令和二年東京都議会会議録第三号

○議長(石川良一君) 八十六番小磯善彦君。
〔八十六番小磯善彦君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○八十六番(小磯善彦君) 初めに、フロン対策について質問します。
 フロンは、冷凍冷蔵空調機器の冷媒として広く利用されていますが、オゾン層破壊の原因から、近年は気候変動に与える影響が甚大であることがわかり、大きな課題となっています。
 フロンは、二酸化炭素の数十倍から一万四千八百倍の温室効果があります。例えば、ビル用パッケージエアコン一台分のフロンが、二十キログラムでCO2換算では約五十トン。これは何とガソリン乗用車で日本を四十周分にもなります。フロンは、都内温室効果ガス排出量の約八%相当を占めています。運輸部門が一五%であることからも、その影響は甚大です。
 フロンの排出を抑制するため、モントリオール議定書の改正が行われ、昨年一月からフロンの段階的な削減に向けた国際的な枠組みが発動しました。
 我が国においても、フロン排出抑制法を改正し、フロンの回収引き渡し義務違反の規制を強化しました。しかし、現状は、商業施設などの空調設備、ショーケースなどの冷凍冷蔵設備に多く使用されており、配管の腐食や機器の老朽化、不十分な点検整備により、使用段階においてフロンが多く漏えいしています。また、冷凍空調機器等を廃棄するときに回収されるフロンも約四割にとどまっています。
 都内の排出量も近年増加しています。都では、昨年十二月に策定したゼロエミッション東京戦略において、二〇五〇年までにフロン排出量ゼロを目指す目標を掲げています。
 まず、都庁みずから二〇一七年度CO2換算で四千四百六十五トンものフロンを漏えいしている現状の打破、そして、都内事業者のノンフロンへの転換の促進、フロン使用時の漏えい防止と機器廃棄時の指導強化、また、業界団体と連携した中小企業者へのアドバイス、意識啓発などに早急に取り組むべきであります。都の見解を求めます。
 次に、都庁電力プランについて質問します。
 CO2を排出しない再生可能エネルギーの利用拡大は大変重要です。我が党は、十年間の国の固定価格買い取り制度が終了する、いわゆる卒FITを迎える家庭が、買い取り価格の低下により発電をやめてしまわないようにする仕組みが必要であると主張してきました。
 こうした我が党の主張に対し、都は、令和元年第四回定例会において、都内産卒FIT電力が今後加速度的にふえてくる、この電力を都のイニシアチブで活用する方策などを検討し、都民の身近にある都有施設での再エネ電力一〇〇%化を目指していくと答弁し、さらに、令和二年度予算において、都庁電力プランを盛り込んでいる点は評価できます。
 都庁電力プランを実施するに当たっては、多くの都民の参加を得て進めることが重要です。知事の決意と具体的な取り組みについて見解を求めます。
 次に、東京グリーンボンドの活用について質問します。
 昨日、都議会公明党の代表質問で、外堀の水質浄化のために、多摩川などからの河川水を玉川上水を活用して外堀に導水することを訴えました。小池知事は、外堀の水質浄化に向けては、河川水などの導水の有効性などを確認した、今後は、外堀に導水するための水源、水量の確保や、導水路の整備方法等について検討を進めると答弁しました。
 私は、この答弁を高く評価するとともに、水源、水量の確保と導水の整備など、その事業推進のために、相当のコストが必要であると考えます。
 そこで、東京グリーンボンドによる資金調達を提案するものであります。このグリーンボンドは、都民や企業の投資を通じた後押しを受け、環境施策を強力に推進することなどが発行の目的であります。
 そして、東京グリーンボンドの特徴の一つに、投資表明が挙げられます。表明行為により、投資家は、社会的課題への意識が高い優良投資家であることを対外的に示すことが可能となるため、社会的評価の向上が図られます。近年、その投資表明件数がふえてきております。
 本来の玉川上水の姿をよみがえらせ、その通水で外堀が浄化されるという環境ビッグプロジェクトは、まさに環境への貢献を標榜する都民、企業の環境行動を促し、大きなムーブメントを巻き起こす取り組みであります。都知事の見解を求めます。
 次に、河川の豪雨対策について質問します。
 都は、今般の台風被害などを踏まえ、東京都豪雨対策基本方針に基づく二〇二〇年以降の取り組みを取りまとめ、おおむね五年間の行動計画として、豪雨対策アクションプランを策定しました。
 昨年の台風第十九号では、河川の調節池や下水道の雨水貯留管など、これまで整備してきた施設が浸水被害の軽減に一定の効果を発揮しましたが、その一方で、多摩地域を中心に長時間の記録的な降雨となり、多摩川流域では甚大な被害が発生しました。
