令和二年東京都議会会議録第四号

○議長(石川良一君) 十八番小林健二君。
〔十八番小林健二君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十八番(小林健二君) 初めに、文化財保護について質問します。
 東日本大震災では、当時の文化庁長官が文化財保護法制定以来の最大の試練と述べるほど、多くの貴重な文化財が被害に遭いました。
 こうした東日本大震災での文化財の被害を教訓として、私はかつて、自然災害から文化財を守る都の取り組みをただしましたが、昨年四月のフランス・ノートルダム大聖堂の火災、また十月の沖縄県首里城正殿の火災を目の当たりにし、改めて生活の一部ともいうべき文化財を失ったときの人々の悲しみ、文化財を愛する心を再認識させられ、文化財を災害から守る施策の充実の必要性を感じました。
 昭和二十四年一月二十六日に奈良県法隆寺の金堂が火災に遭ったことを受け、この日が文化財防火デーと定められ、昭和三十年に第一回の文化財防火デーをスタートさせてより、本年で六十五年目を迎えました。
 こうした啓発活動が長年にわたって進められる中、多くの文化財が存在する東京において、自然災害、なかんずく火災から文化財を保護する取り組みを一層推進していくべきと考えます。教育長並びに消防総監の見解を求めます。
 今、あらゆる施策展開の中で、持続可能な開発目標、SDGsの視点が求められています。SDGsの目標の一つである住み続けられるまちづくりの中で、具体的なターゲットとして、世界の文化遺産及び自然遺産の保護、保全の努力を強化するとの視点が挙げられております。
 今後、都における文化財の保護、保全を検討していく際は、こうしたSDGsの視点を念頭に置きながら推進していくよう要望いたします。
 次に、資源リサイクルについて二点質問します。
 一点目は、ごみの分別についてです。
 ロンドン五輪は、史上最も持続可能なオリンピック・パラリンピックと評価されておりますが、東京二〇二〇大会は、ロンドン五輪を超える取り組みを推進していかねばなりません。
 大会組織委員会が策定した、持続可能性に配慮した運営計画の中では、大会運営時に発生する廃棄物の再使用、再生利用率の目標を六五%と定めており、この目標を達成するためには、ごみが排出された段階で分別する取り組みの推進が極めて重要であると考えます。
 国内外から注目の集まる東京二〇二〇大会において、都民や事業者、業界団体などの協力を得ながら、世界に誇るべき日本の分別とリサイクルの文化を世界に発信し、持続可能な資源利用の実現につなげていくべきと考えます。知事の所見を求めます。
 二点目は、古紙の集団回収についてです。
 家庭からごみとして排出される古紙や古着、瓶、缶などについては、町会などが中心となって集団回収に取り組み、再資源化が進められてきました。
 しかし昨今、さまざまな理由から古紙の行き場が失われ、あふれ返る状態となり、都内の古紙流通価格は過去最悪ともいうべき下落を見ております。
 こうした中、採算のとれない古紙回収業者が集団回収事業から撤退を余儀なくされる状況にもなり、業界においては、集団回収事業継続の非常事態宣言を発表し、事態の打開に向け奔走されています。
 社会全体でリサイクルを推進する集団回収事業を今後も安定的に継続させていくためにも、都として積極的な支援策を講じるべきと考えます。
 古紙の集団回収に対する都の現状認識と今後の取り組みについて見解を求めます。
 次に、児童虐待防止対策について質問します。
 本年は、世田谷区、江戸川区、荒川区が児童相談所を設置する準備を進めており、児童虐待防止に向けた新たな取り組みが開始されることになります。
 一方、私の地元練馬区では、区で児童相談所を設置するのではなく、区と都が緊密に連携する体制を構築し、一貫した実効性ある児童虐待への対応を目指してきましたが、このほど練馬区は、練馬子供家庭支援センター内に練馬区虐待対応拠点を設置する方針を発表しました。
 これは、練馬区の提案に対し東京都が積極的に応え、区と都の共同モデル事業として新しい児童相談体制を構築していく取り組みと聞いておりますが、都が共同でこの事業に取り組んでいく意義と、その内容について見解を求めます。
 次に、障害者スポーツ振興について質問します。
 パラリンピックの成功なくして五輪の成功はないとは、東京二〇二〇大会の重要なスローガンであります。東京パラリンピックの大成功はもちろんのこと、このパラリンピックを契機として、障害者スポーツが一層注目され、発展する取り組みを今後も推進していかねばなりません。
