令和元年東京都議会会議録第二十号

○議長(石川良一君) 四十一番本橋ひろたか君。
〔四十一番本橋ひろたか君登壇〕

○四十一番(本橋ひろたか君) まずは、首都大学東京について、学生ないし受験生の確保について伺います。
 日本は、二〇六五年には総人口八千九百万人、中でもゼロ歳から十四歳までの人口は九百万人を割り込むとの推計が出されております。
 先ごろの新聞発表では、二〇一九年中の出生数は九十万人を割り込むことが確実とのことで、日本全体がいまだに縮小傾向にあります。
 また、小学校から高校に至るまで、全国至るところで学校や校舎の統廃合などの動きが見受けられます。少子化のあおり、あるいは学校施設の更新需要の増大化のあおりを受けてのことと見ていますが、いずれ都でも、大がかりな学校の統廃合が課題になると考えます。
 都の人口は、当分の間大きく減ずる見込みはないと思われますし、地方で起きていることが直ちに東京で起こる必然もありません。しかしながら、日本全国では子供の数が減り、大学入学者の奪い合いが起こっていることも事実であります。
 また、日本の大学ランキング上位校の多くが、受験会場を国内にくまなく設置して、受験生や保護者の負担を軽減したり、アスリート選抜試験やAO入試などを実施したりと、さまざまな創意工夫をして受験者数をふやしております。
 こうした環境において、今後、大学間競争に勝ち抜き、都立大学がどのように学生を確保していくのか、また、どのように受験生をふやしていくのか、都の見解を伺います。
 次に、外国人留学生について伺います。
 日本では、中国やベトナム、ネパール、韓国、その他アジアからの学生を中心に、留学生は約三十万人以上に上ります。東京でも多くの留学生が勉強しており、そのほとんどが私費留学生であり、日本の大学や大学院での学位取得を目指しています。将来、日本企業や母国の日系企業での就職を目指している方も多いと思われます。
 私はかつて、多文化共生推進の観点から日本語教育の重要性を訴え、小中学校における外国籍児童への日本語教育のあり方について一般質問しましたが、新都立大学も外国人に門戸を開き、留学生のための日本語教育に力を注ぐべきであります。
 日本語能力の高い、人格、識見にすぐれた外国人学生を選抜していくことが、新都立大学の多様性をふやし、活発な研究活動と研究成果の向上に大きく寄与すると考えます。
 そこで、今後、都立大学は、留学生の日本語学習需要にしっかりと応えるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、本年十月一日現在、大学には、大学院、学部を含め六百六十一人が在籍していると聞いています。
 新都立大学への進学を目指す外国人、あるいは現に大学に在籍する外国人が、これまでのように特定の国籍に偏ることなく、より多国籍の学生で構成されることが国際交流につながり、かつ新都立大学の多様性をふやすことにもなります。
 例えば、各国の高等教育機関と提携し、そこに新都立大への留学案内窓口を設けたり、また、日本での生活に早くなじんでもらったり、経済的負担を減らすために、新都立大学内に外国人留学生寮を建てたり、あるいは借り上げたりするなどの工夫が必要かと考えます。
 そこで、留学生の内訳をバランスのとれた多国籍にするためにどのように取り組んでいくのか、都の見解を伺います。
 次に、研究力の向上に向けた取り組みについて伺います。
 ことし八月発表の未来の東京への論点には、都民生活に広く最先端技術が浸透し、世界で最も便利で生活満足度の高い都市など、二〇四〇年代を想定した目指すべき未来の東京の姿が野心的に示されております。
 これらの高い目標の実現には、都のさらなるレベルアップはもちろんのこと、最先端技術ということでは、民間企業との協働に加えて、研究機関でもある都立大学のさらなる貢献が不可欠となります。
 そのためには、今まで培ってきた都立大学の研究力をより一層高めて、世界水準の大学へと進化させなくてはなりません。
 海外の大学などに目を向ければ、潤沢な研究費や報酬を用意してトップクラスの研究者を招聘したり、若手研究者を育成する環境を整えるなど、研究力向上に大いに取り組んでおります。
 折しも、知事が掲げられたTOKYO Data Highway基本戦略では、都立大学に5G環境を整備し、大学をアップデートするともあり、このような機会も積極的に捉え、しっかりと環境を整えていく必要があります。
 都立大学が研究の分野で世界最高峰を目指すためには、これまで以上に研究環境の充実に取り組むべきであります。
 そこで、民間企業からの資金集めやトップクラスの研究者を国内外から招くこと、さらには研究者を支える事務方を充実するなど、都立大学が東京の公立大学法人であることを最大限活用し、研究環境の充実に取り組むべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、学校改革について伺います。
