令和元年東京都議会会議録第二十号

○議長(石川良一君) 二十七番斉藤れいなさん。
〔二十七番斉藤れいな君登壇〕

○二十七番(斉藤れいな君) 二〇一九年の出生数が初めて九十万人を割れ、調査開始以来、過去最小となることが明らかになりました。子供を産み育てる負担や困難が女性に集中し、また、その支援に切れ目があり、対象が限定的であることや、子供の教育にお金がかかることが当たり前の社会を打破していかなければ、幾ら手当など経済的支援を拡充しても、少子化が劇的に改善される見込みは薄いと考えます。
 福祉保健局や教育庁を筆頭に、より効果的な事業への重点的な投資と不断の見直しを行い、未来を築く子供たちを社会全体で育てていくという姿勢を示すべきという立場から質問を始めます。
 まず、英語教育について伺います。
 来年度から新学習指導要領が全面実施され、小学校三、四年で外国語活動、五、六年で教科化が開始されます。
 小学生の習い事に関する民間調査によると、二〇一三年時点で既に二六・一%が英語、英会話に通っており、保護者の英語教育に対する期待やニーズが高まっていることがわかります。
 一方で、都内では、英語専科教員数がいまだ全公立小学校数の一割に満たない数であり、英語の指導に不安のある教員が一定数いるのも事実です。この双方のニーズに応えるのが英語教育における外国人人材の活用であると考えます。
 私たちの実施した区市町村アンケートによると、都内全六十三自治体のうち、ALTなどの外国人人材を活用しているのは五十七自治体に上ります。一方で、人材確保や教員との役割分担、また、効果検証について課題を感じている自治体が多いことや、時数増加や質の向上を目指しているけれども、独自の予算で行うには限界があるという現状も明らかになりました。
 加えて、区部と多摩地域では、生徒一人当たりの英語教育にかける予算に大きな格差があることもわかりました。
 さらに、AIを活用した独自調査では、家庭の経済格差が幼児期に英語と触れる体験の格差につながっている可能性も明らかになりました。
 こうした地域格差や家庭の経済格差を是正していくことは、東京都教育委員会の果たすべき役割であると考えます。
 そこで、都として、小学校の英語教育における外国人人材活用等も含め、区市町村支援のあり方について見解を伺います。
 また、東京学校支援機構、TEPROでは、外部人材の登録受け付けを開始するところですが、ALT等の外国人人材も登録し、現在は派遣業者への委託が中心になっている区市町村の取り組みを積極的に支援していくべきと考えますが、見解を伺います。
 いじめ対策について伺います。
 平成三十年度の調査によると、いじめの認知件数は過去最大の四万五千三百七件であり、特に公立小学校は三万九千四百七十九件、うち解決に向け対応中のものが一万一千三百九十五件と多数生じています。SNSを活用して相談しやすい場を新たに設けたことはすばらしいことですが、具体的な支援につなげていくことに加え、そもそもここにもまだ届かない多くの児童がいることも課題です。
 これらの取り組みは、いじめの解決に向けた糸口を得るための手段であり、この先の具体的な解決方法を描いていく必要があります。
 現在、当事者やご家族、または教員から寄せられるいじめについてのお悩みの相談は尽きることがなく、中には、学校がいじめを認知していない、認知したとしても何もしてくれないといった訴えも少なくありません。
 そこで、軽微ないじめも見逃さないとして、いじめ認知件数が増加してきた上で見えてきた課題と、それに対する今後の方向性を伺います。
 また、いじめ問題解決に向けた被害児童支援に加え、加害児童への適切な指導は、傍観者となり得る第三者生徒さんたちへの教育効果を加味しても、非常に重要です。いじめの加害者といわれる子供とその保護者に対しても、状況を理解してもらった上で、十分な指導と支援が必要であると考えますが、見解を伺います。
 不登校生徒支援について伺います。
 不登校の生徒は、それぞれの状況も多様であり、学校復帰が必ずしも最良の道であるとは限らないという認識が国の通知でも示されております。
 不登校生徒にとって、学校以外に魅力的な通いの場を見つけることが重要な一方で、その役割の一翼を担う教育支援センターに通う児童は、小学生では不登校生徒総数の約一〇%、中学生では約二〇%にとどまっているのが現状です。
