令和二年東京都議会会議録第十一号

○議長(石川良一君) 百四番尾崎あや子さん。
〔百四番尾崎あや子君登壇〕

○百四番(尾崎あや子君) 東日本大震災の後、突然首を切られてしまい、家族と一緒に私のところに相談に来ることになっていた若者が、その日の明け方にみずから命を絶ってしまったという経験があります。若者の命を奪うような状況をつくってはならない、私の活動の原点です。
 今、感染拡大防止のための自粛や休業で、業績悪化を理由に派遣労働者が退職を強要された、契約社員が契約更新の五日前に突然一カ月だけ更新して次回は更新しないといわれた、長年働いてきたのに緊急事態宣言の翌日に会社からあしたから来なくていいといわれたなどの事例が相次いでいます。地域の労働組合では、四月から相談が大幅にふえたといいます。
 新型コロナ感染拡大を理由に従業員に退職を要請することや、就職内定した学生に対して内定取り消しで失業者を生んではならないと思います。失業者を生まないための対策が必要だと思いますが、知事の認識を伺います。
 都として、都内の企業に対し、新型コロナ感染拡大を理由にした内定取り消しや従業員、非正規雇用者に退職を迫ることのないよう要請すべきですが、いかがですか。
 経済が落ち込む今こそ、第二の就職氷河期世代を生まないための先手の施策として、都みずからができることをまず率先して行うことが必要です。
 コロナ禍の中で、病院、保健所、学校を初め公務労働者の不足は明確になったのですから、東京都の正規職員の採用を思い切ってふやすべきだと思いますが、いかがですか。
 新型コロナの影響で従業員を休ませる場合に支払う休業手当の一部を支援する雇用調整助成金は、一日の上限金額八千三百三十円でしたが、これでは最低の生活さえ営めないとの声に、政府は一万五千円に引き上げ、四月分からさかのぼって支給するとしました。
 しかし、家賃などが高い東京では、もっと引き上げなければ暮らしが成り立ちません。雇用調整助成金に都の独自の上乗せ補助をすることを求めますが、いかがですか。
 雇用調整助成金の申請には、複雑な書類が求められます。コロナ禍の中では、手続を簡素化するよう都として国に要望すべきですが、いかがですか。
 都は、コロナ対策として、中小企業の従業員を対象に生活費融資を行いました。利子や保証料は都が負担し、非正規雇用者でも対象になることは重要であり、助かるとの声も寄せられています。新型コロナがいつ終息するかの見通しがないもとで、予算をさらにふやし、上限金額の引き上げや返済の猶予期間を設けるなどの改善が必要ですが、いかがですか。
 新型コロナによる三カ月にもわたる学校休業で、学校での今年度の演劇鑑賞教室が軒並み中止になり、存続の危機に頻する劇団も生まれています。子供たちや都民に感動と勇気、生きる力を与え続けてきた劇団を失うわけにはいきません。
 公演やイベント中止によって、文化を担う方々が収入を失っている状況です。舞台に上がる演奏者や俳優などだけではなく、音響、照明、舞台監督、脚本、演出、演出助手、美術大道具、イベント専用の輸送業など、多くの方々が窮地に追い込まれています。多くの方が、今支援してほしいのは経済的な支援だと悲鳴を上げています。
 文化芸術の灯を消してはなりません。ドイツの文化大臣は、アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在と発言し、文化機関、文化施設を維持し、芸術や文化から生計を立てる人々の存在を確保することは重要なことと位置づけ、大規模な支援を行っています。
 人間は、健康な体と健康な心が必要です。文化芸術は健康な心に不可欠なものだと思いますが、知事の認識を伺います。
 また、愛知県の大村知事は、文化芸術は人間の存在、活動にとって不可欠だ、しっかりと目を向けていかなければならないと述べ、愛知県文化芸術活動応援金を創設すると発表しました。東京都として、芸術家や劇団、映画館、音楽や演劇などのアーティスト、関係する全ての方々への活動を応援することが必要だと思いますが、知事、それぞれお答えください。
 ライブハウスを初め、文化芸術関係者は、自粛をほかの業種よりも早い段階から求められ、自粛解除も最後の最後とされ、いつになったらもとに戻れるのか見えない状況です。公演再開しても、三密を避けるため、会場を満席にすることはできません。長期的な支援が求められると思いますが、いかがですか。
 都は、文化芸術活動の支援としてアートにエールを!東京プロジェクトを企画し、今回の補正予算案でさらに全体で二万人まで拡充したことは重要です。
 第一弾では、予定の規模の四倍の一万六千人が応募し、アーティストの方々の期待の大きさが示されました。あと四千人の追加では不十分だと思います。規模の拡充を行い、応募者全員を採用すべきですが、どうですか。
