令和二年東京都議会会議録第四号

○議長(石川良一君) 二十六番森澤恭子さん。
〔二十六番森澤恭子君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○二十六番(森澤恭子君) 無所属東京みらいを代表して、一般質問を行います。
 国連の関連団体が発表した世界幸福度ランキング二〇一九において、日本は先進国最低レベルの五十八位であり、特に自由さや社会的寛容さが順位を下げる要因となっています。
 二年連続一位であるフィンランドと日本を比較した有識者は、フィンランドは、勉強、就職、結婚、出産、転職と、さまざまな人生の場面で本人の事情や希望に応える選択肢があり、年齢、性別、家庭の状況といったことが選択を限定する要素になりにくいと指摘しています。逆にいうと、日本はまだまだ自分らしく暮らしていくことに対するハードルがあると考えられます。
 そういった中で、まだ顕在化していないニーズまで的確に把握し、一人一人の困りごとや生きづらさを解消していくことで、都民の満足、ひいては幸福度を向上させていく都政へと転換していかなくてはならないと考えます。
 そこで、新たな都政改革ビジョンにおいて、都政が追い求めるものとして都民の幸せを位置づけた意味について伺うとともに、都民の幸せをどのように捉え、実現していこうと考えているのか、見解を伺います。
 私たちの独自調査では、満足度の向上とともに、不便や不安などの不を解消することが、幸福度を高める両輪になっていることが見えてきました。年代や性別などによって、何に幸せを感じるかは異なるという傾向もわかりました。幸せとは何か、さまざまな知見を集めて、その指標を定めていくとともに、広域行政体としての都の果たすべき役割とは何か、常に自問自答していくべきであると指摘しておきます。
 未来の東京戦略ビジョンの基本戦略には、民間企業等、多様な主体と協働して政策を推し進める、協働スタイルを定着するとあります。課題に対して、その解決を心から望むプレーヤーの一人として、官と民が互いの強みを生かし合っていくフラットな関係性が、都民の暮らしをより幸せなものにしていくと確信しています。
 しかし、これまでの官民の関係性においては、発注者と受注者という縦の関係が強く出ることで、民間の発想が制限されたり、コストの削減だけに主眼が置かれたり、あるいは民間に任せ切ってしまうケースが散見されました。
 官民連携の効果を高めるには、行政が発揮すべき強みを正しく理解して、ケースごとにカスタマイズしていくことが求められると考えます。
 例えば、行政が規制緩和や実証実験の場の提供などに取り組むことが、民間のイノベーション創出を後押しすることになります。また、NPOなどの民間団体が困難を抱える方に対して長期的かつきめ細やかな支援を行う場合には、財政支援が活動の持続可能性を高めることにつながります。
 そこで、今後の官民がどのような協力連携体制を構築していくべきと考えているのか、そのために必要な都庁職員自身の意識変容、行動変容を促すためにどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 組織や分野を超えた取り組み、つまり越境によるプラスの効果は、官民の連携のみならず、庁内の関係においてもいえることです。東京の魅力をさらに高めていくためには、関係各局が組織の垣根を超えて知恵を出し合い、協力していくことが当たり前の都政へと転換を図る必要があると考えます。
 例えば、未来の東京戦略ビジョンには、文化、エンターテインメント都市の実現を目指し、二〇三〇年の訪都外国人旅行者数を三千万人とする政策目標を掲げていますが、ここは世界の各都市がしのぎを削る競争の激しい分野でもあります。世界と戦っている都市戦略を構想し、実現していくためには、関係各局がその英知を結集させる必要があります。
 国では、文化観光の推進に関する法律案が閣議決定されるなど、文化と観光の相乗効果を図ろうとする動きが見られます。国内外から人を呼び込む上で、東京に集積する伝統文化のみならず、アート、ポップカルチャーなどの文化資源は大きな武器となることはいうまでもありません。
 そこで、観光振興における文化資源の活用について、これまでの取り組みと今後の方向性について伺います。
 次に、幸せに生きていくための価値観の転換を促す施策について伺います。
 私は常々、早く女性活躍という言葉がなくなってほしいと述べていますが、戦略ビジョンにおいて、女性活躍という言葉が使われなくなっている未来を示していることを歓迎するものです。とはいえ、まだまだ女性に家事、育児の負担が偏っているのが現実であり、男性の家事、育児分野での活躍が必要です。そのためには、男性の育休取得が有効であることが内閣府の調査でも示されており、取得については少しずつ社会の機運が高まりつつあるところです。