 特に、生徒が十分な指導を受けていくために必要な人材の配置や施設の整備をさらに進めていくことで、民間のフリースクール等に通うことが経済的に難しい生徒さんが、学校以外での学びを続けていくことを保障する必要があります。
 平成二十九年から始まった教育支援センター機能強化モデル事業がことしで終了しますが、今後も、区市町村の教育支援センターの充実に向け、モデル事業の成果も活用しながら、支援を継続していくべきであると考えますが、見解を伺います。
 ここで一点指摘をしておきます。
 昨年から質疑を行っております、都立高校の入学試験で男女別に定員数が設けられていることについて、男女それぞれの合格最低点や倍率が異なるなど、合否判断において性別による不平等が生じている可能性が否定できません。
 都立高校入学者選抜検討委員会において、緩和枠の拡充や男女合同定員制について議論が必要といった見解が示されており、全国で唯一、男女別定員が残っている現状において、速やかに議論、検討を進めていただきたいと要望します。
 昨年六月に一般質問でも取り上げ、関係団体との意見交換や当事者からのヒアリングなど、継続して取り組んでまいりました未受診妊婦の支援について伺います。
 特定妊婦は、妊娠継続や出産について、家族などからのサポートがないことも多く、産科受診をしておらず、母子手帳すら持たない場合があります。都が妊娠相談ほっとラインで相談対応を行っていますが、この窓口をさらに当事者に知っていただくことが必要で、さらには、受診に当たり具体的な支援を行っていくことが求められています。
 厚生労働省は、今年度から、女性健康支援センターで若年の特定妊婦の医療機関受診に同行し、費用を国と自治体で折半するという事業を開始することを決定しました。
 特定妊婦には、妊娠判断の産科初診費が捻出できずに悩み苦しんでいる例も多く、都としても、相談対応受け付けを行うことに加え、同行支援や産科受診費助成を行い、未受診妊婦の支援を図っていくべきであると考えますが、都の見解を伺います。
 離婚後の母子支援について伺います。
 厚生労働省の平成二十八年調査によると、離婚後の母子家庭の平均収入は年間百八十一万円と低く、また、東京都の平成三十一年のひとり親家庭の相談状況等に関する調査によると、ひとり親の悩みで最も多いのはお金に関することで、養育費を受け取っていない割合は全体の六三・八%に及んでいます。
 十分な養育を受けることは子供の権利であり、離婚後も子供の成長を支えていく責任は一義的には両親にあります。
 しかし、離婚時にそもそも養育費の取り決めをしていない割合も全体の半数近くで、離婚理由にDVなどがあった場合も含め、現実には元配偶者に養育費を払ってほしいと声を上げにくいこともあり、離婚後の養育費の確実な支払いが行われるよう行政が支援をしていく必要があります。
 養育費の立てかえの保証などを始めた自治体もある中、広域的にひとり親への専門的な相談対応を行う都においても、同様の方策でひとり親を支援するべきであると考えますが、見解を伺います。
 児童相談所で働く児童福祉司の処遇の改善と育成について伺います。
 先日、世田谷児相の視察に伺いました。児童福祉司は、高い専門性に加え、学問を修めただけでは発揮できない十分な経験を必要とする、つまりその道をきわめることが求められる職業であるにもかかわらず、その重責を伴う職務内容と処遇の面では隔たりがあるとの指摘もあり、離職、転職をされる方も多い現実があります。
 現在、国においてその専門性に鑑み、処遇改善を図る仕組みを検討しているとも伺っています。
 特に東京都は、児童人口や相談対応件数も多く、児童福祉司一人当たり担当件数が百二十件にも及ぶ勢いであるともいわれ、一人当たり四十件を妥当とする国の新プランを大きく上回っている現状であり、都として、児童福祉司の処遇の改善、人材の育成をしていく仕組みづくりが急務であると考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、都民の就労とソーシャルファームに関する条例に関連して伺います。
 本条例では、ソーシャルインクルージョンを基本理念としている点が最も重要であり、これまでの福祉的な就労支援の枠を超え、お互いの支え合いから、さまざまな価値を生み出していく社会へとパラダイムシフトが起きることを期待しています。
