令和二年東京都議会会議録第二十二号

   午後一時開議
○議長(石川良一君) これより本日の会議を開きます。

○議長(石川良一君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(石川良一君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第二十号、東京都学生応援給付金条例外条例四件、知事より、東京都教育委員会委員の任命の同意についてがそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(石川良一君) 昨日に引き続き質問を行います。
 六十三番両角みのる君。
〔六十三番両角みのる君登壇〕

○六十三番(両角みのる君) このたびの新型コロナウイルス感染症の流行では、三月から公立学校が臨時休業になるなど授業時間が大きく減少し、子供たちの学習のおくれが問題となっています。
 感染症の流行など緊急時の学びを保障するものとして、ICT技術の活用に期待が寄せられていますが、臨時休業中に双方向のオンライン学習を実施した自治体は五%にとどまっており、ICT機器を活用した遠隔授業が機能したとはいいがたい状況です。
 二〇一八年に、OECDが実施した学習到達度調査によれば、我が国は学校の授業でのデジタル機器使用が加盟国中最も低いものとなっています。こうした状況を受け、国のGIGAスクール構想や都のTOKYOスマート・スクール・プロジェクトの推進により、教育現場での一人一台端末と高速大容量通信環境整備が急速に進展しつつあります。
 ICTを活用した授業や学習により、児童生徒は個々の理解度に応じた個別学習が可能となり、また、教師も一人一人の子供の学習状況を把握しながら授業を行うことができるほか、事務負担が大幅に減るといったメリットがあります。また、ICTにより、違う地域の学校との合同授業が可能となるなど、これまでと次元の異なる質の高い教育が期待をされています。
 図らずも、このたびのコロナ禍により、教育のICT環境整備は劇的に前進することとなりましたが、コロナ禍での学習機会確保の視点にとどまることなく、コロナ後もICTのメリットを最大限に生かした学習方法を積極的に展開し、東京の公教育の質を高めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 ところで、ICT技術を活用した教育を推進していくためには、通信やデバイスなどの環境整備などとともに、教師のICTリテラシーを高めていくことが必要です。しかし、実際は、教師のリテラシーには大きな個人差があります。都教委は、ICT支援員に係る予算措置をしていますが、今後、都内のどの公立学校においても、教師が日常的支援を受けられるような体制を速やかに充実していくことが求められます。
 そのためには、既存リソースを有効活用することが鍵になると考えます。
 例えば、東京都専修学校各種学校協会では、ICT系の学校が中心となり、プロジェクトチームを組み、デジタル教育改革に向けた取り組みを行っていると聞いております。このような組織の協力を仰ぐ等により、早期の支援体制拡充につなげることが重要です。
 そこで、学校現場における既存リソースを活用した教員のICT支援体制充実について、都教委の見解を伺います。
 世界的な気候変動を受け、脱炭素が大きくクローズアップされています。昨年末、都は、国に先駆けて、ゼロエミッション東京戦略を策定し、二〇五〇年までの都内でのCO2排出ゼロを目指したロードマップを提示いたしました。
 ゼロエミッション東京戦略では、一般廃棄物のリサイクル率を現在の二二・八%から二〇三〇年には三七%とする目標を掲げております。この目標達成には、都民の意識とライフスタイルを、3Rを徹底したものへと大きく転換する必要があり、一般廃棄物の多くを占める家庭廃棄物の排出抑制とリサイクル推進が重要となります。
 ところで、多摩地区では、二〇〇一年に東京都市長会が全市での家庭ごみ収集の有料化を掲げ、現時点で多摩二十六市中二十五市までが家庭ごみ収集有料化を実施しています。その結果、多摩地区は、ごみ排出量の大幅削減を実現し、リサイクル率は全国トップレベルにあります。
 一方で、区部は、家庭ごみ収集有料化実施自治体はゼロであり、二十三区の一人当たり家庭ごみ排出量は多摩地区に比べかなり多く、リサイクル率は全国平均以下と低迷しています。こうした状況を見れば、東京全体のごみ減量化とリサイクル率向上は、区部での今後の取り組みにこそかかっているといっても過言ではありません。
 家庭ごみ有料化に関し、都は、区市町村の議論を促すというスタンスをとり続けています。しかし、東京全体でのごみ排出量を減らし、ゼロエミッション東京戦略を実現するためには、区部での現状の改善が必須です。
 そのために、二十年以上の多摩地区での取り組みにより、大きなごみ減量効果が確認をされている家庭ごみ収集有料化について、区部においても早期に全区で導入するよう、これまで以上に都が積極的に働きかけをしていくべき時期に来ていると考えますが、知事の所見を伺います。
 近年、大人が担うような家族の介護や世話をすることで、みずからの育ちや教育に影響を及ぼしている十八歳以下の若年層であるヤングケアラーにスポットが当たっています。
 厚生労働省は、平成三十一年度から要保護児童対策地域協議会を対象に実態調査を実施するとともに、自治体の福祉部局宛てに要対協でのヤングケアラー概念の認識を広げ、関係機関が適切な支援をするよう要請をいたしました。また、本年十二月には教育現場を対象とした全国初となる実態調査に着手し、来年三月ごろに調査結果を取りまとめるとしています。
 一方で、埼玉県は、本年三月に全国初となるヤングケアラーを支援するケアラー支援条例を制定するとともに、先月には、県内の全高校二年生を対象としたヤングケアラー実態調査の結果を公表いたしました。
 厚労省の要対協への調査では、ヤングケアラーという概念自体が認知をされておらず、ヤングケアラーには、ひとり親と子供という家族構成が多く、学校を休みがちであることが明らかになりました。
 また、埼玉県の調査では、生徒の二十五人に一人がヤングケアラーに該当し、彼らが孤独やストレスを抱えている実態が示されました。
 私は、さきの都議会文教委員会の質疑でもこの問題を取り上げたところでありますが、ヤングケアラーが学びの機会を喪失したり、進路を断念することがないよう適切な支援策を講じることが重要であると考えます。