 一方で、民間調査では、育休を取得した男性のおよそ三人に一人が、一日当たりの家事、育児時間が二時間以下である、とるだけ育休の状態にあることが明らかになりました。
 また、別の調査では、産前講座において、父親の出産や育児へのかかわり、つまり父親になるための具体的な準備を教えてほしかったという声が挙げられています。
 そこで、男性の家事、育児参画については、意識の啓発だけでなく、具体的なアクションにつなげる段階に来ていると考えますが、都の見解を伺います。
 スマート東京実施戦略には、都のミッションとして都民のクオリティー・オブ・ライフの向上が示されました。そこには、防災、教育、働き方などの分野が挙げられていますが、家事、育児についても、その中心に位置づけるべきであると考えます。
 先日アメリカで行われたテクノロジーに関する世界的なカンファレンス、CES二〇二〇では、スマートおむつなどのベビテックを初めとする家事や子育てをテクノロジーでスマート化させていくファミリーテックに注目が集まりました。
 家事、育児におけるテクノロジーの活用は、女性に偏りがちな家事、育児の負担軽減や性分業の是正につながり、家族全体の関係性や生活の質の向上に寄与すると期待するものです。
 そこで、今後、スマート東京実施戦略を進めていく上では、家事、育児分野にも注力していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 未来の東京戦略ビジョンには、出産、子育てを社会全体でサポートするとありますが、全ての親子が居場所や仲間につながり、社会全体で支え合うことで、孤独な子育てを減らしていく子育ての社会化を進めていかなくてはなりません。これまで当たり前とされてきた子育ての価値観と仕組みの転換が急務であると考えるものです。
 まず、産後ケアについて伺います。
 子育ての不安や心身の不安定さにより、出産直後の女性の約八割が産後鬱状態あるいは予備軍となり、約五割が虐待の一歩手前であったという調査もあります。その割合を少しでも減らすために、体を回復させながら、なれない子育てをサポートしていく産後ケアは非常に重要です。特に、核家族などにより親に頼れない夫婦の多い東京においては、実家にかわる機能を担う宿泊型の産後ケアの必要性が高いと考えます。
 一方で、宿泊型産後ケア施設でお話を伺うと、二十四時間体制で助産師など専門職を配置し丁寧なケアを行っていくためには、産後ケア事業のみで運営費を賄うのは難しいということでした。
 昨年、改正母子保健法が成立し、来年度から産後ケア施設の創設費については国が支援する方向が示されていますが、質の高い産後ケアサービスを提供するには支援が十分でないと危惧するところです。
 今後、質の高い産後ケア事業をより一層広げていくためには、事業者への財政的支援も必要であると考えますが、まずは、区市町村における産後ケアについて、その手法ごとの効果や課題を把握し、より一層適切な支援を講じるべきです。
 そこで、このたび、とうきょうパパママ応援事業における産後ケア事業への補助率を引き上げた狙いについて伺います。
 地域での子育て支援を充実させることは、虐待へと向かってしまう、その可能性の芽を一つでも多く摘み取ることにもつながります。
 兵庫県明石市で導入が予定されているおむつ宅配は、おむつを無料で届けることで、母子の健康状態や虐待の有無を把握し、適切な支援につなげる取り組みとのことです。支援が必要な人をただ待つのではなく、積極的に働きかけていくアウトリーチ型の取り組みが都においても広がることを期待するものです。
 そこでお伺いします。
 都は、現在行っている在宅子育て支援におけるアウトリーチ型の施策について、その成果を捉え、示すとともに、アウトリーチ型の施策に取り組む区市町村をさらにふやしていくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、困難を抱える女性の支援について伺います。
 都内のDV相談件数は年々増加傾向にあるにもかかわらず、婦人保護施設の入所数は低迷しています。心身にダメージを負った女性に対して、中長期的に寄り添った支援を行う婦人保護施設には非常に重要な役割があります。
 しかし、携帯を預けなければならないなどのルールにより、社会から断絶されてしまうといったイメージなどから、施設入所に抵抗感を持つ女性も多く、正しい理解を促し、より多くの方に支援が届くよう取り組むべきです。
 昨年、厚生労働省が示した婦人保護事業の運用面における見直し方針では、一時保護委託の積極的活用や民間シェルター等の一時保護委託先からの婦人保護施設への直接入所措置など、運営面の改善も図るべきとの指摘もあるところです。
 そこで、周知啓発や運営改善などにより、婦人保護施設がより活用されるよう取り組むべきだと考えますが、今後の方向性について伺います。
 困難を抱える女性の避難先として、民間シェルターの存在も重要です。さまざまな当事者ニーズに寄り添った伴走型の支援が行われ、行政の手が届きにくい領域において、セーフティーネットの役割を果たしています。
