令和元年東京都議会会議録第二十号

   午後三時四十分開議

○議長(石川良一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十五番栗下善行君。
〔四十五番栗下善行君登壇〕

○四十五番(栗下善行君) 初めに、環境政策について質問します。
 今の努力では不十分だ、まさに今スペインで開かれているCOP25で、現在のCO2削減目標では、達成したとしても大幅な気温上昇は避けられない、世界は危機的な状況にあると国連事務総長は述べました。にもかかわらず、我が国では、翌日、梶山経産大臣より、石炭火力発電も選択肢として残していきたいとコメントされ、COP25の会場で、地球温暖化対策に消極的な国を選ぶ不名誉な賞、化石賞を日本が受賞することとなってしまいました。G7の中で石炭火力発電所を新設しようとしているのは日本だけです。
 世界のスピードについていけない国の環境対策をリードするためにも、都は、二〇五〇年までにCO2排出量実質ゼロを目指すゼロエミッション東京宣言を打ち出し、戦略の策定を進めております。国を上回る高い目標を目指し、牽引をしていくことは、日本の未来をも変え得る極めて重要な首都東京の使命だと考えます。
 そこでまず、我が国でも最先端を行く新築建築物の環境配慮の促進について伺います。
 建築物は、一度建てられれば数十年にわたり使用されることから、建てる際に、設計段階から着実に環境配慮を進めていくことが必要です。
 そこで都は、大規模な建築物を建てる際に、建築主に、エネルギー使用の合理化等について環境配慮を促すとともに、その取り組みを計画書にまとめ提出をさせ、内容を公表する建築物環境計画書制度を運用しております。
 この計画書の提出義務対象を、延べ床面積五千平方メートル超から二千平方メートル以上に拡大するため、さきの第一回定例会において、環境確保条例を改正しました。
 いよいよ来年の四月から実施することとしていますが、今回の改正を契機に、建築主や都民が環境配慮を行うためのインセンティブを与える工夫をさらに進めていくべきと考えます。見解を伺います。
 我々が毎日食べる食料の生産と廃棄にも大きな環境負荷がかかっています。国では、食品ロス対策として、消費者の意識啓発や三分の一ルールなどの商習慣の見直しなど、サプライチェーンの下流段階に対してのアプローチは取り組みが進められていますが、産地や市場流通過程など、上流段階における食品廃棄については対策がおくれています。
 先日、地元の大田市場においても、まだ食べられるたくさんの野菜や果物について、処分費用を払いながら廃棄しているというお話を伺ってまいりました。特に昨年の白菜のように、豊作でたくさん市場に集まると、店で売り出されるのと同じ野菜がそのまま大量に廃棄されるということも珍しくないそうです。
 現状においては捨てられているこれらの野菜をドライ加工して、新たなビジネスに結びつけようという意欲を持つ企業もあります。市場流通における食品ロスの削減に向けて、新たな取り組みを行おうとする市場業者へ後押しを行っていくべきと考えます。見解を伺います。
 もう一つ、国においてまだ未着手の大きな無駄があります。それは、私たちが一日たりとも着ないことのない、衣服の廃棄です。
 昨年、イギリスの高級ブランド、バーバリーが、売れ残った衣料品やアクセサリーなど四十二億円分を破壊処分していたことが問題となりました。また、大手ファッションブランドのH&Mも、毎年十二トンにも上る衣類を焼却処分しているとの報道がありました。商品の値崩れを防ぐために、安く売るよりも廃棄した方がよいという考えがアパレル業界で根強く残っています。
 日本でも、年間に市場へ投入されるアパレル二十八億点のうち、実に約半数の十四億点が売れ残っているといわれています。また、ファストファッションが一般的になったことで商品の入れかわるサイクルは早まり、余剰在庫の数は尻上がりにふえているそうです。
 在庫の一部は再販されたりしますが、それでも一説によれば、十億点もの衣料品が新品のまま廃棄されているという実態も近年明らかになってきました。一説によればと申し上げたのは、アパレル企業にとって廃棄方法は重大な機密であり、国においても、新品衣料や売れ残りの廃棄について、まだ調査すら行っていないからであります。