 教員の働き方改革は、都内区市町村で昨年、ことしと、それぞれの自治体で検討され、改革案の実施に着手がなされています。
 教員の世界が多忙とか、ブラックといわれているようでは、かわいい我が子を学校に預けるわけにはいきません。神戸市の教員間におけるいじめ問題は、教員の世界で何かが変わり始めていることの証左ではないかとも考えられます。教員の働き方を変え、子供とともに教員も大切に育てていく環境を整備していくことが今求められております。
 働き方改革に関連して、昨年、私は、学校事務の実態を調査し、東京都教育庁が有する学校事務の人事権などを移譲すべきである旨の一般質問をし、教育長からは、小中学校における働き方改革の進捗状況を調査する中で、学校事務の状況などについても把握する、並びに人事権について引き続き慎重に検討していくとの答弁をいただいております。
 都区間で、学校教育を充実させていくことに争いはありません。発達障害の子供さんへの対応、給食費など私費会計の公会計化や放課後対策事業の学校での展開など、区市の職員と教職員が連携を深めなければ前進しない事柄はふえる一方であります。
 このような大事なときだからこそ、学校における事務方、ロジスティクスとしての事務職が宙に浮いてしまうことのないようにすることが極めて肝要です。
 そこで、その後の進捗はいかがでしょうか。改めて教育長の見解をお聞きします。
 次に、不燃化特区のあり方と今後の防災まちづくりについて伺います。
 都として忘れてはならないことに、今後三十年間の発生確率は七〇%といわれて、既に数年を経過している首都直下地震があります。
 地震による被害を最小限に食いとめるためには、事前防災として建築物の耐震化の推進と火災対策が重要であると内閣府のホームページにも記載されております。
 都が平成二十四年に策定した木密地域不燃化十年プロジェクトにおいて、特に力を入れて都と区が連携して取り組んでいる不燃化特区は、一定の成果を示していると認識していますが、その一方、このプロジェクトの今後の展開を早く地域に示して、関係者を安心させてほしかったところであります。
 そこで、改めて、このプロジェクトの意義と目的、また、現在に至る経過とその評価について都の見解をお聞きします。
 木密地域の不燃化を推進していくためには、不燃化特区制度のような都と区が一体となった取り組みを地域の実情に応じて展開していくことが重要です。
 また、それぞれの地域には、建てかえ意欲が低下していたり、希望に合う住みかえが難しい高齢者もおられます。
 令和二年度にこのプロジェクトの最終年を迎える中、現在都では、防災都市づくり推進計画の改定に向けて検討を進めていると聞いております。
 今後、東京区部の面積の約一割を占める整備地域の不燃化をさらに推進し、地震に強く、安心して住み続けられる首都東京を構築していくためには、住みかえが困難な高齢者への対応など、地域が抱える課題を踏まえ、新たな計画のもと、より一層の取り組みを展開していくべきです。都の見解を伺います。
 次に、プロジェクションマッピングに係る屋外広告物規制の見直しについて伺います。
 建物の外壁を巨大なスクリーンに見立て、映像を立体的に投影するプロジェクションマッピングは、高度な技術を駆使した新たな演出手法として注目されており、近年、各地で活用が拡大しております。特に東京二〇二〇大会に向け、活用ニーズはますます高まっています。
 国際競争の中で、首都東京の魅力をさらに高めるためにも、プロジェクションマッピングに取り組みやすい環境整備を進めるべきと考えますし、都は現在、プロジェクションマッピングに係る屋外広告物規制の見直しを検討中であり、先般、見直し案が公表されたところです。
 そこで、今回の見直しの目的と見直し案の主な内容について、都の見解を伺います。
 最後に、選択的介護について伺います。
 平成二十九年の国家戦略特別区域会議で、知事は、選択的介護モデル事業の実施を提案され、都は、この提案に手を挙げた豊島区とともに検討を進めました。
 そして、これまで不明瞭だった介護保険サービスと保険外サービスの提供方法について整理をし、モデル事業の実施にめどをつけたことは、介護サービスをより使いやすくし、利用者の利便性や事業者の運営効率の向上につながったと大変評価されております。
 モデル事業は、平成三十年度からスタートし、このたびの令和元年モデル事業には、デイサービスの場を利用した健康療養支援について、介護サービス事業者と薬局が共同提案するもの、IoT等を活用した在宅高齢者の支援について、ケアマネジャーがデータを活用して、よりよいケアプランをつくれないかチャレンジするもの、通所介護に来ている方の自宅での生活状況を把握するものなど、大変興味深い提案があったようであります。
 提案については、十月に行われた第九回選択的介護モデル事業に関する有識者会議でも高く評価されたと聞いております。
