午後五時三十分開議
○議長(石川良一君) 休憩前に続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
六番藤井あきら君。
〔六番藤井あきら君登壇〕
○六番(藤井あきら君) 日本は、平成の三十年間、失われた十年とも二十年とも、場合によっては三十年ともいわれる時間を過ごしてきました。
平成の三十年で、日本の名目GDPはUSドルベースで一・六倍になりましたが、一方、GDPで世界一のアメリカは三・六倍、日本を抜いて世界第二位になった中国に至っては二十九倍の成長をしています。相対的にその差は開く一方です。
中国はもとより、インドを初めとしたアジア諸国も驚異的なスピードで経済成長を遂げています。
物価の観点で見ても、日本は割安になっています。物価が上がらないということは、一見するとよいことのようにも思えますが、これは、賃金も上がっていないということで、購買力が落ち、国が相対的に貧しくなっています。
三十年という長い期間、国力がずるずると落ち続けている。つまり、これまでの政策が間違っていた、手を打ってこなかったということではないでしょうか。これまでの延長線上では立ち行かない、この認識から始める必要があります。
加えて、激化する都市間競争、少子高齢化、社会保障費の増大、老朽化した社会インフラの更新、想定外の大規模災害等、都が直面しているのは、これまでにない大きな課題ばかりです。
世界中から人、物、金を集め、再び浮上するためには、5G、ビッグデータ、AI、IoT等のデジタルテクノロジーの活用が欠かせません。東京は、日本の再成長のエンジンになる大きな可能性を秘めています。
デジタルテクノロジーをいかに社会に実装していくのかが鍵になります。単に実証実験を繰り返している時間はありません。少しでも社会に実装を、活用をしていくことが求められています。
都は、民間出身の宮坂学氏を副知事に迎え、これまで進められなかったテクノロジーの活用、社会のデジタル化に取り組んでおり、多くの都民が非常に大きな期待をしているところです。
今年度、都は、「Society五・〇」社会実装モデルのあり方検討会を立ち上げるとともに、官民連携データプラットホーム構築に関する調査検討、キャッシュレス、MaaSの実証実験に取り組んでいます。
ソサエティー五・〇の実現には、実証実験にとどまることなく、社会実装することが必要です。どのように社会実装につなげていくのか、民間での豊富な経験と知識をお持ちの宮坂副知事にお伺いいたします。
テクノロジーの社会実装の例としては、シンガポールの国全体をデジタル上に再現するデジタルツインの取り組み、バーチャル・シンガポールや、中国のキャッシュレス決済、AIカメラを使った画像解析などの取り組み、バルセロナのセンサーを活用した都市OSの取り組み、ヘルシンキのモビリティー・アズ・ア・サービス、MaaSなどがあります。こういった他国の実装の例もぜひ参考にしていただきたいと要望をいたします。
一方、デジタルテクノロジーの社会への実装に向けては、都民の理解が不可欠です。経験したことがないもの、知らないものは、理解して受け入れるということは難しいです。そこで、都においては、自分たちがテクノロジーを活用するとともに、都民のためのショーケースとなることを期待いたします。
例えば、年間三百万人以上が来庁する都庁舎を活用することで、多くの方々がテクノロジーに触れる機会をつくることができるのではないでしょうか。
現在、都庁の訪問者は、その場で紙の受付票に記帳する必要があります。また、都庁舎には多くの警備員が巡回しています。テクノロジーの活用により、警備業務の効率化とその水準を高めるとともに、来庁者の利便性を向上できる可能性があります。
多くの方が訪れる都庁舎で、来庁者の受け付け手続など、デジタル化の取り組みを率先して進めるべきと考えますが、見解を伺います。
将来的には、マイナンバーカードの活用や顔認証による来庁受け付けなどもご検討いただきたいと要望をしておきます。
続いて、スタートアップ企業について伺います。
日本は、規制等の問題で、時価総額一千億円以上のユニコーン企業が生息しにくいといわれております。実際に、世界中にサービス展開をしているライドシェアのウーバーや、民泊のエアビーアンドビー、ドローンのDJIなど、時価総額一兆円を超えるメガユニコーンといわれる会社の約半数が、日本ではサービスを展開できておりません。スタートアップの育成が急務です。
これまで都は、Startup Hub Tokyo、青山スタートアップアクセラレーションセンターやX-HUB TOKYOなど、スタートアップの発掘、育成、支援をしてきました。
