令和三年東京都議会会議録第四号

○副議長(橘正剛君) 六十九番鳥居こうすけ君。
〔六十九番鳥居こうすけ君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○六十九番(鳥居こうすけ君) がん対策について質問します。
 昨年当初から続く新型コロナウイルス感染症の蔓延により、多くの医療資源が感染症対策に割かれ、がん検診やがん治療を含む一般医療が圧迫されております。
 東京都のがんによる死亡者数は、二〇一九年には三万四千八十二名に上り、一九七七年以降、死亡原因の第一位です。また、二〇一六年以降、二人に一人が一生の間にがんと診断されると推計されております。
 都民の誰もが、がんにかかる可能性がございます。我々都民ファーストの会は、がんとの共生などの施策を総合的かつ計画的に推進するよう訴えてきました。
 がんの対策で最も重要なことは、がんにならないための予防対策です。
 がんの予防対策としては、喫煙、食生活、運動、その他の生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響などのがんの予防に関する知識の普及啓発、受動喫煙防止の推進などが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 また、児童生徒ががんについての理解を深めるためには、学校におけるがん教育の推進が重要と考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 不治の病といわれていたがんも、近年のがん医療の技術進歩により、転移が起こる前に発見された多くのがんについては、患者の九割近くが、診断後五年たっても生存していることが報告され、克服することが可能といわれております。
 そのためには、自覚症状がないうちから定期的にがん検診を行い、早期発見、早期治療につなげることが大切です。
 がんの早期発見対策としては、がん検診の重要性に関する普及啓発を通じた検診の受診促進と、がん検診の精度管理の向上、がん検診に携わる医療関係者への研修などが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 がん医療対策としては、がん患者が、居住する地域にかかわらずひとしくがんの状況に応じた適切ながん医療を受けることができるようにするため、がん診療連携拠点病院における専門的ながん医療の提供、がん診療連携拠点病院を中心とした関係医療機関の連携が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 近年、具体的な対策が始まったAYA世代のがんに対し、我が会派からも、都におけるAYA世代のがん患者への支援をたびたび要望し、多様なニーズに応じた支援策の必要性が明らかとなり、対策が進展しました。
 AYA世代のがん患者は、比較的人数が少なく、標準治療が確立されていない希少疾患も多いため、その対策として、希少がん対策と連携した診療対策の構築、AYA世代特有の精神的サポート体制の確立などが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 AYA世代では、女性のがん患者が非常に多く、特に二十歳以降は約八割の患者が女性です。子宮頸がんや乳がんが若い世代に多いためとされております。
 女性は男性に比べ、働き盛りの時期にがんを患いやすく、二〇一七年度の厚生労働省調べでは、女性のがん患者数は、三十代で男性の約二・四倍、四十代では約二・六倍に上ることが示されました。
 国内の女性就業者数が三千万人と、全体に占める割合が四四%に高まる中、女性の健康を支え、その能力が最大限に発揮されるよう、女性特有のがん対策は、企業にとっても重要な課題と認識されつつあります。
 乳がん、子宮がん、その他女性に特有のがん対策を推進するため、女性に特有のがんに罹患しやすい年齢等を考慮した、女性に特有のがんに関する正しい知識の普及啓発が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 二〇二〇年にネイチャージェネティクスに掲載された論文によると、世界のがん発症原因の約三割がウイルスや細菌による感染性要因であることが報告されました。
 また、二〇一二年の論文では、日本人のがんの症例のうち、感染性要因は、男性では喫煙に次いで二番目、女性は最も大きな要因であることが報告され、日本人のがんの原因の約二割と推計されました。
