかな安全対策に取り組むべきですが、都の見解を伺います。
 さて、盛土による災害の防止に向けた取組については、法令の取扱いにより、関係所管は庁内多岐にわたります。また、都内では、多摩地域の四市二町が残土条例を施行していますが、今後、都庁内や地元市町とどのように連携して、実行力ある安全対策に取り組むのか伺います。
 コロナ禍で遠距離旅行が制限される中、都心から気軽に行ける自然豊かな多摩地域の多くの観光スポットが各種メディアで取り上げられています。
 その中でも、明治の森高尾国定公園内に位置する高尾山は、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化、伝統を語る日本遺産として、文化庁により昨年都内で初めて認定されました。日本遺産は、高尾山をはじめとする八王子市内の二十九の有形無形の文化財群で構成されており、地元の期待も大きいものがあります。
 高尾山頂には、都が管理する高尾ビジターセンターがあり、来園者に対して自然公園の情報提供をしていますが、日本遺産の認定を契機とした高尾の自然や文化など、魅力の紹介に積極的に努めるべきと考えますが、今後の取組を伺います。
 さて、我が党は自然豊かな多摩の観光振興の強化を政策に掲げており、都も観光資源の開発や受入れ環境の整備への支援を進めています。
 先ほどご紹介した日本遺産は、全国で百四か所、都内で唯一が「霊気満山 高尾山─人々の祈りが紡ぐ桑都物語─」です。日本遺産は、数年ごとに見直しが行われるため、その魅力を磨き上げていくことも大切です。年間三百万人を数えた来山者もコロナ禍で激減しましたが、地元市や地域も日本遺産の認定を機にさらなる魅力アップに取り組んでいます。
 それでは、高尾山の魅力づくりをはじめ、多摩の観光振興に今後どのように取り組むのか、知事の見解を伺います。
 次に、多摩地域の持つ産業集積の強みを生かし、広域的な産業交流の中核を担う多摩産業交流センターについて伺います。
 多摩地域の製造品出荷額は、都全体の約六割を占め、きらりと光る技術を持つ多数の中小企業が事業を展開するとともに、大学などの研究機関も集積しています。こうした特性を踏まえ、地元自治体や経済界とも連携して、整備効果を発揮すべきです。
 現在、コロナ禍で大規模なイベントなどは制限されており、施設の稼働も懸念される中ですが、開業まで一年余りとなりました。
 今後、積極的な活用を促すため、開業に向けた様々な準備を進めることになりますが、どのように開業後の整備効果を上げていくのか伺います。
 次に、オリンピアン、パラリンピアン等のアスリートの学校現場への参画についても伺います。
 国際大会で活躍したアスリートが、引退後もそのスポーツのすばらしさを伝える環境づくりは重要です。そして、トップアスリートに教員として働いていただき、培った技術や経験を学校教育やスポーツ振興に生かすことも、オリ・パラのレガシーとなり得ます。
 通常、教員になるためには、教職課程を履修して、教員免許を取得することが必須ですが、例えば特別研修で教員の基礎知識を身につけることや、特別免許状を活用するなど、導入に向けて本腰を入れるべきであります。
 また、パラリンピアンが教育の場に参画することで、障害がある方への理解の促進にもつながります。
 現在でも熱意あふれる体育教員も数多く在籍していますが、小中高校で世界レベルで活躍したアスリートの体育教員がいれば、授業だけでなく、部活や地域のスポーツ振興にも寄与し、多忙な一般教員の負担軽減にもつながります。
 よって、都はオリ・パラ開催都市でもありますので、オリンピアン、パラリンピアン等のアスリートの学校現場への参画に全国に先駆けて取り組み、教育の質の向上につなげていくべきと考えますが、都の見解と今後の取組を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 伊藤しょうこう議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩の観光振興についてのお尋ねでございます。
 多摩地域は、豊かな自然と地域で代々育まれてきた歴史や文化、伝統など、多様な魅力にあふれています。今後、国内外からの誘客を図る上では、こうした地域ならではの魅力を活用した観光振興は重要であります。
 お話の高尾山ですけれども、日本遺産に認定されたということから、地元の自治体等におきましても、その周辺の寺社や祭りを活用したイベントなど、地域の魅力の発信を計画しており、都はそうした取組を支援してまいります。
