令和三年東京都議会会議録第三号

○議長(石川良一君) 十八番小林健二君。
〔十八番小林健二君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十八番(小林健二君) 初めに、新型コロナウイルスワクチン接種について質問します。
 二月十七日より、日本において医療従事者へのコロナワクチン先行接種が開始されました。
 私の地元練馬区では、住民接種担当課を設置し、接種体制の構築に取り組んでまいりましたが、練馬区がつくり上げた接種体制は、厚生労働省も注目し、練馬区モデルとして全国に情報提供されました。
 練馬区モデルは、早くて近くて安心ですとのコンセプトのもと、個別接種と集団接種のベストミックスにより短期間で接種を完了し、診療所での個別接種をメインに、集団接種会場を設けてカバーするという取り組みであります。
 数々のマスコミでも練馬区モデルが紹介される中、都民の方々からさまざまなご質問、ご意見もいただいており、以下二点について質問します。
 一点目は、ワクチン接種への情報提供です。
 ワクチンへの期待感がある一方、ワクチンへの安全性や副反応、また、有効性について心配される声も多くいただいております。
 このたびの接種は、希望する方への接種でありますが、ワクチンの情報をわかりやすく丁寧に都民に伝え、ご理解をいただく必要があります。
 また、懸念される副反応に対する対応も重要です。
 医療関係者の方より、海外では、アナフィラキシーショックに似た症状が出た例も報告されており、万が一の事態に対応するため、万全の体制を準備する必要があるとのご意見をいただきました。
 安全・安心な接種を行っていくために、接種を行う医療関係者への情報提供などを積極的に行っていく必要があると考えます。あわせて見解を求めます。
 二点目は、障害者に配慮した接種の取り組みです。
 聴覚障害者の方より、話している相手がマスクをしていると声がよく聞き取れないため、ワクチン接種に当たっては、障害者に配慮した対策をお願いしたいとのご要望をいただきました。
 具体的な接種体制の取り組みは区市町村の役割でありますが、障害者への合理的配慮を推進するよう、都も取り組んでいくべきであります。見解を求めます。
 次に、文化芸術振興について質問します。
 二〇一五年に策定された東京文化ビジョンは、東京五輪の文化プログラムを経て、二〇二五年までの十年間をターゲットに策定されました。
 十年間の文化ビジョンの折り返しとなった中、八つの文化戦略が掲げられた文化ビジョンの取り組みを改めて精査していく必要があると考えます。
 現在、新型コロナウイルス感染拡大の中、文化芸術に携わっておられる方々は、文化芸術の灯を消すまいと懸命に闘っておられます。
 私は、かつて一般質問において、一九三〇年代、世界恐慌下にあったアメリカ、また、第二次世界大戦で疲弊したイギリスで、いずれもその復興に文化芸術の力があった史実に言及いたしました。
 また、フランス文学者であった辻昶氏は、文化芸術の持つ力について、事業に失敗して自殺を思い詰めた友人が、ベートーベンを聞いて、もう一踏ん張りやってみようかと思いとどまった、これこそ本物の芸術の力ではないかと語っています。まさに文化芸術は、人間を蘇生させ、希望と勇気を与える原動力ともなります。
 都は、コロナ禍にあって、アートにエールを!東京プロジェクトを実施し、支援に努めておりますが、コロナ禍での経験を生かし、困難な状況下だからこそ、文化芸術の力で都民に希望を送る新たな文化政策を今後検討していくべきと考えます。知事の所見を求めます。
 次に、豪雨、浸水対策について質問します。
 一昨年十月の台風十九号の際は、東京においても、各地で大きな被害が発生しました。
 かつて、地元を流れる石神井川が溢水した際は、周辺地域に浸水し、私も現場に急行いたしましたが、台風十九号の際も、石神井川の水位状況の確認に幾度となく現場に赴きました。
 平成十七年に溢水し、特に水害リスクの高い曙橋周辺地域への対策は極めて重要であり、安全確保の整備を急ぐ必要があると考えます。練馬区内における石神井川の整備について見解を求めます。
 また、白子川については、下流側に埼玉県が整備を行う区間がありますが、埼玉県側の整備が進まないことが大きな課題となっております。
 埼玉県に早期の整備を働きかけつつ、都として治水安全の確保に向けて一層の取り組みを進めていくべきであります。白子川の整備について見解を求めます。
 さらに、地域住民が現在の河川の状況を確認できるよう、河川監視カメラの取り組みも重要です。
 都議会公明党は、昨年第三回定例会の一般質問で、河川監視カメラの拡充の必要性とともに、水防災総合情報システムにおいて、動画での映像公開や多摩川など国の管理する河川の状況も確認できるよう提案し、都からは、検討していく旨の答弁がありました。