 こうした豪雨災害から都民の命と暮らしを守る豪雨対策を推進していくには、多摩川のような大河川に流れ込む、都が管理する中小河川の流域全体で取り組みを強化する必要があります。
 とりわけ河川や下水道への雨水の流出を抑える貯留浸透施設の設置による流域対策を積極的に進めるべきであります。都の見解を求めます。
 東京都と神奈川県の境を流れる境川は、上流は神奈川県の管理、東京都町田市のほぼ中間の忠生から南の市境までは都の管理、そこから下流は神奈川県が管理しています。河川は、上流域だけ整備しても、下流の未整備箇所で川が氾濫してしまうため、下流からの整備が原則となっています。現状、神奈川県の整備が進まないことから、境川の都管理区間は、河川整備しても、川底を深く掘り下げられません。
 私は、都議会本会議を初め、繰り返しこの問題を取り上げ、都は現在、町田市有地を活用し、二カ所で合わせて約二十万立方メートルの洪水を貯留できる調節池の整備を進めています。
 河川整備計画では、総容量約七十六万立方メートルの調節池が必要とされており、早期の治水安全度向上のためには、さらなる整備の加速が必要です。河川沿いの公共用地を活用して、効率的に整備を進めていくべきであります。都の見解を求めます。
 さらに、神奈川県が管理する上流域の町田市小山相原方面は、二〇〇八年の豪雨で氾濫しました。いまだにそのときの応急措置の土のうが積んであります。また、昨年の台風第十九号においても、小山町の昭和橋で水位が上昇し、県が氾濫危険情報を発表するなど、非常に危険な状況にありました。
 東京都は、この区間の河川整備について、より一層、神奈川県との連携を強化するとともに、国が県への財政援助を拡大するよう強く要請し、整備を前に進めるべきであります。都の見解を求めます。
 次に、多摩の消防団員の惨事ストレス対策について質問します。
 近年、日本各地で地震や大規模風水害が頻発し、昨年も台風十九号の際には、建物被害の発生、道路の崩落により孤立した地域も発生、多くの消防団員が応急対策に尽力しました。
 過去の大規模災害では、消防団員が被災現場で凄惨な状況を目撃し、心身に不調を来す事例、いわゆる惨事ストレスが確認されています。惨事ストレスに対しては、適切に対応することでPTSD等の発症を予防することが期待できるなど、惨事ストレス対策は重要な課題です。
 そこで、今後も発生が想定される大規模災害に備え、東京都が市町村消防団員の惨事ストレス対策の充実を図るべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、多摩都市モノレールの町田延伸について質問します。
 多摩地域は、四百万人もの人口を抱えながら、鉄軌道の整備がおくれている地域で、多摩都市モノレールは、多摩地域の発展に大きな役割を果たしています。このたび、二〇二〇年度予算で、多摩都市モノレールの箱根ヶ崎方面への延伸が事業化に向けて、現況調査及び基本設計等に着手することになりました。多摩地域の都民は、これを大変うれしく思っておりますと同時に、町田市民は、多摩センターから町田方面への延伸は、事業着手が遅くなってしまうのかと心配しています。
 二〇一五年七月、都は、多摩都市モノレールの町田延伸について、目標への寄与度、収支採算性、費用便益比を全てAと分析し、今後優先的に検討すべき路線として決定しました。
 二〇一六年四月に、国土交通省交通政策審議会は、事業化に向けて具体的な調整を進めるべきと示しました。
 これを受けて、東京都は、鉄道新線建設等準備基金を創設し、その路線の中に町田方面延伸が位置づけられました。これまでの国、都の答申の前提となっていた町田方面延伸の経路の中で、市境の小山田緑地から桜台通りまでの経路は、道路の都市計画が未決定の状況です。一日も早く都市計画決定すべきであります。
 町田市は、モノレールの予定道路用地について先行買収するなど積極的に取り組んでおり、私も地元の町内会自治会連合会とともに、二〇一八年に一万筆を超す署名を小池都知事に渡し、事業化の早期実現の要望を行っています。
 今年度、学識経験者で構成するルート検討委員会が客観的、合理的なルートを検討していますが、一刻も早い結論を出すべきであります。事業化への進捗状況と今後の進め方について都の見解を求めます。
 最後に、補正予算に関連し、新型コロナウイルス対策について質問します。
 国内での感染報告が相次いでいる中、感染拡大を防ぐためには、感染をいち早く見つけるための検査体制を十分なものとしておく必要があります。
 都は、健康安全研究センターでの検査体制を強化し、国の対策にも協力していると伺っています。感染防止対策を進めるためには、検査体制の拡充を急ぐ必要がありますが、都の取り組みについて知事の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 小磯善彦議員の一般質問にお答えをいたします。