 最近では、C型肝炎の治療が進展しつつありますが、ウイルス感染ががん発症原因のほぼ全てを占める子宮頸がんの死亡率が上昇していることも大きな問題と認識されております。
 そのため、例えば、ヒトパピローマウイルスによる子宮頸がんなど、ウイルスなどに感染することによって発症するがんについては、早期発見のための必要な検査、子宮頸がんワクチンの有効性などの知識の啓発が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、がん患者の就学、就労、療養の支援及び緩和ケアについて伺います。
 がんの治療と就学や学習との両立のため、小児がんに罹患した児童生徒が円滑に学習できるよう、必要に応じて遠隔授業を行うなどの配慮が必要と考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 また、がん患者が働き続けることができるよう、事業者や従業員への普及啓発を行うとともに、職場における支援体制を整えることが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 がんに罹患しても安心して暮らせる環境を整備するため、がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの確保、居宅においてがん患者に対し、がん医療を提供するための連携協力体制の確保などが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 緩和ケアの充実を図るため、国及びがん診療連携拠点病院などと連携し、診断直後からのケア、緩和ケアに関する専門的な知識及び技能を有する医師、看護師、その他医療関係者の育成及び確保などが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 都民の誰もががんにかかる可能性がある中、一方で、先人たちの献身的な努力により、がんに関する知見が全国的に蓄積され、医療技術の向上も相まって、がんの予防や治療、さらには、患者や患者家族の支援を進展させようとする環境は着実に整いつつあります。
 そのような中、二〇〇六年から二〇一九年までの十四年間で、四十二の道府県が時代のニーズや地域の要請を受け、がん対策推進条例を制定、地域社会と一体となって、がんの克服に取り組んでおります。
 一方で、がん検診の受診率、感染性要因のがん対策などの改善すべき課題も残され、また、小児、AYA世代や働く世代のがん対策など、新たに解決すべき課題も生まれております。
 都においても、がん対策をより一層推進していくさらなる対策を進めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、児童相談所について伺います。
 都内の児童相談所が対応した虐待相談件数は、令和元年度、二万一千六百五十九件と過去最多を記録し、児童の一時保護の件数も増え続けております。コロナ禍で、家庭内のストレスが虐待のリスクを高めることも懸念されており、児童福祉司はまだまだ不足している状況です。
 児童虐待が深刻化する中、児童相談所の専門職の人材確保について、働きやすい環境づくりも含め、都はこれまで以上に力を入れていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 児童相談所の虐待対応には、一時保護などの強い法的権限が与えられております。その権限をちゅうちょなく行使するためには、高い専門性に基づいたケースワークが求められます。児童相談所の高い専門性を支える児童福祉司の人材育成に向け、他の道府県をリードするような取り組みを進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 急増する児童虐待相談に対応するためには、人材の確保、育成だけではなく、児童相談所業務におけるDXを積極的に推進するべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 我が会派の代表質問に対しご答弁いただいた、新たな予防的支援のモデル事業を着実に実施いただき、将来、デジタルを活用した課題、傾向の見える化など、新たな未然防止策を構築いただくことを要望して、次の質問に移ります。
 ヘルスケア産業の振興について伺います。