 水防災情報の充実に向けたその後の取り組みについて見解を求めます。
 加えて、下水道局が取り組む浸水対策も着実に進めていくことが不可欠であります。
 地元練馬区で浸水被害が懸念されている大泉町地区においては、以前、私も被害に遭った直後のお宅に伺い、浸水被害の実態を目の当たりにしました。
 下水道局ではこれまで、浸水の危険性が高い地区など五十四地区を重点化し、下水道幹線や貯留施設を整備するなど、浸水被害の軽減に取り組んできましたが、このうち、練馬区内においては、大泉町地区を含む四地区が重点化されています。
 地域住民の不安を払拭するため、浸水対策を急ぎ推進していくべきであります。練馬区四地区における取り組み状況について見解を求めます。
 次に、都営地下鉄における視覚障害者への安全対策について質問します。
 視覚障害者がホームから転落する痛ましい事故が相次いでおります。昨日の都議会公明党の代表質問において、ホームドアの整備促進に向けた取り組みをただしましたが、視覚障害者の安全確保に向けて、都営地下鉄でも、全駅へのホームドアの設置を加速度的に進めていくとともに、ホームドアが設置されるまでの安全対策を講じていくことが重要であると考えます。
 また、以前、私は、コードつき点字ブロックを活用して音声案内を行う視覚障害者向けの歩行支援ツールを開発されている方からお話を伺う機会がありました。
 東京メトロにおいても、駅構内における視覚障害者の移動支援のために、点字ブロック上のQRコードをスマートフォンで読み取り、目的地まで音声で案内するシステムの実証実験が行われています。
 今後、都営地下鉄においても、ICT技術を活用し、視覚障害者が安心して移動できるような取り組みを検討していくべきと考えます。あわせて見解を求めます。
 最後に、都市計画練馬城址公園について質問します。
 小池知事は、さきの施政方針表明で、都民の憩いの場である都立公園の整備について言及されました。
 私は、以前、予算特別委員会で、関東大震災の復興計画に当たって、震災復興三大公園といわれる隅田公園、浜町公園、錦糸公園の整備を指揮した内務省復興局公園課長の折下吉延氏の都市防災に寄与する公園整備について触れ、都立公園の防災機能について質問しました。
 また、こうした公園は、都市の緑として環境面からも重要であり、都立公園に対する都民の期待は高いものがあります。
 そこで、都立公園の持つ意義と役割について知事の所見を求めます。
 私は、昨年二月の一般質問の際、練馬城址公園の整備計画を早急に示していくべきと求め、現在、整備計画の中間のまとめが公表されました。
 中間のまとめによれば、緑と水、広域防災拠点、にぎわいという計画コンセプトが設定されていますが、この三つの視点について、以下質問します。
 まず、緑と水ですが、緑は練馬区を語る上で欠くことのできない要素であります。緑をいかに生かし、充実させていくかが大変重要であり、練馬らしい緑の公園としていくためにも、地元練馬区を初め都民の意見を丁寧に聞き、最大限に尊重していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、広域防災拠点についてですが、公園の計画区域内にハリー・ポッターのスタジオツアー施設の整備が計画されていることもあり、防災公園としての機能性に不安を抱く意見も散見されています。公園整備に当たっては、地域住民に安心感を与える堅実な防災機能の強化をなし遂げていくべきと考えます。
 また、にぎわいについては、老若男女、誰もが利用できる憩いの場としてのにぎわいを創出していかねばなりません。
 以前、私は、小さいお子さんをお持ちの保護者の方より、都立光が丘公園には幼児が遊べる遊具がないので、幼児用のブランコを設置してもらいたいとの要望をいただきました。都もこの要望に真摯に応えていただき、幼児も乗れるバケットシート型のブランコが設置され、現在、お子さんの歓声でにぎわっております。
 小池知事は、施政方針表明で、身近な憩いの場として、その重要性が再認識されている都立公園の魅力をさらに引き出しますと述べられました。
 練馬城址公園整備にあっては、高齢者、幼児、障害者など誰もが楽しめる魅力ある公園を検討するとともに、令和五年のスタジオツアー施設の開業も見据え、早期に公園整備を進めていくべきと考えます。あわせて見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 小林健二議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、コロナ禍での経験を生かした文化政策についてでございます。