 再生可能エネルギーの利用拡大を図る都庁電力プランについてのお尋ねでございます。
 ゼロエミッション東京の実現に向けまして、再エネの利用拡大は大きな柱の一つでございます。固定価格による買い取り期間が終了した、いわゆる卒FITを迎える家庭の太陽光発電を継続して、地域の大切な再エネ電力として活用することは、電力の地産地消とともに、災害時等のレジリエンス強化の面で重要でございます。
 また、都が都民の身近にある都有施設で再エネ一〇〇%化を率先的に進めていくことは、民間企業が一〇〇%再エネ電力での事業運営を目指すRE一〇〇の取り組みの後押しにもなります。
 こうした一石三鳥の取り組みといたしまして、都は、都内産の卒FIT電力等を利用した再エネ一〇〇%電力を都有施設で導入する都庁電力プランを実施いたします。
 プランにおきましては、卒FIT電力を都へ優先供給する家庭へのインセンティブといたしまして、家庭で自家消費される電気の環境価値相当分、一キロワットアワー当たり一・五円を上乗せした買い取り価格で、小売電気事業者が卒FIT電力を購入いたします。その電力を来年度、都内に五十七校あります特別支援学校の全てと複数の環境局施設で利用することを予定いたしております。
 こうした取り組みによりまして、家庭の太陽光発電の継続とさまざまな都有施設におけます再エネ利用の拡大を進めてまいります。
 東京グリーンボンドの活用についてのお尋ねでございました。
 東京グリーンボンドは、平成二十九年度に、都は全国自治体に先駆けて発行をいたしました。それ以降、企業等によるグリーンボンド発行額が大幅に増加するなど、国内におけますグリーンボンド市場の成熟、拡大に貢献をしてまいりました。
 また、東京グリーンボンドは、都の環境施策の強力な推進や、環境施策に対しましての都民や企業のオーナーシップ意識の喚起など、重要な役割を果たしております。
 このグリーンボンドは、都が実施をいたします環境施策に活用するものであり、充当事業の決定につきましては、その事業が国際的なグリーンボンド原則に適合しているか第三者機関が確認をするなど、適格性と透明性を確保しているものでございます。
 こうした考えのもとで調達した資金は、CO2やエネルギー使用量の削減に資する事業のほか、公園の整備や水辺の空間におけます緑化の推進など自然環境の保全にも活用しております。環境への効果につきましては、都のホームページ上で、定量的かつ具体的に公表をいたしております。
 来年度は、発行額を増額いたしまして三百億円にするなど、国内グリーンボンド市場のさらなる活性化と金融分野からのSDGsの実現を後押ししてまいります。
 そして、お尋ねの外堀の水質浄化の取り組みでございますが、事業内容等を踏まえまして、第三者機関との調整を行いながら、充当対象の追加に向けて検討をしてまいります。
 新型コロナウイルスの検査体制の拡充についてのお尋ねでございます。
 新型コロナウイルスへの感染の有無を確認いたしますPCR検査につきましては、現在、東京都健康安全研究センターにおきまして、一日最大百二十件の検査が実施可能な体制を整備いたしております。都内で報告されました疑いのある患者の検査を迅速に実施するとともに、この間、国からの要請を受けまして、クルーズ船の乗客等の検査、約六百件につきましても、積極的に協力をしてまいりました。
 現在は、新型コロナウイルスの感染の拡大を防ぐための重要な局面を迎えております。都は、短期間に集中的な取り組みを進める一環といたしまして、検査体制をさらに強化することといたしまして、健康安全研究センターでの検査体制に加えて、新たに民間の検査機関を活用し、一日約百件のPCR検査を追加実施可能な体制をあすにも整えてまいります。
 さらに、健康安全研究センターでの検査につきましては、検査に用います機器等を追加整備いたしまして、一日最大二百四十件まで対応が可能となりますよう、体制を整備するものでございます。
 引き続き、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けましては、都として全力を挙げて取り組んでまいります。
 残余のご質問は、東京都技監及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、流域対策についてでございます。
 水害に対する安全を確保するためには、河川や下水道の整備に加え、貯留や浸透により、これらへの雨水の流出を抑制する流域対策を行うことが効果的でございます。
 都はこれまで、公共施設に設置する貯留浸透施設の工事費を補助するなどの支援を行っており、来年度からは、対策を促進するため、百立方メートル以上としていた規模要件を撤廃することといたしました。