 これらに加えて、感染拡大の防止を図りながら、食やスポーツなど、多摩地域の様々な魅力を満喫していただくロングステイを推進していきます。
 今後も地域の皆様と力を合わせて、環境にも配慮しつつ、持続可能な多摩の観光振興を推進して、にぎわいと活力に満ちた多摩の未来へつなげていきたいと考えております。
 その他のご質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁させていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) アスリートの学校現場への参画についてでございますが、競技の専門的知識や技能などを有しているアスリートが外部人材として継続的に学校教育に参画することは、教育の質の向上を図る上で有効でございます。
 都教育委員会では、今年度から、小学校において教員免許を保有してはいないものの、一人で授業を行える専門性を有する外部人材を講師として任用する取組を、外国語活動の分野において開始したところでございます。こうした人材の中で、特に資質が高く、校長などからの推薦がある者については、年間を通して教員として活動できる特別免許状を授与することも予定をしております。
 今後、学校からの希望が多い体育の分野においても、アスリートなどが活躍できるよう、人材の発掘や確保、事前研修の実施方法などの検討を行い、子供たちの学びの充実に向けた取組を推進してまいります。
〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 盛土に対する取組についてでございます。
 成長と成熟が両立した持続可能な都市の実現に向けて、都民の希望と活力の大前提となる安全・安心を確保するためには、土地利用の規制等に関する法令を適切に運用していくことが重要でございます。
 都は、新規の土地の造成等に対して、これまでも各法令を所管する関係局等が適宜連携し、関係法令を運用してまいりました。
 今後も関係局が地元区市町村とも連携し、密接に情報共有を図るとともに、各法令に基づき、宅地所有者等に対しまして、盛土に係る災害の未然防止のために適切に指導等を行ってまいります。
 災害の脅威から都民の生命が守られる強靭な東京の実現に向けて、盛土の安全対策に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、新型コロナワクチンの供給についてでございますが、八月までのファイザー社ワクチンの供給は、国が区市町村ごとの希望量や人口規模のほか、在庫率や接種の進捗状況等も踏まえて配分したことから、自治体の接種計画とワクチン供給量とに乖離も見られました。
 九月以降は、都道府県が配分調整を行うことに変更され、都は、区市町村ごとの供給量に不均衡が生じないよう、ファイザー社ワクチンの供給量に加え、職域接種等におけるモデルナ社ワクチンの接種見込み数等も考慮した上で配分することといたしました。
 今後、各区市町村の接種の進捗や予約状況等を踏まえ、区市町村間におけるワクチンの過不足調整を行うなど、十一月中の接種完了に向け、広域的観点から自治体の取組を支援してまいります。
 次に、追加接種に関する区市町村への情報提供についてでございますが、国は三回目の接種の対象者を、二回目接種完了後おおむね八か月以上経過した方との考えを示しており、本年十二月の接種開始に向け、様々な準備を進めていく必要がございます。
 今後、区市町村は、現在進めている住民接種と並行して、接種券の発送などの事前準備を行っていくことになるため、円滑に準備できるよう、これまで以上に丁寧で時宜にかなった情報提供を行ってまいります。
 あわせて、国に対し、三回目接種に関する詳細な情報の迅速な提示や滞りない安定的なワクチンの供給など、現場の実情を踏まえた自治体の意見を十分に踏まえた対応を行うよう要望してまいります。
 最後に、追加接種に関する区市町村との連携強化についてでございますが、国は、本年十二月の三回目接種開始に向け、区市町村は、住民が住所地で接種を受けられるよう接種体制を確保し、都道府県は、区市町村を支援しながら進捗管理を行うとの役割分担を示しており、接種を円滑に進めるには、それぞれの役割に応じ、緊密に連携しながら、協働して接種を推進する必要がございます。
 都は、区市町村との意見交換の機会を積極的に設け、国の動向や制度の詳細などについて認識や情報の共有を図ってまいります。
 また、接種が迅速に進められるよう、これまでの接種の実態を踏まえ、体制の整備や役割分担、実施方法等について、都と区市町村、医療関係団体で構成するワクチンチーム等を活用し、丁寧に調整してまいります。
