令和二年東京都議会会議録第二十二号

○議長(石川良一君) 八番森澤恭子さん。
〔八番森澤恭子君登壇〕

○八番(森澤恭子君) 無所属東京みらいを代表して、一般質問を行います。
 新型コロナウイルス感染症は社会のあらゆる場面へ影響を及ぼしており、全体を俯瞰した難しいかじ取りが求められています。
 感染拡大防止と社会経済活動との両立という観点では、ハンマー・アンド・ダンスという方針が示されていますが、時短要請などのハンマーを打つ際には、感染拡大防止効果だけでなく、副作用ともいうべき経済悪化や社会的な不安の増大といった観点が非常に重要です。
 そのためには、客観的事実や数値に基づいて判断していくことが必要であり、私たちは、これまでの取り組みの効果検証を繰り返し求めてきました。
 新型コロナ対策を行うに当たっては、経済活動や社会不安の増大等への影響を重く受けとめた上で、各局で所管している分野や業界に生じている影響を十分に把握し、意思決定を行うことが重要だと考えますが、知事の見解を伺います。
 アメリカでは、新型コロナによる雇用悪化が女性やマイノリティーに一段と重くのしかかっている現状を受けて、次期大統領のバイデン氏が、経済チームの主要ポストに女性や黒人を登用し、対策を強化するとのことです。
 日本でも、非正規で働いていた女性が、飲食や宿泊事業などのサービス業の業績悪化に伴い、男性よりも多く仕事を失っているという状況が明らかになっています。
 都では、非正規の方を正社員化する取り組みなどを行っていますが、育児や介護などと両立するために、あえて非正規を選んでいる方も少なくありません。そういった方々へは業種転換の支援も必要になってきます。
 女性の働き方やコロナ禍の失業の現状も踏まえた上で、女性求職者それぞれのニーズに対応した支援を行っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 都では、性暴力や虐待等の被害に遭ったり、遭うおそれがある十代から二十代の女性を対象に、民間団体等と連携し、SNSを活用した相談や夜間の見回り等のアウトリーチ、一時的な居場所の提供等を行う若年被害女性等支援モデル事業を行っています。これまで社会問題にはなりつつも、行政とはつながる機会が少なかった女性たちの困難が、改めて浮き彫りになったことはとても重要です。
 コロナ禍にあっては、この事業は、家庭が安全でない女性たちにとってさらに大事な役割を果たしていますが、一方で、民間団体がつながった後に、うまく行政の支援へとつながることができていないケースも数多く伺うところです。
 モデル事業として実施してきた三年間の取り組みを踏まえ、課題を検証し、民間団体と関係機関との連携のあり方について見直すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、モデル事業の中では、パッケージで居場所確保も支援しているということですが、想定を超えるニーズが明らかになり、特に夜間などの緊急一時保護について足りていないという声が聞こえてきます。こうした事態に、団体はみずからの資金で対応しています。居場所確保についても、実態に合ったさらなる支援をすべきと申し述べておきます。
 コロナ禍で、育児や家事の負担がまだまだ女性に偏っているという状況が改めて浮き彫りになりました。男性の家庭参画を進めるために、育休取得は重要です。
 都は、実際に育休取得をした際に助成金を出す取り組みを行っていますが、一方で、制度があってもとりづらい雰囲気がまだまだあるという声も上がっています。
 これを変えていくためには、男女ともに、育休により子育てにかかわることがブランクではなく、昇進や昇給などの場面において、会社から評価されるという仕組みにまで引き上げていかなくてはいけないと考えます。
 そこで、企業の人事評価制度などへのアプローチも含め、男性の育休取得がより一層促進されるよう支援していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、出産、育児がキャリアのブランクと捉えられることが、二十代の女性が出産に踏み出せない要因の一つともいわれています。育休がキャリアにプラスになり、社会からも評価されるような環境の整備は、男性だけでなく、女性や少子化対策としてもプラスであることを申し述べておきます。
 コロナ禍において、子育て家庭がさらに孤立し、産後鬱や児童虐待がふえていると指摘されています。今こそ、都内に約四千ある保育所が、育児に欠かせない現代の社会インフラとしての機能をより一層果たしていくことが重要です。保護者の就労状況等にかかわらず、親も子も社会全体に支えられ、成長していく子育ての社会化を目指すべきです。