 今回の補正予算案で、劇場、ホール等での演劇、音楽、古典芸能などの無観客公演の配信等を新たな支援対象としたことは重要です。同時に、自由な表現を保障するために、審査の基準の透明化と公平な審査を求めます。また、会場として都立施設を活用する場合、無料にすべきですが、どうですか。
 私は、二十三年間、中小業者の営業と暮らしを守る運動の中で、国保にも傷病手当が必要だと取り組んできました。政府は三月、新型コロナ対策として、感染したり、感染の疑いがある労働者について、国民健康保険で傷病手当を支給する財源を国が負担することを決めました。これは大きな一歩です。
 これを受け、傷病手当の支給を始める自治体が広がっています。しかし、自営業者やフリーランスの方は対象になっていません。これまでも、自営業者やフリーランスの方たちは、休んだ分の収入の補償が何もないため、無理をして仕事をせざるを得ません。休めば即、暮らしが立ち行かなくなってしまいます。体調が悪くても病院に行かず、市販の薬で我慢してしまう、病院に行ったときには手おくれだったという事態があります。
 東京の経済を支えている自営業者やフリーランスの方たちが、新型コロナに感染した場合や感染が疑われる場合、安心して休むことができるように傷病手当が必要です。知事の認識を伺います。
 鳥取県の岩美町は、町長の決断で、不公平をなくすため、自営業者への個人事業主等傷病給付金を町独自の事業として行う補正予算を提案しました。
 埼玉県の朝霞市は、傷病手当金とは別の制度として、国民健康保険に加入している自営業者が新型コロナに感染した場合、一律二十万円の傷病見舞金を支給することを決めました。
 自営業者、フリーランスの傷病手当については自治体の裁量でといわれても、国からの財政支援はありません。自治体に傷病手当の対象拡大を促すためには、国や都の財政支援がなければ難しい状況です。東京都として、国に財政支援を求めるべきです。また、国が動かなければ、都として区市町村への支援が必要です。いかがですか。
 最後に、横田基地の新型コロナ感染対策についてです。
 米軍横田基地に、コロナに感染した空母を含む米海軍から症状がない兵士が運ばれ、その中から感染者が出たことが米軍から報告されています。
 この報告では、感染者が出た海軍兵のグループとそのサポートスタッフは接触が一切ないとされていましたが、その後、このサポートスタッフからも感染者が出ました。しかも、このスタッフは誰でも基地内で見かけることができる状態だったとしています。しかし、詳細については、東京都や基地周辺の自治体には報告はなく、住民の不安が広がっています。
 二〇一三年の日米合同委員会では、在日米軍と日本国の衛生当局間における情報交換についてと題する覚書が交わされ、感染症が判明した場合の情報共有を緊密に行うことで合意しています。
 直ちに情報を入手し、都民に公表すべきです。横田基地内でのこの間の新型コロナの感染者は何人ですか。現在の感染者は何人ですか。
 都民の命、安全を守るため、新型コロナ感染者が出た米軍の原子力空母などの乗組員が横田基地に移動する場合は、全員のPCR検査が必要だったと思いますが、認識を伺います。
 横田基地内での感染対策防止策の状況、基地内で働く日本人、基地へ出入りする業者などへの対策も含め、どのように行っているのか把握しているのですか。
 基地周辺の防疫対策に万全を期すために、知事は、国により強く働きかけるべきですが、見解を伺います。
 今こそ、改めて日米地位協定の抜本的改定を強く求めるべきですが、知事、いかがですか。
 横田基地周辺では、米軍の軍用機による離着陸訓練、パラシュート降下訓練など、この間、ふえています。しかも、横田基地の飛行回数は、CV22オスプレイが配備された以降、二〇一九年度の軍用機の飛行訓練回数は一万四千八十九回となり、二〇〇三年度、イラク戦争時の一万二千七百四十五回を大きく上回っています。四月の軍用機の離着陸は何回ですか。
 福生市が実施している航空機騒音調査によると、四月の飛行回数は千七百五十六回、前月比約四二%増で、今世紀で最高になっています。
 住民の方たちからは、低空飛行や夜間訓練がふえており不安だ、世界で新型コロナ感染症が拡大している中で訓練はやめてほしいの声も寄せられています。
 横田基地での訓練はやめるよう、米国、米軍に求めることを強く要望して、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 尾崎あや子議員の一般質問にお答えいたします。
 働く方々の雇用の維持に向けた対策についてでございます。
 新型コロナウイルス感染症の影響によって、都内企業の経営環境は厳しさを増しております。内定の取り消しや雇いどめ、解雇の増加など、雇用情勢は急速に悪化をしております。
 こうした状況の中で、働く方々の雇用の維持に向け、雇いどめ等に関する緊急の労働相談窓口の設置や、雇用調整助成金の申請手続のサポートなど、さまざまな対策を引き続き実施してまいります。
