令和二年東京都議会会議録第三号

○議長(石川良一君) 四十三番佐野いくお君。
〔四十三番佐野いくお君登壇〕

○四十三番(佐野いくお君) 小池知事は、常々、我が会派の議員に対し、専門性を生かし政策にこだわった議員活動が重要だとおっしゃっております。
 私は、大学で緑地計画を学び、カリフォルニアの大学院では、環境デザイン学部で自然環境やエネルギーなど生態系を生かしたまちづくり、エコシステマティックデザインという計画手法を学び、ランドスケープアーキテクチャーの修士号を取得しました。修士論文では、トイレの歴史の研究と自然環境を生かした汚水個別処理を研究し、卒業プロジェクトは、ロサンゼルス郊外のまちの中心市街地再整備計画を実際に受注して手がけ、造園学会のデザイン賞を受賞しました。
 帰国後は、施工会社で、都立水元公園や多摩ニュータウンなど数多くの工事現場を経験し、その後、技術士を持つコンサルタントとして、また、独立し会社経営者として、国営昭和記念公園や都立井の頭恩賜公園など、国や地方自治体の公園緑地の調査、計画、設計などに携わりました。
 議長を含む十四年間の市議会議員時代も、これらの専門性を生かし、緑のまちづくりにこだわった活動をしてまいりました。これらのこだわりとあわせ、二人の子を育てた親として、昨年六月、九十三歳の父を、十二月に九十歳の母をみとった息子として、重い内臓障害で生まれた孫のいることし六十四歳になるおじいちゃんとして、保護司として、あるいは胃の一部切除手術を経験したり、さまざまな人生の経験者として、小平市の商店街に生まれ育ち、郷土小平を愛する都議として、教育、福祉、医療、介護、経済、財政など、都政の重要課題にも取り組みつつ、以下、九点に絞って質問をいたします。
 初めに、再犯防止についてです。
 平成三十年第一回定例会で、私は、第三回世界保護観察会議における小池知事の挨拶を引用し、セーフシティー、ダイバーシティー東京に欠かせない再犯防止対策などについて質問しました。国が法で地方自治体の責務と定めた再犯防止について、私は、財政支援を含めた国の措置は十分ではないと考えていますが、そのような中でも、知事からは、再犯防止の取り組みは不可欠で、計画策定のための検討会を立ち上げるとの答弁があり、昨年七月に、大変なご苦労の末、再犯防止推進計画が策定されました。
 また、都民安全推進本部には再犯防止を進める担当も置かれており、着実に取り組みが進んでいるものと評価しています。
 取り組みの一つとして、先般、新たに東京都再犯防止推進協議会が設置されております。この協議会を通じて再犯防止施策を進めていくことは非常に重要だと考えていますが、協議会の役割と今後の取り組みについて伺います。
 次に、学校校庭芝生化についてです。
 同じく、おととし、校庭芝生化について、本来ならば国が学校施設の標準とすべきだが、スマートシティーを目指す都として先駆的に取り組んでもよい施策ではないか、さらに、遊びや運動用芝生という欧米では当たり前の芝生文化の醸成、産業育成をも見据えた芝生化事業に踏み出す考えがないのか問いました。
 そもそもスポーツを行う芝生のグラウンドが少ないという問題があります。昨年のラグビーワールドカップ以降、ラグビーの人気が高まり、思い切りラグビーのできる芝生のグラウンドが足らないとの声が上がっています。
 ことしはオリンピック・パラリンピックがあり、レガシーとしても、誰もがスポーツに親しめる芝生のグラウンドを最も生活に身近な小中学校に整備すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、心の教育についてです。
 冒頭申し上げたように、私は二人の子供を育てた親です。子供たちは小学生のとき、親元を離れ栃木で農村留学をしています。一年生から六年生まで約五十人が寮生活を送り、あぜ道を三十分歩いて地元の小学校に通っていました。
 当時、我が家の養育方針は、平成十年の中央教育審議会答申に大きく影響されました。答申のタイトルは、新しい時代を開く心を育てるためにで、今読み返しても大変示唆に富んだ意義深い内容となっていると思います。特に、親の過干渉の弊害、思い切り遊ぶ重要性、異年齢集団の中で豊かで多彩な体験の必要性、長期の自然体験活動の必要性、親と離れて集団生活を営む必要性などに納得し、農村留学という形で実践したのです。
 私は、変化を予測しづらい社会に生きていく子供たちには、生きる力の中でも、特に豊かな心を自然体験等の実体験を通して育んでいくことがますます重要になってくると考えます。
