令和二年東京都議会会議録第四号

   午後六時開議

○副議長(橘正剛君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 十四番藤井とものり君。
〔十四番藤井とものり君登壇〕

○十四番(藤井とものり君) 質問に先立ち、一言申し上げます。
 昨日、政府による突然の全国一斉休校の要請を受けて、自治体においても必要な対応を迫られています。要請の期間が長期にわたることから、社会機能維持のためにも出勤を停止できない保護者が多数存在します。また、非正規労働者など出勤停止が生活に直結する方への休業補償も必要となります。
 住民に身近な自治体として感染防止に全力を挙げるとともに、医療、福祉を初めとする都民生活に必要な社会機能の維持、何よりもそれに携わる方の安全確保に万全を期す必要があります。
 このような認識のもと、私ども都議会立憲民主党・民主クラブは、本日の本会議が始まる前に、小池知事宛てに六項目から成る緊急要望を行いました。知事におかれましては、改めて積極的な対応を求めておきます。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 まず、都市内分権、都から特別区への分権についてお伺いいたします。
 先月、都と特別区の財政調整が行われた結果、区側の財源配分がわずか〇・一%ふえるという実に不可解な決着となりましたが、平成十二年度の都区制度改革以来、都から区への事務移管はほとんど進んでおりません。現状において、都政と区政の間には明確な役割分担は見えてきません。
 都は、上下水道、交通、消防などの大都市政策に特化し、教育、子育て、福祉などの揺りかごから墓場までの基礎的な行政は、特別区に移管することが重要であります。分権の徹底は、肥大化した都庁を整理し、大都市経営を専門に担う小さくて賢い政策都庁をつくります。
 そこで、知事に伺いますが、この二十年近く、特別区への事務移管がほぼ進捗していない現状をどのように認識をされているのか、また、今後どのように対応されるおつもりなのか、答弁を求めます。
 また、都区協議の際、都は、特別区間の地域再編が進んでいないことを理由に挙げ、区側の主張を退けてきましたが、それではいつまでたっても分権が進むはずはありません。まず権限と財源を区に移管することが、さらなる分権につながると考えますが、あわせて見解を伺います。
 次に、事務移管に関連し、三つの事業についてお伺いいたします。
 まず、児童相談所についてであります。
 特別区では、私の地元練馬区を除く二十二区で児童相談所を設置する意向が表明されています。しかし、都は、新設される区児相に協力するものの、あくまでも区への事務移管ではないという立場を堅持しています。
 区児相におきましても、人材確保や広域的な連携など、さまざまな課題があることは承知をしておりますけれども、本来、児童養護行政は、先進諸国においては基礎自治体が担うことが通例であり、子供家庭支援センターと児童相談所のはざまに落ちる事例をなくす観点からも、財源、人材をセットにした事務移管が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、待機児童対策についてお伺いいたします。
 市区町村によって、保育士が足りない、土地が確保できないなど状況は異なります。ニア・イズ・ベターという言葉があるように、より現場に近い市区町村に解決策を探っていただくことが有効と考えます。
 お仕着せの都による一律的な支援ではなく、市区町村がみずからの裁量で自由に使い道を決定できる保育財源を一括で交付することこそが重要だと考えますが、都の見解を伺います。
 この項の最後に、区立小中学校の教員の人事権についてお伺いいたします。
 学校の設置者は特別区でありながら、教員の人事権は都にあるという、いわばねじれた状態があります。現場の意向が教職員の採用、異動に反映されづらい、いじめ等の問題が発生した際の責任の所在が曖昧になりやすいといった課題を解決するために、かねてより教育長会から要望がある区立小中学校教員の人事権移譲を改めて求めますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、シルバーパスについてお伺いいたします。
 まず、パスのICカード化について伺います。