 一方で、財政的にも人材確保の面でも厳しい状況にある団体が多いのが現状であり、活動を休止する団体も出ています。来年度、国からの支援が検討されていますが、物価や家賃の高い東京においては、活動を持続させていくための恒常的な財政支援が必要であると考えます。
 そこで、このような行政を補完する役割を果たしている民間シェルターへの支援をさらに強化していくべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、誰もが自分らしく生きていける社会、真のダイバーシティーの実現に向けた取り組みについて伺います。
 日本の幸福学の第一人者といわれる前野隆司氏によると、幸せを構成する四つの因子の一つに、ありのまま、自分らしさを挙げています。
 一昨年制定された人権尊重に関する条例では、性自認や性的指向による差別的取り扱いが禁止され、まさに、ありのままの自分を受け入れ、大切にできる社会を目指すという方向性が示されたものと考えます。
 その後、茨城県や大阪府では公営住宅に入居可能なパートナーシップ宣誓制度がスタートする中、都においては、さらに実効性ある施策を求める声も上がっています。
 昨年末に策定された東京都性自認及び性的指向に関する基本計画には、住まいに関する困りごとを抱えるLGBT等性的マイノリティーの方々が一定数存在することが示されています。都内の自治体でもパートナーシップ制度の導入が広がりを見せており、都営住宅における同性パートナーの入居についても、具体的な検討を進めていくべきであると考えます。
 基本計画では、都営住宅における同性パートナー入居について、人権を取り巻く社会の動向等を踏まえ管理制度等における取り扱いについて検討とありますが、今後どのような検討を進めていくのか、見解を伺います。
 最後に、一言申し上げます。
 日ごろより多様な課題の現場で奔走する中、議会との政策議論を重ねてくださる都庁職員の皆様に、心より敬意を表します。と同時に、私たち自身も研さん、努力を重ね、都民の幸せを追求するパートナーとして、引き続き、前向きな提案を重ねていくことをお誓い申し上げ、質問を終わります。(拍手)
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 森澤恭子議員の一般質問にお答えいたします。
 私からは二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都民の幸せの実現についてでございますが、都民の安全・安心の確保、健康の維持など、都民福祉の向上は、都に課せられたミッションでございます。
 新たな都政改革ビジョンではこのミッションを、都民の幸せを実現すると表現し、都民の満足度を調査、把握することにより、都民の満足の向上に向けて、新たな政策の企画などへの活用を検討してまいります。
 次に、今後の官民の連携についてでございますが、政策イノベーションを生み出す都庁には、民間の発想、技術、知見を融合させた行政運営が重要でございます。
 新たな都政改革ビジョンでは、都が抱える課題の解決に向け、都と民間がパートナーとなり、互いに知恵を持ち寄って東京の成長を目指すため、より高い専門性とコミュニケーション能力を備えた職員の育成や、民間交流先の開拓、都庁外での経験や学び直しを促す仕組みの構築等を検討していくこととしております。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 文化資源を活用した観光振興についてですが、観光振興を進める上で、東京の多様な文化を観光資源として捉え、効果的に活用することは重要でございます。
 都はこれまで、地域ならではの伝統文化等を生かした誘客の取り組みへの支援や、ユニークベニューとして文化施設や庭園等の活用を進めてきたところでございます。
 今年度からは、外国人旅行者向けに観劇や文化体験等を一括して発信するウエブサイトや、オフィスビルでの音楽イベントなど夜間の時間帯を生かしたにぎわいの創出への支援も行っております。
 今後も、関係局とも連携しながら、国内外からの旅行者誘致に向けて、文化資源を活用してまいります。
〔生活文化局長浜佳葉子君登壇〕

○生活文化局長(浜佳葉子君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、男性の家事、育児参画についてでございますが、女性も男性も輝く社会を実現するためには、男女が協力して家事、育児を担うことが必要であり、未来の東京戦略ビジョンの政策目標として、家事、育児関連時間の男女差半減を目指しています。
 このため、都は、夫婦やカップルがともに家事、育児について考えるシンポジウムを開催しております。
 また、ウエブサイトで家事、育児のノウハウや体験談等、男性の具体的な行動につながるヒントを発信しています。
