令和二年東京都議会会議録第二十三号

○議長(石川良一君) 四十八番奥澤高広君。
〔四十八番奥澤高広君登壇〕

○四十八番(奥澤高広君) 旧日本軍の失敗に関する事例研究を通じて組織運営の教訓を記した名著、失敗の本質には、意思決定を鈍らせる日本人特有の空気の存在が記されています。空気に対抗する唯一ともいえる武器は、科学的、客観的な根拠に基づく事実、エビデンスであるとの考えから質問をいたします。
 感染が拡大すると時短要請を行うという一連の流れができていますが、十一月の再要請後も、繁華街等の人出は減っていないとの報道もあり、その感染拡大防止効果に懐疑的な声もあります。
 そこで、まず、都が独自に把握を進めている人の流れのデータについて、十一月二十八日の時短要請前後の変化とその受けとめを伺います。
 また、時短要請をすることで、かえって密になる店舗が発生しているという指摘もありますが、その受けとめもお伺いします。
 報道のとおり、時短要請が人出に与える影響が大きくないのだとすれば、時短要請という対策そのものを見直す必要も出てきます。
 これまで効果検証が進んでいませんが、検証は、その目的や手法を事前に練り上げる必要があり、今後の対策を適切に講じていくためには、大学等の研究機関と連携するなどして体制を整え、年末年始の取り組みの効果検証をすべきと考えますが、どのように取り組んでいくのかお伺いします。
 本年十一月の飲食店の倒産件数は過去最高になり、関連業者からは発注がとまったという悲鳴の声が上がっています。
 また、特に非正規で働く女性や学生、あるいはひとり親など弱い立場にある方ほど、暮らしは厳しさを増しています。夜間経済で働く方の中には、そこにしか生きる道がないという方もいらっしゃいます。医療で救える命があるのと同じように、経済、雇用対策で救える命、そして失う命もあるのです。
 感染拡大防止と経済活動の両立を図るという大方針には賛成をしますが、それぞれの状況に寄り添った適切な支援を講じなければ、その実現は困難です。そのような意味で、一律百万円の協力金について、帯に短したすきに長しという声もあります。
 これまでの申請状況等を分析した上で、例えば、深夜帯を中心に営業する事業者への手厚い支援や、複数店舗を営む事業者には店舗ごとの支給とするなど、業態や地域ごとに異なる対応をするべきです。
 福祉や教育の分野には、平等ではなく公正、つまり一人一人の状況に応じた支援が必要だという考えがありますが、平等な支援は、むしろ格差を拡大し、弱者をさらに追い詰めるという指摘すらあります。
 都では、デジタル化やビッグデータ、AIの活用といったことが取り上げられる機会がふえましたが、これらの技術は、さまざまな支援を公正に個別最適化させることができるといわれています。
 来年度よりデジタル局を設置するとのことですが、それを待たずして、今こそデータを活用して、業態や地域ごとに必要かつ適切な支援を講じるべきと考えますが、見解をお伺いします。
 また、そのような対応を行うためには、各エリアの感染状況に応じて効果的な使い方ができるよう、自由度の高い財源がある必要があります。
 今般の補正予算の八割は国が負担するとのことですが、どのような制約があるのか伺います。
 協力金について、四月当初は性善説に立って、大義と共感により要請の実効力を高める重要な取り組みであったと認識をしています。しかし、最近では、不正受給ともいえる状況があると聞きます。残念な事態ではありますが、適正な執行という観点、真面目に取り組む事業者が評価されるべきという観点から、不正受給の防止にも、より一層取り組むよう求めるとともに、それだけ切迫した状況にある事業者がいることも、改めて重く受けとめていただきたいと思います。
 いうまでもなく、国の予算とはいえ、その原資は、今と将来にわたる都民、国民の税金であることを忘れることなく、より効果的な対策に重点的に取り組むよう求めます。
 感染症対策の基本は、検査による発見、調査、追跡、隔離、療養ですが、感染拡大防止という観点では、時短要請と協力金という対策ではなく、そのお金を検査や医療、療養体制の強化に使うべきではないかという指摘もあります。
 そこで、今回の時短要請によって、どのような点から感染拡大防止を図ろうとしているのか、改めてお伺いします。
 最後に、国が悪いと批判をして留飲を下げることは簡単ですが、何一つ問題は解決されません。私たちの役割は、都として一〇〇%の対策がとれているのか常に検証し、提案し、解決を図ることです。
 この議論をしている今も、危機に瀕しているあらゆる命があることをひとときも忘れず、あと七カ月の残された任期を都民のために全うすることをお誓いし、質問を終わります。(拍手)
〔政策企画局長中嶋正宏君登壇〕

