令和二年東京都議会会議録第二十二号

○議長(石川良一君) 七十五番小松大祐君。
〔七十五番小松大祐君登壇〕

○七十五番(小松大祐君) 国交省によれば、視覚障害者の駅ホームでの転落事故は、この十年で七百二十六件、同様に、交差点を初め歩行中の事故も絶えません。
 先日、盲学校に通う長女が、歩行訓練の一環で、先生のサポートのもと、寄宿舎から電車に乗り、駅からは徒歩で帰宅しました。最寄り駅から我が家までの間には一つも音響つき信号機がないため、交差点ではどのようにしたのか尋ねたところ、うーん、車の気配で何となくわかるかなとの答えに、頼もしさと心配とが入りまじった複雑な思いでした。
 警察庁は来年度、スマートフォンアプリで信号の色を音声や振動で伝える機器を東京都や政令指定都市の約二千基の信号機に整備すると聞いています。
 当該機器は、視覚障害者に対して有効な道路横断支援となりますが、警視庁は都内において、当該機器をどのような計画で整備を進めるのか伺います。
 都市計画道路は、多様な機能を有する都市を形成する最も基本的なインフラです。成熟した首都東京の魅力づくりと国際競争力の強化、また、防災性の向上の観点からも、極めて重要な基盤施設です。
 第三次事業化計画終了時の平成二十七年度末、優先整備路線の着手率は、都施行は六〇%、区施行は三七%、市町施行は二四%と、都施行と比べ、区市町施行の着手率は大変低い状況でした。
 ここで強調しておきたいのは、特に区施行の場合は、国庫補助金と都市計画交付金、特別区財政調整交付金により、都市計画道路の事業費は全額確保される仕組みとなっているにもかかわらず、多くの路線が着手に至らなかったという点です。
 都市づくりのグランドデザインで描かれた東京の未来にも、地域を支える都市基盤である都市計画道路ネットワークの形成は重要です。そのためには、これまで着手率が低かった区市町による優先整備路線の着実かつ迅速な整備が欠かせません。区市町施行とはいえ、都計道であります。
 そこで、都市計画道路の第四次事業化計画における区市町施行の優先整備路線について、どのように事業着手を促進していくのか、取り組みを伺います。
 今後、二〇四〇年の東京の将来像を具体的な計画にする際、交通需要予測や人口動態の変化などのビッグデータを解析し、デジタルツインを今後の都市計画にも有効活用すべきと考えますが、見解を伺います。
 都が、国や他都市に先駆けて活用し、地に足のついた次世代都市モデルを示されることを大いに期待しています。
 我が国は、その国土の地理的、地形的、気象的な特性ゆえに、数多くの災害に繰り返し見舞われてきました。時に多くのとうとい命を失い、莫大な経済的、社会的、文化的損失をこうむってきました。
 しかし、災害は、その対策次第で被害の状況を軽減させることができます。甚大な被害を受け、その都度、長期間かけて復旧、復興を図るといった事後的な対応でなく、大規模自然災害のさまざまなリスクを直視して、平時から備えることが極めて重要です。
 政府の中央防災会議に設置されたワーキンググループが令和二年四月に公表した大規模噴火時の広域降灰対策についてによれば、富士山が宝永噴火規模の噴火を起こした場合、さまざまな社会インフラに甚大な被害が生じる可能性を示唆しています。
 こうした大規模な噴火に対しても、都民の生命や財産を守るために、都としての取り組みや被害想定について、さきの総務委員会でも質問を行ったところです。
 噴火後の降灰によって、都内でも、道路、鉄道、通信、上下水道など、あらゆる点で甚大な影響を及ぼす可能性が確認されました。
 中でも水道は、人が生きていく上で欠くことのできない重要な施設であるだけではなく、降灰の清掃など復旧、復興活動にも欠かせないため、他の施設に先立って対策が必要です。大規模噴火による降灰に見舞われても、水の安全性は確保されなくてはなりません。中央防災会議の報告を踏まえ、水道施設において降灰対策を講じるべきと考えますが、見解を伺います。
 また、大規模な地震が発生した場合、東日本大震災や熊本地震の例を挙げるまでもなく、道路に埋設されている水道管にも相応の被害が生じます。
 被害を受けた水道管の応急復旧工事に際しては、交通安全対策のため、多くの交通誘導警備員が必要となります。
 水道局では、災害時に、迅速に応急復旧を行うための体制を工事事業者等と整えているとのことですが、熊本地震では、同様に被害を受けた電気やガスなどの各ライフラインの復旧工事が競合してしまい、それぞれの工事事業者の間で交通誘導警備員の取り合いが起こり、復旧活動にも支障が出たケースがあると聞いています。
 こうした実情を踏まえると、実際に大きな災害が東京で起きた場合、局の想定どおりに体制が機能するのか疑問です。