 地域において、各保育所が子育ての社会インフラとしての機能をさらに発揮していくために取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、真のダイバーシティー、インクルージョンに向けて伺います。
 特別な支援が必要な人も、合理的な配慮のもとでともに暮らしていくことが当たり前の社会は、幼少期から同じ場で遊び、学ぶ中で初めて実現するものだと考えます。
 近年は、地域の小中学校においても支援が必要なお子さんがふえているともいわれ、一人一人の能力や特性に合わせた支援が求められています。
 現状、特別な支援が必要なお子さんや家族が特別支援学校を希望する理由は、障害児を教育するプロが集まっている、支援が手厚いということが挙げられますが、地域の学校でもそういった教育が受けられる環境を進めていくことが重要です。
 そこで、地域の学校においてもこうした子供たちに対して充実した支援を行うため、特別支援学校が培った特別支援教育に関する専門性を地域の小中学校で活用できるよう、取り組みを強化していくべきと考えますが、見解を伺います。
 今般、都職員の介護休暇等の対象となる要介護者の範囲を拡大する条例改正案が提出されました。この趣旨は、親族に限らず同一世帯で生活する者を対象にするということで、都職員の介護の実態に即した改正をする趣旨には一定の理解をするものです。
 一方で、同性パートナーも家族として認めた上で、福利厚生制度の対象にしてほしいと望む方からは、かえって尊厳を傷つけるような内容との指摘もあります。
 私たち無所属東京みらいは、五輪人権条例の趣旨に沿って、事実婚に認められている制度を同性パートナーにも認めてほしいという声に真っすぐに応えてほしいと繰り返し訴えてきました。
 本当の意味で当事者の方々の気持ちに寄り添い、真のダイバーシティー社会へと歩みを進めるために、こうした意見を真摯に受けとめ、引き続き制度の改善を図るべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、都政の構造改革について伺います。
 都政の構造改革の実効性を高め、継続的に取り組んでいくためには、その取り組みがいかに都政のサービスの質を向上させたか、都民の暮らしを変化させたか、客観的に捉える仕組みが必要です。
 欧米各国では二〇〇〇年代から、行政手続コストについて削減目標を定めた上で、その達成状況を見ながらPDCAを回す取り組みが盛んになりました。ここでいう行政手続コストとは、金銭的な視点のみならず、時間や事業者の負担感も含めたものであり、この削減を目指すということは、都民の負担を減らすことにつながるものです。
 都では、コロナ禍にあって、急激にデジタルトランスフォーメーションを進めていますが、二〇二〇改革で進めてきたBPR、業務プロセスの改善とかみ合うことで、より一層効果的な取り組みとなるのであり、その共通目標としての行政手続コストの削減目標等の定量的な指標が必要と考えます。
 そこで、都庁業務の改善に向けた取り組みの現状について伺うとともに、行政手続コストの削減目標を設定し、効果測定などの取り組みを進めるべきと考えますが、見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 森澤恭子議員の一般質問にお答えいたします。
 新型コロナ対策に係る意思決定についてのお尋ねでございました。
 感染症対策を進める上では、感染拡大防止と社会経済活動との両立が重要であります。
 このため、都は、外出自粛等の要請、医療体制の確保、中小企業支援など、感染症対策本部を中心といたしまして、各局で課題を検証しながら適切に対応してまいりました。
 今後とも、感染状況や社会経済状況等を考慮いたしまして、感染症対策に努めてまいります。
 残余のご質問につきましては、教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 都立特別支援学校の公立小中学校への支援についてでございますが、都立特別支援学校は、区市町村教育委員会や小中学校に対して、特別支援教育に関する専門的な支援や助言を行う役割を担っております。
 具体的には、小中学校等からの要請に基づき、学校への巡回相談や教員向け研修会への講師派遣等を行い、障害の状態に応じた指導方法への助言等を行っております。
 これに加えて、都教育委員会は、特別支援学校の指導上のノウハウを有効に活用してもらうため、区市町村教育委員会と連携して、各地区で中核的な役割を担う小中学校の教員の育成等を支援しております。