 そこで、まず、ヤングケアラーについて、現状認識を踏まえた知事の所見を伺います。
 また、ヤングケアラーを取り巻く状況や課題、活用可能なリソースは地域によってさまざまであり、都は、独自に都内の実態把握をし、ヤングケアラーに関する議論を進めていくべきと考えます。
 そこで、早期にヤングケアラーに関して都内の実態を把握し、その存在や概念について、福祉、教育関係者を初めとして、区市町村等関係機関を含めて広く周知、啓発をしていくべきと考えますが、今後の都の取り組みを伺います。
 近年の豪雨災害を受けて、都は、想定最大規模降雨をそれまでの時間百十四ミリから百五十三ミリに改定し、浸水予想区域図の改定を行ってきました。この結果、八王子市では、これまで浸水想定エリア外であった市役所が、最大約二メートルの浸水被害が見込まれることとなりました。
 市役所は、災害時に対策本部が設置をされ、近接をする八王子警察署とともに非常に大きな役割を担います。こうした事態を受け、地元市議会でも、対策本部のあり方が議論となっており、現在、市では対応策を詰めていると聞いております。
 大きな問題は、市庁舎が浸水をすることで地下の非常用電源が機能停止をすることです。区市町村の非常用電源確保への支援は我が会派の要望により実現をしたものでありますが、緊急性の高い八王子市の非常電源確保対策に対し、都は市の相談にきめ細かく乗るとともに、その求めに応じて早急な支援を実施すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、水害が発生した場合、近接する八王子警察署も水害対応等が求められますが、八王子警察署の浸水等対策について警視総監に伺います。
 ところで、都内では、集中豪雨が発生した場合に対策本部となる区や市の本庁舎が浸水エリアに位置するものが二十二カ所もあります。豪雨災害により災害対策のヘッドクオーター機能を担う対策本部が被害を受け、適切な対応が困難となることが危惧をされますが、その課題や対応は自治体によりさまざまです。
 そこで、こうした区市町村に対して、災害時にも応急対策業務を継続できるよう、それぞれの区市町村の事情に即した支援が必要ですが、見解を伺います。
 現在、都立大学は5Gの重点整備エリアに、南大沢はスマート東京先行実施エリアにそれぞれ位置づけられ、5G技術を活用したまちづくりに期待が寄せられているところであります。また、南大沢駅に近接をする三井アウトレットモールの都有地の定期借地権契約期間が二〇二五年で終了することを見据え、昨年、南大沢周辺地区まちづくり方針策定等検討委員会が立ち上がりました。しかし、本年度中に予定されていた検討結果の取りまとめは、コロナの影響で次年度へとずれ込むことになったと聞いております。
 ところで、コロナ禍は、働き方や住まい方、リモートや非接触の生活様式など、社会のあらゆる面で大きな変化をもたらしつつあります。
 そこで、南大沢地区のまちづくり方針の策定に当たっては、社会や地域のあり方を方向づけるこうした大きな変化を前提として構想すべきと思いますが、今後のまちづくり方針策定に向けた考え方を伺います。
 また、南大沢地区では、南大沢スマートシティー実施計画策定に向けて、先日、協議会が立ち上げられたと聞いております。
 今後、スマートシティー実施計画を策定していくに当たっては、住宅都市としての地域特性や大学や医療機関などといった地域資源を生かし、地域の課題解決に資するような実践的な最先端技術の活用を考えていくべきと考えますが、今後の取り組みを伺います。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 両角みのる議員の一般質問にお答えいたします。
 家庭ごみの有料化についてのご質問でございます。
 二〇五〇年CO2実質ゼロに貢献するゼロエミッション東京の実現に向けましては、持続可能な資源利用の定着が必要でございます。
 昨年公表いたしましたゼロエミッション東京戦略では、資源循環分野を本格的に気候変動対策に位置づけ、3Rの推進、プラスチック対策を強化いたしております。
 家庭ごみの有料化でございますが、ごみの減量化への意識改革、経済的インセンティブによるごみの減量とリサイクルの推進、排出量に応じた負担の公平化等の意義がございます。
 都はこれまで、資源循環・廃棄物処理計画等で区市町村におけます家庭ごみ有料化に向けた議論を促しておりまして、昨年度からは、区市町村と都の共同検討会におきまして、先進自治体の事例を共有しながら検討を深めているところであります。
 また、特別区におきましても、今年度から、ごみ減量の推進と今後の清掃事業のあり方をテーマといたしまして、調査研究を開始しております。
 先般、国が示しました、今後のプラスチック資源循環施策のあり方に関する素案では、家庭ごみの有料化徹底等を通じまして、消費者の資源分別を促すとされております。
 今後、こうした動きを注視しつつ、都が先導して家庭ごみの有料化を含めました、さらなるごみの減量とリサイクル率向上に向けました施策の検討を加速させてまいります。
 ヤングケアラーについてであります。
 国が行った実態調査では、ヤングケアラーは、年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負って、本来大人が担うような家族の介護や世話をすることで、みずからの育ちや教育に影響を及ぼしている十八歳未満の子供、このように定義をされております。
 例えば、病気や障害のある親にかわって兄弟の世話や家事に追われ、誰にも相談できないまま学校を休みがちになって、進路や夢を諦めざるを得ないなど複雑な悩みを抱えることもあって、こうしたヤングケアラーといわれる子供たちを適切な支援につなぐことは必要と考えております。
 そのためにも、子供の権利擁護の視点から、福祉や教育分野を初めといたします地域の関係機関がしっかり連携して対応すべきであります。
 都は、今後、区市町村と連携しまして、まずは都内のヤングケアラーの状況把握に努めるとともに、庁内各局で構成する会議等で支援のあり方を検討してまいります。
 残余のご質問については、警視総監、教育長、東京都技監及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔警視総監斉藤実君登壇〕

