令和二年東京都議会会議録第二十二号

○議長(石川良一君) 十九番加藤雅之君。
〔十九番加藤雅之君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十九番(加藤雅之君) 初めに、長期戦略について質問します。
 知事は、今定例会の所信表明で、リアルとバーチャルのハイブリッドとの表現で、人と人とのつながりの上にデジタルを活用することで、さらに東京を進化させたいと表明されました。リアルの世界で活躍する人がいて初めてデジタルが生かされます。
 そこで、リアルの世界で皆が活躍するためには、貧困や介護、雇用などのセーフティーネットの強化と、人種や性別などにとらわれない多様性を高める取り組みを進めることが大切です。年度内策定予定の長期戦略にどう盛り込み進めていくのか、知事の見解を伺います。
 次に、文科省がGIGAスクール構想に取り組んでいる今、GIGA、すなわち全ての人にグローバルで革新的な入り口をという理念は、高齢者や障害者にとっても大切であり、都が行政手続を初めデジタル化を加速させていくには、デジタルディバイド、情報格差対策が重要です。
 内閣府の調査によれば、高齢者が情報機器を利用しない理由として、必要性を感じないとの回答が七割と圧倒的に多くなっています。調査から、デジタルの便利さや恩恵をいかに知ってもらうか、感じてもらうかがまず必要と考えます。
 例えば、家族や友人とのオンライン会話やオンライン診療、交通不便地域におけるオンデマンドタクシー、災害情報のプッシュ通知など、デジタルがもたらす恩恵は数多くあり、体感してもらえる取り組みをふやすべきです。
 現在、区市町村では、高齢者を中心とした初心者向けスマホ教室等を開催していますが、大きな広がりとはなっていません。
 そこで、まずは、区市町村が講習会開催に必要となる講師や情報端末確保などの支援を行うとともに、講師の謝礼、通信機器の購入も可能な地域底力発展事業や、老人クラブの友愛実践活動講習会の活用の周知、通信事業者とタイアップした講習会など、広く行える環境を整備すべきと考えます。宮坂副知事の見解を伺います。
 次に、都議会公明党は、第三回定例会の代表質問で、民間のデータも活用し、三密状態の可視化を都のホームページで提供するなど、社会的課題の解決につなげるべきと求めました。これに対し、都は、官民でのデータ利活用を一層推進することで、新しい日常の実践や社会的課題の解決を目指していくとの答弁がありました。
 そこで、感染拡大がおさまらない現状においては、なお一層データを活用した混雑回避のための官民連携が重要であると考えますが、現状の取り組みについて答弁を求めます。
 次に、このたび都では、新しい日常の働き方定着に向けて、テレワークの一層の普及を目指し、テレワーク東京ルール実践企業宣言制度を創設しました。
 この制度では、各企業が実情に応じ、例えば、災害発生時のテレワーク勤務など具体的な取り組みルールを設定して、専用ウエブサイトに取り組み内容を公表、推進することで、都は実践企業に新たな融資制度等で支援を行い、テレワークの定着を後押しすることとしております。
 今までであれば、出勤後に大規模災害が発生すれば、帰宅困難者になっていたかもしれません。行き場のない帰宅困難者は九十二万人と想定されていますが、現状、一時滞在施設で確保できている人数は四十万人程度と、道半ばの状態です。しかし、テレワークが進展していけば、逆に自宅周辺の高齢者など災害弱者を助ける側に回ることも可能となります。テレワークの効果を地域や社会に貢献していこうとする機運を都が醸成していくことが大切です。
 そこで、防災の観点からも、こうした働き方の変革の機を捉え、働く世代が地域の防災人材として活躍できるよう、積極的に働きかけていくことが重要であると考えますが、都の見解を求めます。
 次に、町会、自治会の活性化について質問します。
 地域における安全・安心の確保や地域づくりにおいて大きな役割を果たしている町会、自治会は、少子高齢化やプライバシー重視のマンションが増加するなどの影響もあり、加入率が減少しており、役員の高齢化も問題となっています。
 一たび大規模災害が発生すれば、自助、共助が基本であり、どこに誰がいるかもわからなければ、助かる命も助けることは困難となります。さらに、高齢者の見守りや在住外国人との生活トラブルなど、さまざまな地域課題にも対応を迫られています。
 こうした多様化した課題に対応していくには、他地域の事例など幅広い意見も参考となります。
 そこで、町会、自治会が外部の意見を気軽に聞けるような仕組みが必要と考えますが、見解を求めます。
 次に、核家族化の影響で、昔のように一つ屋根の下で大家族が一緒に生活するという風景は少なくなり、日常生活に困難を伴う単身高齢者世帯や子育て面で親のサポートが受けられず孤立しがちな若年ファミリー世帯が増加しています。