 人生百年時代を迎えつつある中で、機能性表示食品制度は、食品に含まれる健康増進や予防医療の効能を科学的根拠に基づいて発見、表示して商品化することを促し、技術向上やヘルスケア産業の育成、発展のみならず、消費者利益、さらに、年間四十兆円にも上る医療費の抑制にも寄与しております。
 私は、健康長寿首都の実現に向け、化粧品及び食品を対象としたヘルスケア産業の支援を通じて、都のさらなる成長の足がかりにするよう尽力してまいりました。
 健康長寿首都の実現に向けて、予防医療や健康増進に寄与する技術、製品開発に意欲的に取り組む中小企業に対する育成支援の取り組みを充実させるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、ヘルスケア産業の振興に向けて、化粧品分野とあわせて、食品分野においても、中小企業に対する支援を展開するべきと考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、杉並区における浸水被害対策事業について伺います。
 地元杉並区では、平成十七年九月、いわゆる杉並豪雨により、多大な浸水被害が発生しております。
 また、杉並区阿佐ヶ谷北から中野区東中野にかけて、かつての桃園川を下水道幹線として利用して浅く埋設された桃園川幹線があり、浸水しやすい地形となっております。
 現在、この桃園川幹線を増強する第二桃園川幹線を整備しておりますが、早期の浸水被害軽減に向けた取り組み状況について伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 鳥居こうすけ議員の一般質問にお答えいたします。
 がん対策の推進についてであります。
 私自身は、末期の肺がんと診断されました母を自宅でみとった経験がございます。母は、肺がんの宣告を受けた際に、手術、化学療法を選ばずにがんとの共生を選んで、残された人生を楽しく過ごす選択をいたしたわけであります。
 都は、都民ががんになっても、罹患する前と変わらず自分らしく生活を送ることができるよう、平成三十年の三月、第二次改定を行いましたがん対策推進計画に基づきまして、総合的な対策を展開いたしております。
 計画におきまして、科学的根拠に基づくがん予防、がん検診の充実、患者本位のがん医療の実現、尊厳を持って安心して暮らせる地域共生社会の構築、この三つを全体目標として掲げております。
 この目標を達成するため、がんの早期発見に向けました取り組み、患者及び家族が安心できるがん医療提供体制の推進、小児、AYA世代、働く世代及び高齢者のライフステージに応じたがん対策の取り組みなど、さまざまな施策を推進いたしております。
 また、専門家や患者団体などから成りますがん対策推進協議会を設置いたしまして、目標の達成状況の評価、検証を行うとともに、患者、家族、企業などの多様なニーズを分析して的確に対応するため、がんに関する実態調査を行い、その結果に基づいて、新たな政策を検討、実施をいたしております。
 令和三年度は新たに、がん登録を活用した検診の精度の向上を図るほか、相談、生殖機能温存など、AYA世代への支援を充実してまいります。
 今後とも、都民、医療機関及び関係団体等と連携を図りながら総合的な施策を進めて、都民の一人一人ががんを知り、がんの克服を目指す社会を実現してまいります。
 児童相談所の人材の確保についてであります。
 深刻化する児童虐待に迅速かつ的確に対応するためには、児童相談所の体制強化を図るとともに、それを支える専門性の高い人材を確保していくことが不可欠でございます。
 都は来年度、児童福祉司や児童心理司を五十九名増員するほか、優秀な人材を継続的に確保できますよう、児童相談センターに採用活動を担当する専任チームを新たに設置をいたします。この専任チームは、大学や福祉人材の養成機関を訪問しまして、教員や学生に対して直接PR活動を行います。
 また、多くの方に児童相談業務への関心を持っていただけるよう、訴求効果の高い広報動画等を作成いたしまして、SNS等を活用して広く発信をしてまいります。
 加えまして、学生と専任チームが双方向にやりとりできる専用サイトを開設しまして、就職活動の段階から実際に就職するまでの間、採用セミナーや職場体験の案内などの情報発信、相談や質問への対応など、サポートを行ってまいります。
 さらに、新入職員などにとりましてより働きやすい環境を整備するため、職員専用住宅の借り上げも開始する予定といたしておりまして、今後、児童相談所の人材確保に向けた取り組みを一層強化してまいります。