○警視総監(斉藤実君) 八王子警察署の浸水対策であります。
 現在の八王子警察署の庁舎は、平成二十九年七月に完成をしたものであり、ゲリラ豪雨などを考慮して、地下階への水の流入を防止する防水板を備えておりますほか、電気室及び非常用電源装置を中層階に設置をしておりまして、万が一浸水が発生した場合においても、警察署の機能を損なうことなく活動することが可能となってございます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、学校におけるICTのさらなる活用についてでございますが、ICTを活用した学びは、子供一人一人の理解度や進度に応じた学びを深め、空間の制約を超えた対話による探求的な学習の充実などを可能としてまいります。
 都内公立学校では、臨時休業を契機といたしまして、ICTを活用した授業や家庭でのオンライン学習の取り組みが一定程度進んだところでございます。それらの取り組みを通じまして、一人一人の学習の定着状況を瞬時に把握し、つまずいている子供にすぐに対応できること、子供同士で意見を即時に共有し議論が深まること、また、社会で活躍する外部人材との授業をオンラインで実施できることなど、ICT活用の利点がさまざま確認できたところでございます。
 今後、都教育委員会は、こうした取り組みがコロナ後の日常となるよう、ICTを一層加速させ、子供の力を最大限に伸ばす質の高い教育の実現を目指してまいります。
 次に、学校におけるICT活用に向けた教員への支援についてでございますが、ICTの特性等を生かした授業を実現していくためには、機器の操作や学習ソフトの効果的な活用方法などに関して、教員に対する専門的な支援が必要でございます。
 そのため、都教育委員会では、小中学校全校に支援員を配置できるよう補助を行い、GIGAスクール構想に基づく円滑な端末導入や効果的な活用を支援しております。また、都立学校におきましても、全校を支援員が巡回し、ICT活用に関する研修等を実施しております。
 今後、年度末に向けて、都内公立学校における一人一台端末が順次整い、より多くの支援員の確保が必要となりますことから、東京学校支援機構、TEPROと連携をいたしまして、企業、大学、専修学校等から幅広く人材を求め、都内公立学校のICT活用を推進してまいります。
〔東京都技監上野雄一君登壇〕