 こうした取り組みにより、引き続き、男性の家事、育児参画の促進を図ってまいります。
 次に、民間シェルターへの支援についてでございますが、配偶者暴力被害者に対しては、きめ細かい支援が必要であるため、行政だけでなく、シェルター運営や同行支援等に取り組む民間団体の活動が重要でございます。
 そのため、都は、シェルターの安全対策や同行支援、講演会など、民間団体の自主的な活動に対して経費の一部を助成しております。
 さらに、来年度は、民間シェルター等の先進的な取り組みに対する国の交付金を活用し、支援を行うこととしております。
〔戦略政策情報推進本部長松下隆弘君登壇〕

○戦略政策情報推進本部長(松下隆弘君) スマート東京実施戦略における家事、育児分野についてでございますが、スマート東京実現に向けまして、デジタルテクノロジーの力で社会的課題を解決し、都民のQOL、生活の質を向上させることが大変重要でございまして、ご指摘の家事、育児にもデジタルテクノロジーの活用が考えられるところでございます。
 スマート東京実施戦略の中では、防災、まちづくり、モビリティーなどのサービス分野を例示という形でお示ししておりますが、家事、育児の分野におきましても、最新のテクノロジーを活用した子供の健康管理や、あるいは家事や育児のサポートなどサービスの向上が期待されるものでございます。
 今後は、関係各局とも連携を図りながら、データとテクノロジーの活用を通した家事、育児の分野での取り組みを検討してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、産後ケア事業についてでありますが、産後ケア事業は、周囲の支援が十分に得られない妊産婦が少なくない中で、身体的回復を促すとともに産後鬱等の予防にも資する重要な取り組みであり、区市町村が実施することとされております。
 都は現在、産後ケア事業を行う区市町村に対し運営費等を独自に支援しており、今年度は三十三の区市町が実施しているところでございます。
 来年度からは、専門職による妊婦への面接等とあわせて本事業を行う場合、区市町村負担分を都が全額補助することとしており、これにより、区市町村の事業への着手や事業内容の充実を促し、産後の支援体制の整備を進めてまいります。
 次に、在宅子育て家庭へのアウトリーチ型支援についてでありますが、都は、産前産後の体調不良などにより家事や育児が困難な家庭等に対する育児支援ヘルパーや傾聴ボランティアの派遣など、区市町村が地域の実情に応じて実施するアウトリーチ型支援を包括補助等で支援しております。
 また、三歳未満の子供を在宅で育てる家庭を対象に、区市町村を通じて家事支援サービスの利用を支援するとともに、今年度から、食の支援を必要とする家庭等に調理を行うヘルパーを派遣する取り組みへの支援を開始しております。
 来年度は、未就園、不就学等で福祉サービス等を利用していないなど、関係機関が状況確認できていない子供のいる家庭を訪問し状況の把握を行う区市町村に対して、必要な経費の助成を行うほか、区市町村における効果的なアウトリーチ型支援の事例を紹介してまいります。
 最後に、婦人保護施設の活用についてでありますが、婦人保護施設は、入所者の安全・安心を確保するために秘匿性が高く、施設の機能や特性が十分知られていない面がございます。
 そのため、都は、秘匿性に配慮しながら、ウエブサイトで施設の紹介を行うとともに、区市町村の婦人相談員等による施設見学を実施しているところでございます。
 また、適切な支援につなげるため、施設への入所に当たっては、女性相談センターの一時保護所において医師や心理職などの専門職が相談者の状況を丁寧に把握しております。
 国は昨年度、困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会を設置し、婦人保護事業の見直しについて検討しており、都は、国の動向を注視しつつ、引き続き、婦人保護施設を適切に活用してまいります。
〔住宅政策本部長榎本雅人君登壇〕

○住宅政策本部長(榎本雅人君) 都営住宅の同性パートナーの入居についてでございますが、都営住宅では、使用者の資格の一つとして、東京都営住宅条例で、現に同居し、または同居しようとする親族があることと規定しており、入居の際、親族関係については、住民票により確認しております。いわゆる内縁関係の方も、住民票上で確認できれば同居親族として都営住宅への入居が可能でございますが、同性パートナーにつきましては、親族関係の記載がないため、入居資格が確認できません。
 今後、東京都性自認及び性的指向に関する基本計画も踏まえ、他の自治体における動向や課題等を調査するなど、都営住宅の管理制度等における取り扱いについて検討してまいります。

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