令和三年東京都議会会議録第三号

○議長(石川良一君) 十二番西野正人君。
〔十二番西野正人君登壇〕

○十二番(西野正人君) 初めに、有事における多摩地域の保健所と市町村の協力についてお聞きいたします。
 新型コロナウイルス感染症の第三波で感染者が急増していた年末年始に、日野市が南多摩保健所からの打診に応えて、研修派遣として市の保健師四名を派遣したと聞きました。保健所の業務が増大し、大変なときに、保健所の職員と市の職員が協力して感染症に対応したことは、双方にとって有意義なことだと考えます。
 一方、市からは、都知事の要請があれば、より動きやすかったという声もありました。また、研修派遣では、派遣にかかわる経費が派遣元の市町村の負担になるということです。
 今回は、緊急対応でやむを得ない事情もあったかもしれませんが、今後、都が市町村に対し保健所への応援を要請する場合には、市町村が応援派遣しやすいように、実態に即した形で要請すべきと考えます。
 市町村と保健所は、地域保健サービスの担い手として、日ごろから会議や研修、防災訓練など、さまざまな機会を通して密接な関係にあり、今回のような有事の際にも、市町村と保健所が協力して対応していくことが重要と考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、商店街振興についてお聞きします。
 新型コロナウイルス感染症により、都内の商店街ではこの一年間、イベントはもちろん、セールなどの売り出し事業も中止が相次ぎ、人を集められない苦しい経営環境が続いています。
 商店街では、安心して買い物やサービスが受けられるよう、感染症対策を徹底しながら、生活インフラとして地域の人々の暮らしを支えていけるように懸命な努力を継続していますが、毎年恒例のイベントで人を集めてきたこれまでの成功体験がそのまま活用できず、どうにもならないとの声が上がっています。
 商店街では、三密対策を徹底したイベントやオンラインを併用したり、基礎自治体の取り組みによるキャッシュレス決済でのポイント付与の割合を増やしたりして、地域とのつながりを何とか維持できるように、新たな動きも出始めていますが、まだこうした取り組みは少数にとどまっている状況にあります。
 終息時期が見通せない感染対策の継続的な支援はもとより、コロナ禍でも取り組める商店街活動を促すことで、地域コミュニティの中核たる商店街を盛り立てていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、地域観光振興についてお伺いします。
 都内各地では、自治体を初め、観光協会やさまざまな団体が力を合わせて、地域の特色を生かした祭りや観光イベントに取り組んできましたが、コロナウイルス感染症の拡大で、こうした行事も延期や中止が続いています。
 私の地元の多摩動物公園には、多くの家族連れなどが訪れていますが、感染拡大の影響で残念ながら休園となっています。また、多摩地域最大規模といわれる高幡不動尊の菊まつりでは、毎年多くの観光客の皆様に菊を楽しんでいただいていますが、こちらも昨年は中止となりました。
 こうしたイベントなどに訪れた方々は、食事や土産物を求めて商店街にも足を延ばすため、観光は地域経済の活性化にもつながります。これまでも観光協会は、地元の事業者などとも連携したイベントに取り組んでいましたが、感染終息後の誘客に向けて、情報発信など、地域の観光振興をリードする観光協会の取り組みは、今後ますます重要となると考えます。
 感染終息が見えない中で、都内各地の観光振興を図るためには、こうした地域の観光協会の活動に対する都の支援の充実が必要と考えますが、所見を伺います。
 次に、都市農業についてお伺いします。
 東京の農業は長年、後継者、担い手の減少や、これに伴う農地の減少という課題に直面しており、これらを少しでも食い止めるために、農業者が安心して農業を続けていけるようにしなければなりません。現在のコロナ禍においても、経営の安定を図らなくてはならないことは当然です。
 私の地元日野市におきましては、梨、ブドウ、ブルーベリーの栽培が盛んで、特にトマトは、日野ファーストトマトとしてブランド化して販売されています。つい最近も新規に就農した方が、都の支援を受けてトマトの栽培施設を整備し、高品質なトマトの生産を始めた事例も聞いています。
 今後は、生産者支援において、小規模でも収益の上げられる東京型スマート農業を進めるとともに、さらに付加価値を高めるための加工品開発、販路拡大の支援も重要です。
 都は、農業者の収益力を高める、稼げる農業を支援すべきと考えますが、所見をお伺いします。
 次に、橋梁整備についてお伺いします。
 一昨年、台風十九号の襲来において日野橋橋脚部が洗掘され、陥没し、通行どめとなったことは記憶に新しいと思います。地域の生活や産業を支え、渋滞緩和や災害時のネットワーク機能拡充などの観点から、道路ネットワークの整備は必要不可欠であり、とりわけ、交通上のボトルネックを解消し、道路ネットワークの強化を図る橋梁整備は重要です。