○東京都技監(上野雄一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、南大沢地区のまちづくりについてでございます。
 南大沢駅周辺地区まちづくり方針につきましては、昨年度、都有地を活用し、多様なライフスタイルの実現を支える都市機能の一層の集積や、にぎわい、交流、利便性向上に向けたまちづくりのあり方につきまして、方針策定検討委員会で議論をしてまいりました。
 今回のコロナ禍を契機に、テレワークの進展や人々の生活等への意識に変化が生じたこと、また、先端技術が進歩していることから、こうした社会状況にも対応できるまちづくりが求められております。
 今後は、改定予定の都市計画区域マスタープランを踏まえ、十月に設置いたしました南大沢スマートシティ協議会も活用しながら、社会の大きな変化に対応した方針を策定し、南大沢地区を活力と魅力に満ちたまちとしてまいります。
 次に、南大沢地区のスマートシティーについてでございます。
 南大沢地区は、スマート東京実施戦略におきまして、最先端の研究とICT活用による住民生活の向上が融合した持続可能なスマートエリアを目指すこととしております。
 この実現に向けまして、十月に地元市や都立大学、地元企業、団体とともに協議会を設立いたしました。
 当地区では、住宅団地における高齢化の進展や、丘陵地で坂が多いこと等から、高齢者の駅や地元の医療機関への移動手段の確保や、まちのにぎわいの創出等が課題となっております。
 このため、協議会では、5G通信環境を見据えた自動車椅子による移動支援等、実践的なまちづくりの検討を進めておりまして、今年度に実施計画を取りまとめることとしております。
 今後も、協議会等関係機関と連携しながら、先端技術も活用した質の高い住民生活の実現を図ってまいります。
〔福祉保健局長吉村憲彦君登壇〕

○福祉保健局長(吉村憲彦君) ヤングケアラーに関するご質問にお答えいたします。
 国が昨年度、地域の関係機関で構成する区市町村の要保護児童対策地域協議会を対象に行った調査では、本来大人が担うような家族の介護や世話を行うヤングケアラーについて、回答があった協議会のうち、約四分の一はその概念を認識していない、また、約半数は実態を把握していないという結果でございました。
 ヤングケアラーの状況を把握するため、今後、都は、区市町村と連携して、子供家庭支援センターや学校など関係機関にヒアリング調査等を実施いたします。
 また、必要な支援につなぐため、ヤングケアラーの概念や具体的事例、対応方法等について、要保護児童対策地域協議会の研修等を活用して、関係機関の理解促進を図るよう、区市町村に働きかけてまいります。
〔総務局長山手斉君登壇〕

○総務局長(山手斉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、災害時の非常用電源の浸水対策についてでございますが、災害対策本部となる区市町村庁舎の非常用電源については、災害時に水没等によりその機能が失われることがないよう、浸水対策を講じることが重要でございます。
 都は、平成三十年から、区市町村庁舎の非常用電源を確保するため、電源が浸水する可能性がある区市町村に対する補助事業により、止水板の設置や電源の移設などの取り組みを支援してまいりました。
 当該補助事業の活用について、八王子市との協議を重ね、市が実施する非常用電源の浸水対策に対し、今年度から補助事業を通じた支援を実施いたします。
 今後、具体的な対策を進めていく中で、市からの相談にきめ細かく対応し、事業が着実に進捗するようサポートをしてまいります。
 次に、業務継続計画策定に向けた区市町村支援についてでございますが、災害時に、区市町村は住民の安全確保を図るため、応急対策業務を適切に実施、継続していく必要がございます。
 そのため、都は、区市町村の業務継続計画策定が円滑に進みますよう、平成三十年三月にガイドラインを作成し、支援を行ってございます。
 現在、計画策定済みの自治体は五十三団体でございまして、未策定の団体に対しては、今後、ヒアリングを実施し、個別の実情に応じた策定支援を行ってまいります。さらに、策定済みの自治体に対しても、計画のブラッシュアップや浸水予想区域の見直しなどに応じた改定が適切に行われるよう、職員向けの訓練や研修を実施いたします。
 こうした取り組みを通じて、発災時に区市町村の応急対策業務が適切に行われるよう、きめ細かく支援してまいります。