 パス利用者は百万人を超え、年間百八十一億円もの財源が使われています。しかし、シルバーパスの利用実態は明らかになっておらず、高齢者の外出が促されることによる医療費等の削減効果、買い物等の経済効果は実証されておりません。
 そこで、提案ですが、カードを現行の磁気方式からPASMOやSuicaのようなIC方式にすることで、シルバーパスの利用実態を把握し、医療や介護、経済データと連携させることによる多面的な事業効果の検証を進めるべきと提案いたしますが、都の答弁を求めます。
 次に、自己負担のあり方について伺います。
 制度の持続可能性を鑑みれば、負担できる能力のある方に、一定のご負担をお願いすることは避けられないことでもあります。現在、所得に応じ、千円または二万五百十円の自己負担をお願いしておりますが、約九割の方が千円の負担で取得されています。千円で取得できるパスは、住民税非課税の方を対象としていることは承知をしておりますけれども、所得がなくても資産があるというケースも想定されます。
 シルバーパスに限らず、他の福祉施策でも資産状況の把握は課題と認識しておりますが、資産状況を加味した自己負担のあり方を検討し、より公平で公正な制度設計を目指すべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 質問項目の最後に、シルバーパスの今後についてお伺いいたします。
 高齢化を反映し、利用者も事業費も増加の一途をたどっていることから、やがては制度自体が持続可能なものではなくなってしまうのではないかという懸念を抱かざるを得ません。
 また、事業効果の検証や自己負担のあり方についても課題があり、福祉を必要とする人に対して必要なサービスを過不足なく提供するという本来あるべき福祉の姿から逸脱する側面も目立ってきております。感情論やポピュリズムを排し、実証データを積み上げ、現役世代、将来世代を含めた都民納得の制度改善を求めますが、都の見解をお伺いいたします。
 最後に、練馬城址公園、としまえんの跡地利用についてお伺いいたします。
 私の地元練馬区において、百年近い歴史を持つとしまえんは段階的に閉園し、その跡地は都の防災公園として整備されるとともに、新聞報道によれば、映画、ハリー・ポッターのテーマパークが誘致される計画があるようです。
 まず、練馬城址公園についてお伺いいたします。
 練馬区は水緑、にぎわい、防災という三つの機能を重視し、計画に盛り込むことを都に要望していますが、都としてどのように受けとめ、計画に反映するつもりなのか、答弁を求めます。
 次に、テーマパーク誘致に関連し、周辺住民の不安解消についてお伺いいたします。
 二年ほど前に、民放番組でとしまえんを舞台とした企画が行われ、深夜に大渋滞や騒音被害が発生いたしました。周辺は閑静な住宅街であり、仮にテーマパークが誘致されることになれば、恒常的に渋滞や騒音が発生することが懸念されます。
 都として、地元練馬区と連携をし、住民の不安解消に取り組んでいただきたいと思いますが、都の見解をお伺いし、一般質問を終了いたします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 藤井とものり議員の一般質問にお答えいたします。
 都から特別区への事務移管についてのお尋ねがございました。
 都は、特別区を抱合する広域的な自治体といたしまして、消防や上下水道の運営などのほか、東京が激しい都市間競争にさらされる中で、都市計画やインフラの整備、デジタル化の推進など、東京全体の活力を維持向上させる役割を担っております。
 一方、特別区は、より住民に身近な基礎的な自治体として、地域の実情や住民ニーズに沿った、きめの細かい行政サービスを提供する役割を担っています。
 こうした考えのもとで、都はこれまで、都道府県が行う事務のうち、住民ニーズへの対応や利便性の向上に資するかを精査した上で、特別区との協議を経まして、条例により事務を個別に移譲をしてまいりました。
 今後も都区制度のもとで、大都市地域の行政を担う都と特別区とがそれぞれの役割を果たすとともに、力を合わせながら東京の発展に向けて取り組んでまいります。
 残余のご質問、教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 公立小中学校教員に係る人事権の移譲についてでございますが、都道府県が給与を負担して教員を任命する、いわゆる県費負担教職員制度のもとでは、抜本的な人事権の移譲は難しく、また、区市町村によって賛否両論の意見がございます。仮に移譲が行われる場合には、法改正が必要となり、地方分権の観点から、特別区のみでなく、義務教育の実施主体である全ての区市町村に給与負担とあわせて移譲されるべきものと考えております。
