令和三年東京都議会会議録第四号

○議長(石川良一君) 三十番舟坂ちかお君。
〔三十番舟坂ちかお君登壇〕

○三十番(舟坂ちかお君) 初めに、大規模水害時の避難についてお伺いをいたします。
 首都圏における大規模水害広域避難検討会の推計によると、江東五区において大規模水害が発生した場合、およそ二百五十五万人が浸水のおそれのない地域へ広域的に避難する必要があるとされております。
 こうした中、令和元年十月に発生した令和元年東日本台風では、鉄道の計画運休や首都高の通行どめが実施されたほか、バスの遅延、運休が生じるなど、都民の足に大きな影響が発生し、広域避難のための手段に不安が広がっております。
 一方、都は、こうした激甚化する自然災害による壊滅的な被害を回避し、ハード、ソフト両面から防災まちづくりを強力に推進するため、昨年十二月、国とともに設置した連絡会議において、災害に強い首都「東京」の形成ビジョンを取りまとめております。
 私は、令和元年の都議会定例会において、初めて大規模水害に対する緊急的な対策として、首都高の活用について問題を提起しました。
 その結果、この公表されたビジョンにおいて、高台まちづくりの推進など、災害に強い首都東京を形成するための具体的な取り組み方策が示されるとともに、道路高架部の活用についても明記されました。
 そこで、首都高を初めとする道路高架部等の既存の施設を活用し、早急に都民の命を守る避難場所を確保していくことが重要と考えますが、都の取り組み状況をお伺いいたします。
 なお、高速道路を活用して、避難者をより安全な場所へ水平誘導していくことも非常に重要であり、次の課題として検討すべきと申し添えておきます。
 次に、広域避難のための手段に不安が広がる中、葛飾区から千葉方面へ江戸川を渡る橋梁は、水戸街道から蔵前橋通りまでの四キロ以上の間にはなく、大変離れております。
 大規模水害時などに都県境を越えた避難の可能性があるにもかかわらず、都県境の道路や橋が不足していることは大きな課題であり、二百五十五万人の避難を支える手段の一つとして、千葉県や埼玉県とのアクセス強化が重要です。
 こちらも昨年度の都議会の定例会で提起しておりますが、これからの道路や橋づくりには、広域的な連携強化、渋滞の解消などに加え、災害時の避難も考える必要があります。
 こうしたことも踏まえ、都県境の道路ネットワークの強化を図ることが重要と考えますが、都の取り組み状況についてお伺いいたします。
 次に、既設道路橋のバリアフリー化について伺います。
 高齢者や障害者など誰もが安心して円滑に移動できる都市としていくためには、道路のバリアフリー化だけでなく、既設道路橋のバリアフリー化も推進すべきであります。
 私の地元葛飾区の中川にかかる青砥橋へのエレベーター設置について、令和元年に請願が出されました。その請願審査において、私は、既設道路橋のバリアフリー化に向け、都が管理する橋梁全体の状況を洗い直すよう主張し、都は、橋梁の調査を行うこととなりました。
 そこで、既設道路橋のバリアフリー化について、現在の取り組み状況をお伺いいたします。
 次に、都有財産について質問をします。
 現下の都政は、新型コロナウイルス感染症の影響による企業収益の悪化や、令和元年度の税制改正による地方法人課税の偏在是正措置の影響などから、来年度予算案において、都税収入は、対前年度約四千億円の減収となっており、今後も、こうした厳しい財政環境は継続すると見込まれます。
 このような状況下にある今こそ、都有財産の積極的な利活用を図り、厳しさを増す都財政の一助とすべきであります。
 とりわけ、比較的小規模であるなど、都や地元区市町村において公共用途での活用も難しく、利用の見込みがない土地については、スピード感を持って売却し、収入を得る手段としていくことが必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、プラスチックの循環利用について伺います。
 新型コロナウイルスの影響を受け、プラスチックは、フェイスシールドや手袋など、いわゆるエッセンシャルユースとして、また、消費者の衛生意識が高まる中で、その果たす役割が再認識されています。プラスチックを利用すること自体が否定的に捉えられることもありますが、このような状況を踏まえれば、使うべき部分では有効的に活用した上で、使用した後のプラスチックについて、リサイクルを拡大させていくことが重要と考えます。
 脱炭素化に向けた動きが加速する中で、使用済みプラスチックを焼却処分するのではなく、もとの素材と同様の品質のプラスチック素材に戻す、いわゆる水平リサイクルと呼ばれる技術革新が民間主導で進んでいると聞いております。
 コロナ後の経済復興も見据えながら、プラスチック循環利用の高度化を実現していくために、都は、こうした企業等との連携を深めながら、技術革新の創出を積極的に促すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、在宅要介護者の受け入れ体制について伺います。
 コロナ禍の中、社会的弱者である障害者及びその家族をしっかり支えていくことは、行政に欠けてはならない視点であります。
 都では、昨年九月の補正予算において、在宅要介護者の受け入れ体制整備事業が事業化されました。障害者の家族が新型コロナウイルスに感染した場合でも、残される要介護者を受け入れる体制を整備することで、ご家族が安心して療養できるという、障害当事者はもとより、その家族をもしっかり支援する事業であるといえます。
 そこで、事業開始から約五カ月がたったところですが、本事業の進捗状況及び今後の進め方についてお伺いをいたします。
 次に、高齢者の就業支援について伺います。
 平均寿命が延び、長寿社会、まさに人生百年時代が到来しております。こうした中で、間もなく定年を迎えようとする世代の方々を中心に、この先の人生をどのように過ごしていけばよいのか、仕事のことはもちろん、マネープランも含めたトータルな生活設計など、漠然とした悩みを抱える人は少なくありません。
 しかし、第二の人生における職業、すなわち、セカンドキャリアの充実なくしては、百年時代を有意義に過ごすことは難しいと思います。
 この四月一日には、改正高年齢者雇用安定法が施行され、七十歳までの就業確保措置を講じることが企業の努力義務となります。今後、シニアの方が年齢にかかわらず、生き生きと活躍し続けるためには、現役時代に培った経験やスキルを生かせるよう、あらかじめ準備しておくことや、新しい分野、職種にもチャレンジしていくことのマインドチェンジが求められます。
 そこで、都は、シニア世代の方に対し、セカンドキャリアの形成に向けた支援に取り組み、その就業を促進していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 最後に、自転車の交通安全対策についてお伺いをいたします。
 昨年一年間に全国の警察が摘発した自転車の交通違反は約二万五千件で、前年比一一%増しとなり、過去最多を記録したとの報告がありました。また、二〇一〇年の摘発件数は二千五百八十四件となり、この十年間で十倍に増えました。
 その大きな要因の一つとして、新型コロナウイルス感染予防のため、自転車を利用する人々が増え、取り締まりを強化した影響があると考えます。
 自転車による危険な走行により、歩行者を死傷させる事故の多発を受け、各地の警察では、重点的な取り締まりを実施しております。
 そこで、警視庁では、これまでどのような交通安全対策を講じてきたのか、また、来年度以降、新たに整備計画が策定され、今後ますます自転車走行空間が整備されていく中で、これまでの経験や反省などを踏まえた上で、どのような交通安全対策を講じていくのか、警視総監に見解をお伺いし、質問を終わります。(拍手)
〔警視総監斉藤実君登壇〕