一方で、スタートアップ企業の皆様からは、都政課題解決のために自分たちのソリューション、製品を使ってほしいという声も聞くところです。
複雑高度化する都政課題の解決には、スタートアップの持つ最新の知見を有効に活用すべきと考えますが、見解を伺います。
また、スタートアップ企業からは、東京都を初めとした行政とのつき合いの中で、実証実験を経た後に競争入札が必要で、ビジネスにつながらないという声を聞くことがあります。
地方公共団体の入札制度は、透明性、競争性、公正性、経済性を確保するため、競争入札が原則となっています。すばらしい製品やサービスを持つスタートアップも、創業間もなく実績がないなど、都の入札に参加するのは難しいのが現状です。
キングサーモンプロジェクトでは、来年度に三つのテーマで、都政の現場を活用して、スタートアップの持つ製品やサービスの実証実験を行うこととしています。
都が抱える社会課題の解決に有用な製品やサービスを持つスタートアップを後押ししていくためにも、プロジェクト後も活用できる仕組みを検討すべきと考えますが、見解を伺います。
次に、気候変動について伺います。
現在、スペインのマドリードで気候変動枠組条約第二十五回締約国会議、いわゆるCOP25が開催されています。COP25は、二〇二〇年から発効するパリ協定の具体的なルールを定める最後の会議として極めて重要です。
アメリカでは、六月一日にトランプ政権がパリ協定脱退を通告しました。一方、州、自治体、大学、企業、投資家は、積極的な温室効果ガス削減の目標を追求するウィー・アー・スティル・インという声明を発表しています。
また、小池知事が昨年訪問したロンドンやパリ、来年二月に訪問を予定しているニューヨークなどの都市は、気候変動対策に高い優先順位を置くとして、気候非常事態宣言をしています。
都では、十二月中に、二〇五〇年までの温室効果ガス排出ゼロ対策、ゼロエミッション東京戦略をまとめ、あわせて気候変動適応方針を取りまとめます。対策のめどがついた段階において、例えば気候非常事態を宣言することによって、国際的な連携を進めていただきたいと考えますが、知事の見解を伺います。
次に、私の地元府中市の京王線東府中駅の踏切対策について伺います。
先月二十日に、駅付近の東府中二号踏切において、自転車を押して渡ろうとした男性が転倒し、列車にひかれてお亡くなりになる痛ましい事故がありました。心よりご冥福をお祈りいたします。
現場の踏切は、都道である旧甲州街道に対して斜めに交差していることもあり、溝にはまりやすく、自転車の車輪がとられやすいなど、通ると危険を感じることがあります。実際に、二〇〇四年以降にこれまで四名が死亡する事故が発生しており、その対策は急務です。
踏切対策としては、抜本的に踏切を除却する連続立体交差化の実施が望ましいところです。一方で、交差化の場合、高額な事業費や工期の長期化が予想されます。まずは実施可能な対策を地元府中市や京王電鉄などの関係者と連携して、早期に実施をすべきです。
そこで、今回の事故を踏まえて、東京都として踏切対策を加速していくべきと考えますが、見解を伺います。
重ねてですが、府中市からは毎年都に連続立体交差化の要望が出されており、こちらもあわせてご検討いただくことを強く要望いたします。
最後に、マラソン、競歩の札幌移転についてお伺いいたします。
先日、新国立競技場を都議会の議連で視察をいたしました。現地に立って感じたのは、マラソン選手の皆さん、木のぬくもりに包まれたこのメーン会場で、七万人の大観衆のもと、本当にゴールをしたかっただろうなということです。
オリンピックにおけるマラソン及び競歩については、知事は一貫して東京での開催が最善であると主張されてこられました。また、今定例会の知事所信表明での、札幌移転に関して残念でならないと語気を強めておっしゃったのが大変印象的でした。
私たち都民ファーストの会東京都議団も、国内外のアスリートの声や沿道の自治体、商店街の方々、観戦を楽しみにしていた都民の皆様の声を支えに、アスリートファーストならマラソン、競歩は東京でと街頭で訴えてまいりました。
さらに、メディアにも訴え、十二月四日にローザンヌで開催されたIOC理事会に対しても、東京開催を再度求める要望書を届けたところです。
残念ながら、私たちの声はIOCを変えるには至りませんでした。東京二〇二〇大会を成功に導いていくためには、等身大のIOCの姿の理解、組織委員会と開催都市東京都との連携が不可欠です。