 私はかねてより、一般質問や予算特別委員会で、障害者スポーツの裾野を広げていくために、障害者アスリートへの情報保障の充実に取り組んでいくべきと訴えてきましたが、この点も引き続き充実に努めるとともに、パラリンピック大会後も障害者スポーツ振興を推進していくために、障害者スポーツ団体に対する支援を一層充実させていくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、都立学校における高速通信網の整備について質問します。
 私は、昨年の予算特別委員会の質疑の中で、都立高校において民間企業が開発した学習支援クラウドサービスを活用する際に発生する通信について、個人で契約しているデータ使用量が多くなり、通信料の保護者負担が生じている問題を取り上げ、早急に都立高校に無線LANの整備を進めていくべきと質問いたしました。
 その際、当時の教育長より、無線LANの整備を含めた都立高校のICT環境の改善充実に向けた具体的な検討を進めていくとの前向きな答弁があったところであります。
 この答弁の後、昨年十二月に策定された未来の東京戦略ビジョンにおいて、都立学校の普通教室の無線LANの整備率を二〇二二年に一〇〇%を達成していくとの目標が示されました。
 目標達成に向けて着実な推進を図るべきでありますが、二〇二二年に向けた初年度となる令和二年度における都立高校並びに都立特別支援学校への無線LAN整備の取り組みについて見解を求めます。
 次に、災害拠点病院について質問します。
 災害拠点病院の指定要件の一つが事業継続計画、いわゆるBCPの整備であります。都の指定する八十二の災害拠点病院では既にBCPは策定されておりますが、都は来年度、既存の災害拠点病院のBCPの改定、さらにはBCPが策定されていない災害拠点連携病院での策定を支援する予算を盛り込んでおります。
 昨年開催された厚生労働省の救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会では、平成三十年度に発生した大阪府北部地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震などの一連の災害において、医療機関における災害時の情報収集とその分析、利用に関する課題が顕在化したとの指摘があり、今後の災害医療体制の方向性について、災害医療情報収集を初め、災害拠点病院のBCPの質についても評価を行うべきではないかとの課題提起がなされております。
 BCP策定を推進することは重要でありますが、こうした指摘も視野に入れ、実効性のある計画を病院が策定できるよう支援に取り組んでいくべきと考えます。見解を求めます。
 最後に、都市計画公園・緑地の整備方針の改定について質問します。
 先般、今後十年間の方向性を示す同整備方針の改定案が策定され、令和十一年度までに優先的に事業を進める予定の重点公園、緑地及び優先整備区域が明らかにされました。
 整備方針改定案では、公園、緑地整備の目標の一つに、災害に強い都市の実現が示され、地元練馬区にある城北中央公園及び石神井公園は、いずれも避難場所に指定されるなど、防災に資する公園、緑地と位置づけられており、整備方針改定案の中では、それぞれ優先整備区域が設定されています。
 こうした方針改定を踏まえ、今後、両公園の防災機能の強化を着実に推進していくべきと考えます。見解を求めます。
 また、今回の改定案では、平成二十三年の改定時と同様に、大規模敷地であって、今後とも避難場所としての機能を維持していく必要がある練馬城址公園について事業化を図りますと記載されております。
 練馬城址公園が計画されているのは、都市型遊園地としまえんであり、としまえんについては今月上旬、アメリカのエンターテインメント企業がとしまえん内にテーマパークを開園予定との報道がなされ一躍話題となり、今後の公園整備の動向が注目されています。
 練馬区が策定した第二次みどりの風吹くまちビジョンアクションプランでは、練馬城址公園について、整備計画に区の求める水と緑やにぎわい、防災の拠点としての機能が反映されるように、引き続き整備主体である東京都と調整しますとの考え方が示されております。
 また、二月六日に行われた練馬区議会における公明党の質問に対し、区長は、報道されているようなワーナーブラザースによるハリー・ポッターの屋内型施設が防災公園の整備と調和して整備されるとすれば、区として歓迎すべきことと思っていますと答弁しております。