○警視総監(斉藤実君) 舟坂ちかお議員の一般質問にお答えをいたします。
 自転車利用者に対する交通安全対策についてであります。
 警視庁では、東京都自転車走行空間整備推進計画に伴い、道路管理者と連携して、自転車と自動車を視覚的に分離する自転車専用通行帯などの整備を推進することにより、自転車利用者の安全確保に努めてまいりました。
 一方、車道の幅が十分でないなどの理由により、自転車専用通行帯などが設置できない道路については、自転車が通行すべき位置と方向を示す自転車ナビマークを車道の左端に設置して、自転車利用者に対する自転車通行方法の周知に加え、ドライバーに対しても、自転車への保護意識を醸成する取り組みを推進してまいりました。
 今後も、これまで取り組んできた自転車通行空間整備の経験等を踏まえつつ、道路管理者と連携した総合的な対策を行い、より安全で快適な自転車通行空間の整備を推進してまいります。
〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、大規模水害時の首都高などの活用についてでございます。
 都は、災害に強い首都東京の形成に向け、国とともに設置いたしました連絡会議におきまして、昨年十二月に、東部低地帯の水害対策などを盛り込んだビジョンを取りまとめ、公表いたしました。
 この中で、高規格堤防による高台づくりを進めるとともに、大規模水害時に民間建築物や公共施設等での避難スペースを確保していくことに加え、道路の高架部などの避難先等としての活用につきまして検討していくことといたしました。
 現在、地域の避難計画を担う地元自治体とともに、国と都などが連携いたしまして、道路の高架部への具体的な避難の方策につきまして検討を進めております。
 引き続き、首都高を初めとする道路高架部等の早期の活用に向けまして取り組んでまいります。
 次に、都県境の道路ネットワークの強化につきましては、隣接県市との協議を鋭意進めております。都市計画道路の整備方針におきまして、都県間にまたがる優先整備路線として選定されております十五路線のうち、埼玉県に接する都施行の一路線につきまして、新たに昨年度事業化をいたしました。
 また、都市計画道路の導入を検討することとしておりました四カ所のうち、一カ所につきまして埼玉県側で都市計画が昨年度決定され、それに接続する都側の道路につきまして、都市計画変更に向けまして、県と連携して検討中でございます。
 既に、葛飾区内で優先整備路線に位置づけられております補助第二七七号線などにつきましては、都と埼玉県との道路ネットワークの強化に向け、継続的に調整を進めておるところでございます。
 引き続き、千葉、神奈川を含め、東京圏全体の交流連携を図り、広域的な防災性の向上にも寄与する都県境の道路ネットワークの充実を図ってまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 既設道路橋のバリアフリー化についてでございますが、高齢者や障害者など全ての人が安全で円滑に移動するためには、橋梁を含めた道路のバリアフリー化を進めていくことが重要でございます。
 都は、昨年度から今年度にかけまして、バリアフリー法に基づく特定道路上にある橋梁や、スロープがなく、階段を利用しなければならない橋梁、バリアフリー化の要望のある橋梁など、合わせて約五十橋を対象といたしまして、歩行者や自転車の交通量調査と、歩道の幅員や勾配、迂回路の状況などの現況調査を実施いたしました。
 引き続き、調査結果をもとに、利用状況や地域特性、バリアフリー法に基づく位置づけ等を踏まえまして、既設道路橋のバリアフリー化の整備方針について検討してまいります。
〔財務局長潮田勉君登壇〕