 次に、文化、芸術、アーティストへの支援についてでございます。
 芸術文化は、都市の魅力を形成する要素となるだけではありません。豊かな生活を享受する上で極めて重要でございます。
 新型コロナウイルス感染症の影響によって、アーティストやスタッフ等、芸術文化に携わる多くの方が活躍の場を失っておられ、こうした方々を応援していく必要がございます。このため、芸術文化の灯、ともしびを絶やさないために、アートにエールを!東京プロジェクトを開始したところでございます。
 次に、国民健康保険における傷病手当金についてのご質問がございました。
 新型コロナウイルス感染症への感染、または感染が疑われる場合、自営業者やフリーランスの方々も含めまして、誰もが休みやすい環境を整備することは重要でございます。
 国民健康保険法では、区市町村の条例で傷病手当金を支給できるとされておりますが、国民健康保険の被保険者は、自営業者などさまざまでございまして、それぞれの就業状況や収入の把握が困難であることなどから、国は、被用者のみを特例的に財政支援の対象にしているものと認識をいたしております。
 次に、基地周辺の防疫対策についてのご質問でございます。
 在日米軍基地におけます防疫対策は、米軍の責任において実施されるべきでございますが、周辺住民の安全を確保して、不安を解消するには、感染の状況などについて適切な情報の公表がなされる必要がございます。
 都は、本年三月及び四月には、地元自治体とともに、横田基地におけます新型コロナウイルス感染症の拡大防止につきまして、万全の措置をとるとともに、感染者発生状況などを速やかに情報提供するように、国や米軍に対しまして要請をいたしております。
 また、本年五月には、米軍基地所在の都道府県で構成する渉外知事会を通じまして、国に対し、在日米軍基地におけます新型コロナウイルス感染症の発生状況や米側の措置について、積極的に公表するように米側に働きかけるとともに、在日米軍におけます感染防止対策の強化などを求める緊急要請を行っております。
 今後も、感染症対策の徹底と住民の安全確保の観点から、引き続き、国や米軍に対しまして必要なことを申し入れてまいります。
 その他のご質問につきましては、東京都技監、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 五点の質問にお答えいたします。
 まず、横田基地内での新型コロナウイルスの感染者数についてでございます。
 今のところ、横田基地所属の米空軍兵及びその関係者において、感染者が確認されたとは聞いておりません。
 横田基地に一時的に滞在していた、他の基地に所属する米海軍兵グループ及びそのグループをサポートする別の米海軍兵のチームから、それぞれ少数名が新型コロナウイルスに感染したが、管理された環境下で隔離されていた旨、米軍から情報を得ております。
 次に、横田基地に移動する場合の全員のPCR検査の必要性についてでございます。
 在日米軍基地における新型コロナウイルス感染症対策については、在日米軍の医療機関が対応するものであり、米側の責任で実施されると認識しております。
 今回の横田基地における事例においても、基地の公衆衛生の専門家が米海軍と連携をとって、隔離等の対応をしていると聞いております。
 お尋ねのPCR検査については、基地に滞在していた米海軍兵全員が実施したと聞いております。
 次に、横田基地内での感染対策防止策についてでございますが、本年四月に在日米軍司令部が発令した公衆衛生緊急事態宣言を踏まえ、横田基地として、米国の軍人や民間人、それらの家族はもとより、出入りする業者や日本人従業員が遵守すべき事項を定めております。
 例えば、基地内に在住する軍人などは、任務上必要な場合や生活必需品の購入、必要不可欠なサービスを受ける場合以外、基地の外への移動が禁止となっております。また、業者を含む全来訪者の基地入門時のスクリーニング、日本人従業員を含む全人員に、社会的距離を保てない場合のマスク着用を義務づけております。
 これらの事項に違反した場合には、拘留などされる可能性があるなどとされております。
 次に、日米地位協定の改定についてでございますが、日米地位協定は、締結以来一度も改定されておらず、補足協定などにより運用の改善が図られているものの、国内法の適用や自治体の基地立ち入り権がないなど、我が国にとって、依然として十分とはいえない状況にございます。
 これまで、全国知事会において、平成三十年七月に、日米地位協定の見直しを含む米軍基地負担に関する提言を全会一致で決議し、国に求めたほか、国への提案要求や、米軍基地所在の都道府県で構成する渉外知事会を通じて、日米地位協定の見直しを国に要求してまいりました。
 今後も、知事会等を通じて他の自治体とも連携し、日米地位協定の見直しを国に要請してまいります。
