令和二年東京都議会会議録第二十二号

○議長(石川良一君) 二番けいの信一君。
〔二番けいの信一君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○二番(けいの信一君) 初めに、隅田川における水害対策について質問します。
 近年、激甚化する集中豪雨や頻発する大型台風により、河川の治水対策への関心が高まっております。隅田川では、スーパー堤防化を進めることで安全性が高まり、日常は広々とした散策の場として利用されるなど、親水性や景観に配慮した整備が進められています。
 私の地元荒川区の南千住地域では、民間開発に合わせて隅田川にスーパー堤防を整備したことで、安全性が向上するとともに、都市空間と水辺が一体となった魅力的なまちとなり、人々の憩いの場となっております。
 西尾久地域では、旧小台橋小学校の用地を活用し、都内唯一の区営遊園地であり隅田川に面するあらかわ遊園の拡張が予定されております。ここにスーパー堤防の整備が実現すれば、地域での安全性の向上はもちろん、周辺住民にとって大変貴重な空間にもなります。
 こうした区が行う整備の機会を捉え、荒川区内における隅田川のスーパー堤防化を推進すべきであると考えますが、都の見解を求めます。
 また、南千住六丁目の隅田川沿いに位置する旧南千住浄水場用地の取得に向けた補正予算が荒川区議会に諮られております。
 工業用水の需要減少に伴い、平成九年に浄水場を廃止したこの用地を区が取得できるよう、私は推進してまいりました。
 用地取得後、都市計画公園として事業認可を得て公園整備を行うことで、国と都の支出金を活用でき、取得金額の全額が賄われ、区の負担は発生しません。
 さらに、この公園整備に合わせてスーパー堤防が整備されれば、既に完成している隣接するスーパー堤防ともつながり、一連の広い空間となることで、地域にとって安全・安心が一層高まることになります。
 旧南千住浄水場用地においても、区の公園整備に合わせて、都がスーパー堤防を整備するべきであると考えますが、都の見解を求めます。
 昨年の台風十九号では、東京でも多摩地域を中心に大きな水害が発生し、東部低地帯に位置する荒川区民にとっても危険性を身近に感じるようになるなど、水害に対する意識が変わりつつあります。
 地域住民の方からは、尾久橋や尾竹橋などから隅田川の水位を注視するようになったという声を聞きます。しかしながら、国の管理する荒川では、河川監視カメラによる画像が公開されており、河川の状況を確認できる一方で、都が管理する隅田川には、画像公開用のカメラが設置されておりません。
 区民の水害対策への意識が高まる中、水防災の情報をより一層充実させていくことが重要です。隅田川にも速やかに河川監視カメラを設置すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、学校体育館の空調設置について質問します。
 都議会公明党の強い要請により、都教育委員会は、公立学校体育館の空調設置を進めています。
 一方で、荒川区内にもキャンパスを構える総務局所管の都立産業技術高等専門学校の体育館は、設置対象になっていませんでした。学生等の利用者の安全を守るためにも、また、防災の観点からも、体育館に空調を設置すべきとの都議会公明党の提案を受け、都は、整備が着実に進むよう支援する方針を示しました。
 都立産業技術高等専門学校体育館の空調設置に向けた今後の見通しを明らかにすべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、デジタル教科書代の費用負担について質問します。
 荒川区では、平成二十六年に全区立小中学校で一人一台のタブレット端末の配置が完了し、全普通教室に導入した電子黒板や全校全教室を結ぶ教育ネットワークによる教材の共有など、ICT教育の充実に向けた取り組みを推進してまいりました。
 先日私は、児童用デジタル教科書を導入している荒川区立第一日暮里小学校の授業を視察してまいりました。国語、算数、社会の授業にデジタル教科書が活用されており、学習の手段が飛躍的にふえている様子を確認しました。
 例えば、社会の授業では、デジタル教科書の資料や地図を拡大し、より詳細に読み取ることができたり、算数の授業では、タブレットに直接書き込んで計算している全生徒の画面がリアルタイムで教員のタブレットに映し出されるなど、学びの様子が効果的に確認できるとのことでした。