 本来であれば、いつになっても親子が助け合って課題を乗り越えていき、その上で地域や行政が支えていくことが重要です。そのためには、親世帯と子世帯等が近くに住んで助け合える環境整備が必要です。
 都では、都営住宅居住者を対象とした親子触れ合い住みかえ募集という住宅変更の制度がありますが、募集戸数も年四十戸と少なく、対象となる立地や広さ、対象世帯などによって条件が合わず、応募がない住戸もあります。
 そこで、この制度が親子の助け合いを支援するとの趣旨に即して活用されるよう募集戸数をふやすなど、さらなる工夫を凝らすべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、都内には、家出など、さまざまな理由で困難を抱えた若い女性が多く存在します。
 都議会公明党は、国と連携し、平成三十年度より、こうした女性に対する相談窓口や居場所の確保、自立支援などを行う事業を国のモデル事業としてスタートさせ、都もこれを受けて、三カ所の民間支援団体に委託し、支援をしてきました。
 また、これまで我が党の女性議員が委託先へ視察を行い、私も支援団体の代表と意見交換を行うなど、民間団体ならではの一人一人にマッチしたきめ細かな対応の必要性を実感し、支援の強化を求めてきました。
 残念ながら、モデル実施の期間は三年間であり、今年度で終了することになります。コロナ禍を考えても、事業の継続はますます重要であり、必要不可欠です。
 そこで、来年度からは、困難を抱えた女性に対する相談、居場所の確保、自立支援などを行う事業を都として本格実施すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、新型コロナウイルス感染症の拡大の中、都はかつてない無利子、無保証料の制度融資を中小事業者に実施しており、その規模は今回の補正予算で計約四兆円に上ります。
 しかしながら、中小事業者の中には、この制度融資を受けられず、実行までの期間が待てないなど、資金繰りに窮している事業者が存在します。
 このような中小事業者がやむにやまれず利用するのがファクタリングです。ファクタリングとは、事業者が保有する売掛債権等の売却により早期資金化する資金調達方法で、売り掛け先へ譲渡通知を行う三者間取引と、売り掛け先へ譲渡通知を行わない二者間取引に大別されます。ファクタリング取引の手数料の現状は二〇%から五〇%と高額なものもあり、法規制などのルールがなく、第二の闇金融ともいわれています。
 三者間取引を利用する債権の売り主の多くは、資金調達を目的とするのではなく、売り掛け先が支払い不能に陥った場合の貸し倒れを防ぐための保険として利用しており、早期資金化を目指す中小事業者は二者間取引を利用します。
 この二者間取引は、債権譲渡を売り掛け先に知られず、信用問題につながらないというメリットがありますが、反面、債権の譲渡契約と同時に債権の売り主である事業者が売り掛け先の代金の回収を行うという債権回収業務委託契約を結ぶことになります。
 そのため、売掛金が回収できない場合には、高額な違約金を事業者が支払わなければなりません。コロナ禍において、このような事例がふえ始め、社会問題化しつつあります。
 先週、都内では、ファクタリングの仕組みを悪用した被害額約三億円の詐欺事件が報道されていました。ファクタリング事業者は全国で一千社程度といわれており、その多くは東京に集中しています。
 そこで、都として、このファクタリングの実態を調査し、適正な取引が行われるよう取り組むべきと考えますが、見解を求めます。
 最後に、地元墨田区の広域防災拠点である白鬚東地区について質問します。
 同地区は、震災時に計画避難人口約四万一千人が避難する区北部エリアの重要な拠点です。
 一時期、拠点内にある給水ステーションの指定が除外されましたが、住民の皆様の強い思いを受けて復活要望を繰り返し、約三千トンの貴重な飲料水が確保され、大変喜んでいただきました。
 また、災害時に防災機関や自主防災組織が連携して避難民の受け入れをスムーズに行うための災害時行動マニュアルの策定を都に求め、平成二十四年度末、都と地元区と地域の自治会連合会の協力のもと、マニュアルが策定されました。
 その後も、拠点の防災機能強化に向けて取り組み、本年やっと住民の意向を反映したマンホールトイレの増設や水洗化、防災池の改修など一連の整備が完了し、建設当時とは大きく様相が変化しました。
 加えて、激甚化する水害対策やコロナなどの感染症対応など、新たな課題に対してマニュアル修正の必要性が生じています。
 都立公園を初め、給水拠点、備蓄倉庫、大規模救出救助活動拠点、都営住宅に民間マンションと、この拠点には各局にまたがる機能があり、都との連携協力なくして区単独での見直しはあり得ません。