 そこで、小中学校における豊かな心の育成に向けた都教育委員会の取り組みと、学校における体験活動の現状について伺います。
 次に、自然環境調査についてです。
 環境・建設委員会の事務事業質疑や自然環境保全審議会で、私は、子供のころ、五十年ほど前の記憶にある身近な植物、昆虫、鳥類、爬虫類、哺乳類など具体的な種名を挙げて、現在見られる種類と比較しての違いや変化、問題点について意見を述べました。東京ではこれまで多くの自然が失われてきました。逆にふえた自然もありますが、外来種の増加など、本来の生態とは異なってきており、大変危惧しています。
 東京は大都市として発展してきた歴史と小笠原から奥多摩までダイバーシティーに富んだ環境を持つ都市であるという特徴を持っています。この東京の発展に伴う自然の変化について、過去のデータを時間軸、地域のデータを空間軸として捉え、体系的に、総合的に把握していくことが、未来の東京を描いたり予測する上で不可欠ではないでしょうか。
 IT技術を活用したデータに基づく都市における豊かで多様性のある自然の先進的評価モデルの形成を目指し、都市ランキングで最も低い環境評価を高める上でも、まずは、自然環境の調査とデータの活用が必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、鉄道連続立体交差化についてです。
 これもおととし質問しましたが、小平市内を含む田無から花小金井駅付近には、都道小金井街道や青梅街道が交差し、交通量の非常に多い踏切があり、昨年九月に行われた小池知事と小平市長との意見交換会にも、この区間の鉄道立体化について話題に上がっています。
 これらの踏切は、踏切対策基本方針において重点踏切とされており、抜本的対策としては、方針の中で、鉄道立体化の検討対象区間として位置づけたこの区間の事業化の推進が必要と考えますが、今後の取り組みについて見解を伺います。
 次に、駅前再開発についてです。
 小平市では、小川駅西口地区と小平駅北口地区の二カ所において、市街地再開発準備組合による再開発事業の検討が進められてきました。これらの再開発の実現には、予定地区内に都道が含まれることから、東京都の横断的な協力を得ながら、都市計画法や道路法等関係法令に基づく手続が必要です。
 また、昨今、都が進めるサテライトオフィス支援など、就業環境の分散化など、まちづくりの幅広い視点も重要です。
 市は、駅前広場などの都市計画道路が未整備なことや、防災面の配慮が必要なことから、事業の早期実現に向け準備組合を支援していますが、再開発を経験した職員がおらず、数多くの再開発に関与してきた都のノウハウは不可欠です。
 そこで、小川駅西口再開発事業に対してどのように支援をしていくのか見解を伺います。
 次に、都市計画公園の整備についてです。
 平成三十一年四月現在、東京の都市計画決定している公園緑地の整備率は四九%です。半分にも満たない状況です。また、東京区部では一人当たりの公園面積が四・三平米なのに対し、ニューヨークは十八・六、ロンドンは二十六・九、パリは十一・六四平米であり、東京は比較にならないほど少ない数値です。これでは、都市ランキングで東京の環境面の評価が低いのは当たり前とさえ思われます。
 昨年十二月に策定された未来の東京戦略ビジョンには、国際競争力の観点からも、公園などの良質なオープンスペースの形成を進めていく方向性が示されています。
 まずは、防災上も極めて重要な都市計画法で定めた都市計画公園の整備を最優先に進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、水の都、美しい東京の実現についてです。
 昨年、小池知事は、新聞社の取材に対し、二〇年大会を契機に玉川上水を復活させて東京に江戸の情緒を取り戻したい、長い事業となるが、よみがえった玉川上水によって東京のシンボルでもあるお堀がきれいになっていく、夢のあるものだ、すばらしい遺産になると語り、事業の意義を強調しました。
 私の地元小平には、この玉川上水が流れ、そこから取水して用水路が総延長で約五十二キロもあります。今後、都が進める外堀浄化プロジェクトにより、さらに玉川上水の環境の向上につながるのであれば非常に意義深いことであります。
 そこで、環境先進都市実現や、さらなる観光振興にもつながるこのプロジェクトを早期に具体化すべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、東京のシンボル建築物についてです。