 橋梁が通行止めとなると、大きく迂回が必要となり、渋滞も起こり、経済活動や人命を守る緊急車両にも影響が及びます。先ほど述べました日野橋は、日野市と立川市を結ぶ重要路線です。台風十九号で約七カ月間通行どめとなり、重要性が改めて認識されましたが、短期間で復旧開通がなされたことに、関係者の皆様に改めて感謝を申し上げます。
 復旧された日野橋は、多摩川の水位を常時監視し、基準値を超えた際には通行どめとすると聞いています。今後も大雨や洪水に対する日野橋の管理をしっかりお願いします。
 現在、日野橋かけかえに向けて仮橋設置工事も行われていますが、地元の皆さんにおいては大変関心が高く、期待も大きいところです。また、日野橋の上流には仮称富士見四ツ谷橋の計画があり、災害発生時において防災道路としての重要性は大きいところです。
 つきましては、日野市と立川市を結ぶ日野橋かけかえ工事と、仮称富士見四ツ谷橋の今後の取り組みについて伺います。
 次に、多摩都市モノレール事業についてお聞きします。
 世界で一番の都市東京を実現するためには、将来を見据えて多摩地域を活性化していくことが重要と考えます。多摩地域では、圏央道などの高速道路や多摩南北道路の整備により、道路交通ネットワークが充実されるとともに、リニア中央新幹線の整備により、他の都市圏との交流も期待されます。
 そのような中、多摩地域の公共交通の利便性にはまだまだ不十分な面があり、南北方向の交通機能の強化に資する多摩都市モノレール、箱根ケ崎方面及び町田方面への延伸の重要性は高まっています。
 多摩地域の二十六市三町一村から成る多摩地域都市モノレール等建設促進協議会では、昭和五十七年から毎年、延伸に関する要請を行っており、多摩地域にとってモノレールの延伸は悲願であります。また、沿線地域において、モノレール開通を見越したまちづくりも進められています。
 多摩都市モノレール箱根ケ崎方面及び町田方面への延伸に当たっては、沿線の市町と密接に連携していくことが重要であると思いますが、都の見解を伺います。
 次に、希少野生生物の保全についてお伺いします。
 東京は、約千四百万人の人口を抱える世界有数の大都市でありながら、奥多摩などの山地、丘陵地の里山、市街地の屋敷林、島しょ部の原生林と、非常に多様な自然環境を有しています。
 私の地元日野市は、東京のほぼ中心に位置する都市ですが、多摩丘陵の湧水、多摩川や浅川沿いに残る水田や用水など、さまざまな地形や自然に富んだ、緑と清流のまちであります。
 こうした自然環境に恵まれた日野市も開発の波に飲み込まれ、生き物の生育、生育空間である緑地、水田や畑は住宅地などに転換され、子供のころによく見かけたアマガエルやカタツムリ、また、シオカラトンボなどの身近な生き物は、最近は見かけなくなったように感じます。
 植物においては、日野市の花、菊の原形となったカワラノギクは、かつて多摩川の河川敷で当たり前に見られましたが、都が作成したレッドリストでは、ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が高い、絶滅危惧ⅠA類と評価されていることに大変驚いています。
 こうした希少な動植物に関するデータが整理され、在来種の動植物の絶滅を防ぐ取り組みにしっかり生かされることが重要と考えます。現行のレッドリストは、作成から既に十年が経過し、希少野生生物を取り巻く環境は日々変化していることから、早期に最新の生育、生息情報等をレッドリストに反映させるための取り組みを行うべきと考えますが、所見をお伺いし、私の一般質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 西野正人議員の一般質問にお答えいたします。
 都の保健所と市町村の協力についてのご質問でございました。
 この年末年始の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が急増する中で、日野市は、南多摩保健所からの要請に応えて、積極的疫学調査を中心に、都の保健所の業務支援のため四名の保健師を派遣いただき、心から感謝申し上げます。
 また、派遣された職員からは、市の今後の感染症対策に生かせる、平時からの地域の取り組みの重要性を再認識したといったような声も寄せられたところでございます。
 有事の際にも保健所と管内の市町村が迅速に対応するためには、平時からの現場に即した協力関係が重要でございます。
 今後とも、保健所と市町村とで緊密に意見交換を行うなど、一層の連携を図ってまいります。
 この後の質問は、東京都技監、そして関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面及び町田方面への延伸につきまして、ご質問にお答えをいたします。
 延伸の実現によりまして、開業区間と一体となって南北方向の拠点が結ばれ、多摩地域の活力や魅力がさらに向上いたします。
