令和三年東京都議会会議録第七号

○副議長(橘正剛君) 百三番里吉ゆみさん。
〔百三番里吉ゆみ君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○百三番(里吉ゆみ君) 日本共産党都議団を代表して質問します。
 新型コロナの感染拡大から一年が経過しました。感染が広がる中で、暮らしも商売も大変になっている。飲食店の経営者からは、もう限界だという声が寄せられています。
 総務委員会の質疑で、営業時間短縮要請に協力していない飲食店を巡回し、事業者からは、現行の協力金の額では足りないという意見が寄せられていること、この声については、庁内関係部署と共有することで、コロナ対策に連携して取り組んでいくとの答弁がありました。
 知事は、寄せられたこれらの声をどう受けとめましたか。
 私は、新宿歌舞伎町で飲食店を経営している方々からお話を伺ってきました。この一年間ずっと自粛、時短要請に応えてきた、従業員やアルバイトの生活も考え、必死に頑張ってきたが、先が見えないと訴えられました。今後、お店をあけるかどうかについては、アルバイトの三人に直接意見も聞いて決めていきたい、アルバイトの生活がかかっているからという話には胸が熱くなりました。
 経営者の方々は、どんなに大変でも、店も従業員もアルバイトの生活も守ろうと頑張っています。しかし、支払われる協力金だけでは、本当に厳しいのが現実です。
 事務費を除いた協力金の補正予算は一千八億円ですが、そのうち国庫支出が九九%です。都独自の支援を上乗せして、事業規模に応じた補償にすべきですが、知事、いかがですか。
 滋賀県では、緊急事態宣言で影響を受けた中小企業への売上確保支援補助金、国の一時支援金への上乗せなど、県独自の支援を行っています。
 都は、四月一日以降の国のリバウンド防止期間においても、引き続き営業時間の短縮要請を行うこととしていますが、国の一時支援金は増額されていません。国が上乗せをしないのであれば、都が独自に支援すべきですが、いかがですか。
 都は、四月一日から二十一日まで、リバウンド防止期間として、飲食店等の営業時間を五時から二十一時までに短縮する要請を行い、協力金を支給します。
 予算特別委員会の締めくくり総括質疑で、都内の主要繁華街滞留人口について、昼間は一月の緊急事態宣言以降、増加傾向が続き、抑制できていない状況が明らかになりました。
 しかし、期間を四月二十一日までにしたこと、飲食店の営業時間短縮要請への協力金のみの対策になった根拠が不明確です。事業者へのリバウンド防止対策は、夜の営業自粛要請だけです。知事、本気でリバウンド防止の対策になると考えているのですか。
 飲食店の経営者の方々からは、いつも飲食店がターゲットにされてきた、一年たってももとに戻れない、それどころか変異株が増えると報道されているなど、怒りと不安の声が寄せられています。安心して商売できるように、都内の主要な繁華街などで徹底した検査をしてほしいという要望も強まっています。
 我が党は、この間繰り返し要望してきましたが、経済活動を行う前提として、徹底した検査を行うよう改めて要望するものです。
 リバウンド防止というのであれば、検査の抜本的強化こそ求められています。しかし、今回の補正予算案には、検査の充実のための予算は含まれていません。
 感染拡大を把握するためのモニタリング検査が始まったことは前進ですが、今のところ、江戸川区と非公開の交通要所での検査に限られています。交通要所での検査は二十日から始まっていますが、キットの配布数は二十一日までに六十二人にとどまり、余りにも少な過ぎます。
 広島県は、独自に県内五カ所のPCR検査センターで、飲食店、医療機関、介護施設などの従事者、関係者が無症状でも検査を受けられるようにしています。さらに、広島市内に二カ所の検査場所を設置し、場所を公表し、在住、在勤者の誰でも検査を受けられるようにして、感染状況の把握に役立てています。
 全国で感染者が一番多い東京こそ、独自のモニタリング検査を積極的に実施し、感染再拡大をいち早く把握するべきです。知事、いかがですか。
 主要な繁華街や交通要所の全てで行うことはもちろん、商店街の空き店舗、商業施設やまちの広場など、人が立ち寄りやすい場所に、誰でも検査を受けられる検査スポットを設置して公表し、都内で万の単位でモニタリング検査を行うよう求めます。いかがですか。
 院内感染などを防ぐための医療機関の職員や患者などへの検査も重要です。
 葛飾区で医療機関での定期的検査が行われるようになったのは重要ですが、葛飾区内には病院だけで二十二カ所あるのに対し、検査が行われるのは三カ所にとどまっています。検査を全ての医療機関に広げた上で、都内全域に広げていく必要があります。いかがですか。