 水道は、最も重要なライフラインの一つであり、迅速な復旧が必要なことはいうまでもありません。
 災害時における水道の応急復旧に必要な交通誘導警備員の確保はどのようになっているのか伺います。
 猛暑や豪雨、台風の巨大化など、世界的な気候危機によるリスクは急激に増大しています。
 国は、平成三十年に気候変動適応法を定め、適応策を法的に位置づけ、関係者が一丸となって、その取り組みを強力に推進することとしています。
 この法律には、自治体は、地域気候変動適応計画の策定と地域における情報の収集、分析、提供等を行う拠点である地域気候変動適応センターの設置に努めることとされています。
 この方針に基づき、現在、都でも、適応計画の策定や適応センターの設置に向けた検討を進めていると思いますが、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
 家庭や職場、店舗、駅や公共施設などで使用される照明機器を初め、私たちの生活になくてはならない製品の中には、水銀や亜鉛、マンガンなど、人体や環境には有害であり、しかし、資源としては有用な物質が数多く使用されています。
 これらの製品が使用済みとなったとき、有害資源ごみを分別回収し、適正に処理を行い、再資源化して有効活用していくことが重要です。
 本年の第一回定例会でも指摘をしましたが、都内には、区市町村からの委託を受けて廃蛍光管を安全に処理している施設はなく、都内の全ての区市町村が、北海道など都外に水銀含有廃棄物を搬出しているのが現状です。
 環境先進都市を掲げる東京都として、リサイクルの観点、CO2削減の観点からも、区市町村と連携し、こうした現状は早く改善すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 加速度的に進むICT化によって、子供たちの学び方はもちろん、教える側の教員に求められる能力、資質も変わることは必然であるとの考えから、昨日の代表質問において、今後の教員育成の取り組みについて確認をいたしました。
 教育長からは、これからの教員には、ICTの特性等を生かして授業をつくり、子供の意欲を引き出し、その成長を支えていくことが求められており、今後、そうした力を育成していくという積極的な答弁をいただいたところです。
 ソサエティー五・〇時代、デジタル社会を力強く生き抜いていける子供たちを育成していくためには、教員の資質や能力の向上を含め、現場の目線で新たな教え方、学び方を創造していくことも必要となります。
 知事は、第三回定例会の所信表明において、教育施策の根本方針である教育施策大綱を総合教育会議の場で検討していく旨を述べられました。
 今後の教育施策を検討するに当たっては、子供たちや現場の教員の声を丁寧に拾い、施策に反映させていくことがこれまで以上に大切になると考えますが、見解を伺います。
 現在、社会の変化は激しく、子供たちを取り巻く環境も複雑、多様化しており、教員が対峙する課題は多岐にわたります。また、学校現場には、常に新たな教育ニーズへの対応が求められています。
 例えば、キャリア教育などの○○教育といったものが、一説には二百個以上あるともいわれ、現場の教員からは悲鳴にも近い声が上がっております。
 また、外国人の児童生徒への対応や特別な支援を必要とする子供への支援など、教員だけでは解決が難しい課題もふえています。
 こうした多様で複雑化する教育ニーズに応えながら、子供たちにとって良質な教育環境を保持、構築するために、有効な手段の一つとして外部人材活用がありますが、決して万能薬ではありません。
 そこで、都教育委員会における外部人材の活用の意義と教育の質の向上に向けた取り組みについての見解を伺います。
 都内には、二千四百以上もの商店街が都民の生活を支えています。消費活動はもとより、地域の見守りや災害支援など、多様な役割に取り組む商店街も数多く存在しています。
 コロナ禍においても、ステイホーム期間中の自主休業にも率先して参加し、感染の抑制に取り組むなど、企業市民としての公共的役割を果たしています。
 また、地域活動を支える組織体の中では、比較的年齢が若く、高齢社会を見据え、今後、さまざまな政策課題の担い手としても期待がされます。
 そこで、商店街に加入する店舗をふやし、多くの商店が一体となって地域の活力を高める取り組みを強化することで、商店街の活性化を一層図っていくべきと考えますが、都の見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔副知事宮坂学君登壇〕

