令和元年東京都議会会議録第二十号

○議長(石川良一君) 六十五番西郷あゆ美さん。
〔六十五番西郷あゆ美君登壇〕

○六十五番(西郷あゆ美君) 日本では、無痛分娩を受けられた産婦さんが麻酔の事故で亡くなったり、重い後遺症が残ったりしたというニュースを大きく取り上げていることがあるため、無痛分娩は危険だという誤解が広まっています。
 しかし、現在、欧米では、無痛分娩の安全性は確立しており、重い合併症が出現することは非常にまれです。欧米では、母体負担軽減を目的として、無痛分娩が一般的な分娩方法です。アメリカやフランスでは、約九〇%、無痛分娩で出産しているとのことです。一九四〇年代になると、アメリカでは二十四時間体制の無痛分娩サービスが開始され、希望者に無痛分娩を行うことは、ごく当たり前のこととなっていました。
 虫歯治療や手術の際は麻酔が使用されますが、なぜ一番痛いといわれているお産については麻酔が使用されないのでしょうか。最近では、子供の注射に対しても痛みを減らす麻酔クリームを使用する医院がふえています。
 欧米では、出生直後に医療処置を数多く受けた早産児は、成長後に痛みに強い反応を示すといった研究報告もあり、子供の痛みの緩和が重視されているようです。
 一九九二年にアメリカ麻酔学会とアメリカ産科婦人科学会は、妊産婦が無痛分娩を要求することは当然の権利であるとの共同声明を発表しています。フランスを初めとする諸外国では、産科医療の集約化が進んでおり、産科医、小児科医、そして産科専門の麻酔科医が確保されているセンター病院で分娩するのが一般的です。
 無痛分娩の必要性については、主に次の二つの要因が挙げられています。
 第一に、無痛分娩は、予防医学の観点から必要です。分娩だけでなく、手術で麻酔を使用するのは、安全に処置、治療するために医学上必要だからです。
 痛みとは、異常事態を知らせるサインであり、生体防御反応です。分娩に伴う痛みは分娩が始まったというサインですが、それ以外は妊婦にとって何の意味もないようです。激しい痛み、刺激のストレスから子宮胎盤循環を低下させ、胎児切迫仮死や難産を招くこともあります。
 したがって、何らかの方法で無痛分娩を行い、産痛を積極的にコントロールすることは、出産のクオリティーを高める上でも重要です。麻酔は血圧を下げるため、妊娠高血圧症候群、心臓の病気、脳血管の異常を持つ場合など、医学的な理由で無痛分娩が望ましい妊婦さんもいます。
 また、緊急度の高い帝王切開を行う可能性がある場合にも、無痛分娩は適しています。産道をやわらかくし、難産を安産に変える作用もあわせて持っています。お母さんの呼吸が乱れないため、心拍も安定し、酸素が届き、赤ちゃんを守るスムーズなお産ができます。お母さんが痛いと感じるときは、赤ちゃんも苦しく、お産が長引くと疲れてしまいます。
 第二に、痛みがないので、お母さんはリラックスしてお産に臨めます。出産後の疲労が少ない、回復が早いため、子供と向き合える時間も長くとれます。
 ある病院では、無痛分娩を選択して出産した人は、平均三人子供を出産しており、四人から五人出産した人も多いようです。
 このようにメリットの多い無痛分娩ですが、トレーニングを積んだ麻酔科医が多くないため、日本では万が一に対応できる医師が多くありません。産科麻酔は高度な技術を要するために、日本での普及率は低くなっています。しかし、麻酔科医の技術とともに、緊急時に適切に対応できるのであれば、無痛分娩は安全なお産です。
 そこで伺います。
 東京都では無痛分娩取扱施設について、どのような対応をとっているのか伺います。
 乳幼児を持つ親の子育てへの不安や負担感を軽減するためには、相談支援や家事支援など、さまざまな子育て支援策が必要であることはいうまでもありません。東京都では、児童虐待を防止するためのLINE相談など、さまざまな相談窓口が用意されています。
 これらの相談窓口に加えて、赤ちゃんがいるからと、気兼ねなく自分が行きたいときに希望する場所に外出ができる環境を整備することも、育児に疲れた心身をリフレッシュし、優しい気持ちで子供に向き合う上で極めて重要です。
 しかし、急な赤ちゃんの授乳やおむつがえなどを心配し、外出を控えるという声が母親から多く聞かれます。
 そこで伺います。
 都は、乳児を持つ親がいつでも気軽に外出を楽しめる環境を整備すべきと考えるが、いかがでしょうか。
 また、子育て応援施設の第三者評価機関であるミキハウス子育て総研では、二〇〇八年三月一日より、一定の認定基準を満たす各地の宿泊施設や日帰り施設を、ウエルカムベビーの宿、ウエルカムベビーの施設として認定しています。
 ホテル館内には、遊具やDVDのそろうキッズプレールームがあり、ベビーカーや調乳器などの無料レンタルや、二十四時間完全個室の授乳室など、安心して過ごせる配慮があります。
 また、部屋にはお子様用アメニティーが備えつけてあり、ベビーベッド、ベビーバスの無料貸し出しを行い、ふだんから登山並みの荷物を持って移動する親にとってはとてもありがたいです。
 しかし、このような認定を受けた施設は、都内でも余り多くないのが実情です。そのため、子育て中の家族が旅行する際には、次善策として、いわゆる民泊を利用することも多いと聞いています。