 加えて、教員の採用、異動、昇任等について、区市町村相互間の不均衡を生じさせないよう、広域的な調整の仕組みを整備することや区市町村が給与負担をするための適切な財源を確保することが不可欠でございます。
 都教育委員会では、今後とも現行制度のもとで、区市町村の意向を反映した人事配置等に取り組むとともに、人事権の移譲等に係る国の動向については注視してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別区の児童相談所設置についてでありますが、児童福祉法では、区市町村は児童の身近な場所における支援業務を行うものとされ、都道府県は専門的、広域的な対応が必要な業務を行うものとされております。
 児童相談所は、都道府県及び指定都市に設置義務があり、平成二十八年の児童福祉法の改正により、希望する特別区も個別に政令で指定を受けて設置できるようになりました。
 設置する区は、みずから児童福祉司や児童心理司等の専門人材を確保、育成するとともに、一時保護所を含め児童相談所を適切に運営していく必要がございます。
 都といたしましては、特別区の人材育成を支援するほか、一時保護所等を都区で広域的に利用するなど、子供たちの安全・安心を確保する観点から必要な連携を図ってまいります。
 次に、待機児童対策についてでありますが、都は、保育の実施主体である区市町村が多様な保育サービスの整備を進められるよう、国の整備補助に加え、施設整備に係る事業者や区市町村の負担を軽減する都独自の支援策を実施しております。
 平成二十八年度からは、待機児童解消に向けた緊急対策会議におきまして、保育所用地や物件の確保、保育士の確保などについて、知事と首長の意見交換を実施し、また、平成三十年度からは、東京都待機児童対策協議会を立ち上げて、区市町村が抱える保育の課題についての議論を行っているところでございます。
 こうした意見交換も重ねながら、区市町村と連携し、保育サービスの拡充に取り組んでまいります。
 最後に、シルバーパスのICカード化や資産状況も加味した自己負担のあり方などシルバーパス制度に関するお尋ねについてでありますが、都が幅広い年代の都民とパスの利用者を対象に行ったシルバーパス制度に関する二つの調査では、制度に対する都民の考え方等や利用状況について概要を把握することができました。
 また、今回の調査への回答の背景にある高齢者を取り巻く環境や地域の状況などについて、さらに把握する必要があることも明らかになったところでございます。
 今後、区市町村における高齢者の社会参加促進のための取り組みや課題、将来の利用者となる世代の意識や意向などについて把握を進めてまいります。
〔建設局長三浦隆君登壇〕

○建設局長(三浦隆君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、練馬城址公園の整備計画についてでございますが、本公園は、都市計画公園・緑地の整備方針におきまして、首都東京の防災機能の強化を目的に、重点的に整備を進める公園に位置づけ、二十一・九ヘクタールの優先整備区域を設定しております。
 これまで整備計画の策定に向けまして、計画区域の地形等の調査分析を進めるとともに、地元の練馬区と、水と緑の拠点づくりに加え、防災の取り組みやにぎわいの創出など、公園の目指すべき姿について意見交換を進めております。
 今後とも、地元区とより緊密に連携を図りながら、整備計画の策定に向け、取り組みを進めてまいります。
 次に、公園整備における住民への対応についてでございますが、都立公園の整備に際して策定する整備計画は、周辺の地域特性等を踏まえながら、公園に導入する機能や施設の配置等を定めるものでございます。練馬城址公園の整備計画も東京都公園審議会において審議をし、答申を踏まえ策定いたします。
 今後、地域住民も含む都民を対象にパブリックコメントを実施するとともに、地元区と緊密に意見交換を行い、整備計画の策定に向け、取り組んでまいります。

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