○副知事(宮坂学君) 小松大祐議員の一般質問にお答えします。
 デジタルツインの構築についてでございますが、デジタルツインとは、センサーなどから取得したデータをもとに、建物や道路などのインフラ、人の流れなどさまざまな現実空間の要素をコンピューターネットワーク上の仮想空間であるサイバー空間上に双子のように再現するものです。
 都市のデジタルツインが実現すれば、まちづくりへの活用はもとより、少子高齢化や人口減少、交通渋滞など、都が抱える課題の解決に向け、三次元空間でシミュレーションすることで、より実態に即した効果の高い施策や計画をつくり上げることが可能となります。
 こうした点から、都では、未来の東京戦略ビジョンにおいて、目指すべき未来の姿の一つとしてスマート東京を掲げ、二〇四〇年に向けたビッグピクチャーを描き、デジタルツイン実現プロジェクトを推進しております。
 今年度は、都市の3Dデジタルマップの実装に向けた産学官ワーキンググループを設置し、デジタルツインの基礎となる3Dマップの仕様や導入、運用手段等の検討に着手するとともに、西新宿など特定エリアで、デジタルツインの基礎となる3Dモデルの構築や、地震発生時の避難シミュレーション等の実証を行うなど、さまざまな取り組みを開始いたしました。
 今後も、デジタルツインの実現に向けて歩みをとめることなく、海外での先進事例を参考にしながら、具体的なユースケースや活用方法等の検討をスピード感を持って進め、東京を世界で最も便利で生活満足度の高い都市へと進化させてまいります。
〔警視総監斉藤実君登壇〕

○警視総監(斉藤実君) 視覚に障害のある方などの道路横断支援に関するシステムについてであります。
 本システムの整備は、国において、高齢者や視覚に障害のある方に対し、安全な横断を支援することを目的に検討されてきたもので、今年度から一部の県で運用が開始されたと承知をしております。
 警視庁では、本システムの運用方法やスマートフォンアプリの機能について、関係機関と調整を行っているところであり、今年度中に試験運用のための機器の設置を計画しております。
 今後の整備につきましては、本運用の結果や視覚に障害のある方のご意見、ご要望を踏まえ、計画的に設置を進めてまいります。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、子供や教員の声を施策に反映することについてでございますが、教育施策の立案には、社会情勢の変化に対応するとともに、直接指導に当たる教職員や子供、保護者など学校現場の意見等を聞き取り、生かしていくことが大切でございます。
 都教育委員会ではこれまでも、施策の検討等に当たって、教育管理職を初めとする教員から日頃の教育活動の状況を把握するとともに、子供や保護者の思いや考えを聞き取るために、アンケート等を実施してまいりました。
 また、事業の企画や実施に際しては、現場の教員と協働してつくり上げ、改善や充実に取り組んでおります。
 引き続き、現場の実態を踏まえた施策展開に取り組むとともに、今後、新たな教育のあり方を検討するに当たっては、子供や教員の声を丁寧に受けとめて、子供一人一人に着目した質の高い学びを実現してまいります。
 次に、学校における外部人材の活用についてでございますが、学校において、変化する社会のニーズを踏まえた教育課題に対応していくためには、教員と多様な専門性や知識、経験等を持つ外部人材とが協働して子供たちを支援する必要がございます。
 各学校ではこれまでも、社会的な要請に伴う多様な教育課題への対応に加え、企業、大学等との連携や子供の心のケアなどさまざまな分野において、地域人材や専門人材を活用し、課題解決や教育活動の充実を図ってまいりました。
 今後、都教育委員会は、子供たちの資質、能力の育成に向けて、教員が行う授業と多様な専門性を有する外部人材を活用した教育活動を必要に応じて適切に組み合わせ実践するとともに、その成果を検証し、さらなる教育の質の向上に取り組んでまいります。
〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 区市町施行の都市計画道路の整備についてでございます。
 都はこれまで、都市計画道路を計画的、効率的に整備するため、区市町と連携し、おおむね十年間で優先的に整備すべき路線を定めました事業化計画を策定し、事業の推進に努めてまいりました。
 現在の第四次事業化計画におきまして、区市町施行の優先整備路線につきましては、拠点形成と拠点間連携や地域のまちづくりへの貢献などの地域的な視点から選定をしております。
 都は、都市計画道路ネットワークの形成を目指し、区市町が優先整備路線を早期に事業着手できるよう、必要な技術的支援を行うなど、一層連携して取り組んでまいります。
〔水道局長浜佳葉子君登壇〕