 私は、平成二十八年の一般質問で、練馬城址公園の整備に当たっては、練馬区の意見を丁寧に聞き、十分調整していくことを要望しましたが、こうした状況を踏まえ、都は、練馬区と緊密に、着実に連携を図り、防災公園としての練馬城址公園の整備計画を早急に示していくべきであります。見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 小林健二議員の一般質問にお答えいたします。
 持続可能な資源利用の実現についてでございます。
 東京二〇二〇大会を契機としまして、資源の持続可能な消費と生産のモデルを実現し、世界に広げていくこと、それは先進国の主要都市であります東京が果たさなければならない責任でございます。
 大会では、資源の3R、すなわちリデュース、リユース、リサイクルの取り組みを徹底するとともに、物を大切にする心、つまりリスペクトを加えました4Rの取り組みを推進して、資源循環の高度化を図ってまいります。
 具体的には、競技会場におきまして使い捨てプラスチックを徹底的に削減、都民や事業者の協力を得ながら、来場者に向けましてごみの分別を呼びかける分別ナビゲーター活動を行います。
 こうした取り組みを大規模イベント時におけます東京発の資源回収の新たなスタイルとして、幅広い普及を図ってまいります。
 また、廃ペットボトルから新たなペットボトルを再生するボトル・ツー・ボトルの取り組みを推進いたしまして、飲料メーカーやリサイクル関連業界等との連携によって、高度で質の高いリサイクルの潮流を確立してまいります。
 大会を契機といたしまして、日本が誇るもったいない意識や持続可能な資源利用の実現に向けましたノウハウを、大会のレガシーとして国内外に広く発信をしてまいります。
 残余のご質問は、教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、文化財の防火対策についてでございますが、文化財は、都民はもとより国民共通の貴重な財産であり、適切な防火対策を講じ、後世に継承することが必要でございます。
 都教育委員会は、昨年四月に国が実施をいたしました国宝や国指定重要文化財に対する防火設備等緊急状況調査に合わせまして、独自に都指定文化財を対象とした調査を実施いたしました。
 この調査結果に基づき、文化財の所有者や区市町村に対し指導助言を行うとともに、防火設備を整備する都指定文化財所有者に対して財政的支援を行いました。
 引き続き、所有者や区市町村に対し、国の文化財の防火対策ガイドラインを周知するとともに、東京消防庁とより一層連携をし、防火の取り組みを支援してまいります。
 次に、都立学校の通信環境についてでございますが、都教育委員会は、校内の無線LAN環境等を整備し、生徒が所有するスマートフォン等を活用したBYOD研究校におきまして、一人一人の力を最大限伸ばす学びの充実や、校務の効率化等といった成果を確認したところでございます。
 都立学校における普通教室の無線LAN整備率は、平成三十一年三月時点で約一六%でございまして、BYOD研究校の成果を全都立学校に広げていくためには、通信環境整備の加速が必要でございます。
 そのため、令和二年度に都教育委員会は、都立学校八十校の普通教室、特別教室等に無線LAN環境を整備いたします。
 こうした取り組みによりまして、スマート東京実施戦略が掲げる全ての児童生徒がインターネットにつながる環境の実現を目指してまいります。
〔消防総監安藤俊雄君登壇〕

○消防総監(安藤俊雄君) 文化財の防火安全対策についてでございますが、火災による焼失を防止し、貴重な文化財を次世代に継承することは重要であると認識しております。
 東京消防庁では、毎年一月二十六日の文化財防火デーを中心に、文化財の関係者と連携した自衛消防訓練等を実施するとともに、都民に向けた各種広報を通じて、文化財に対する防火防災意識の高揚を図っております。
 また、首里城の火災を受け、文化財及び大規模木造建築物など計七百二対象に対して、関係者の関心が高まっている火災直後の一カ月間に緊急の防火安全指導を実施し、出火防止対策等の再徹底を図ってまいりました。
 今後も、教育庁を初め関係機関と連携し、文化財の防火安全対策に取り組んでまいります。
〔環境局長吉村憲彦君登壇〕

○環境局長(吉村憲彦君) 古紙の集団回収についてでございますが、集団回収事業は、地域団体、自治体、資源回収業者の三者が連携し、古紙などを回収、リサイクルする活動であり、地域の資源利用を進める上で重要な取り組みでございます。
 昨今の古紙市況の悪化により、古紙の集団回収から撤退する資源回収業者があらわれ、多くの自治体から資源回収の実施が困難な状況になりつつあるとの声が寄せられております。