 一つ目は、高齢者のお薬の課題、多剤投与、残薬チェックなどの解決に可能性がある。二つ目は、IoT等の活用で生活データを可視化できれば、ケアマネジャーの業務や今後の高齢者の生活支援にさまざまな活用が期待され、非常に有用であるというものであります。
 介護保険サービスだけで高齢者の生活を支えるのは難しく、単身高齢者の多い都区にとって、このモデル事業の展開は大変有意義であると改めて認識されたと考えられます。
 新しい提案は、いずれも十二月から、現段階では規制緩和の必要のない範囲にとどめて実施し、その効果を踏まえて、規制緩和を必要とする部分について国家戦略特別区域会議への提案を検討されるとのことで、今後の展開が期待されます。
 そこで、今後の事業拡大に向けて、都と区の連携をなお一層深めつつ、積極的に事業を推進していくとともに、これまで先駆的に努力してきた豊島区やサービス提供事業者がモデル事業で取り組んできた成果を、広く他の自治体にも普及すべきと考えますが、知事の見解をお聞きし、私の一般質問を終わります。
 ご清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 本橋ひろたか議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、首都大学東京の研究環境の充実についてでございます。
 本格的な人口減少、少子高齢社会の到来や、第四次産業革命への対応のおくれなど、我が国を取り巻く厳しい環境の中でも、東京を持続的に発展させていかなければなりません。
 そのためには、行政のみならず、民間の発想力や大学の研究力を生かしていくことは重要で、とりわけ都立の大学であります首都大学東京がその一翼を担っていく必要がございます。
 このため、本年八月に発表いたしました未来の東京への論点におきまして、世界最高峰の大学へと進化させるとした上で、ノーベル賞クラスの研究の推進など、首都大学東京が、複雑、困難化する都政課題の解決に、より一層貢献することを明らかにしたところでございます。
 今後、世界水準の研究者の確保、育成や、そうした研究者を支援する専門スタッフを配置するとともに、5G環境を活用した先端研究や社会実装を見据えた民間等との共同研究の推進などによりまして、大学の研究力をさらに高い水準に引き上げてまいりたいと考えております。
 新生東京都立大学が、戦略的シンクタンクとして未来の東京の成長を支えられますよう、運営、財政の両面から大学の取り組みを強力に支援をしてまいります。
 次に、選択的介護モデル事業についてのご質問でございます。
 介護保険サービスと保険外サービスを柔軟に組み合わせた選択的介護でございます。利用者の利便性や介護事業者の運営効率の向上に資することが期待できます。
 こうしたことから、都は、豊島区と共同いたしまして、昨年八月から選択的介護モデル事業を開始いたしております。
 この事業におきましては、介護保険サービスの訪問介護に、利用者のペットの世話や外出への付き添い、ICT機器を活用した見守りなどの保険外サービスを組み合わせて実施をしております。その中で、利用者が精神的に安定した、独居高齢者の外出回数がふえた、ご家族が安心して生活できるなど、さまざまな効果が確認をされております。
 今年度は、新たに通所介護と保険外サービスを組み合わせたサービスなどを開始することといたしております。
 今後、こうした取り組みが他の自治体にも広がりますよう、モデル事業で得られた成果を広く紹介してまいります。
 残余のご質問につきましては、教育長、東京都技監及び総務局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 小中学校における学校事務の状況についてでございますが、これまで都教育委員会は、県費負担教職員制度のもと、区市町村教育委員会に対して、小中学校の事務職員の分掌範囲の基準を示してまいりました。
 平成三十年には、学校における働き方改革の観点から、学校事務職員のより一層の能力活用を目的に、事務職員の標準的職務を改めて示し、具体的な職務範囲の見直しを区市町村教育委員会に依頼をいたしました。
 現在、見直し済みまたは検討中の区市町村は全体の約六割に達しており、引き続き、状況について適切な把握に努めてまいります。
 また、学校事務職員の人事権につきましては、給与負担のあり方や、区市町村間の均衡の維持等の課題があること、区市町村によっても意向が分かれていることなどから、引き続き慎重に検討してまいります。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、不燃化特区についてでございますが、都は、東日本大震災の発生を踏まえ、木造住宅密集地域の改善を一段と加速させるため、平成二十五年度から、重点的、集中的に改善を図るべき地区について、老朽建築物の建てかえや除却への助成、固定資産税等の減免などの特別な支援を行う不燃化特区の取り組みを開始いたしました。