 また、流域対策の認知度向上を図り、より実効性のある取り組みを促すため、地元自治体における対策の実績や十年後の目標値を今年度内に見える化し、その達成に向けた技術的支援などを実施してまいります。
 今後とも、都が先導的な役割を果たし、地元自治体と連携しながら流域対策を促進してまいります。
 次に、多摩都市モノレールの町田方面への延伸についてでございますが、本路線の実現により、開業区間と一体となり、南北方向の拠点が結ばれ、多摩地域の活力や魅力がさらに向上いたします。
 一方、事業化に向けては、収支採算性の確保に向けたコスト縮減策や収入確保策などの検討を行う必要があり、導入空間となり得る道路整備の課題もございます。
 このため、都は、沿線市、多摩都市モノレール株式会社とともに、連絡調整会議などの場を活用し、これらの課題について検討するとともに、昨年十月に学識経験者などで構成するルート検討委員会を設置し、地形など地域の状況を考慮するとともに、駅位置などの前提条件も想定しながら検討を進めております。
 引き続き、関係者との協議、調整を加速し、多摩地域における交通インフラの充実強化に取り組んでまいります。
〔環境局長吉村憲彦君登壇〕

○環境局長(吉村憲彦君) フロン排出抑制に向けた取り組みについてでございますが、フロンの排出抑制のためには、排出量の約七割を占める業務用の削減が重要でございます。使用時の漏えいについては、都有施設の排出削減に率先して取り組むとともに、事業者へのアドバイザー派遣や講習会の開催により、法改正の普及啓発を図ってまいります。
 加えて、国に報告義務のある漏えい量の多い事業者に対し、来年度から、都として独自に全件立入検査を実施し、点検整備の指導を行います。また、報告義務のない事業者については、実態把握の調査を実施いたします。
 さらに、法改正による立ち入り権限強化の機を捉えて、都としては、建設解体現場への全件調査を行い、フロン回収の確認や指導を実施いたします。そのため、専門職員を増員し、フロンGメンとして総合的に対策を行い、さらなる排出量の削減に努めてまいります。
〔建設局長三浦隆君登壇〕

○建設局長(三浦隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、境川の調節池整備についてでございますが、境川の安全性を早期に向上させていくためには、河川沿いの公共用地などを活用し、調節池の整備を推進することが重要でございます。
 令和二年度は、事業中の金森調節池におきまして、地中連続壁の構築を完了させ、掘削を開始するとともに、木曽東調節池では本体工事に着手いたします。
 加えて、中里橋上流右岸の旧河川敷におきまして、貯留量約五万立方メートルの地下箱式の新たな調節池を事業化いたします。具体的には、基本設計を実施し、施設の構造や配置に加え、上部利用などを地元市などとも協議しながら検討してまいります。
 今後とも、水害に強い都市東京の実現に向け、境川の整備を着実に推進してまいります。
 次に、境川上流部の神奈川県管理区間の整備促進についてでございますが、境川の鶴瀬橋上流につきましては、協定により区間を定め、整備、管理を行っており、豪雨に対する安全性を早期に向上させていくためには、県と連携して取り組んでいくことが重要でございます。上流の県管理区間では、根岸橋から馬場橋間及び最上流部におきまして、県が護岸や遊水地の整備を進めております。
 都は、各都県の副知事などから構成される都市河川の整備促進に関する一都三県連絡協議会や都県河川調整会議などの場におきまして、県管理区間のさらなる整備の促進について継続して働きかけております。
 境川の安全性の早期向上に向け、国へ都市河川の整備に関する一層の財源の確保を求めるほか、地元市などとも連携して県へ働きかけるなど、取り組みを強化してまいります。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 市町村消防団員の惨事ストレス対策についてでございますが、災害時に救助等の活動に従事する消防団員の方々は、災害現場での悲惨な体験等により強い精神的ショック等を受け、心身にさまざまな障害が発生するおそれがあり、団員の惨事ストレス対策は極めて重要でございます。
 都はこれまでも、災害時に国のメンタルサポートチームを活用する等、団員の惨事ストレス対策に努めてまいりました。ご指摘の趣旨も踏まえ、今後は、市町村消防団員に配布する冊子に、惨事ストレス対策に係る情報を新たに追加するとともに、惨事ストレスの状況を早期に確認し、必要なケアに結びつけることができる団員を育成するため、消防訓練所を活用した講座の設置を検討してまいります。
 こうした取り組みを通じて、市町村消防団に対する惨事ストレス対策の充実強化を図ってまいります。

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