○財務局長(潮田勉君) 都有財産の利活用についてでございますが、各局において、用途廃止となった土地は、他の庁内各局や地元区市町村でも、その土地を利用する見込みがなければ、財務局へ引き継ぎ、民間への貸し付け、売却を検討していくこととしております。
 しかしながら、土地の引き継ぎに当たりましては、隣接地との境界確定や、地上、地下物件の撤去、土壌汚染対策などの手続に時間を要する場合や、山林地や狭小な不整形地など、地形、立地等の条件から、処分、活用が困難なものもございます。
 こうした中にありましても、利用見込みのない土地につきましては、小規模なものを中心に、令和元年度は五十八件の売却を実施しております。
 今後とも、スピード感を持って、各局と連携しながら、行政利用を終えた財産について、適切に引き継ぎ、処分、活用が図れますよう努めてまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) プラスチック循環利用の高度化についてでございますが、脱炭素社会への移行に向け、国内外の企業で活発化するプラスチックの循環利用に着目した技術革新やビジネスモデルの創出をさらに後押しすることが重要でございます。
 都は現在、大手日用品メーカーや自治体と共同し、従来、再生樹脂へのリサイクルが困難であった洗剤等の詰めかえパウチを再資源化するモデル事業に取り組んでございます。
 今後、世界の資源循環ビジネスの最新動向を共有するセミナーを開催するほか、プラスチック製品の設計、回収、再資源化にかかわる企業間の連携を促すネットワーク組織を立ち上げ、プロジェクトの具体化を集中的に支援してまいります。
 こうした取り組みを通じまして、革新的な水平リサイクル技術の普及を目指す企業等を積極的に後押しし、首都圏での社会実装に向けた動きを加速させてまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 在宅要介護者の受け入れ体制整備事業に関するご質問にお答えいたします。
 障害者を介護しているご家族が新型コロナウイルス感染症に感染した場合でも、安心して療養に専念できる環境を整える必要がございます。
 このため、都は、短期入所事業所における一時的な受け入れや自宅へのヘルパー派遣など、要介護者の状況に応じて必要な取り組みを行う区市町村に対して、一千万円を上限にその全額を支援しております。
 今年度は、三十一の区市から申請があり、着実に体制整備が進められております。
 都は、こうした取り組み状況を区市町村へ情報提供するとともに、個別の相談にも応じており、引き続き、地域における在宅要介護者の受け入れ体制の整備を進めてまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) シニア世代の就業支援についてですが、労働力人口の減少が見込まれる中、東京の持続的な成長を維持していくためには、シニア世代の希望や能力に応じた就業の推進を図ることが重要でございます。
 このため、都は、職務経験の整理やシニアの活躍事例などセカンドキャリアに必要なノウハウを学ぶ講座を開設するとともに、トライアル派遣により再就職に必要な業務スキルをOJTで身につける事業を実施しているところでございます。
 来年度は、セカンドキャリア講座の定員の拡充やオンラインでの配信により、受講機会の拡大を図ってまいります。さらに、トライアル派遣の受け入れを希望する企業の人材ニーズ等に関する事前研修を実施し、マッチング効果の向上を図るなど、意欲あるシニア世代の就業を後押ししてまいります。

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