 日々の子育てに追われる母親だからこそリフレッシュがしたい、子供と一緒だからこそ楽しめる経験がしたいと思うものです。ふだんの住居を離れ、子供との関係を見直せるため、ファミリー全体の活力も養われます。
 また、このような施設を利用したレジャーには、祖父母等の参加も見込まれ、平日需要の盛り上げやリピーター増加につながります。地域の活性化に寄与するとともに、子育ては楽しい、子供と生きる暮らしはすばらしいということの認知を広め、少子化対策、子育て支援対策にもつながるはずです。
 不特定多数の方々が一時に利用する施設だけでなく、ウエルカムベビー宿のように、宿泊施設について普及促進が進んでいくことを期待します。
 選手村では、平成二十九年三月に選手村地区エネルギー整備計画が公表され、その計画には、水素エネルギーなど新技術を活用したまちづくりの実現が位置づけられました。その後、水素事業を手がける民間事業者を決定し、平成三十年には水素パイプラインを設置する工事に着手したところです。
 BRT運行事業者等が運行する燃料電池バスや、一般の燃料電池自動車への水素の供給源として、水素ステーションが晴海五丁目に整備される計画と聞いております。次世代エネルギーとして期待の高い水素を活用するまちということで、私も非常に期待しております。
 このように整備が進められる選手村は、大会後には一万二千人の方々が居住する新たなまち、晴海フラッグとして生まれ変わることになります。大規模なまちが新たに創出されることから、環境負荷の軽減や、昨今の大規模な自然災害の発生状況を踏まえ、非常時におけるエネルギー供給の継続も求められます。
 そこで伺います。
 大会後の選手村におけるエネルギー利用について、どのように取り組んでいくのかお聞かせください。
 また、世界中から多くの人が集まる大会で、水素の有用性などを知ってもらうために、選手村のまちづくりにおける水素活用などについて、都が主体となってプレゼンテーション事業を実施すると公表していますが、その具体的な内容をお聞かせください。
 私はかねてより、常任委員会の場などを通じて、勝どき駅周辺を含む臨海地域における交通不便の早期改善を主張してきました。
 当該地域の交通インフラとしては、BRTが二〇二〇年度から段階的に導入されることが決まっており、そのこと自体は非常に有意義であるが、将来の臨海地域の発展を見通すと、このような取り組みだけではなく、鉄道を含むさまざまな交通モードの役割分担により、交通不便地域の解消を図っていくことが必要だと考えます。
 国の答申において、都心部・臨海地域地下鉄構想が位置づけられており、今後、二十三ヘクタールの再開発が進む築地や勝どき、そしてベイエリアビジョンの策定が予定されている臨海部をつなぐ新線として、東京都の将来の発展に大きく寄与することが期待されます。
 さらに、将来的には、つくばエクスプレスと都心でつながることにより、都内だけでなく、広域的な鉄道ネットワークの強化が図られるなど、非常に意義のある路線です。
 こういった観点から、台東区においても期待が寄せられています。具体的には、住民運動などでつくばエクスプレスの誘致に成功した台東区の新御徒町駅にある佐竹商店街を中心に、同線の延伸に大きく期待が寄せられていると聞いています。
 去る十一月十五日には、中央区と晴海をよくする会が主催し、都心・臨海地下鉄新線推進大会が昨年度に引き続き開催され、私も参加してきたところです。この推進大会では、構想の計画内容や実現に向けた活動方針が示され、地元の機運が大きく高まっていることを実感しております。
 そこで伺います。
 この都心部・臨海地域地下鉄構想の具体化に向け、東京都として今後どのように取り組んでいくのか、考え方をお聞かせください。
 築地市場跡地の再開発は、未来の東京の発展のために必要不可欠なものです。また、場外市場の方々からは、これまでも一体として機能してきた場外市場とのつながりや、豊洲市場との連携などの要望も寄せられており、築地まちづくりを進めるに当たっては、これらの声も考慮していただきたいと考えます。
 築地まちづくり方針は、築地の伝統である食文化を踏まえながら、いよいよ民間の創意工夫を生かし、方針を具体化していく段階となります。収益性と公益性の両面から最適な東京の未来への投資となるよう、着実に進める必要があり、第ゼロ段階として、船着き場周辺エリアの先行整備事業の実施方針の今年度内の策定、公表が予定されています。
 第ゼロ段階として、水の都にふさわしい舟運活性化などの観点から、船着き場周辺のエリアが先行整備されることになっています。
 私たちはかねてより、新しい交通ネットワークとして、臨海や河川をつなぐ水上交通である舟運の推進を求めており、築地まちづくりが舟運活性化についてもモデルづくりのスタートとなるよう、意欲的な取り組みが必要です。
 そして、築地場外との接近性による食文化の伝統を生かしながら、今後の築地まちづくり全体との調和する視点も必要です。
 食文化の伝統、舟運の活性化、今後の築地まちづくりの全体の調和といった観点を踏まえ、第ゼロ段階に関する民間提案を引き出すことが重要と考えますが、知事の見解を伺います。
 以上で私の一般質問を終わりにします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 西郷あゆ美議員の一般質問にお答えいたします。
