令和二年東京都議会会議録第十一号

○議長(石川良一君) 八十八番増田一郎君。
〔八十八番増田一郎君登壇〕

○八十八番(増田一郎君) 新型コロナウイルスが世界経済に与える影響は、リーマンショックの規模をはるかに超え、一九三〇年代に起きた世界恐慌に匹敵する可能性があると指摘され始めております。
 私は、議員になるまでの約三十年間金融業界におりましたが、その間、一九八九年のバブル崩壊、九七年のアジア通貨危機と山一ショック、そして二〇〇八年のリーマンショックと、歴史的な恐慌を目の当たりにしてまいりました。
 しかし、今回のコロナショックは、世界中の物流と人の流れが同時にとめられてしまうという未曾有の事態によってもたらされたものであり、これまでのいずれの危機よりも明らかにマグニチュードが大きく、そして全く異質なものであり、これからどこに、どのような影響が及ぶのかを考えたとき、正直、足のすくむ思いがいたします。
 今こそ我々は、この危機に臨んで、都民の命と健康、そして経済を守り抜くため、持ち得る全ての英知とリソースをちゅうちょなく投入すべきと考えます。
 そこで、今回私は、主にウイズコロナ、ポストコロナにおける経済対策について質問いたします。
 まず、財政運営についてお尋ねいたします。
 新型コロナウイルスに対する一兆円近くの緊急対策のために、都の財政調整基金の残高は、それまでの九千三百四十五億円から四百九十三億円まで大幅に減少いたします。また、今後の税収についても、リーマンショックにより法人二税の税収が約一兆円減少した平成二十一年度よりも大きな減収となる可能性があるなど、当面、都の財政運営は予断を許しません。
 そして、この難局を乗り切る鍵となるのが、都債をいかに有効に、適切に活用していくかということであります。
 私はこれまでも、機会あるごとに、大きな発行が必要となる緊急時に備え、投資家向けの情報開示活動や格付機関とのコミュニケーションなど、平時から投資家をしっかり確保し、都債の市場流動性を確保する努力の重要性を訴えてまいりました。今、まさにその緊急事態が訪れたわけであります。
 幸い、現時点での東京都の信用力については、大手格付機関スタンダード・アンド・プアーズ社がその実力評価に使う指標であるスタンドアローン評価において、ダブルAプラスと、国のシングルAプラスよりも三段階高い評価が与えられており、自治体の中では最上位の格付を維持しております。
 この危機に臨み、東京都の財務内容の健全さを正しく投資家にアピールし、金融マーケットの実勢を見ながら、発行期間や発行時期などを適切に判断して、少しでも有利な条件で都債を発行し、都民の負担を軽減する工夫と努力が重要です。
 また、もしも機関投資家から、より共感が得られるのであれば、その発行目的を明確にし、コロナ復興都債と銘打つこともよいかもしれません。
 都債は確かに都にとっての借金であり、都の財政をむやみに借金漬けにすることは決して許されません。しかし、個人の生活においても、ライフステージに応じて住宅ローンや教育ローンが必要となるように、負債自体を直ちに悪いものとするのではなく、規律と計画性を持って適切にコントロールし、戦略的に活用することが何より重要です。
 そこで、今後の経済復興に向けた都債の発行戦略について伺います。
 次に、都の中小企業支援策について伺います。
 今回の新型コロナウイルスに対する経済対策として、都は、既に感染拡大防止協力金、信用保証制度を用いた緊急融資制度等を導入しました。今後は、休業要請の対象となった事業者に加え、サプライチェーンの寸断やインバウンドの減少により、より広範な業種に影響が及ぶことが懸念され、それら事業者に対する支援の備えをしなければなりません。
 先日、国が発表した第二次補正予算には、企業に対するさまざまな資本注入策が盛り込まれました。今後、東京都においても、財務体力の弱い中小企業を守るため、融資による支援に加え、返済期限のない資本性の資金を投入する枠組みが必要になると考えます。
 都では、中小企業支援の枠組みとして事業承継支援ファンドに取り組むこととしていますが、その目的や対象を拡張し、資本注入などの財務面での支援とともに、販売や仕入れのサポート、業態変革なども含めた経営アドバイスなど、非財務面の支援も不可欠です。
 そのように、ファンドの機能を生かした財務面、非財務面両面からの支援が特に重要になると考えますが、見解を伺います。