 昨日行われたモニタリング会議の総括コメントでは、今後、変異株等により急激に感染の再拡大が起こる可能性があると指摘しています。リバウンドを防止するために重要なのが変異株への対策です。しかし、現在の都の変異株検査の実施割合は一〇%前後と大きく立ちおくれています。
 東京iCDC専門家ボードのメンバーでもある長崎大学の柳原克紀教授は、変異株検査は全検体を対象に実施するべき、現状の体制でも十分対応ができるうちに迅速に実行するべきと述べています。
 知事、迅速に検査数を引き上げ、全数検査を行うべきではありませんか。そのために、民間検査機関についても、都として独自に契約をするなど、あらゆる手段で変異株検査を増やすべきですが、いかがですか。
 神戸市で七割近い変異株検査が実施できているのは、管内のPCR検査の多くを地方衛生研究所で実施しているからです。
 一方、東京では、PCR検査の約九三%を民間検査機関が占めることが変異株検査を増やす上で課題とされています。これは、都の健康安全研究センターの検査能力が、東京都の人口に対して低過ぎることが変異株検査の遅れの原因だということではありませんか。知事、いかがですか。
 パネルをごらんください。二〇一〇年に行われた地方衛生研究所アンケートによれば、全国の地方衛生研究所の管轄人口の平均は百六十七万人ですが、都の地方衛生研究所である健康安全研究センターが管轄する人口は一千二百四十六万人と桁違いに多く、二番目の自治体と比べても二倍以上です。
 知事、現在では人口一千四百万人を超えている東京都で、地方衛生研究所が一カ所しかないのは少な過ぎると思いませんか。健康安全研究センターの強化が必要です。多摩地域や二十三区東部地域などに都の地方衛生研究所、健康安全研究センターを増設することを提案するものです。
 最後に、第四波の懸念がある中で、医療機関への支援は重要です。
 補正予算では、コロナの流行で減収などの影響を受けた医療機関へ融資を行う金融機関への利子補給が増額されました。これは、利用件数が当初の想定を大きく上回り、利用見込みが五十五件から百三十九件に引き上げられたことによるものです。融資総額の見込みでも二・四倍の六百五十億円となっています。
 医療機関の経営が想定を大きく上回って深刻であることのあらわれだと思いますが、知事はどう認識していますか。
 ある中小病院では、昨年五億円を借り、来年度には借りたお金が足りなくなる可能性があると話しています。もう一度借りたくても返済のめどが立たず、借りられないという状況になっています。こうした医療機関を含め、資金の支援を必要としている医療機関はもっとあります。
 経営を続けていくためには、給与など職員の処遇を下げるという選択をせざるを得ないところまで追い詰められている医療機関も少なくありません。どのように医療従事者を守っていくのかが国と東京都に問われています。
 利子補給だけでは医療機関を支え切れません。改めて、国に減収補填を求めるとともに、都独自で医療機関へのさらなる財政支援に踏み出すことを強く求めますが、いかがですか。答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 里吉ゆみ議員の質問にお答えいたします。
 寄せられた声への受けとめについてであります。
 長引く感染症の影響を受ける飲食店の皆様には、たび重なる要請で多大なご負担をおかけいたしております。何としても感染の再拡大を防ぐため、ご理解、ご協力のほどお願いを申し上げます。
 引き続き、飲食店を初めとしたさまざまな中小企業に対しましては、資金繰りの支援、経営相談、そのほか感染防止対策への支援など、多面的な施策を講じてまいります。
 感染拡大の早期の把握についてでございます。
 現在のリバウンド防止期間におきましては、戦略的に検査を進めていく必要がございます。
 都は、保健所と連携をいたしまして、医療機関の職員、特定のエリアの飲食店を対象といたしました検査を行うほか、国と協力したモニタリング検査も実施をしております。
 新型コロナウイルスの変異株についてのご質問であります。
 昨年十二月、東京iCDCでゲノム解析検討チームを立ち上げまして、変異株の有無を確認する検査を開始いたしました。これまでに三千二百件を超える検査を行って、二十一例の変異株が確認されたとの報告を受けております。
 都は、変異株の早期探知に向けまして、新規陽性者に対してのスクリーニング検査の割合を、まず四月上旬を目途に約二五%、その後四〇%を目指して、早期に拡大をしてまいります。
 医療機関への利子補給についてでございます。
 都は、東京都医師会を通じまして、医療機関に対して事業内容等の周知を行ってまいりました。
 この結果、今月十九日の時点で、既に想定を上回る申し込みをいただいておりまして、支援を必要とする医療機関に活用されていると認識をいたしております。