 しかし、余剰分の衣料品製造や廃棄による環境負荷は膨大であり、いずれ必ず対策が求められます。アパレル最大の消費地である東京から国を目覚めさせていくために、意識啓発などの取り組みや国への働きかけを行っていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、台風十九号に関連して質問します。
 都は先日、台風十九号などによる風水害を受けて、新たに取り組む防災対策をまとめました。その中で、鉄道の計画運休に備えた出勤のあり方について会議体を設置することを決めましたが、企業などが緊急時に安全を最優先した判断を迅速に下せるようにすることは重要です。
 台風十九号が接近した際、都は計画運休に合わせ、直撃の二日前である十月十日から行事の中止や都有施設などの閉館、閉園を発表、企業への出勤抑制を促し、都民にも不要不急の外出を控えるよう求めるなど、小池知事も先頭に立って情報発信に取り組んできました。
 しかし一方で、都所有の施設でイベント等の開催を予定していた一部の企業、団体では、難しい決断を迫られたといいます。
 都が所有する東京国際フォーラムや東京ビッグサイトでは、台風十九号で開催の予定のイベント等が中止になった際にも、会場費を全額支払わなくてはならなかったためです。実際に、とある中小企業は、中止でも会場費約二千万円が生じるため、台風の進路が変わる可能性はないのか、中止の決定を逡巡されたそうです。
 台風が直撃をした十二日は、結果的に両施設における全てのイベントが中止となりましたが、ぎりぎりまで推移を見守ろうという動きもありました。とある団体は東京都からの要請を受け、十二日当日の午前九時に中止を決定したとのことです。
 都が所有をする東京文化会館などの文化施設、武道館などのスポーツ施設の全てにおいて、台風十九号で貸し出しが中止になった場合には会場費を全額返還しています。
 また、基礎自治体や民間が運営するホールなどについても、調査を行った中では、返還や振りかえを行っているところがそのほとんどでありました。
 国際フォーラムやビッグサイトの管理運営が政策連携団体に委ねられていることは承知しております。しかし、公の使命も担うこれらの会場においても、安全を最優先させるとともに、中小企業への配慮を行っていくべきではないでしょうか。
 実際に、両施設において、東日本大震災の後は、数週間以上にわたって返還や振りかえの対応をした記録が残っております。
 国際フォーラムやビッグサイトに関し、計画運休が行われた際などに主催者が安全を最優先した決定を迅速に行えるよう、管理運営者として、自然災害が頻発をする近年の状況を踏まえた対応を検討するよう、都として促していくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、都営住宅における移動販売について質問します。
 世界に例を見ないスピードで高齢化が進む東京において、高齢者、とりわけひとり暮らしのお年寄りでも買い物しやすい環境をつくっていくことは大切です。体力の低下をした高齢者の方にとって、買い物は大変な作業です。地元大田区においても、買い物帰りのお年寄りがキャリーケースを重たそうに引きずりながら、本当にゆっくりとおうちに向かっている光景をよく目にいたします。
 都でも、この課題を既に認識し、都営住宅における移動販売をサポートする体制を整え、五つの区市で昨年から実施をされています。
 私も五つの区市を全て回って現状を見てまいりましたが、(パネルを示す)このような移動販売車を団地の一角に停車をいたしまして、週に何回かお店を開きます。特に、魚屋さんや八百屋さんにはお年寄りの方々が大勢集い、最近見なかったじゃないのなどと、スーパーでは見られないような、おしゃべりをしながら買い物を楽しんでいる姿がありました。また、障害をお持ちで外出が困難な方々にも利用されている様子も見ることができました。
 利便性向上だけではなく、高齢者の社会的孤立への対処や障害者支援でも効果を上げているこの取り組みを、ぜひとも地元大田区を初め、さらに多くの地域に広めていくべきです。
 現在、五区市において行われている都営住宅での移動販売について、今後、より多くの地域に広がるように、区市町により積極的に働きかけるとともに、事業を周知していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、事業者からのお話を伺う中で、販売場所をふやしたい、営業日時の周知をさらに行いたいなど、都からも応援すべき課題があるということもわかりました。