 そこで、災害時行動マニュアルの改定を行うため、墨田区の取りまとめ作業を都として支援すべきと考えますが、見解を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えいたします。
 長期戦略についてのお尋ねでございます。
 東京の活力の源泉は人であります。デジタル化が進んだ社会にありましても、リアルな世界で活躍する人の力こそが、東京の課題を克服し、成長をもたらす基礎であります。
 未来の東京戦略ビジョンには、子供から高齢者、障害者や外国人など、さまざまな人に寄り添い、多様性に富んだ人が輝く東京を実現していくことを基軸に据えたプロジェクトを数多く盛り込んでおります。
 東京に暮らす誰もが安心して生活し、最大限の力を発揮できることこそが持続的な発展につながっていく。そのためには、社会の変化、変革に対しまして、人々の安心を支えるセーフティーネットのさらなる充実や、ダイバーシティーの推進が不可欠であります。
 先般、国内外の有識者によります東京の構造改革に向けた提言におきまして、コロナ禍の影響を踏まえ、社会のセーフティーネットを改めて強化すべきこと、多様性をさらに高め、よりよい社会の実現やイノベーション創出に活用すべきことなどの意見を頂戴いたしました。
 こうした視点を踏まえまして、政策を練り上げ長期戦略に結実させることで、一人一人が生き生きと躍動する、活気に満ちた持続可能な都市東京の実現に取り組んでまいります。
 その他のご質問につきましては、副知事及び関係局長からの答弁とさせていただきます。
〔副知事宮坂学君登壇〕

○副知事(宮坂学君) 高齢者等のデジタルディバイド対策についてお答えします。
 高齢者を初めとした年齢格差や身体障害の有無等、さまざまな要因でデジタル技術に触れる機会が少なく、オンライン等による手続が困難な方がいらっしゃいます。
 デジタル社会の実現に向けては、こうした方々が行政サービスで不便をこうむらないよう、一人一人が最低限度の情報通信技術を活用できる環境をつくっていくことが重要であります。
 このため、都では、東京デジタルファースト条例において、デジタルディバイドを是正していくことを明記いたしました。この格差の是正を実のあるものにしていくためには、区市町村のみならず、民間の活動とも連動した複合的な視点からの対策も重要であります。
 例えば、地域の助け合いの場である自治会、町会や老人クラブと連携し、日ごろからインターネットに接している方が使えない方を支援するという共助の仕組みを広げるべく、ご指摘いただいた都のさまざまな既存事業を活用していくことも一つの対策であります。
 また、現在、サービスを提供する通信事業者が高齢者等向けのスマートフォンの開発を進め、それらの普及を図っております。こうした通信事業者とは、先日のTOKYO Data Highwayサミットを通じて、顔の見える関係を構築しており、引き続きしっかりと意見交換していきたいと考えております。
 このように、民間の活動も視野に入れながら、区市町村とも連携し、都としても、誰もがデジタル化の恩恵を享受できるよう、デジタルディバイドの是正を図るべく、重層的な支援策の検討を進めてまいります。
〔戦略政策情報推進本部長寺崎久明君登壇〕

○戦略政策情報推進本部長(寺崎久明君) データを活用した疎密情報の提供についてでございますが、都では、民間からの提案により、データを活用して、混雑回避等のための新たなサービスを提供する実証事業を行っております。
 加えまして、混雑情報を収集、配信する企業など約四十者が集まって、施設系混雑ワーキンググループを設置し、店舗等の疎密データの提供に当たっての共通の運用ルールづくりなどの議論を開始いたしました。そのうち一部の事業者とは先行して協定を締結し、実際のサービス提供を進めていくこととしたところでございます。
 今後は、その輪を広げ、地図上に複数の企業の疎密データをまとめて表示できる取り組みを推進してまいります。
 こうしたデータを活用した取り組みを通じまして、感染リスクの高い混雑の回避につなげますとともに、新たなサービスの創出を積極的に後押しをしてまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、地域の防災力の向上についてでございますが、コロナ禍での働き方改革を契機にいたしまして、働く世代が地域の防災活動において活躍することは、共助のかなめである町会や自治会等の大きな力となり、地域の防災力の向上に大きく寄与するものと考えてございます。
 このため、町会等を対象とした防災の専門家による出前講座の内容に働く世代の参加を促し、そのマンパワーを効果的に活用するノウハウを新たに加えてまいります。