○政策企画局長(中嶋正宏君) 奥澤高広議員の質問にお答えいたします。
 人流データの活用についてでございますが、都内の人の流れの推移を捉えるためには、客観的なデータから人出の状況を把握することが有効でございます。
 そのため、都では、主要な繁華街やターミナル駅周辺などの滞在人口につきまして、情報サービス事業者からのデータを活用しております。
 営業時間短縮要請を行った十一月二十八日からと要請前を比較いたしますと、平日夜間などの都内の主要な繁華街などにおきまして、一定程度、人出の減少が見られたところでございます。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 三点のご質問にお答えいたします。
 営業時間短縮の要請の対象についてでございますが、現下の都内の感染状況は、重症者数も高い水準で推移するなど、依然として非常に厳しく、予断を許さない状況でございます。
 こうした状況を踏まえ、最大の感染経路である家庭内にウイルスを持ち込ませないため、長時間の飲酒、飲食を行う店舗の営業時間を短縮することが効果的であると考え、酒類を提供する飲食店及びカラオケ店の事業者に対して、夜十時までの営業時間の短縮を要請しているところでございます。
 次に、密になる店舗が発生することについてでございますが、都は、年末年始に向け、より一層の感染防止対策を実施するため、都民に対して不要不急の外出を避けるよう呼びかけてまいります。
 また、事業者に対しては、ガイドラインに基づく適切な感染防止策を実施するよう求めているところでございまして、引き続き、事業者に対して、店舗が密にならないよう、ガイドラインの遵守を呼びかけてまいります。
 最後に、営業時間の短縮要請の効果検証についてでございますが、検証に当たりましては、新規陽性者数や重症者数等の推移、新規陽性者における感染経路別や届け出保健所別などの感染状況のほか、都内のターミナル駅及び繁華街における滞在人口の増減状況などの定量的なデータを活用してございます。
 引き続き、営業時間の短縮要請を初めとする感染症対策の効果を見きわめ、適時適切な施策を展開してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 中小企業支援への各種データの活用についてですが、協力金の申請データ等の活用につきましては、目的外の利用とならないよう慎重に取り扱う必要がございます。
 中小事業者への支援に当たりましては、現場でのさまざまな情報を踏まえまして、最も効果の高い方法で施策を展開してまいります。
〔財務局長潮田勉君登壇〕

○財務局長(潮田勉君) 地方創生臨時交付金の使途についてでございますが、本交付金は、各都道府県知事の行う営業時間の短縮要請等の取り組みに対しまして、その後押しに活用するものでございます。
 今回、国の財政支援が拡充され、支援の対象となる要請日数の上限が撤廃されるとともに、十二月十六日から来年一月十一日までの期間における営業時間の短縮要請に関連しまして、都が支給する協力金について、国の支援の上限額が一日当たり最大二万円から四万円に増額されることとなりました。
 こうしたことを踏まえ、今回の補正予算で、全面的に協力いただく事業者に一律百万円を迅速に支給するための協力金の予算を計上し、その八割について国庫支出金を財源として計上したものでございます。

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