 より多くの必要とする住民の方々に使っていただくために、都は、地元自治体と連携をさらに深め、事業者から地元区市町に事業の実施や運営に関する相談が寄せられた場合、課題解決を支援できるようにしていくべきと考えます。見解を伺います。
 最後に、新空港線蒲蒲線について質問します。
 新空港線は、東急東横線、東京メトロ副都心線などとの相互直通運転を行うことで、渋谷、新宿、池袋といった副都心と羽田空港のアクセスを強化する路線であり、国の百九十八号答申においても、国際競争力の強化に資するプロジェクトとして位置づけられ、都にとっても重要な路線であります。
 新空港線はこれまで、地元大田区が中心となって検討が進められてきました。区は、計画者間の合意が図られた後、速やかに整備主体を設立できるよう、平成二十九年度予算より予算を計上し、積極的に取り組んでいるところです。
 また、大田区議会では、本年の第三定例会において、新空港線整備に対する都の財政的支援などを求める意見書が議決をされ、去る十一月十四日、都に対して提出をされました。
 私もそこに同席をしましたが、区議会からは、新空港線は三十年以上の長きにわたって議論を重ねてきた路線、機能更新の時期を迎えた蒲田のまちの再編と新空港線を一体として進めていくことが必要不可欠などのご発言があり、整備に向けた地元の熱意や機運は大きく高まっていると改めて実感をいたしました。一日も早く整備着手に向けた具体的な取り組みを開始するべきであります。
 そこで、新空港線の矢口渡駅から京急蒲田駅間について、現在の取り組み状況と今後の見通しについて答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 栗下善行議員の一般質問にお答えいたします。
 持続可能な資源の利用についてのお尋ねがございました。
 持続可能な資源利用の実現には、廃棄物の発生抑制を着実に推進するとともに、もったいないの精神のもと、製品等の製造や流通段階から発生する資源のロスを削減していくことが重要であります。
 多くの資源を大量に消費する東京におきましては、そうした資源のロスを削減し、使い捨て型の大量消費社会から持続可能な資源利用への大胆な移行に取り組む責務がございます。
 都は、使い捨て型のライフスタイルの見直しに向けまして、チームもったいないの参加事業者等とともに連携をいたしまして、大規模イベント等でキャンペーンを展開するなど、広く社会の理解と共感を得るために、継続的に機運の醸成に努めているところでございます。
 持続可能な資源の利用に向けましては、衣料品に関する3Rの推進も重要でありまして、都はこれまで、宅配や定置型ボックスにより広く寄附を募り、衣料品をリユースするモデル事業を実施するなど、事業者とも連携した取り組みを進めてまいりました。
 衣料品を初めとする資源のサプライチェーン全体におけるロスの削減に向けまして、事業者や業界団体等との連携を一層強化し、継続的に情報発信や意識啓発に努めまして、事業者等の創意工夫ある取り組みを促してまいります。
 あわせまして、国や九都県市とも協調を図りながら、循環型社会の確立に率先して取り組んでまいります。
 余談でございますが、本日のジャケットは三十年物でございます。
 なお、その他のご質問につきましては、東京都技監、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 新空港線の整備についてでございますが、矢口渡駅から京急蒲田駅の区間は、国の答申において、東急東横線などとの相互直通運転を通じて、国際競争力強化の拠点である新宿等や東京都北西部、埼玉県南西部と羽田空港とのアクセス利便性が向上するとの効果が示されております。
 一方、関係地方公共団体、鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべきとの課題が示されております。
 このため、大田区や鉄道事業者など関係者と連携いたしまして、事業費の精査や採算性などの課題について検討を行ってまいりました。
 大田区が想定している都市鉄道利便増進事業を活用した場合の費用負担のあり方などの課題について、関係者との協議、調整をさらに進めてまいります。
〔環境局長吉村憲彦君登壇〕