 事業化に向けましては、沿線の市町との連携が不可欠でございまして、現在、収支採算性の確保等につきまして、沿線の市町、運営会社とともに、連絡調整会議等において検討を進めておるところでございます。
 また、箱根ケ崎方面につきましては、沿線の市と町が策定いたしましたまちづくり構想の具体化に向けまして、技術的な支援を行っております。一方、町田方面につきましては、導入空間となり得る道路整備の課題があるため、学識経験者や沿線市等で構成する委員会を設置いたしまして、検討を進めております。
 引き続き、沿線の市町等との協議、調整を進めまして、多摩地域における交通インフラの充実強化に取り組んでまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、商店街の活性化についてですが、感染症の影響が続く中、商店街で安心して買い物やサービスが提供できる環境整備に加え、地域コミュニティの中核である商店街活動を支援することは重要でございます。
 都では、緊急対策として、感染症防止ガイドラインに基づく物品購入や、感染拡大防止の呼びかけに要する費用を支援するとともに、区市町村等と連携いたしまして専門家を派遣するなど、商店街の実情に応じた支援を実施してまいりました。
 来年度は、こうした支援に加え、商店街が取り組むオンラインの強みを生かした情報発信や、密を分散化したイベント手法等を、事例集やセミナーを通じて幅広く周知してまいります。商店街の自主的な取り組みを数多く引き出し、活性化につなげてまいります。
 次に、地域の観光振興についてですが、東京の観光振興を図る上では、地域の観光の担い手である観光協会が発信力や経営力を一層高め、効果的に事業を展開することが不可欠でございます。
 このため、都は今年度、観光協会に対し、感染防止のマナーを盛り込んだ観光PR動画の制作や発信を支援するとともに、収入確保等経営面の課題に対応する専門家を派遣しております。また、事前に送られた特産品を楽しみつつ、地元の史跡等をめぐるオンラインツアーの実施を支援し、各地の魅力の周知を図っているところでございます。
 今後も、こうしたオンラインの併用など、新しい日常にも対応した都内各地の観光協会等の誘客に向けた取り組みを後押しし、地域の活性化につなげてまいります。
 最後に、農業者の収益力向上に向けた支援についてですが、東京農業の持続的な発展には、農業者の生産性や販売力を高め、高収益な農業を実現することが重要でございます。
 これまで都は、パイプハウス等の生産施設や直売所等の販売施設などの整備に対しまして、支援を実施してまいりました。
 来年度は、デジタル技術を活用した生産施設や、加工から流通、販売までの一体的な施設の整備など、さらなる経営力の向上に向けた支援を充実してまいります。
 また、バイヤーなどの経験を持つ販路開拓ナビゲーターを派遣いたしまして、飲食店や百貨店などの新たな販売先とのマッチングをサポートし、販路拡大を支援することとしております。
 こうした取り組みによりまして、東京農業のさらなる振興を図ってまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 日野市と立川市を結ぶ橋梁整備についてでございますが、橋梁は、河川などで隔てられた地域を結ぶとともに、災害発生時の避難、輸送ルートの安全を確保する上でも、極めて重要な都市基盤施設でございます。
 日野橋は、大正十五年の架橋から九十四年が経過し、老朽化が進んでいることからかけかえることといたしまして、工事中の交通機能の確保に必要な仮橋の橋脚工事に昨年十一月に着手いたしました。来年度からは、橋桁の架設工事に取り組んでまいります。
 仮称富士見四ツ谷橋では、航空測量の成果をもとに、引き続き道路構造等について検討を重ねるとともに、関係機関との協議を進めていきます。
 今後とも、交通の円滑化や防災機能の向上に寄与する橋梁整備を着実に推進してまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 希少野生生物の保全についてでございますが、希少野生生物に関する最新の情報を把握し、継続的に更新することは、生物多様性保全において非常に重要でございます。
 都はこれまで、東京都の保護上、重要な野生生物種をリスト化した、いわゆるレッドリストや、その解説版であるレッドデータブックを十年ごとに見直してまいりました。
 現在、平成二十二年度に公表いたしました本土部のレッドリストを、令和三年度公表に向け、見直し作業中でございます。また、平成二十五年度公表のレッドデータブックにつきましても、今年度から見直し作業に着手してございます。
 今後こうした取り組みを進め、希少野生生物に関する啓発を行うとともに、それらの生育、生息空間である保全地域の指定、環境アセスメントなどに活用してまいります。

ページ先頭に戻る