 また、防災の基礎を学べる都民向けのセミナーや女性の防災人材を育成するセミナーを、テレワークを行う働く世代がリモートで学べるよう、オンラインで実施いたします。
 こうした取り組みを通じまして、町会等や働く世代の双方が連携する機運を高め、地域防災力のより一層の充実を図ってまいります。
 次に、白鬚東地区防災拠点における災害時行動マニュアルの改定の支援についてでございますが、本地区は災害時の避難場所に指定されていることに加えまして、備蓄倉庫や貯水槽などを備えた防災上の拠点であり、高い防災機能を有してございます。
 こうした機能を有効に活用していくため、行動マニュアルについては、地域防災計画の修正や施設の整備状況、災害の発生状況など、必要に応じて適宜見直しを図ることが重要でございます。
 今後、地元区による行動マニュアルの改定に当たりましては、都といたしましても、関係各局が連携をいたしまして、感染症への対応や風水害時における避難誘導を加えるなどいたしまして、防災拠点としての機能がより一層発揮されるよう、区の取り組みを支援してまいります。
〔生活文化局長野間達也君登壇〕

○生活文化局長(野間達也君) 町会、自治会の活性化についてでございますが、都は、活動の担い手不足等によりまして、地域の課題解決に踏み出せない町会、自治会のため、企業で培った経験やスキルを生かしたボランティア活動、いわゆるプロボノを活用した支援を実施してございます。
 本事業によりまして、従来とは違った視点や考え方を取り入れた取り組みが行えることが期待できるため、より多くの町会、自治会に活用してもらうことが重要であると考えております。
 そこで、今年度は、実際にプロボノを活用した団体が当該団体の取り組みに関心のある他の町会、自治会の会合に赴き、その効果を直接伝えていただく事業を実施いたします。
 今後は、こうした取り組みに加えまして、プロボノのさらなる活用促進に向け、ニーズを踏まえたマッチング等を行う仕組みを検討してまいります。
〔住宅政策本部長榎本雅人君登壇〕

○住宅政策本部長(榎本雅人君) 親子触れ合い住みかえ募集の工夫についてでございますが、この制度は、一定の条件のもとで都営住宅の居住者に住宅変更を認め、親世帯と子世帯の近居を可能にするものでございます。
 平成十二年度から実施し、令和元年度までの五年間の募集では、親世帯百戸に対し二百九十一世帯の応募がございまして、子世帯百戸に対し八十九世帯の応募がございました。
 今後、利用希望者のニーズを踏まえた住戸の立地や間取りの提供、募集戸数の拡大など工夫を凝らしまして、親世帯と子世帯が助け合いながら安心して生活ができるよう、この制度の一層の活用促進に努めてまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) 若年被害女性等支援モデル事業に関するご質問にお答えいたします。
 都は、平成三十年度から、さまざまな困難を抱えた若年女性の自立を図るため、民間団体等と連携し、SNSを活用した相談や夜間の見守りなどのアウトリーチ、一時的な居場所の提供などを行うモデル事業を実施しております。
 今年度は、コロナ禍にあっても適切な支援が行えるよう、本事業を実施する民間団体に対して、マスク等の衛生用品の購入やSNS相談の体制強化のための経費等を追加で支援しております。
 事業開始から本年九月末までの実績は、相談件数は約五万件、アウトリーチは約二百回、宿泊を伴う居場所の提供は約百五十名であり、多くの若年女性を支援してまいりました。
 こうしたことを踏まえ、今後、若年女性の個々の状況に応じた支援を一層進められるよう、事業の本格実施を検討してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) ファクタリング手法による金融取引についてですが、主に売掛債権の取引により早期の現金化を図るファクタリングは、中小企業などの資金調達手段として活用が広がりつつあります。しかしながら、法律などによる規制がなく、お話のいわゆる二者間取引などでは、高額な手数料を徴する事例も発生しております。
 このため、都は今年度、ファクタリングの実態の把握を目的として調査を行ってまいります。
 具体的には、委託により二者間取引を中心にさまざまな取引事例を収集し、中小企業の利用や契約の実態、手数料の状況などを分析いたしまして、対応すべき課題を明らかにしていくこととしております。
 この調査の結果を踏まえ、中小企業等が安心してファクタリングを利用できるよう、今後の対応策について検討を進めてまいります。

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