○環境局長(吉村憲彦君) 新築建築物の環境配慮の促進についてでございますが、新築大規模建築物に断熱性向上等の環境配慮を促すことは、省エネなど環境負荷低減のために重要でございます。
 今回の建築物環境計画書制度の改正では、制度の対象となる建築物の範囲を拡大するとともに、新たに再エネ電気の受け入れについて検討を求め、その取り組みの評価を行います。
 さらに、電気自動車等の普及促進を図るため、充電器の設置状況についても、新規の評価項目といたします。
 これらに加え、建築物ごとに再エネの設備導入量や充電器の設置の有無などを、都民や不動産市場の関係者などが一目で理解できるように公表の仕方を工夫することで、建築主のさらなる環境配慮につなげてまいります。
 今後、こうした取り組みにより、建築物の環境性能の向上を促してまいります。
〔中央卸売市場長黒沼靖君登壇〕

○中央卸売市場長(黒沼靖君) 食品ロス削減に係る市場業者の取り組みについてでございますが、生鮮食料品流通の中間に位置する中央卸売市場におきまして、市場業者が食品ロス削減など環境に配慮した取り組みを進めることは、卸売市場の公共的役割を果たしていく上でも重要と考えております。
 今年度から、都は、意欲ある市場業者の先駆的な取り組みを通じて、卸売市場の活性化を図る事業を実施しております。
 この事業では、規格外等の理由により廃棄されている農産物を有効活用し、新たな需要を喚起することで、卸売市場を経由する商流と安定供給の実現を目指す市場業者の取り組みを支援しております。
 こうした環境に配慮し、卸売市場の活性化につながる創意工夫を凝らした市場業者の取り組みをより一層後押ししてまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 大規模施設での計画運休時の対応についてですが、大規模な災害発生時には、イベント等の主催者が、参加者の安全を優先しつつイベント実施の可否の判断を行うこととなっております。
 また、各施設の管理運営者は、災害時に主催者がイベント中止等の決定をより迅速に判断できますよう、災害に関するさまざまな情報を的確かつ迅速に主催者へ提供していく必要がございます。
 都といたしましても、施設の管理運営者が時々の状況に応じた適切な対応がとれますよう、気象状況や計画運休といった交通状況も踏まえた都の対応方針を随時共有するなど、必要な対応を行ってまいります。
〔住宅政策本部長榎本雅人君登壇〕

○住宅政策本部長(榎本雅人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営住宅における移動販売についてでございますが、移動販売は、居住者の日常生活の利便性向上や地域コミュニティの活性化を図る上で重要でございます。
 都は、区市町が実施する買い物弱者支援事業と協力し、都営住宅の敷地内で食料品や日用品などの移動販売サービスを実施しております。
 移動販売サービスを拡大するには、地元自治体への実施の働きかけや、事業を広く周知することが必要でございます。
 このため、都は、区市町に対し、事例紹介や導入の働きかけを行いますとともに、導入を検討する自治体からの個別相談や団地自治会との調整などを行っております。
 あわせて、新たにホームページやSNSなど、さまざまな媒体を活用して情報発信を行い、都民や事業者などに事業の周知を図ってまいります。
 次に、移動販売を行う事業者への対応についてでございますが、移動販売サービスでは、事業者の協力が不可欠でございますが、販売事業者の中には販売場所や営業日時の周知等について課題を抱えている場合がございます。
 また、事業の実施や運営に関する事業者からの相談対応は地元区市町が行っており、必ずしも都に全ての相談内容が届いているわけではございません。
 そこで、今後、都は、区の住宅担当課長会や市町村の住宅連絡協議会などの場を活用いたしまして、事業実施の実情をきめ細かく把握するよう努めますとともに、課題解決に向け、団地自治会との調整を初め、必要な対応を行うなど、区市町への支援を強化してまいります。

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