 残余のご質問は、関係局長から答弁をいたします。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、事業規模に応じた協力金の支給についてですが、協力金の支給金額については、営業時間の短縮要請の内容や国の臨時交付金の活用など、さまざまな要素を勘案して設定しております。
 なお、この協力金に関しまして、仮に事業の大きさに応じて支給額に差をつける場合、その規模をあらわす指標を決めることが必要となります。こうした指標が自治体ごとに異なると、新たな不公平感を生むおそれがございます。
 このため、事業規模に応じた協力金制度の構築につきましては、一都三県で連携して繰り返し国に要望しているところでございます。
 次に、事業者への支援についてですが、国の一時支援金については、実施主体である国に対して、支給額の増加や申請要件の緩和など制度拡充を図るよう、一都三県で連携して繰り返し要望してきたところでございます。
 都といたしましては、今後とも、中小企業の資金繰り支援や相談対応など、経営の下支えに取り組むとともに、事業者が行う感染防止策への支援などを適切に実施してまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) リバウンド防止期間の設定等についてでございますが、国は、緊急事態宣言の解除後の対策の緩和につきましては、段階的に行い、必要な対策はステージツー相当以下に下がるまで続けることとしてございます。
 このため、都は、感染の再拡大を防ぎ、感染を徹底的に抑え込むため、国の方針や一都三県との調整を踏まえ、当面、四月二十一日までの間、不要不急の外出や飲食店等への営業時間短縮の要請等を引き続き実施することに加えまして、検査、医療提供体制の強化などの対策を実施してまいります。
〔福祉保健局健康危機管理担当局長初宿和夫君登壇〕

○福祉保健局健康危機管理担当局長(初宿和夫君) 五点のご質問にお答えをいたします。
 まず、モニタリング検査についてでございます。
 お話のモニタリング検査は、緊急事態宣言が解除された地域などでの感染再拡大を早期に探知するよう、繁華街等で幅広くPCR検査を行い、感染状況をモニタリングし、そのデータを分析して感染拡大の予兆を早期に探知し、早期の対応につなげていくためのものでございます。
 検査の実施場所につきましては、具合の悪い方の利用や混雑による密の発生を避ける必要があり、原則非公開とされております。
 引き続き、感染状況に応じて適切に検査を実施してまいります。
 次に、新型コロナウイルス感染症の検査についてでございます。
 既に複数の医療機関と調整を始めており、引き続き感染状況を踏まえ、他の地域でも戦略的に展開してまいります。
 次に、民間検査機関での変異株検査についてでございます。
 都は、変異株の感染状況を把握するため、健康安全研究センターに加え、民間検査機関でもスクリーニング検査を実施してございます。
 今後、変異株の急速な拡大も懸念されますことから、監視体制のさらなる強化のため、スクリーニング検査を実施していない民間検査機関に対して、検査実施を働きかけてまいります。
 次に、変異株検査についてでございます。
 都では、昨年十二月から、健康安全研究センターで変異株の有無を確認するスクリーニング検査を実施しております。
 その上で、検査監視体制のさらなる強化のため、都内新型コロナウイルスのPCR検査全体の約九割を実施している民間検査機関等が、さらにスクリーニング検査に取り組むよう働きかけております。
 最後に、地方衛生研究所についてでございます。
 地方衛生研究所全国協議会が直近で実施した平成三十一年の調査によりますと、都道府県が設置する地方衛生研究所の人口十万人当たりの常勤職員数は全国平均で約二・四人でございまして、都の健康安全研究センターは約二・六人となってございます。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 医療機関への財政支援に関するご質問にお答えいたします。
 都は、新型コロナウイルス感染症の発生以前から、医療機関の代表者や地域の関係者などにより構成する会議などで継続的に議論している地域の医療課題等を踏まえまして、医療機関の実情に応じた支援を拡充するよう国に働きかけております。
 また、新型コロナ患者等を受け入れている医療機関に対しましては、病床確保料や新型コロナ外来の運営費等を支援するとともに、入院患者を受け入れた医療機関に対しましては、経営基盤を包括的に支援するための臨時支援金を交付しております。

○議長(石川良一君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時四十六分休憩

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