 他の教科でもデジタル教科書の導入が進めば、タブレット端末一つを持って登校することになり、ランドセルの重量問題の解決にもつながります。
 しかし、従来の紙の教科書は無償配布されているのに対し、デジタル教科書を追加利用する場合は、一教科当たり約八百円の費用負担が生じております。
 現在は学校予算を工夫して対応しておりますが、今後も保護者の費用負担が生じることはあってはなりません。GIGAスクール構想やICT教育を一層推進していくために、都が支援をしていく仕組みが必要です。
 先進的にデジタル教科書の導入を進める学校に対し、支援制度を設けるべきと考えますが、都教育委員会の見解を求めます。
 次に、コロナ禍における修学旅行中止に対する対応について質問します。
 都議会公明党は、本年三月の予算特別委員会において、都立学校等の修学旅行の中止に伴うキャンセル料について、保護者負担を軽減する支援策を講じるべきと質問しました。
 その後、国の補助制度を活用し、都としても都立学校の修学旅行のキャンセル料を補助する取り組みが進められたところであります。
 感染拡大が予断を許さない現状にあって、これから年明けに実施する都立学校の修学旅行にも影響が予想されます。
 今後やむを得ず中止となった場合、都として改めて保護者負担の軽減を図っていくべきと考えますが、都教育委員会の見解を求めます。
 次に、子供の転落事故防止について質問します。
 世界では三十秒に一人の子供が事故によって亡くなっております。日本でも一歳以上の子供の死亡原因の上位は不慮の事故であり、この状況は一九六〇年代から変わっておりません。ことしの六月にも子供がベランダから転落する事故が全国で四件、相次いで発生しております。
 先日、子供の事故防止対策に取り組むNPO法人Safe Kids Japanの理事長であり、小児科医の山中龍宏先生からお話を伺いました。
 都は、平成二十九年度に、山中先生も委員を務めた商品等安全対策協議会において、子供のベランダからの転落防止のための手すりの安全対策についての報告書を取りまとめ、事故防止へのスタートラインに立ちました。
 また、ことし九月、消費者庁は、窓やベランダからの子供の転落事故に関する注意喚起を行いましたが、ここにもこの協議会の報告書が引用されております。
 転落事故防止には、窓やベランダ、手すりなどの構造物の安全基準の見直しのほか、踏み台となってしまうエアコン室外機やごみ箱、プランターなどを手すりから離しておくことが重要です。
 コロナ禍で迎えるこの年末年始では、自宅で過ごす時間が長くなり、換気のために窓をあける機会が多くなることが想定されます。
 幼い子供を持つ保護者に対して、例年とは異なる冬を迎えるこの時期にこそ、ベランダなどからの子供の転落の危険性を知らせるメッセージを発信するべきと考えますが、都の見解を求めます。
 コロナ禍でのステイホーム、テレワークなどの増加に伴い、自転車などで食べ物を配達するフードデリバリーサービスのニーズが急激に高まりました。
 警視庁によると、フードデリバリーの配達員による交通事故や交通違反について、信号無視をしていた、歩道でぶつけられたなどの通報が相次いでおり、社会問題化しつつあります。四月には配達員の大学生が交差点で軽自動車と出会い頭に衝突し、死亡しました。
 ことしの自転車事故の総数は二割減少しているのに対し、フードデリバリーなどの業務中の自転車事故は二〇%増、歩行者との人身事故は五五%増加しており、事故増加は顕著です。
 配達員はスマートフォンアプリで登録すれば、面談も研修もなく、すぐに配達業務ができるため、交通安全指導が行き届いていません。配達員として働く方のためにも、人身事故被害者を出さないためにも、配達員向けの安全運転指導などの対策が急務であります。
 さらに、配達員は運営会社と雇用関係がなく、業務委託契約も結んでいない個人事業主という立場です。配達員自身のけがに対する労災も休業補償も受けることができません。
 好きなときに好きな時間帯で働けることから、コロナ禍で収入が減った方の副業や、休業が続く大学生も多いと聞きます。都民の暮らしと命を守るために、配達員が安心して働ける雇用環境の整備が必要です。
 国の全世代型社会保障検討会議の中間報告では、フリーランスの方の労働関係法令の適用の考え方を明確化するガイドラインを取りまとめるとともに、労災加入ができるよう検討を進めていくとしておりますが、フリーランスを守るこうした対応策が早期に実施されることを期待します。