 一方で、就労困難者にとっては、より一層みずからの能力や技術を高める努力が求められるのも事実であり、東京都では、東京障害者職業能力開発校において、身体、知的、精神、発達、各障害に対応した訓練を行っています。生活習慣を身につけ、一人一人の適性や能力に合わせて、清掃や調理から、CADなどの専門技能まで訓練できることから、即戦力の人材育成が図られています。
 そこで、都は、障害者など就労困難者の実情に配慮した支援を行うという本条例の趣旨に鑑み、当該校における職業訓練を実施するとともに、より多くの方に活用いただけるように取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 本条例を機に、さらなる企業への働きかけを行うとともに、障害者就労のロールモデルを輩出するような取り組みを期待し、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 斉藤れいな議員の一般質問にお答えいたします。
 教育に関する五点のご質問をいただきました。
 初めに、小学校の英語教育における区市町村への支援についてでございますが、小学校の英語教育の充実を図るためには、広域的な地方公共団体である都と設置者である区市町村とが、それぞれの役割を果たしながら、取り組みを行うことが必要でございます。
 これまで都教育委員会は、英語専科指導教員の配置や指導資料の配布、モデル地区における教員と外部人材の連携による効果的な指導の研究とその周知等により、区市町村を支援してまいりました。
 また、区市町村教育委員会では、都の取り組みを踏まえつつ、それぞれの地区で校内研究への指導助言、小中学校の連携による事業の実施、地域の実情に応じた外部人材の配置等を行っております。
 今後とも、都は、区市町村に対して適切な支援を行い、子供たちに必要な資質、能力を育んでまいります。
 次に、東京学校支援機構による支援についてでございますが、機構では、部活動指導員やスクールサポートスタッフなど、学校が必要とする外部人材が令和二年度当初から活動ができますよう、人材バンクへの登録を令和二年一月から開始をいたします。今月以降、機構のホームページや車内広告等で広報を行う予定といたしております。
 また、具体的な登録分野といたしましては、部活動、学校の事務、放課後等の補習、特別支援教育、心のケア、日本語学習、ICT教育など、学校でのニーズが高い人材としているところでございます。
 これら以外の人材につきましては、区市町村教育委員会や学校の意見等も引き続き踏まえつつ、必要に応じて課題を整理しながら準備を進めてまいります。
 次に、いじめ防止対策の課題と方向性についてでございますが、都教育委員会は、毎年度、学校におけるいじめ対策の課題等を検証し、改善の方策を示してまいりました。これらにより、教員が軽微ないじめも認知するようになった一方、教員間の情報共有や解決に向けた組織的な対応等については、学校によって取り組みに差があることも明らかになったところでございます。
 こうしたことから、都教育委員会は、学校が自校の課題を明確にし、改善を図ることができるよう、取り組みの進捗状況をレーダーチャートにより見える化するシートを作成し、都内全ての公立学校にその活用を促してまいりました。
 今後とも、区市町村教育委員会が、このシートにより把握した学校ごとの課題に応じて改善策を指導助言できるようにするなど、全ての教員のいじめ対策に関する対応力の向上を図ってまいります。
 次に、いじめを行った子供への指導等についてでございますが、いじめを行った子供が自分の行為を心から反省し、よりよい人間関係を築くことができるよう、学校は、保護者との連携のもと、毅然とした指導に加え、その行為の背景を踏まえた共感的な支援を行う必要がございます。
 そのため、都教育委員会は、いじめの行為の重大性に応じた相談室等での個別指導や関係機関と連携した対応、子供が抱える課題の改善に向けたスクールカウンセラーによる子供や保護者への助言など、いじめを行った子供への指導や支援の効果的な事例を学校に周知するなどしてまいったところでございます。
 今後とも、こうした取り組みを通しまして、子供同士の関係が改善され、いじめを受けた子供が安心して生活できるよう、学校におけるいじめ対策の推進を図ってまいります。