 最近刊行された漫画、江戸城再建では、再建の意義について、一、日本の価値ある歴史、伝統、文化の再発見、再評価、二、世界に誇る美しく荘厳な木造建築技術の将来に向けた継承、三、観光立国のシンボルとして経済の成長戦略につながる、四、税金でなく企業や国民の参加のもとで実現する新時代の公共事業となり得るの四点を挙げており、共感いたしました。
 私は、大学院卒業後、欧米を八十日間旅行したりなどさまざまな都市を見てまいりましたが、多くの都市にはシンボルとなる歴史的建造物があり、日本の各都市のお城もそれぞれのまちのシンボルとして輝いているように思います。
 昨年、残念ながら火災で焼失した沖縄の首里城は、戦災で失われた後、さまざまな難題を乗り越えて、一九九二年に再建、復元されました。この再建に尽力されたのが私の義理のおじに当たる元沖縄開発庁長官、参議院議員だった植木光教さんです。沖縄の復興に並々ならぬ情熱を注ぎ、二つの地区による国営公園化という、いわゆる植木構想で実現に至ったと語られています。
 私は、この江戸城再建についても、江戸東京の文化伝統を愛し、東京の発展に全力を注いでいる力のある政治家の力が必要ではないかと思っています。
 江戸東京を代表する政治家として、江戸城再建について知事の見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 佐野いくお議員の一般質問にお答えをいたします。
 江戸城再建についてのお尋ねでございました。
 先日、施政方針表明におきましても、大いなる夢を掲げなくては明るい未来はつかめないと述べたところでございまして、そういう意味でも、大変夢のあるご質問をいただいたものと考えております。
 江戸城は、東京の歴史、文化の象徴として伝統と革新が交差する東京の姿を世界へ発信するという上で魅力的な存在となり得るものだと、このように考えております。
 一方で、実現に向けましては、文化財としてのあり方や皇室用財産の扱い、事業費や事業主体の問題、バリアフリーの考え方など、さまざまな課題もございます。
 まずは、国民的な議論や盛り上がりの中でのテーマだと考えております。
 なお、残余のご質問につきましては教育長、東京都技監及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、公立小中学校における校庭の芝生化についてでございますが、公立小中学校の学校施設等の整備につきましては、設置者である区市町村がその役割を担っており、それぞれの判断で取り組むものでございます。
 都教育委員会は、校庭の芝生化が教育環境整備にとって有効な取り組みの一つであり、東京二〇二〇大会のレガシーとして、子供たちが運動に親しむ習慣を育むことにも資することから、区市町村教育委員会の計画的な校庭芝生の整備に対して、工事費や芝生化後の維持管理費の補助、専門家派遣による技術支援などを行っているところでございます。
 子供たちにとっての良好な教育環境の確保に向け、区市町村教育委員会の校庭芝生化の取り組みを支援してまいります。
 次に、小中学校における豊かな心の育成についてでございますが、思いやりや公共の精神、生命を尊重し自然を愛する心など、自立した人間として他者とともによりよく生きるために必要な豊かな心を子供たちに育むためには、道徳教育や体験活動の充実を図ることが大切でございます。
 そのため、都教育委員会は、独自の道徳教材を開発し、学校での活用を促すなど、子供たちの道徳性を養う教育を推進してまいりました。
 また、各学校では、福祉施設との交流や地域清掃等の日常的な活動に加え、宿泊行事等での自然体験や文化交流等、多様な体験活動を実施しているところでございます。
 今後とも、都教育委員会は、学校、家庭、地域社会の連携による道徳教育の推進や、特色ある体験活動の事例の紹介等を通して小中学校の取り組みを支援し、子供たちの豊かな心を育む教育の一層の充実を図ってまいります。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、西武新宿線の田無駅から花小金井駅付近の鉄道立体化の今後の取り組みについてでございます。
 本区間は、都が平成十六年に策定した踏切対策基本方針におきまして、鉄道立体化の検討対象区間である二十区間の一つに位置づけております。