 また、従来からあるデリバリーピザや飲食店からの出前などは、自社の商品を従業員が届けるサービスであるのに対し、フードデリバリーの業態は、飲食店の商品を注文者へ配達することで対価を得ていることから、運送業に当たるともいえます。
 本来、運送業法では、輸送の安全を確保するとともに公共の福祉の増進に資することを目的として、最低五台以上のトラックを有し、国の運送事業許可を得た上で、事業用の緑ナンバーの取得が定められています。
 また、軽自動車で運送業を行う場合も、届け出の上で、黒ナンバーの取得が必要になります。
 しかし、自転車での貨物運送を想定していないこの法律では、自転車は軽車両であるにもかかわらず、許可や届け出が不要となっています。
 そのため、事業者番号や車両ナンバーがないために、事故や違反の際も本人の特定が困難であることが課題であります。
 都や区市に届け出をすることや、自転車保険加入の確認を制度化するなどの対策が必要です。さらに、配達サービスを行っている業界が加盟する全日本デリバリー業安全運転協議会や、各種飲食業の同業組合などとの連携も行っていくべきです。
 新しい生活様式を定着させていくためには、新型コロナウイルスで生じた新たな課題への対応が不可欠であります。
 今後起こるであろう課題も含め、乗り越えていく必要があると考えます。都民に対し新しい日常の実践を呼びかけている知事の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) けいの信一議員の一般質問にお答えいたします。
 新しい生活様式への対応についてのお尋ねがございました。
 ウイズコロナ時代におきまして、三密の回避や非接触など新しい日常を実践する中で、テレワークや時差出勤、巣ごもり消費といった新たな生活スタイルが生まれてきております。お話のまち中を行き交うフードデリバリーサービスでありますが、それを象徴する風景ともいえるかと思います。
 一方、こうした中で新たな課題も生じてきておりまして、社会全体で新しい日常の定着に向けた対応を進めていく必要がございます。
 こうした新たな課題を克服することは、都民の安全の確保はもちろんのこと、雇用の促進や飲食店の業態拡大など、経済活動の活性化にも資するものでありまして、東京の新しい成長の実現にとって大きな意味を持つものであります。重要なご指摘をいただいたと受けとめております。
 国難ともいえる危機に直面している今、社会の前向きな変革を促す契機ともいえます。ウイズコロナ、ポストコロナの時代におけます東京のあるべき姿を見据えまして、新たな時代にふさわしい日常の確立に向けて、なすべきことに邁進してまいります。
 残余のご質問につきましては、教育長及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、デジタル教科書の導入等についてでございますが、現在、国において、令和六年度の導入に向けまして、内容に関する検証を行うとともに、制度面の課題についても議論がなされているところでございます。
 具体的には、デジタル教科書が無償制度の対象外となっていること、使用は各教科の授業時数の二分の一未満に限定されていること、さらに、教科書検定制度がデジタル教科書には対応していないことなどが挙げられてございます。
 都教育委員会では、こうした国の動きも見ながら、図表、資料の拡大や音声による読み上げなどを可能といたしますデジタル教科書の強みを学習活動の充実に結びつける活用方法の検証を、今年度から進めているところでございます。
 今後、検証結果を区市町村と共有し、子供たちの学びの充実につなげてまいります。
 次に、都立学校の修学旅行についてでございますが、都教育委員会は、感染症拡大防止の観点から、本年五月に、本年十二月までの修学旅行を延期または中止といたしたところでございます。既に各学校では今年度前半の計画が進んでおりましたことから、一斉の臨時休業期間を含む六月までのキャンセル料等について、国の補助制度も活用し、都として、保護者負担の軽減を図ったところでございます。
 来年一月以降につきましては、感染状況を踏まえつつ、生徒等の安全を確保した上で、各学校で保護者の理解を得て修学旅行を実施できることといたしております。