 築地まちづくりについてであります。
 築地再開発におきましては、浜離宮や食文化などのポテンシャルを生かして、インフラの整備も勘案しながら、段階的整備を進め、中長期的に都民にとっての価値を向上させる、その本格的整備に先立ちまして、まずは船着き場周辺エリアを先行的に整備をして、築地場外市場とのつながりにも配慮しながら、早い段階から新たなにぎわいを創出してまいります。
 食文化の拠点として築地が育んできた活気とにぎわいに鑑み、水辺を生かして舟運の活性化なども図り、新たな交流を創出しながら、本格的整備に効果的に移行させてまいります。
 民間の創意工夫を生かしまして、こうした取り組みを進め、水の都東京の玄関口にふさわしい国際的な交流拠点形成の弾みとしていきたいと考えております。
 残余のご質問は、東京都技監及び福祉保健局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、選手村の大会後におけるエネルギー利用についてでございます。
 大会後の選手村においては、エネルギーに関する新技術の活用などにより、環境に配慮した持続可能性を備えたまちにしていくことを計画しております。
 このため、系統電力等の供給に加えて、民間事業者と連携して水素ステーションを整備し、車両への供給のほか、実用段階では日本初となるパイプラインによる各街区への水素供給を行い、発電した電力を住宅の共用部などで活用いたします。
 また、太陽光発電や蓄電池なども導入し、エネルギー源の多様化により、自立性や防災性の向上を図ります。
 さらに、AIを用いたエネルギーマネジメントシステムにより需要を予測し、ピークカットを行うなど、エネルギー利用の効率化、最適化を図ります。
 こうした取り組みにより、環境先進都市のモデルとなる都市を実現してまいります。
 次に、選手村の大会時における水素に係る取り組みについてでございます。
 脱炭素社会の切り札となる水素を普及させるためには、世界中から多くの人々が集まる機会を捉えて、水素エネルギーの大きな可能性を伝えていくことが重要でございます。
 このため、選手村に隣接して仮設の水素ステーションを整備し、大会期間中に二十四時間体制で車両への水素供給を行います。
 また、大会後の選手村における水素エネルギーの利活用をPRするインフォメーション施設を併設いたしまして、水素情報館東京スイソミルなどと連携した周遊ツアーを実施することにより、水素の有用性をわかりやすく発信してまいります。
 選手村内では、福島県で再生可能エネルギーから製造された水素を用いて発電し、宿泊棟の一部や、晴海ふ頭公園に設置する選手の休憩施設で活用してまいります。
 最後に、都心部・臨海地域地下鉄構想についてでございます。
 この路線は、銀座、東京などの都心部と臨海地域を結ぶことで、臨海地域の拠点機能を一層強化し、さらにネットワークの面からも、東京全体の公共交通のさらなる利便性向上に寄与することが見込まれております。
 一方、国の答申では、この路線は事業性に課題があり、検討熟度が低く、関係者間において事業主体を含めた事業計画について十分な検討が必要とされております。
 都としては、臨海地域における開発動向などを勘案しながら、国の答申を踏まえ、構想をより具体化するため、国や地元区など関係者間で連携して取り組んでまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、無痛分娩を取り扱う施設についてでありますが、平成三十年三月に、国は、無痛分娩の実態把握と安全を確保する仕組みの検討結果を取りまとめた無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言に基づきまして、必要な人員体制や安全管理対策等に関する無痛分娩取扱施設のための自主点検表を作成いたしました。
 また、無痛分娩を希望する妊婦が適切な施設を選択できるよう、都道府県の調査をもとに、無痛分娩取扱施設の医師数や診療実績等を公表しているところでございます。
 都は、この提言や自主点検表を都内医療機関に周知するとともに、医療法に基づく立入検査の際に、必要に応じまして、無痛分娩に係る安全確保についての助言を行っており、都民が安心して子供を産み育てられるよう、分娩の安全な提供体制の一層の確保に努めてまいります。
 次に、乳幼児の親が外出しやすい環境整備についてでありますが、都では、児童館、図書館、大型スーパーなど、不特定多数の方が利用する施設の協力を得て、授乳やおむつがえのできる設備や、調乳用の給湯設備などを備えた赤ちゃん・ふらっとの設置を進めております。
 本年十一月現在、千五百三十二の施設が赤ちゃん・ふらっとを設置しており、都は、より多くの方に利用していただけるよう、子育て情報サイト、とうきょう子育てスイッチに、これらの施設の名称、所在地、営業日や営業時間、提供サービスなどを掲載し、地図上でも簡単に検索できるようにしております。
 この取り組みが一層広がるよう、区市町村や民間事業者に積極的に働きかけ、乳幼児を持つ親がいつでも気軽に外出できる環境の整備に取り組んでまいります。

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