 鉄道の立体化については、地域におけるまちづくりと大きく連動することから、地元市が主体となり、地域の将来像や鉄道立体化を契機としたまちづくりの方針などを検討することが必要でございます。
 また、本区間は、未整備の都市計画道路と二カ所で交差しており、道路整備計画との整合を図る必要もございます。
 都としては、小平市や西東京市が行うまちづくりの取り組みを支援しつつ、その状況や道路整備計画の具体化などを踏まえ、適切に対応してまいります。
 次に、小平市小川駅西口地区の再開発計画についてでございます。
 当地区は、交通広場が未整備で、防災面でも老朽化した住宅や商店が密集するなど、課題を抱えております。
 再開発事業の実施によって、商業の活性化とともに、交通広場など基盤整備を進め、にぎわいや交流が育まれる災害に強い市街地の形成を図る必要がございます。
 市内で初めての再開発事業であるため、都は、人事交流などを通じて市へのノウハウ提供を実施しております。昨年度には、基本設計等に対しての財政的支援も実施いたしました。
 現在、都において、再開発組合の設立認可に向けた手続を進めており、組合設立後においても、引き続き、事業の推進に向けて、市及び組合の取り組みに対し、支援を行ってまいります。
 次に、都市計画公園の整備についてでございます。
 公園などの緑は、都民の快適な暮らしや都市の魅力を高めるほか、防災の面からも大きな役割を果たすことから、都市計画公園の整備による緑の創出は重要でございます。
 このため、都と区市町は、都市計画公園・緑地の整備方針を策定し、豊かな自然の保全や災害時の避難場所の確保などに資する公園について、優先して整備を進める区域を定め、重点的かつ計画的に整備に取り組んでおります。
 現在公表中の整備方針の改定案では、骨格となる緑の保全や防災性のさらなる向上に向け、新たな優先整備区域を五百二十九ヘクタール設定しております。来年度早期に本方針を改定し、都は、これに基づき、区市町との連携をさらに深めながら、公園緑地の整備を加速させ、ゆとりと潤いのある東京の実現を図ってまいります。
 最後に、外堀浄化プロジェクトについてでございます。
 水辺空間を生かした魅力ある都市の顔づくりを進め、水と緑を一層豊かにし、ゆとりと潤いのある東京を実現するため、未来の東京戦略ビジョンに外堀浄化プロジェクトを位置づけました。
 これまでも都は、関係局が連携し、外堀のより効果的な水質改善方策について、想定される対策内容に応じたシミュレーションに基づいて検討を行うとともに、方策を実施する場合の課題整理などを行ってまいりました。
 今後は、外堀に導水するための水源、水量の確保や導水路の整備方法などについて検討を進めるなど、外堀浄化プロジェクトを着実に進め、水の都にふさわしい、まちに潤いを与える東京を実現してまいります。
〔都民安全推進本部長國枝治男君登壇〕

○都民安全推進本部長(國枝治男君) 再犯防止に関し、東京都再犯防止推進協議会の役割と今後の取り組みについてでございますが、都は、国の関係機関や区市町村、民間団体等と当面する課題への対応等について包括的に協議するため、東京都再犯防止推進協議会を設置し、先月開催した第一回会議では、委員相互の情報交換等を行ったところであります。
 来年度は、協議会のもとに設置した保護司会や社会福祉協議会を初めとする関係団体などを含む実務者会議において、東京都再犯防止推進計画の重点課題ごとに各分野の実務経験を踏まえた議論をしていただくこととしております。
 それらの議論も踏まえ、関係機関や団体の協力を得ながら、再犯防止施策を推進し、セーフシティー、ダイバーシティーの実現に取り組んでまいります。
〔環境局長吉村憲彦君登壇〕

○環境局長(吉村憲彦君) 東京の自然環境調査についてでございますが、東京の自然に関するデータを継続的に把握することは、豊かな自然環境の保全につなげる上で重要でございます。
 都は現在、東京における保護上重要な野生生物種を選定するレッドリストの十年ごとの改定に向け、東京の希少動植物の分布状況等の情報について収集、整理を進めております。
 また、区市町村による動植物の情報把握を後押しするため、自然環境保全の計画に基づき行う生物調査等も新たに補助対象に追加してまいります。
 こうして得られた情報を都と区市町村で共有し、保全のための計画策定や活動に活用することで、自然豊かで多様な生き物と共生できる都市環境の実現を目指してまいります。

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