 感染状況は刻々と変動しており、今後、今年度に計画されている修学旅行がやむを得ず中止される場合のキャンセル料等につきましては、保護者負担の軽減を検討してまいります。
〔建設局長中島高志君登壇〕

○建設局長(中島高志君) 三点の質問にお答えいたします。
 初めに、荒川区内における隅田川のスーパー堤防整備の推進についてでございますが、隅田川などにおいて、地震に対する安全性と河川環境の向上を図るためには、沿川のまちづくりなどと一体的にスーパー堤防の整備を推進することが重要でございます。
 荒川区内におきましては、区立中学校や公園と一体的に整備して、昨年度完成いたしました西尾久三丁目など、これまでに六地区が完成しておりまして、堤防延長の約五割がスーパー堤防となっております。
 さらに、西尾久三丁目の上流の西尾久六丁目では、区立あらかわ遊園の拡張に合わせて、今年度、盛り土工事に着手し、令和四年度の堤防の完成を目指し整備を進めてまいります。
 次に、旧南千住浄水場用地におけるスーパー堤防の整備についてでございますが、まちづくりなどと一体的に整備するスーパー堤防を進めるためには、開発者と連携を図り、事業化していくことが重要でございます。
 隅田川沿いの旧浄水場用地約一・八ヘクタールにつきましては、荒川区が公園用地として取得する予定でございます。スーパー堤防の整備にも積極的に協力する方針であると聞いておりまして、今後、区とスーパー堤防の事業化に向けた検討を行ってまいります。
 引き続き、地元区などと連携し、スーパー堤防の整備に取り組んでまいります。
 最後に、隅田川への河川監視カメラの設置についてでございますが、水害から都民の命を守るためには、河川監視カメラの画像の公開など、迅速な避難行動につながる情報をわかりやすく確実に提供することが重要でございます。
 都は、近年の全国的な豪雨災害等を踏まえまして、東京都水防災総合情報システムにおいて、監視カメラの画像の公開を拡充することとしておりまして、これまでに三十八カ所で公開し、今年度末までに多摩地域の河川を中心に、さらに二十カ所追加いたします。
 引き続き、過去の被害状況や区市町村からの要望等を踏まえ、隅田川を含めた都内全域の河川を対象に、カメラを設置、公開する箇所について検討してまいります。
 今後とも、住民の適切な避難判断の一助となる水防災情報のさらなる充実に取り組んでまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 都立産業技術高等専門学校の体育館への空調整備に関する今後の見通しについてでございますが、体育館は、学生が安全に学習を行う場であるとともに、災害時は避難場所等としての活用も見込まれます。
 このため、産技高専では、体育館への空調整備に向け、昨年度決定した整備方針に基づき、順次、実施設計や設置工事を進めておりまして、荒川キャンパスについては、令和三年六月までを工期として、現在、工事を行ってございます。
 また、品川キャンパスにつきましては、今年度末まで老朽化に伴う改修工事等を実施しているため、令和四年の夏までの設置に向け、現在、実施設計を行っております。
 なお、空調設備が設置されるまでの間は、スポットクーラーの設置により暑さ対策を実施することで、安全・安心な環境の確保に努めてまいります。
〔生活文化局長野間達也君登壇〕

○生活文化局長(野間達也君) 子供の転落事故防止についてでございますが、都は、平成二十九年度の商品等安全対策協議会の提言に基づきまして、事業者団体に対し、ベランダの手すりの高さの安全基準について改善等を要望するとともに、リーフレットやホームページ等を活用し、子育て世代を初め、幅広い世代への注意喚起を行ってございます。
 しかし、現在でも、ベランダに置かれたものが足場となって転落するなどの事故が発生していることから、事故が多い就学前の子供の保護者を主な対象といたしまして、継続的な注意喚起を行うことが重要でございます。
 そのため、区市町村や幼稚園団体の協力を得て、年末年始に向けて、改めて保育所や幼稚園等を利用する家庭に対して注意喚起を行うとともに、子育て中の若い世代の目にとまりやすいSNSによる情報発信に取り組んでまいります。

○副議長(橘正剛君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時四十九分休憩

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