 今後とも、都教育委員会は、特別支援教育に関する特別支援学校の専門性を小中学校に普及する取り組みを進めてまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、女性の再就職支援についてですが、コロナ禍においては、女性がその多くを占める非正規雇用の方の雇いどめが数多く発生しておりまして、こうした方々が一人一人のライフスタイルに合った仕事につくことができますよう支援することは重要でございます。
 このため、都は、専任のアドバイザーによるカウンセリングや、家庭と仕事の両立に理解のある企業とのマッチングなどを行っております。また、早期の再就職に向けて職域を広げるため、パソコンや医療事務など新たなスキルを付与する講座を開設しております。
 今後も、ハローワークとの連携やSNSの活用等により、こうした支援策を幅広く周知し、女性の再就職を後押ししてまいります。
 次に、男性の育児休業の取得促進についてですが、男性の育児参加を推進し、育児休業の取得を促進するためには、育児と仕事の両立に係る社内制度の整備とともに、経営者や上司等の意識変革が求められております。
 このため、都は、男性従業員の育児参加推進を管理職の人事評価に反映する企業の取り組み等を奨励金の支援対象といたしまして、男性の育休取得を促しております。
 また、経営者や人事担当者を対象に研修会を実施し、経営者がメッセージを発信することの重要性や、職場の協力体制の構築等、男性従業員の育休取得に向けた効果的な取り組みについて普及啓発を図っているところでございます。
 こうした取り組みによりまして、男性の育児休業取得を推進し、育児と仕事を両立しやすい職場づくりを後押ししてまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、若年被害女性等支援モデル事業についてでございますが、都は、本事業を通じて、さまざまな困難を抱える女性を必要な支援につなげられるよう、委託先の民間団体とともに、福祉事務所など関係機関と連携し、個別のケースに応じて情報共有しながら対応しております。
 また、これらの機関等との連絡会議において、具体的な支援の状況の共有や、事業実施上の課題等についての意見交換を行うなど、引き続き、関係者間で連携を図りながら適切に対応してまいります。
 次に、保育所による地域の子育て支援についてでございますが、国の保育所保育指針では、保育所は、入所する子供を保育するとともに、地域の子育て家庭に対する支援を行う役割を担っており、保育の専門性を生かした子育て支援を積極的に行うよう努めることとされております。
 都は、地域で孤立しがちな子育て家庭が在園児とともに給食や遊びなどの生活を体験することや、出産を控えた親が実際の育児のイメージをつかめるよう、保育士が乳児とかかわる様子を見学することなど、育児不安を軽減するための取り組みを行う保育所等を独自に支援しております。
 今後とも、地域の子育て家庭が安心して育児を行えるよう、保育所の取り組みを支援してまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、同性パートナーを有する都職員の福利厚生制度についてでございますが、今回、介護休暇等の対象となる要介護者の範囲を拡大する条例改正案を提出しております。
 この改正は、介護を理由とする退職者が一定数存在し、今後、要介護者や介護の担い手の増加が想定されることから、介護と仕事の両立を一層支援するため実施するものでございます。これにより、職員は、同一の世帯に属する等の要件を満たせば休暇取得が可能となります。
 一方、同性パートナーに対して異性パートナーと同様の福利厚生制度を認めることを求める声もございます。制度の適用に関しては、婚姻関係のあり方等の課題があり、引き続き、課題の研究や、国や他団体の状況調査を進めてまいります。
 次に、業務改善と行政手続コストの削減についてでございますが、行政手続のデジタル化を進めるに当たりましては、その前提として、手続のフローそのものについても、都民や事業者など申請者の視点に立った見直しが必要でございます。
 現在、優先してデジタル化を進める百六十九の許認可や届け出などの手続につきまして、一連のプロセスの分析を具体的に行い、様式の簡略化、添付書類の削減、押印の見直しなどを実施いたしますとともに、ICTツールを活用した事務の効率化を進めてございます。
 こうした行政手続のデジタル化による、行政と都民、事業者の双方におけるコスト削減効果について検証していくこととしております。

○議長(石川良一君) 以上をもって質問は終わりました。

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