 東京都の中小企業支援の主たる制度は、信用保証協会による信用保証制度です。信用保証制度は、これまでも大規模な経済危機、災害等による信用収縮時に、中小企業に対する安定的な資金供給源として重要な役割を果たしてまいりました。
 今回の感染症対策緊急融資制度においても、開始から三カ月弱の間で非常に多くの利用申請が寄せられていますが、いまだ多くの中小企業が厳しい状況にあり、制度について一層の周知が必要です。
 また、制度の利用に当たっては、あらかじめ区市町村の認定を受けることが条件となる場合もあり、各区市町村の役所で長時間の認定待ちが生じ、一刻も早い融資実行を必要としている事業者から、改善を求める声が多く寄せられました。今後、認定手続の簡素化、定型化を図るとともに、事務処理の迅速化を進める必要があると考えます。
 そこで、緊急融資制度の利用促進や利便性向上を図るため、都はどのように取り組むのか、見解を伺います。
 次に、国際金融都市東京構想について伺います。
 今から約三年前、小池知事のリーダーシップにより、金融業界の垣根を超えて、銀行、保険、証券、資産運用業、外資系金融機関など、トップが一堂に集い、国際金融都市東京のあるべき姿について多角的な議論を重ね、取りまとめられたものが、国際金融都市東京構想でありました。
 そして、そこで打ち出された施策を推進してきた結果、今年三月に発表された最新の国際金融センターランキングにおいて、東京は前年までの六位から、ニューヨーク、ロンドンに次ぎ、アジアの都市ではトップとなる三位の地位を取り戻しました。この結果は、三年前の構想で打ち出された施策の一つ一つを着実に実施し、知事自身も、積極的に世界に向け情報発信努力を重ねられた成果であり、高く評価されるべきと考えます。
 一方、今回のコロナショックでは、金融を含む国際ビジネスの風景を根底から大きく変えてしまう可能性があります。テレワークの基調は世界に広がり、高度情報通信ネットワークは一層進歩し、人が動かず、情報がより高速に動くという流れが世界中で加速すると思われます。
 ブレグジットで不透明感の増すロンドン、民主化運動で混乱をきわめる香港、そして、新型コロナウイルスでひときわ多くの犠牲者を出すこととなったニューヨークなど、世界のライバル都市と比べ、東京の政治的、社会的安定性、そして衛生面の高さは、今後改めて評価される可能性があり、現在の危機を乗り切ることができれば、その先には東京がさらに大きく飛躍するチャンスが広がっていると私は考えます。
 そこで、国際金融都市東京の実現に向けた、これまでの取り組みや成果について知事の所見を伺うとともに、ポストコロナを見据えた今後の国際金融都市の実現のあり方について、知事のご見解をお伺いいたします。
 次に、金融リテラシー教育について伺います。
 今回のコロナショックは社会にさまざまな変化をもたらしており、教育についても、オンライン教育の導入が進むと同時に、九月入学についての議論が活発化するなど、これまでにない視点での教育のあり方を見直す契機となっております。
 そこで、私が一つ提起したいものが金融リテラシー教育の充実です。
 よく知られていることですが、欧米では、小中学生でも、ゲーム形式で株式など金融商品への投資の疑似体験ができる授業が取り入れられており、近年では、理数系教育に力を入れるアジアの新興国でも、政府主導で実践的金融リテラシー教育に力が注がれております。
 日本では、昔から、額に汗して働くことを美徳とする風潮があるためか、金融リテラシー教育は世界の中でも大きくおくれているといわれています。そのことが、結果として多くの財産をたんす預金に眠らせることとなり、経済成長への足かせになっているとの指摘があります。
 お金の果たす役割、投資におけるリスクとリターンの関係、外国為替の基本的なメカニズムなど、国際化の進む実社会では不可欠な知識ばかりであり、また、それらの基本知識は、国際ビジネスの世界において、英語と同様に共通言語となっております。国際都市東京としても金融リテラシー教育の充実は不可欠な要素といえます。
 そこで、都立高校においても、金融に関する理解を深められるよう、実践的金融教育の充実を図るべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、立川広域防災基地の周辺道路について伺います。