 最後に、教育支援センターの機能強化についてでございますが、都教育委員会は、平成二十九年度から三年間、十一の地区において、教育支援センターの機能強化に向けたモデル事業を実施してまいりました。
 モデル地区からは、新たに配置された心理の専門家による面談を通して、これまで外出できなかった子供が教育支援センターに通えるようになった事例や、タブレット端末の導入により子供の基礎学力が定着した事例などが報告されております。
 都教育委員会は、モデル事業終了後も効果的な実践を継続、発展させている取り組み等を区市町村教育委員会の担当者連絡会等で周知するなど、引き続き、区市町村教育委員会が行う教育支援センターの機能強化に向けた取り組みを支援してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、未受診妊婦への対策についてでありますが、医療機関を受診していない妊婦は、早産等のリスクが懸念されるため、区市町村は、妊婦健診の受診勧奨とともに、妊娠、出産に関する相談や指導を実施しております。
 都では、妊娠相談ほっとラインで、匿名での電話やメールによる相談に看護師等の専門職が対応しており、今年度からは相談時間を拡充するほか、特に継続的な支援が必要な場合には、区市町村へ直接連絡しているところでございます。
 さらに、今年度、民間機関を活用した産科等医療機関などへの同行や初回産科受診料への支援を行う国庫補助事業が創設されたことから、都は、年度内に本事業を実施する予定としており、今後とも、区市町村や関係機関と連携して、未受診妊婦の支援に取り組んでまいります。
 次に、ひとり親家庭への養育費に係る支援についてでありますが、都は現在、ひとり親家庭支援センターにおいて、養育費が適切に支払われるよう、金額の取り決めや支払い履行などに関する相談に応じるとともに、法的な相談につきましては、家事事件に精通した弁護士が対応しております。
 養育費に係る強制執行の申し立てには債務者の財産を特定する必要があることから、国は、本年五月、民事執行法を改正し、金融機関や区市町村などの第三者から、預貯金や勤務先等に関する情報を取得できる制度を新設いたしました。
 都としましては、こうした制度の運用状況も注視しながら、ひとり親家庭が安定した就労や生活のもとで子供を養育できるよう、相談体制等の充実を検討してまいります。
 最後に、児童福祉司の育成及び処遇改善についてでありますが、児童福祉司には、虐待や非行、障害などさまざまな相談に適切に対応する相談援助技術や、個別ケースを総合的に判断するスキルなど、高い専門性が求められております。
 そのため、都は、職員の経験年数等に応じた幅広い内容の研修を行うほか、新任職員には、個別指導を担う児童福祉司OB等が、面接への同席や家庭訪問への同行などにより、OJTを通じて実務能力向上を図っているところでございます。
 また、定期的な会議でのケースの情報共有や進行管理、援助方針に関する職員同士の意見交換、困難ケースに関する専門課長からの助言や指導などを通じて、組織全体で児童福祉司のスキルアップに取り組んでおります。
 児童福祉司の処遇改善につきましては、現在、国が検討しており、都としては、その動向を注視してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 東京障害者職業能力開発校についてですが、都は、障害者雇用の促進を図るため、障害者職業能力開発校において、実践的な技術、技能を習得する訓練指導に加え、専門スタッフによる生活指導や就職支援をあわせて行うなど、障害者の特性等に応じたきめ細かい訓練を実施しており、訓練生の約八割が就職に至っているところでございます。
 また、この障害者校をより多くの方にご利用いただくため、ハローワークと連携して周知を行うほか、特別支援学校や障害者の就労支援機関等に向けた見学会を開催し、訓練内容の紹介を行っております。
 今回提案しております就労支援に関する条例案におきましても、障害者など就労に困難を抱える方に対して、その実情に応じた支援を実施することとしておりまして、引き続きこうした視点に立って、障害者の職業訓練を推進してまいります。

○議長(石川良一君) 以上をもって質問は終わりました。

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