 その他のご質問につきましては、教育長及び関係局長から答弁といたします。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、学校におけるがん教育についてでございますが、がんは、生涯のうちに国民の二人に一人がかかるとされる重要な健康課題であり、児童生徒が発達段階に応じてがんに対する理解を深め、健康や命の大切さについて学び、適切に対処できる実践力を育むことが必要でございます。
 都教育委員会は、専門的知見や実体験を踏まえた指導の充実を図るため、医師やがん経験者などを外部講師として招き、授業に生かすよう学校に周知するとともに、東京都医師会等と連携して、講師派遣の体制を整えているところでございます。
 また、がんについて学ぶリーフレットを作成し、毎年度、全公立学校に配布して、授業での活用を促しております。
 今後とも、児童生徒が、がんやがんと向き合う人々に対する理解を深め、ともに生きる社会づくりに寄与する資質や能力を高められるよう、学校を支援してまいります。
 次に、小児がんに罹患した子供の教育についてでございますが、都立特別支援学校では、入院して治療を受けながら子供が継続的に学べるようにするため、病院内に設置した分教室や教員の病室訪問などにより、きめ細かい指導を行いますとともに、入院に伴う不安をサポートするなどの支援を行っております。
 入院中の学びは、子供の体調や治療の状況に配慮しながら、個々の学習の進度や学校生活での経験に応じて行う必要がございます。
 具体的には、分教室やベッドサイドでの授業に加え、子供のペースで学習できるよう、ICT機器を活用したり、オンラインでの同級生との交流や美術館の見学などを行ったりいたしております。
 今後、都教育委員会は、子供の学びの機会の充実に向け、より一層ICT、デジタル機器の効果的な活用を促してまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 十点のご質問にお答えいたします。
 まず、がん予防対策についてでございますが、都は、禁煙、望ましい食生活、節度ある飲酒、運動など、がんのリスクを下げる生活習慣や、受動喫煙による健康影響などについて、さまざまな媒体を活用し、都民への正しい知識の普及を図るとともに、がん予防に取り組む区市町村への財政支援を行っております。
 また、従業員の健康に配慮した経営に取り組めるよう、都がこれまで蓄積していたノウハウに基づく研修を受講した東京商工会議所の健康経営アドバイザーを活用し、企業に対する支援も実施しております。
 今後とも、都民が、がんに関する正しい知識を身につけ、みずから予防に取り組むことができるよう、区市町村や関係機関と連携しながら、普及啓発等に積極的に取り組んでまいります。
 次に、がんの早期発見についてでございますが、都は、啓発イベントやホームページなどを通じて、がん検診の重要性を都民に周知するとともに、検診対象者への個別の受診勧奨など受診率向上に向けた取り組みを行う区市町村を包括補助で支援しております。
 また、検診の質の向上に向け、検診方法や精度管理について具体的に示した技術的指針や効果的な取り組み事例等を盛り込んだ手引を作成し、区市町村や検診実施機関に周知するとともに、検診実施機関を対象とした技術講習会を開催しております。
 新型コロナウイルス感染症の流行下にあっても、都民ががん検診の重要性を理解し、適切に受診できるよう、区市町村や検診実施機関を支援してまいります。
 次に、がん医療における医療機関の連携体制についてでございますが、がん医療を充実させるためには、専門的ながん医療を提供するがん診療連携拠点病院等を整備するとともに、拠点病院等と地域の医療機関が医療機能や専門性を生かした連携を推進していくことが重要でございます。
 このため、都は、がん診療連携協議会において、治療の早期からの関係者間の情報共有や退院支援、退院後のフォローアップ体制についての検討を進めております。
 また、拠点病院等が中心となり、地域の医療機関との合同カンファレンスや地域の医師などを対象とした研修会などを実施しております。
 今後とも、がん患者が身近な地域で安心して治療を継続できるよう、がん医療における医療機関の連携体制の充実を図ってまいります。
 次に、AYA世代のがん患者への支援についてでございますが、思春期から若年成人のAYA世代のがんは、患者が少なく希少がんが多いという特徴があり、また、小児がん診療科で治療を行う場合と成人診療科で治療を行う場合があるなど、診療体制がさまざまであり、医療従事者の診療経験や相談事例の蓄積が難しいという課題がございます。