 芸術文化は、人々の日々の暮らしに安らぎや潤いをもたらす極めて重要なものでございます。
 都は、コロナ禍におきまして、アートにエールを!東京プロジェクトを実施するとともに、在宅でもオンラインで楽しめる芸術文化コンテンツの提供などを行いました。
 具体的には、六本木アートナイトや東京芸術祭におきまして、オンラインでの開催やVRを活用した鑑賞の提案などを行ったところでございます。
 公演の中止などにより、都民がじかに芸術文化を鑑賞する機会が失われたわけでありますが、一方で、テクノロジーを活用した新たな芸術文化の可能性が生まれ、楽しみ方も広がっております。
 今後、文化施策の検討に当たりましては、コロナ禍で得られたこうした経験や知見を生かしてまいります。
 次に、都立公園の持つ意義と役割についてであります。
 都立公園は、都民に安らぎとレクリエーションの場を提供いたし、都市に潤いや風格をもたらすとともに、環境の改善や防災空間の確保など、都市の暮らしに重要な役割を果たしております。
 また、現在、社会の成熟化に伴いまして、都民の価値観やライフスタイルが多様化しており、都民ニーズへの柔軟な対応が求められております。
 こうしたことを踏まえまして、都内の大規模な公園整備を着実に推進して、貴重な緑を増やすとともに、都民や地域との連携を強化し、民間の発想も取り入れることで、地域に根差した個性ある公園をつくり上げてまいります。
 今後とも、豊かな水と緑にあふれる、良質で魅力ある都市空間の形成を進めまして、ゆとりと潤いのある都市東京を実現してまいります。
 その他の質問につきましては、関係局長からご答弁いたします。
〔福祉保健局健康危機管理担当局長初宿和夫君登壇〕

○福祉保健局健康危機管理担当局長(初宿和夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、新型コロナワクチンの接種に向けた情報提供でございます。
 接種を円滑に進めるためには、接種を受ける方々や接種を行う医療関係者への正確な情報発信が重要でございます。
 国から提供されることになっておりますワクチンの有効性や安全性、副反応に関する注意事項などにつきましては、今後、都におきましても、東京iCDCの専門家のご意見も踏まえながら、ワクチンに関するポータルサイトなどさまざまなチャンネルを通じて、適切に発信をしてまいります。あわせて、接種を受けた方からの副反応に関する問い合わせに応じる電話相談センターを早期に開設いたします。
 こうした取り組みにより、都民や医療関係者に対し、ワクチンに関する情報提供をきめ細かく丁寧に行ってまいります。
 次に、ワクチン接種に当たっての障害者への配慮でございます。
 今回の新型コロナウイルスワクチンの接種では、障害者も含め、希望する全ての対象者が円滑に接種を受けられる体制を整備しなくてはなりません。
 住民接種の実施主体であります区市町村においては、障害者差別解消法等に基づき、障害者から意思の表示があった場合には、合理的な配慮を行う必要がございます。
 都は、接種会場等において、例えば、聴覚障害者に対して、医師や現場スタッフが筆談でコミュニケーションをとるなど、障害特性に合わせた対応を行うよう周知を図りますとともに、東京都障害者差別解消法ハンドブックや国の医療機関における障害者への合理的配慮事例集等を提供するなど、住民接種におきまして、障害者への合理的配慮に取り組む区市町村を後押ししてまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 五点の質問にお答えいたします。
 初めに、練馬区内における石神井川の整備についてでございますが、水害から都民の命と暮らしを守るためには、護岸や調節池等の整備を効率的、効果的に進めることが重要でございます。
 令和三年度は、早期に安全性を確保するため、都営上石神井アパート付近などの二カ所、合わせて約二百五十メートルで、新たに護岸整備に着手いたします。また、その上流に位置し、ボトルネックとなっておりました曙橋のかけかえに向けまして、橋梁の下部工事などを実施いたします。
 さらに、練馬区内においても効果を発揮する上流の西東京市内の新たな調節池につきまして、基本設計を進めるとともに、関係機関との調整を行ってまいります。
 今後とも、石神井川の安全性向上に向けまして、護岸や調節池の整備を着実に推進してまいります。
 次に、白子川の整備についてでございますが、白子川では、比丘尼橋下流調節池などにより、下流の安全性を確保した上で、上流に向け、順次護岸整備を進めておりまして、令和三年度は、東西橋下流で工事を実施いたします。
