令和元年東京都議会会議録第二十号

○議長(石川良一君) 十二番田村利光君。
〔十二番田村利光君登壇〕

○十二番(田村利光君) 東京都議会自由民主党、田村利光です。
 まず、今般の台風十五号、十九号及び二十一号で被災された方々にお見舞いを申し上げます。
 その台風十九号の被害を受けた多摩河川の整備について伺います。
 台風十九号の豪雨により、平井川や秋川では、溢水による浸水や護岸が崩れたため道路が崩壊し集落が孤立するなど、大きな被害を受けました。
 今後、応急復旧を迅速に行うことはもとより、河道内に繁茂する樹木や堆積する土砂による河床の上昇などにも留意し、適切な維持管理を行っていくことも重要だと考えます。予測不能な震災に対し、豪雨は毎年発生する可能性があります。原因の分析に加え、変化に富む多摩の河川の実態を踏まえた対応を実施していくことが大切です。
 今後の豪雨に備え、どのような対策を考えているのか伺います。
 次に、山間・島しょ地域の道路整備について伺います。
 都民の生命、財産を守るためには、集中豪雨等、激甚化する自然災害への備えとして、防災力を高めるインフラ整備により、東京の強靱化を推進する必要があります。
 本年九月及び十月に発生した台風では、西多摩地域や伊豆諸島の一部地域、小笠原諸島においても、倒木等により多くの道路が通行不能となり、日常生活や観光に加え、災害復旧活動に支障が生じました。
 こうした教訓も踏まえ、自然災害への備えとして、防災力の強化に資する道路整備を着実に進めていくことが重要です。
 そこで、山間・島しょ地域における道路整備について、取り組み状況を伺います。
 次に、台風からの産業復興支援について伺います。
 先般のたび重なる台風により、多摩地域は多くの被害を受けました。
 例えば、多摩地域を代表する特産品である奥多摩ワサビにおいては、その生産基盤であるワサビ田が流失するなど、大きな被害が生じています。ワサビ田を再生するには数年を要し、営農を諦める農業者もいます。
 また、都内の貴重なレジャーの場であり、内水面漁業の経営の支柱でもあるマス釣り場においては、養殖施設などに甚大な被害が発生しています。
 こうした被害の復旧や経営の再建に向け、全力を挙げて取り組むことが重要だと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、西多摩地域における災害時のドローン活用について伺います。
 都は、台風十九号で孤立した奥多摩町日原地区において、ドローンによる物資輸送を実施しました。今回のように、山間部で道路の崩落により集落が孤立すると、道路修復までに時間がかかり、孤立が長期化する可能性が高くなります。
 その際、ドローンを活用した対応が効果を発揮すると思われますが、今回の支援における課題と今後の取り組みについて伺います。
 また、あきる野市においては、国家戦略特区を活用して、ドローンによる空撮や物資搬送の実証実験などを行っており、こうした取り組みも参考にすべきと考えますが、あわせて見解を伺います。
 次に、都内中小企業による防災製品の実用化及び販路拡大について伺います。
 私は、去る十月二日から四日にわたり開催された危機管理産業展二〇一九を訪問し、都内には、自社が培ってきた独自の技術、ノウハウを都市防災や災害対応に役立てようとする高い志を持つ企業が数多く存在することを実感しました。
 しかし、すぐれた技術を持ちながらも、資金等の制約で実用化に至らないケースや、中小企業は販売ルートも確立されておらず、販路拡大に苦心する場面も少なくありません。
 こうした都市の防災力を向上させる製品が市場に供給されることは、産業の振興にもつながり、都としてしっかりと支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、市街化調整区域における空き家の活用について伺います。
 多摩の山間部を中心とした地域の多くは、建築物の新築や用途の変更等が制限される市街化調整区域に指定されています。こうした地域の集落では、空き家が著しく増加し、社会問題となっています。集落の維持や活性化のためには、これらの空き家を有効活用することが必要です。
 そこで、都は、平成三十年三月に観光振興や既存集落の活力創出のための用途変更を開発許可の対象に加え、シェアハウスやカフェ、サテライトオフィスなどに変更することが可能になりました。しかし、これまでのところ、制度の活用実績がありません。
 そこで、本制度を業界団体などを含め広く周知し、活用を促すべきと考えますが、都の取り組みを伺います。
 次に、特別支援学校におけるICT環境整備について伺います。
 重度の障害のある児童生徒は、自分の意思を表現することが困難で、体に起こった異変を即座に周囲に伝えることができず、常に生命に直結するリスクを負っています。
 しかし、視線入力装置など、ICT機器を活用し、自分の意思を周囲に伝えることができれば、そのリスクを回避できるだけでなく、周囲との内発的なコミュニケーションをとることができ、それが成功体験となり、社会参加への大きな動機づけになります。この両面からも、特別支援学校におけるICT環境整備は緊急かつ重要な課題です。
 そこで、現状と今後について、都の取り組みを伺います。
 次に、介護療養病床から介護医療院への移行支援について伺います。
 介護療養病床には、長期の療養が必要な高齢者の方が入院しています。