○水道局長(浜佳葉子君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、水道施設における噴火の降灰対策についてでございますが、水道局では、水道水の安全性や衛生面における信頼性を向上させるため、降灰も含めた異物混入対策として、これまで浄水処理の最終工程であるろ過池を覆蓋化し、おおむね完了させております。
 今後、浄水場内の全ての施設を建屋型で完全に覆蓋化することとしておりますが、面積の大きい沈殿池などは、大規模な改造が必要となり、多額の経費や期間を要することから、浄水場の更新工事等に合わせて計画的に実施してまいります。
 また、降灰による原水水質の悪化に対する適切な浄水処理等の確立に向けた調査、実験を今年度から開始しております。
 こうした対策を着実に推進し、大規模噴火による降灰があっても給水を継続できるよう、災害対策の一層の充実を図ってまいります。
 次に、水道工事における交通誘導警備員についてでございますが、水道工事の施工に当たっては、工事事業者が工事請負契約に基づき、歩行者誘導及び車両交通に必要な交通誘導警備員を配置しております。
 災害時の応急復旧は、工事事業者で構成される四つの団体と水道局との間で締結している災害時における水道施設等の応急措置の協力に関する協定に基づき、工事事業者に必要な体制を整えていただくこととしており、交通誘導警備員の配置も、通常の工事と同様、工事事業者に行っていただくこととなっております。
 今後、災害時の迅速な応急復旧を可能とするため、交通誘導警備員の確保や配置も含めた応急復旧体制について、関係団体と丁寧に検討してまいります。
〔環境局長栗岡祥一君登壇〕

○環境局長(栗岡祥一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、気候変動への適応についてでございますが、気候変動の深刻な影響は、私たちの身近な生活にも及んでおり、CO2排出を削減する緩和策に加え、影響を回避、軽減する適応策にも取り組むことが重要でございます。
 このため、都は、昨年十二月にゼロエミッション東京戦略の策定とあわせまして、気候変動適応方針を公表したところでございますが、現在、関係各局と連携して適応計画の策定を進めているところでございます。
 適応計画については、方針で示した取り組みに加え、デジタルトランスフォーメーションなどポストコロナの新たな視点を踏まえた取り組みも盛り込み、年度内に作成してまいります。
 また、適応に関する情報発信等の拠点となる気候変動適応センターにつきましては、東京都環境科学研究所への設置を進め、緩和と適応の両面から総合的に施策を展開してまいります。
 次に、廃蛍光管のリサイクルについてでございますが、循環型社会と脱炭素社会の両立に向けては、資源を最大限に循環利用していくことが求められてございます。
 蛍光管は、有害な水銀を含めリサイクルが可能であり、この分別回収には区市町村の役割が重要でございます。
 都はこれまで、分別回収、リサイクルに取り組む区市町村に対し財政支援を行うとともに、水銀含有廃棄物の適正処理に向け、区市町村と都の共同検討会を通じて議論を深めてまいりました。
 その結果、今年度からは、全区市町村での分別回収、リサイクルが実現し、都の管理する埋立処分場への廃蛍光管の埋め立てゼロを達成してございます。
 引き続き、区市町村によるさらなる分別回収と適正処理に向けた技術的助言を行うなど、地域の実情に応じた環境負荷の低い、安全かつ安定的な処理を一層後押ししてまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 商店街の活性化についてですが、商店街が地域コミュニティの担い手として、消費活動はもとより、地域の安全・安心や災害時の協力など多様な役割を果たすためには、そこで営業する店舗の連携強化を図っていくことが重要でございます。
 都は、商店街の連合組織が地元の商店街と連携して行う加入促進パンフレットの作成など、商店街活動の基盤強化につながる自主的な取り組みを後押ししてまいりました。
 また、街路灯や防犯カメラの整備のほか、宅配サービスや地域の見守り活動など、商店街が一体となって行う地域活力を向上させる取り組みを支援しているところでございます。
 今後も、魅力ある商店街づくりに向けた活動を着実に支援することで、さらなる活性化を図ってまいります。

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