 近年、東京を襲う風水害は猛威を増しており、広域防災倉庫や災害医療センター、自衛隊駐屯地や消防の本部を擁する立川広域防災基地の役割はますます重要になっています。
 私はこれまでも、基地につながるアクセス道路の整備のおくれと早期整備の必要性についてたびたび訴えてまいりました。そのような中、昨年十月に襲った台風十九号による増水で、中央高速道路方面から多摩川をまたいで立川に通じる二つの橋の一つである日野橋が破損し、約七カ月間の間通行どめを余儀なくされ、改めて立川広域防災基地に通じる陸路の脆弱性が露呈することとなりました。
 広域防災基地に隣接するまちの中心部には、この四月にホテルやコンサートホール、美術館などを含む大型の複合商業施設、グリーンスプリングスも完成し、まちのさらなる発展に寄与することが期待されています。また、基地に隣接する広大な昭和記念公園は、不測の災害や感染症の発生時に、その空間をさまざまな使途に利用できる可能性があり、そのような見地からも一日も早い道路の整備が一層切望されております。
 そこで、立川広域防災基地に至る主要な都市計画道路である立川三・一・三四号線の取り組み状況について伺います。
 台風十九号の被害を受けた日野橋は、関係者の多大なご尽力によって、予定よりも大幅に早い五月十二日に無事復旧されましたが、もともと老朽化の進んでいる橋でもあり、本格的なかけかえについて地元市長や市議会からも要望が寄せられております。
 そこで、日野橋の本格的なかけかえに向けた今後の取り組み状況について伺います。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 増田一郎議員の一般質問にお答えいたします。
 国際金融都市東京の実現についてのお尋ねがございました。
 新型コロナウイルスの蔓延によって世界経済が急速に落ち込む中で、各国で株価が大幅に変動するなど、国際金融市場は不安定化いたしております。
 一方、海外では、中央銀行によりますデジタル通貨の発行に向けた新たな動きが進むなど、世界の国際金融センターは、環境変化の大きなうねりの中にあって、グローバルな人材、資金の動きを注視し、機敏に対応することが求められております。
 そうした中で、今年三月、国際金融センターのランキングにおきまして、東京は世界第三位、アジアの首位を獲得いたしました。これはまさに、フィンシティー・トーキョーの設立や東京金融賞、ESGファンドの創設、金融系外国企業の誘致など、多様な取り組みの成果が結実したものと認識をいたしております。
 金融は、経済活性化や新しい社会構築の下支え役であって、不可欠な社会インフラでありますことから、引き続き、施策展開の手を緩めることなく、東京の国際金融都市としての地位を盤石にしてまいります。
 世界経済の先行きが不透明な中、今後、国やフィンシティー・トーキョーとも連携をいたしまして、ポストコロナも見据えた新たな施策のあり方を検討するなど、東京が世界に冠たる国際金融都市であり続けるための取り組みを一層推進してまいります。
 その他のご質問につきまして、教育長及び関係局長からの答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 都立高校における金融教育についてでございますが、高校生が、金融の働きや仕組みを理解し、これからの経済社会で生きていく力を身につけていくことは重要でございます。
 そのため、都立高校では、全ての生徒に公民科や家庭科等の授業で金融機関の役割や家計と社会とのつながりなどを指導しているところでございます。また、金融の専門家等を外部講師として活用し、授業の充実に取り組んでいる学校もございます。
 さらに、都教育委員会は、各教科等の教員が行う授業研究におきまして、外国為替等の具体的な事例を扱う実践的な研究に取り組むなど、指導内容や指導方法の充実に取り組んでいるところでございます。
 今後、都教育委員会は、こうした取り組みを踏まえますとともに、現在の感染症の状況が社会に与えている、または与えた影響等を題材といたしまして学ぶことをきっかけに、金融を含む経済活動について生徒が主体的に考えることができる資料を作成し、指導の充実を図ってまいります。
〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 今後の都債の発行戦略についてでございますが、新型コロナウイルス感染症対策を進め、都民の生活や東京の経済活動を支えていくためには、財源の一つとして、都債を戦略的に活用することが必要であります。
 都はこれまで、将来世代の負担を考慮し、都債残高を継続して減少させるとともに、投資家に対し、投資判断に必要な財務情報を提供するIR活動に積極的に取り組むなど、都債の信用力向上を図ってまいりました。
 現下の状況におきましては、このようにして培ってきた都債の発行余力を有効に活用し、施策を着実に推進するための財源をしっかりと確保していくことが重要であります。
 今後とも、投資家と丁寧に対話を行いながら、市場環境を見きわめ、多様な償還年限の都債を機動的に発行することで、安定的かつ有利な資金調達を行ってまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ファンドによる中小企業支援についてですが、感染症により影響を受けている中小企業の事業継続を後押しするためには、資金面の支援に加え、経営面からのサポートをあわせて行うことが重要でございます。
 このため、今後創設する事業承継支援ファンドでは、感染症に伴う社会変革に対応し、事業継続に取り組む中小企業を対象に加えるとともに、中小企業経営に精通したファンド運営事業者を選定し、多様な経営支援を提供いたします。
 具体的には、事業の再編や統合を含む経営戦略の策定や、事業の中核を担う人材確保と育成、環境変化を踏まえたサプライチェーンの再構築など、経営の専門家が、個々の中小企業の実情に応じてきめ細かく支援を行ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、中小企業の事業継続とさらなる成長を後押ししてまいります。
 次に、緊急融資等の利用促進などについてですが、都内中小企業が感染症による影響を乗り越えて事業を継続していくためには、事業資金を円滑に調達することが必要不可欠でございます。
 都はこれまで、信用保証協会や金融機関と連携して緊急融資等の周知を図っており、三月の取り扱い開始から四月末までの二カ月で、約二万一千件の融資を実行いたしました。今後、中小企業に対する情報発信を強化するため、東京商工会議所等の商工団体が発行するメールマガジンに紹介記事を掲載するなど、より一層の周知を図ってまいります。
 あわせて、融資を申し込む際に必要となるセーフティーネット保証等の認定手続について、金融機関による代理申請を促すなど利便性の向上を図ることにより、緊急融資等のさらなる利用促進に努めてまいります。
〔建設局長三浦隆君登壇〕

○建設局長(三浦隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、立川広域防災基地に至る都市計画道路についてでございますが、立川三・一・三四号線は、首都直下地震など大規模な災害が発生した場合に、災害応急対策活動の中枢拠点となる立川広域防災基地にアクセスするとともに、新奥多摩街道などの主要な幹線道路にも接続するなど、広域的な防災性の向上に寄与する重要な路線でございます。
 本路線の整備に当たりまして、多摩川に向かって高さ約十五メートルの高低差があること、また、JR青梅線や複数の都市計画道路と交差することを踏まえ、道路構造や周辺道路との接続方法などについて検討を行っております。
 今後、道路構造等の検討を重ねるとともに、関係機関との協議を進め、早期事業化に向けて取り組んでまいります。
 次に、日野橋のかけかえについてでございますが、日野橋は、多摩川を渡る甲州街道の橋梁であり、災害時には緊急輸送道路として、防災上重要な役割を担う都市施設でございます。
 本橋梁は、大正十五年にかけられてから九十四年が経過をし、老朽化が進んでいることなどから、かけかえに向けまして平成二十六年度より調査等を進め、これまでに橋梁形式や色彩等を決定いたしました。さらに、昨年の台風第十九号による被災を踏まえ、河川管理者等と早期かけかえに向けた協議を進めております。
 今年度は、設計等を進めるとともに、年内までに、かけかえ工事中の交通機能の確保に必要な仮橋工事に着手をいたします。
 引き続き、橋梁本体工事の早期着手に向けて着実に事業を推進してまいります。

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