 最後に、横田基地における四月の軍用機の離着陸回数についてでございますが、軍用機の離着陸回数など、米軍の運用に関する情報は国の責任において取得し、提供されるべきものでございますが、国からは、把握しているとは聞いておらず、提供もなされておりません。
 都は、国への提案要求等を通じ、都内の米軍基地において、周辺住民に影響を及ぼすような米軍の訓練や飛行の実施等に関する情報を、地元自治体に提供するよう国に要請してまいりました。
 今後も引き続き、飛行の実施等の情報提供を国に求めてまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、都内企業に対する雇用維持に向けた要請についてですが、都は既に、都内の経済団体等に対して、採用内定の取り消しの防止のため、あらゆる手段を講ずることや、派遣労働者などの非正規雇用の方が引き続き就労を継続できるよう、要請しているところでございます。
 次に、雇用調整助成金についてですが、雇用調整助成金の制度設計については、国において適切に判断すべきものでありまして、都は既に、国に対して、地域の給与水準を反映し、雇用調整助成金の上限額の引き上げを行うよう要望しております。
 次に、雇用調整助成金の手続の簡素化についてですが、都は既に、国に対して、可能な限り手続の簡素化等を図るよう要望しているところでございます。
 最後に、中小企業従業員融資についてですが、新型コロナウイルス感染症緊急対策における従業員融資につきましては、今回の補正予算において必要額を確保しております。
 また、本融資につきましては、既に従来の上限額を引き上げていることに加えまして、返済期間も、より長い設定としております。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 都職員の採用の拡大についてでございますが、都の事業は、常に最少の経費で最大の効果を発揮することが重要でございまして、事業の執行に当たっては、その内容に応じて、常勤職員のほか、会計年度任用職員などを活用しております。
 また、都の職員の採用は、社会経済状況、職員の退職者数や年齢構成、事業執行に必要な人員の確保などを総合的に勘案して実施をしております。
 今後の採用につきましても、これらの点を踏まえ、適切に対応してまいります。
〔生活文化局長浜佳葉子君登壇〕

○生活文化局長(浜佳葉子君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、アーティスト等への支援についてでございますが、都は先月、アートにエールを!東京プロジェクトを開始し、自宅等で動画作品を制作する個人を対象に募集を行いました。
 感染症対策の段階に応じて、今後、劇場、ホール等が再開されていくことから、こうした施設を利用して、無観客や入場制限で開催し、一定期間、動画を無料配信する公演への支援を行います。
 これらの取り組みにより、アーティスト等の活動を支援してまいります。
 次に、アートにエールを!東京プロジェクトの応募者についてでございますが、予定の四千人を上回る一万六千人の応募があったことから、要件を満たす方全員を受け付けることといたしますとともに、規模を合計二万人に拡大することといたしました。
 さらに、感染症対策の段階に応じて、本来の芸術文化の発信の場である劇場、ホール等での活動に対する支援も行います。
 次に、審査と都立施設の利用についてでございますが、審査に当たっては、外部有識者を活用するなど、適正に実施してまいります。
 また、今回のプロジェクトは、公演主催者が自身の演目内容にふさわしい施設を選択することにより、活動の拠点となる劇場、ホールへの支援にもつなげていくものでございます。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 国民健康保険における傷病手当金に関するご質問にお答えいたします。
 国民健康保険の被保険者は、自営業者などさまざまであり、それぞれの就業状況や収入の把握が困難であるなどの課題があることから、国は、新型コロナウイルス感染症に感染するなどした被用者を傷病手当金の支給対象としております。
 一方、自営業者やフリーランスを含め、新型コロナウイルス感染症の影響などにより収入が大きく減少した方につきましては、保険者の判断で、保険料、保険税を減免またはその徴収を猶予することが可能となってございます。
 都は、こうした支援策に関する区市町村からの問い合わせに応じて国に照会し、情報提供するなど、保険者である区市町村が円滑に取り組めるよう支援しており、今後とも適切に対応してまいります。

○議長(石川良一君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時四分休憩

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