 このため、都は現在、区市町村担当者や古紙回収業者へのヒアリングを通じて、古紙回収の現状や市況悪化による影響などの実態調査を行っております。
 今後、この調査結果を踏まえまして、地域における古紙の健全なリサイクルシステムの維持に取り組む区市町村への支援策を検討してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、児童相談に係るモデル事業についてでありますが、子供たちを虐待から守るためには、住民に身近な地域で支援を行う子供家庭支援センターと、専門的知識や技術が必要となるケースに対応する児童相談所が連携、協働していくことが重要でございます。
 来年度、都が練馬区と共同で実施するモデル事業では、区の子供家庭支援センター内に都の児童相談所のサテライトオフィスを設置し、児童相談所職員が虐待相談に対応するとともに、都と区の連携拠点として、合同での調査や個別ケース検討会議などを実施することとしております。
 事業の実施状況等は、全区市町村が参画する合同検討会で共有し、都と区の連携事例として、東京全体の児童相談体制の強化に向けた検討に活用してまいります。
 次に、病院のBCPについてでありますが、病院のBCPが災害発生時に有効に機能するためには、平時からBCPに基づく訓練を繰り返し行い、その検証結果を踏まえ、内容を随時見直すことが必要不可欠でございます。
 都は、ガイドラインに繰り返し点検、見直し等を行うことの重要性を明記するとともに、防災訓練説明会等の機会を活用し、近年の自然災害を踏まえて見直しを行った事例等を紹介し、より実効性のあるBCPの策定を働きかけております。
 来年度は、現在のガイドラインに電力量や備蓄量等の例示など、病院の規模や機能に応じた内容を新たに加えるとともに、アドバイザーを活用し、計画策定に取り組む病院を支援するなど、災害時の効果的な業務継続体制の確保、推進に取り組んでまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) 障害者スポーツ競技団体への支援についてでございますが、障害者スポーツの振興のためには、競技の普及とともに、選手育成等の中核を担う競技団体の取り組みの強化が重要でございます。
 そのため、都は、これまで東京二〇二〇大会に向けて、競技団体が行う練習会や合宿など、競技力向上に資する取り組みを支援しており、今後は対象とする競技団体の拡大についても検討してまいります。
 また、来年度は団体のガバナンス強化の観点から、人材確保や資金調達の手法などをテーマにした研修会を新たに実施するとともに、専門家による会計処理や法人格の取得に向けた助言、相談なども実施してまいります。
 こうした取り組みなどを通じまして、障害者スポーツ競技団体の運営基盤を一層強化し、障害者スポーツを大会後も広く普及させ、社会に根づかせてまいります。
〔建設局長三浦隆君登壇〕

○建設局長(三浦隆君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、城北中央公園及び石神井公園の防災機能の強化についてでございますが、両公園は、震災時の避難場所や救出救助等の活動拠点となる区部西部の重要な公園であり、防災機能の強化のため、公園区域の拡大と防災施設の整備に取り組んでおります。
 公園区域の拡大につきましては、城北中央公園では約七ヘクタール、石神井公園では約四ヘクタールを優先整備区域に位置づけ、来年度は両公園の既取得地の一部で造成、整備に向けた設計を進めてまいります。
 また、照明灯の改修や非常用電源等の防災施設の整備は来年度、城北中央公園では工事完了の予定であり、石神井公園では工事に着手いたします。
 今後とも、地域の防災力の向上に向け、防災公園の整備を積極的に推進してまいります。
 次に、練馬城址公園の整備計画の策定についてでございますが、本公園の計画区域は練馬区の中央部に位置しており、都市計画公園・緑地の整備方針におきましては、首都東京の防災機能の強化を目的に、重点的に整備を進める公園に位置づけ、二十一・九ヘクタールを優先整備区域として設定しております。
 これまで、計画区域の地形や動植物の分布、文化財の状況等の調査分析を進めるとともに、地元の練馬区と、水と緑の拠点づくりに加え、防災の取り組みやにぎわいの創出など、公園の目指すべき姿について意見交換を進めております。
 整備方針の改定案におきましても、引き続き優先整備区域を設定しており、地元区と緊密に連携を図りながら、整備計画の速やかな策定に向け取り組みを進めてまいります。

ページ先頭に戻る