複数の新聞記事によると、十月十七日の時点で、IOCのバッハ会長は、IOC理事会と大会組織委員会は札幌市に移すことに決めたと、既に二者間では札幌開催で合意に達したとの認識を示したと報道されています。つまり、バッハ会長によれば、組織委員会は十月十七日より以前に札幌移転を決定していたということになります。そこで、組織委員会の誰が、またはどのようなプロセスを経てこのような決定をしたのかが問題になります。
組織委員会は公益財団法人であり、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の適用があります。財団法人は、重要な意思決定については理事会や評議員会が行う仕組みになっており、代表理事である会長が単独で意思決定できません。
この法律の第九十条、理事会の権限、第四項は、理事会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を理事に委任することができないと規定しています。開催都市契約に定めのないオリンピック競技の札幌移転は、重要な業務執行規定に当たるのではないでしょうか。
十月十七日以前に、また、それ以後にも札幌移転についての組織委員会の理事会は開催されていないとのことです。加えて、札幌移転の連絡は、IOC幹部から組織委員会幹部の森喜朗会長に連絡があったとオリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会では答弁がありました。
重要事項にもかかわらず、組織委員会の理事会が開催されていない理由をお伺いします。また、誰が理事会を開催しないと意思決定をしたのか伺います。
以上で私の一般質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 藤井あきら議員の一般質問にお答えいたします。
私は、気候変動に関する国際連携についてお答えをいたします。
世界におきましては、巨大なハリケーンや熱波などの極端な気候現象が増加をしており、気候変動による影響は甚大さを増しているところであります。
こうした地球規模の課題の解決に向けましては、世界の人口の半数以上が居住する都市が力を合わせて行動することが重要であります。
このため、都はこれまで、C40サミットやCOPの場などにおきまして、世界初の都市型キャップ・アンド・トレード制度など、都の先駆的な対策を発信しております。
本年五月、U20メイヤーズ・サミットにおきましては、世界の大都市の責務といたしまして、二〇五〇年に世界のCO2排出実質ゼロに貢献するゼロエミッション東京を目指すことを宣言するとともに、今月末には、ゼロエミッション東京戦略を取りまとめ、気候変動の危機に立ち向かうための具体的な取り組みとロードマップを明らかにする所存であります。
今後、C40やアジアの諸都市とのネットワークを活用するなど、さまざまな機会を捉えまして都の取り組みを発信するとともに、世界の都市との連携をより一層図りながら、気候変動対策に積極的に貢献してまいります。
残余のご質問は、副知事、東京都技監及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔副知事宮坂学君登壇〕
○副知事(宮坂学君) ソサエティー五・〇の実現でございますが、それは道なき道を行くような挑戦であり、この実現のためにはイノベーションが鍵となります。イノベーションとは、さまざまな異なる知の組み合わせであります。
大企業、スタートアップ、大学、研究者といったさまざまな種類の知が世界有数の規模で集積していることが、東京の大いなる強みであります。
この組み合わせを生かし、さまざまなデータを連携、集約する官民データプラットホームの構築や、数多くの交通事業者と連携するMaaSなど、社会実装に当たっては、産官学でチームを組み、これまでにないイノベーティブなサービスの提供に挑戦してまいります。
こうした挑戦に当たっては、世界に視野を向けて先行事例を調査研究し、仮説と検証を繰り返すことによりサービスの改善を図っていきます。
また、社会実装の実現には、幅広い都民の理解を得ることが不可欠です。そのため、実証実験による効果や意義について発信するとともに、テクノロジーについてわかりやすく解説するなど、丁寧な説明を重ねることにより、合意形成に努めてまいります。
私は、東京を、イノベーションを起こしたい、デジタルテクノロジーで都市をよりよくしたいと、そういう志を持った挑戦者、スタートアップが世界中から集まるまちにしたいと思っております。
そのためには、社会実装の取り組みを、スピード感を持ち、都庁一丸となって進めることが何より重要であります。民間で培ってきた知見を生かし、ソサエティー五・〇社会の早期実現に向け、全力で貢献していきたいと考えております。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕
○東京都技監(佐藤伸朗君) 都の踏切対策に関する取り組みについてのご質問にお答えいたします。
都は、踏切対策基本方針に基づきまして、重点的かつ計画的に対策に取り組んでおります。
その中で、重点的に対策を実施、検討すべき踏切を位置づけており、踏切事故が発生した東府中二号踏切もその一つでございます。
当該踏切においては、これまでも幾度か事故が発生しており、鉄道事業者と連携して、道路のカラー舗装化や障害物検知装置の設置などの対策を実施してきたところでございます。
今回の事故も踏まえ、鉄道事業者や地元区市などの関係者と連携しながら、都内の重点踏切における対策の充実を図ってまいります。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕
○総務局長(遠藤雅彦君) 都庁舎におけるデジタル化の取り組みについてでございますが、都政のデジタル化を進めるに当たって、多くの方が訪れる都庁舎で、都民や事業者の方々にその効果を実感していただくことは重要でございます。
現在、都庁では、セキュリティーの確保を図るため、入庁に当たりまして、受付で氏名などの記入を求めておりますが、年度末までにオンラインによる事前登録を開始するとともに、来庁されてから申請する方についても、タブレット端末による入力とすることで、手続のデジタル化、ペーパーレス化を実現し、手続時間の短縮などを図ってまいります。
さらに、庁内の巡回警備についても、ロボット技術の活用の可能性について検討を進めてまいります。
こうした取り組みを通じて、来庁者の利便性向上や庁内警備の効率化を図り、都庁のデジタルシフトを進めてまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕
○産業労働局長(村松明典君) スタートアップの知見の有効活用についてですが、都政が抱えるさまざまな課題の解決に向けて、民間から新たに生まれた画期的な製品やサービスを効果的に活用していくことは重要でございます。
そのため、都は、都政課題を解決するための新たな手法といたしまして、今月、観光振興をテーマに、VRや5G等の最先端技術を生み出しているスタートアップを公募し、ピッチコンテストを開催いたします。このコンテストにより、都とスタートアップとの協働による施策の充実、革新的な製品やサービスの創出が期待できるものと考えております。
今後、行政課題のテーマごとに、こうした取り組みを積み重ね、都政課題の解決とともに、スタートアップの成長を支援してまいります。
〔戦略政策情報推進本部長松下隆弘君登壇〕
○戦略政策情報推進本部長(松下隆弘君) 先端事業普及モデル創出事業、いわゆるキングサーモンプロジェクトでございますが、この事業におきましてスタートアップ企業の大きな成長と都政課題解決の両立を図っていくためには、ご指摘のとおり、キングサーモンプロジェクト終了後も、都が継続してスタートアップ企業の技術やサービスを活用できる仕組みが必要でございます。
そこで、本プロジェクトで実施する実証実験の結果を検証し、有用と認められたものについては、地方自治法に基づきまして、いわゆる新商品の生産等により新たな事業分野の開拓を図る者、これについて認められます随意契約の規定を適用して調達できないか、こういったことを検討しているところでございます。
さらに、この事業の成果を国や他の自治体にも広く発信し、水平展開することで、有望なスタートアップ企業の大きな成長と、さまざまな社会課題の解決につなげていきたいと考えております。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕
○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) マラソン、競歩の札幌市への移転についてでありますが、組織委員会によりますと、今回の決定はIOC側からの提案によるものであり、これについて、十月三十日から開催されるIOCの調整委員会の場で協議するとしていたとのことでございます。
その後、十一月一日にIOC、東京都、組織委員会、政府の代表によります四者協議を実施した結果、都としては合意なき決定ではございますけれども、最終的にマラソン、競歩の開催地は札幌市に変更することとなりました。
なお、組織委員会では、四者協議の内容について、同日、速やかに理事等に報告しているとのことでございます。
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