 加えて、白子川地下調節池と環七地下調節池を連結し、調節池容量の相互融通が可能となる環七地下広域調節池の整備を令和七年度の取水開始に向けて進めてまいります。
 下流の埼玉県施行区間につきましては、都市河川の整備促進に関する一都三県連絡協議会や都県河川調整会議におきまして、早期の整備について継続して働きかけていきます。
 引き続き、護岸や調節池の整備を進めるとともに、埼玉県とも連携を強化し、水害に強い都市を実現してまいります。
 次に、水防災情報の充実についてでございますが、水害から都民の命を守るためには、迅速な避難行動につながる河川の情報をわかりやすく提供することが重要でございます。
 このため、令和三年度は、河川監視カメラにつきまして、新河岸川など約二十カ所で出水期前に追加するなど、合計で約四十カ所を新たに公開いたします。
 加えて、現在、静止画で配信している河川の画像をリアルタイムに提供するため、水防災総合情報システムのリニューアルに合わせて、動画による配信も開始いたします。
 また、国及び区市町村の保有する河川監視カメラの画像や水位などの情報についても、都のシステム上で容易に確認できるようリンクさせてまいります。
 今後とも、適切な避難判断の一助となる水防災情報のさらなる充実に取り組んでまいります。
 次に、練馬城址公園の整備と都民等の意見についてでございますが、整備計画の策定に当たりまして、利用者の視点や公園の周辺環境などに配慮するため、都民や地元区の意見を踏まえていくことは重要でございます。
 都は現在、昨年六月に地元区などと締結した覚書を踏まえ、都民委員も参加する公園審議会におきまして、本公園の整備計画について検討を進めております。
 先月には、中間のまとめを公表し、現在、パブリックコメントに加え、地元区と連携してオープンハウスを開催するなど、きめ細やかに意見を聴取するとともに、地元区への意見照会を行っております。
 今後、これらの意見も踏まえながら、本年五月に審議会からの答申を受けた後、速やかに整備計画を策定してまいります。
 最後に、練馬城址公園の整備についてでございますが、中間のまとめでは、新たな公園のテーマとして、都民に親しまれてきた土地の歴史、風土、緑豊かな自然を生かし、多様な主体と連携して、社会の変化に応えながらつくり上げる公園を掲げまして、防災機能の向上、多様な人々の交流空間の創出などを図ることとしております。
 令和三年度は、整備計画を策定し、事業認可の取得を目指すとともに、土地所有者と連携して、既存施設の撤去及び公園施設の設計に着手する予定でございます。
 今後、民間事業者等と連携し、整備の途中段階においても、周辺からの避難を円滑に受け入れる出入り口や避難空間を確保し、防災機能を強化するとともに、豊かな緑の中で、お話の多様な世代の人々が、障害の有無にかかわらず安心して楽しむことのできる公園となるよう取り組んでまいります。
〔下水道局長和賀井克夫君登壇〕

○下水道局長(和賀井克夫君) 練馬区内の四地区の浸水対策についてでございますが、下水道局では、早期に浸水被害を軽減するため、くぼ地や坂下など浸水の危険性が高い地区などに重点化し、施設整備を推進しております。
 中村地区、南大泉地区の二地区では、貯留管を整備し、それぞれ平成二十三年度と二十九年度から取水を開始し、浸水被害を軽減しております。
 田柄地区では、延長約四・二キロメートル、直径約三・五メートルの第二田柄川幹線を平成二十六年度から整備しており、令和三年度の完了を目指しております。
 さらに、大泉町地区では、経営計画二〇二一の期間内である令和七年度までに着手する予定であり、既設の下水道幹線の雨水排除能力を増強する施設の整備に向けて取り組んでまいります。
〔交通局長内藤淳君登壇〕

○交通局長(内藤淳君) 駅構内の視覚障害者への安全・安心対策に関するご質問にお答えいたします。
 都営地下鉄では、お客様のホームからの転落事故ゼロを実現するため、ホームドア整備に率先して取り組んでおり、令和五年度末までに全駅での整備完了を目指してございます。
 ホームドア整備中の駅では、係員による積極的な声かけに加え、警備員の増員や自動音声装置による注意喚起を行うなど、転落事故防止に万全を期してまいります。
 また、現在、視覚障害者の方が安心して駅構内を移動できる環境整備に向けて、スマートフォンを活用した移動支援やAIによるカメラ画像の解析など、さまざまな技術が開発途上にあることから、引き続きそれらの技術動向を注視してまいります。
 今後とも、誰もが安全に安心して都営地下鉄を利用できるよう、ハード、ソフト両面から取り組みを進めてまいります。

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