 このため、都は、AYA世代のがん患者の治療を担う複数の診療科の間の連携強化や、相談支援体制の充実を図るモデル事業を実施してまいりました。
 令和三年度からは、モデル事業を踏まえ、都内二カ所の拠点病院に専門的知識を有する相談員を配置し、他の拠点病院などと連携して相談支援の質の向上を図るとともに、患者サロンやピアカウンセリングなどを実施するなど、AYA世代がん患者への支援を充実させてまいります。
 次に、女性特有のがん対策についてでございますが、都は、SNSやリーフレットを活用し、女性に対して、がん検診の重要性や正しい知識の普及啓発を行っております。
 また、女性のヘルスリテラシーの向上に向けた検討会の提言も踏まえ、女性の健康な生活や女性特有の病気に関する情報を集約したポータルサイト、TOKYO#女子けんこう部を今月開設いたしました。
 この中では、子宮頸がんや乳がんに対する正しい知識や、がん検診のメリット、デメリット、定期的な検診の必要性などについて、漫画やイラストを使ってわかりやすく解説しております。
 来月の女性の健康週間には、がん検診に理解があり、若い女性に影響力のあるインフルエンサーを起用し、SNSでサイトの周知を図ることとしており、今後とも、女性への普及啓発に取り組んでまいります。
 次に、感染症に起因するがんの予防についてでございますが、ウイルスや細菌の感染は、がん発症の大きな要因となっており、肝がんと関連する肝炎ウイルス、子宮頸がんと関連するヒトパピローマウイルス、胃がんと関連するヘリコバクター・ピロリ菌などがございます。
 このうち、子宮頸がんについては、先ほど申し上げたポータルサイト、TOKYO#女子けんこう部に、ウイルスが主な原因で発症するという特徴や具体的な検診の内容、予防のためのワクチンに関する情報などを掲載し、正しい知識の普及啓発を行っております。
 今後とも、女性がこうした情報を手軽に得られるよう、さまざまな機会を捉えて普及啓発を図ってまいります。
 次に、がん患者の療養生活への支援についてでございますが、がん患者が住みなれた地域で安心して療養生活を送るためには、がんと診断されたときから切れ目のないがん医療を受けられる体制の整備が必要でございます。
 このため、都は、二カ所の医療機関において、がん診療連携拠点病院等で初期治療を終えた患者の在宅移行に必要な機能や人材、地域との連携のあり方などを検証するモデル事業を実施しております。
 本事業では、在宅生活に必要なリハビリテーションなどの訓練や、退院後の緊急入院受け入れ体制も確保しております。
 今後、事業の実施状況を検証し、がん患者が希望する場所で安心して適切な医療が受けられる体制の構築に取り組んでまいります。
 次に、緩和ケアに携わる医療従事者についてでございますが、がん患者の療養生活の質の維持向上を図るためには、患者ががんと診断されたときから、切れ目のない適切な緩和ケアが提供される必要があり、がん診療連携拠点病院が中心となって、地域の医療機関や介護事業者等とカンファレンスや意見交換等を開催しております。
 また、国の指針に基づき、がん診療に携わる全ての医療従事者が、基本的な緩和ケアを理解し、知識と技術を習得できるよう、拠点病院などにおいて研修会を実施しております。
 今後、都が独自に拠点病院を支援して実施する緩和ケア研修会において、職種別の研修プログラムを実践していくなど、緩和ケアに携わる医療従事者の育成を図ってまいります。
 次に、児童福祉司の育成についてでございますが、都は、職員の経験年数等に応じた幅広い内容の研修や、退職した児童福祉司などによるOJTを通じて実務能力の向上を図るほか、ケースの情報共有や援助方針に関する職員同士の意見交換により、組織全体で児童福祉司のスキルアップに取り組んでおります。
 来年度は、新任の児童福祉司に対する研修に、保護者との面接の際の効果的な聞き取り方やポイントを学ぶカリキュラムを新たに加えるとともに、より理解が深まるよう、四月に加え、秋にもロールプレイング形式の演習を実施いたします。
 また、困難ケースに関して、職員への助言指導等を行う専門課長を増員し、体制を強化する予定でございまして、児童福祉司の育成を一層充実させてまいります。