 その後も、各地区の取り組みを進める区の意見や住民の声なども踏まえながら制度を拡充し、不燃化を進めてまいりました。
 こうした取り組みにより、不燃化特区制度による助成実績も年々ふえ、平成二十九年度末の整備地域の不燃領域率は推定値で六二・五%となり、平成二十三年度からの六年間で四・一ポイント上昇するなど、不燃化が加速してきております。
 次に、防災都市づくりの一層の推進についてでございますが、都は現在、不燃化の施策をより効果的に展開できるよう、防災都市づくり推進計画の改定に向けた検討を進めております。
 具体的な方策としては、例えば、高齢者や借家人などのニーズに応じた円滑な住みかえに向け、移転費用に対する助成制度の活用や、移転先となる都営住宅などへのあっせん、都有地での民間活用による魅力的な移転先の整備などの取り組みのさらなる展開について検討しております。
 年明けには、計画の基本的な考え方の案を示し、それを踏まえて、来年度に、整備地域の状況に応じた整備プログラムを取りまとめてまいります。
 今後とも、不燃化の推進に向けて、地元区や関係者と連携しながら効果的な取り組みを展開してまいります。
 最後に、屋外広告物規制の見直しについてでございますが、プロジェクションマッピングについては、近年、まちの活性化やにぎわいの創出等のために、公益イベントで活用する取り組みが広がっております。
 こうした状況を踏まえ、観光資源としての活用などを図りながら、東京の魅力向上につなげていくため、今般、条例を見直すことといたしました。
 見直し案の主な内容については、まず、公益イベントで活用しやすくなる観点から、企業広告の取り扱いを含め、手続の簡素化や表示面積等の緩和を行います。
 また、まちの活性化のため活用が望ましい地区では、地域特性に応じて定めたルールに基づき、柔軟に実施できるようにいたします。
 こうした見直しにより、景観や安全性にも配慮しながら、光の投影により東京に彩りを添えるプロジェクションマッピングの促進を図ってまいります。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 三点のご質問についてお答えいたします。
 まず、首都大学東京の学生等の確保についてでございますが、十八歳人口が減少する中、意欲ある優秀な学生や受験生を確保するためには、大学の強みや特色を磨くとともに、入学者選抜に創意工夫を凝らすことが重要でございます。
 首都大学東京ではこれまでも、学生と教員の互いの顔が見える少人数教育など、特色ある教育プログラムを推進するとともに、新たな教育研究ニーズに対応した施設の整備など、キャンパスの魅力向上に取り組んでおります。
 また、首都大学東京が実施する高校生向けゼミナールの修了生を対象とした入試を実施するなど、学力試験中心の一般選抜のほかに、多様な手法による選抜も実施しているところでございます。
 今後、大学において、教育研究力を一層強化するとともに、さまざまな能力や資質を持つ学生を選抜する入試を拡充することとしており、都としても、これをしっかりと支援してまいります。
 次に、首都大学東京における留学生の日本語学習需要への対応についてでございますが、大学における教育、研究及びキャンパスの国際化を進めるためには、日本人学生と留学生が同じ言語で議論できる語学力を養うための環境整備が重要でございます。
 そのため、首都大学東京では、留学生の語学レベルに応じた日本語授業や、日本事情等を教える短期集中コースを開講するなど、日本語や日本文化に関する学修環境の整備に取り組んでおります。
 加えて、日本語によるレポートや論文作成のための個別指導を実施するなど、きめ細かな支援も行っております。
 今後、より多くの留学生が日本に対する理解を深め、卒業後に日本や日系企業などでキャリアを築けるよう、首都大学東京における日本語教育のさらなる充実を支援してまいります。
 最後に、首都大学東京における留学生についてでございますが、大学のグローバル化を推進するためには、国籍や文化など多様な背景を持つ学生がともに学び、高め合うことが不可欠であり、さまざまな地域から留学生を受け入れていくことが重要でございます。
 首都大学東京ではこれまでも、二十七の国や地域の大学と学生交換に関する協定を結ぶとともに、留学生用宿舎の提供や宿舎で共同生活するアシスタントの配置を行うなど、留学生の受け入れや支援に取り組んでまいりました。
 今後は、留学に当たっての課題やニーズを丁寧に分析した上で、重点的に強化すべき地域等を定めるとともに、留学先としての認知度向上に向け、戦略的にプロモーションを行うことで、首都大学東京において、より多くの地域からの留学生の受け入れに努めてまいります。

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