〔総務局長黒沼靖君登壇〕

○総務局長(黒沼靖君) コロナ禍における都の業務執行体制の運用についてでございますが、非常時には、新たに発生した緊急性の高い業務に対応するため、既存業務を優先度に応じて見直した上、マンパワーをシフトし、体制を確保することが重要でございます。
 都はこれまで、依命通達に基づき都政の特別体制をしくとともに、医療非常事態にはこれを強化することで、BCPによる既存業務の休止や縮小を行い、全庁的に応援人員を確保し、感染症対策に最大限投入をしてまいりました。
 一方で、都民生活や都市機能を維持する業務につきましては、執行上の様々な工夫を行った上で継続をしてきております。
 コロナとの闘いが続く中、今後の感染症や医療提供体制の状況等に応じまして、これまで培った経験を生かし、迅速かつ臨機応変に対応できる体制を整えることで、感染症対策と都政の各事業との両立を図ってまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 都内に存在する盛土の安全点検についてでございますが、盛土に起因する土砂災害を防止するためには、その状況を把握し、必要な対策を実施することが重要でございます。
 七月の熱海市における土石流災害を踏まえまして、都は、土地利用の規制等に関する法律や条例を所管する四局が連携して、盛土による災害防止に向けた総点検を実施しているところでございます。
 具体的には、土砂災害警戒区域や山地災害危険地区の上流域、大規模盛土造成地等にある盛土、約千六百か所を点検対象としまして、必要な措置の実施状況などについて、目視等により点検を行っております。
 今後、年内を目途に、点検結果の暫定的な取りまとめを実施する予定でございます。
 引き続き、国などの関係機関と連携し、盛土の状況の早期の把握に向け、着実に取り組んでまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、不適切な盛土が確認された場合の対応についてでございますが、現在実施中の盛土の総点検の過程で災害をもたらすおそれがある盛土の存在が判明した場合には、速やかな安全対策への取組が重要でございまして、関係各局は、所管する法律や条例に基づき、速やかに対応策を検討してまいります。
 自然保護条例の開発許可制度におきましては、災害の未然防止を図るため、盛土対策を強化し、法人はもとより、代表取締役等個人にも指導するとともに、地元自治体と不適切な盛土情報の共有を強化してまいります。
 今後、関係各局とも必要な情報を共有することにより、都内全体の不適切な盛土の安全対策に向け取り組んでまいります。
 次に、高尾ビジターセンターの今後の取組についてでございますが、ビジターセンターは、自然公園利用者のために、周辺の自然や歴史、文化を展示解説するなどの情報提供を行うための施設でございます。
 高尾山を含む自然公園区域内には、日本遺産を構成する八王子城跡や獅子舞などの有形無形の文化財群が多く存在し、これらの価値を理解することは、自然と文化の多様性、豊かさを実感することにつながります。
 そのため、地元八王子市と連携し、日本遺産を構成する文化財群への理解が深まるよう、高尾ビジターセンターにおいて、日本遺産を紹介するパネル展や専門家によるガイドウオークなどについて検討してまいります。
 今後とも、ビジターセンターを通じて、多くの方々に自然と文化の調和した自然公園の魅力を発信してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 多摩産業交流センターについてですが、企業や研究機関が集積する多摩地域の特性を生かして、多様かつ広域的な産業交流を創出するとともに、地域の方々や事業者から親しまれる施設としていく必要がございます。
 このため、都では、多摩地域はもとより、都域を超えた広域的な連携につながりますよう、開業前から近隣の県や市、大学や経済団体などと、センターの効果的な活用方法などについて意見交換を行ってきているところでございます。
 また、地域に根づいた施設となりますよう、PRも兼ねて、本年六月より愛称の公募を行ってきており、広い世代の方々から約八百件の応募をいただいております。
 開業後は、こうした事前の準備を生かしまして、多くの展示会やイベントを呼び込むことで、企業交流を通じた新たなビジネスの創出や地域の活性化につなげてまいります。

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