 最後に、児童相談所業務のデジタル化についてでございますが、都は、業務の効率化、省力化につながる取り組みとして、児童相談所業務のデジタル化を都政の構造改革における各局リーディングプロジェクトの一つとして進めております。
 具体的には、都と区市町村が共通で虐待リスクを評価できるアプリを導入するほか、相談対応に必要なポイントを容易に入力できる相談記録システムを開発し、援助方針等の決定を支援する仕組みを構築いたします。
 また、オンラインを活用した保護者との面接や所内の会議資料の電子化、業務用スマートフォンの導入、テレビ会議システムの活用なども進めてまいります。
 職員が効率的かつ効果的に業務を進め、増え続ける児童虐待に適切に対応できるよう、今後とも、児童相談所業務のデジタル化を一層推進してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、がん患者の就業支援についてですが、がん患者の方々が安心して働き続けるためには、治療と仕事を両立できる職場環境の整備が重要でございます。
 このため、都は、中小企業等の人事担当者を対象に、治療と仕事の両立事例などを紹介する研修会を実施するとともに、治療のための休暇制度等を導入する企業に奨励金を支給しているところでございます。また、がん患者の新たな雇用や従業員の復職支援に取り組む企業を助成金等によりサポートしております。
 来年度は、復職支援に対する助成金の規模を拡充することに加えて、より多くの企業に本事業を利用していただきますよう、車内広告等を活用した積極的な周知を行ってまいります。こうした取り組みにより、がん患者の方々が働きやすい職場環境づくりを推進してまいります。
 次に、予防医療等の分野における中小企業支援についてですが、疾病の予防や健康の維持に対する人々の意識が高まり、医療や健康分野における製品、技術の開発に対するニーズが増加しております。
 都は、都政の重要課題、かつ今後の成長産業分野に該当するテーマを設定し、新製品等の開発を重点的に支援しているところでございます。本事業では、医療や健康分野も対象としており、大学や他企業との連携の促進や開発費用の助成、技術面のアドバイスなど、きめ細かな支援を提供しております。
 来年度からは、製品等の開発後、最長一年間にわたり販路開拓やマーケティングのサポートを新たに行い、着実に事業化に結びつけてまいります。
 技術や経営、資金面の手厚い支援によりまして、予防医療等の分野における中小企業の取り組みを後押ししてまいります。
 最後に、ヘルスケア産業のさらなる振興についてですが、都は、健康志向の高まりなどから成長が見込まれるヘルスケア産業への中小企業の参入を促すため、今年度、都立産業技術研究センター内に支援室を立ち上げました。
 現在、化粧品分野での支援を進めており、肌のトラブル原因となる物質に対する化粧品の効能試験や、皮膚の老化メカニズムに関する研究開発などを行っているところでございます。
 また、ことし四月には食品技術センターとの統合を予定しておりまして、機能性表示食品の開発など、バイオ基盤技術を活用した食品分野の支援も行うこととしております。このため、必要な専門人材の確保や試験機器の整備を着実に進めてまいります。
 これらの取り組みによりまして、中小企業のすぐれた技術力を生かした製品等の開発を後押しし、ヘルスケア産業の振興につなげてまいります。
〔下水道局長和賀井克夫君登壇〕

○下水道局長(和賀井克夫君) 第二桃園川幹線の取り組み状況についてでございますが、下水道局では、早期に浸水被害の軽減を図るため、中野区東中野、杉並区阿佐ヶ谷地区を対策重点地区に位置づけ、全長約七キロメートルに及ぶ第二桃園川幹線を整備しているところでございます。
 整備に当たりましては、幹線を二つの区間に分けて進めており、現在、第一期整備工事として、上流部の杉並区立蚕糸の森公園から天沼弁天池公園までの延長約四キロメートル、直径二・六メートルの下水道管を平成二十八年度から施工しているところでございます。早期に整備効果を発揮させるため、次期経営計画の期間内である令和七年度までに、第一期整備工事の一部完成した施設を暫定的に貯留施設として稼働させる予定でございます。
 今後とも、浸水対策を推進し、都民の安全・安心の確保に向け取り組んでまいります。

○議長(石川良一君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時十四分休憩

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