 国は、平成十八年の医療制度改革により、介護療養病床廃止の方針を打ち出し、その期限は令和五年度末に迫っています。しかし、主な移行先である介護医療院への移行は、都内でほとんど進んでいません。
 西多摩地域には、歴史的に介護療養病床を抱える医療機関が数多くあり、介護医療院への移行は最重要課題の一つです。しかし、移行の手続が煩雑で検討が進まないという声も聞いています。
 今後、円滑に移行を進めるために、都として支援を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、森林環境譲与税の活用に向けた取り組みについて伺います。
 今年度から、森林整備の促進を図るため、森林環境譲与税が都と市区町村に交付されました。まさに、東京の森林整備を進める上で絶好の機会であります。
 一方、森林のない都心部の区市にも多額の譲与税が交付されます。こうした区市には、多摩地域の森林整備への支援や多摩産材の活用が期待されます。
 そのためには、都が、森林のある市町村と、ない区市との橋渡し役を果たすことが重要だと考えますが、都の取り組みを伺います。
 次に、東京農業の担い手支援について伺います。
 東京の農家数は約一万一千戸であり、三十年前と比べ半分以下に減少しています。また、都内における六十五歳未満の農業者数は全体の半分を下回っており、東京農業は高齢化しています。
 こうした中、昨年九月に施行された都市農地貸借円滑化法により、生産緑地の賃借が可能となり、ことし二月、日野市では、農外から参入した新規就農者が本制度を活用して営農を開始しています。加えて、近年では、養液栽培などの新たな栽培技術に挑戦する意欲的な農業者もふえてきています。
 そこで、新規の農業者はもとより、経営発展を目指す農業者を支援していく取り組みについて伺います。
 次に、二〇二〇年に向けた多摩の観光振興についてお聞きします。
 東京二〇二〇大会本番となる来年は、国内外から多くの方が東京に訪れることが見込まれます。
 私の地元日の出町でも、自然や文化を体験できるまちとして、体験型プログラムや周遊ルートの造成実証事業を行います。この機会を生かして、豊かな自然や文化に恵まれた多摩地域へのさらなる誘客を進めるべきだと考えます。
 二〇二〇年に向けて、どのように多摩地域に旅行者を誘致していくのか、都の取り組みを伺います。
 最後に、小池知事の消費税増税に対する認識についてお聞きします。
 国は、社会保障の安定化、子育て支援や医療、介護の充実のために、消費税を一〇%に引き上げました。
 小池知事は、衆議院解散選挙において、消費税増税を凍結する意向を示していましたが、実際に消費税増税が行われて二カ月がたった今、増税に対する知事の見解をお聞きし、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 田村利光議員の一般質問にお答えをいたします。
 消費税に関してのご質問でございました。
 消費税のあり方は、国会において議論されるべきテーマであると認識をいたしております。
 なお、先日、国が発表いたしました十月の景気動向指数でございますが、六年八カ月ぶりの低水準となっております。海外経済の減速、台風の影響も指摘もされておりまして、消費税の増税による都民生活への影響につきましては、引き続き注視をしてまいりたいと考えております。
 残余のご質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 都立特別支援学校のICT環境についてでございますが、子供一人一人に応じた学習を充実するためには、障害の種類や程度に応じたICT環境の整備が重要でございます。
 都教育委員会はこれまで、障害のある子供にとって使いやすい機能を備えたタブレット端末のほか、トラックボールマウス等の支援機器を導入してまいりました。
 今年度は、肢体不自由特別支援学校全校において、目の動きで入力する装置の台数を拡充し、今月中に配備を完了いたします。
 また、ICTを活用し、学校にいながら他校と交流する取り組み等を福祉分野に知見を有する情報関連企業と連携し支援しております。
 都教育委員会は、引き続きICT機器を効果的に活用した事例等を収集し、周知するなど、機器の使用方法等の開発を支援してまいります。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 市街化調整区域における空き家の活用についてでございます。
 調整区域内の集落の活性化を図るため、空き家となった建築物を、例えば古民家カフェやサテライトオフィスなどに転用して有効活用していくことが重要でございます。
 このため、都は、平成三十年度から、こうした目的の用途変更を許可対象に加えた基準の運用を開始するとともに、地元自治体などに周知しております。
 引き続き、民間事業者なども含めて、さらにこの制度を周知することにより、地域活性化の取り組みを後押ししてまいります。
〔建設局長三浦隆君登壇〕

○建設局長(三浦隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、今後の多摩地域の河川整備についてでございますが、多摩の河川につきましては、各河川の特性を踏まえ、安全性の早期向上を図っていくことが重要でございます。
 台風第十九号で被害が発生した河川では、護岸の復旧工事を実施いたします。さらに、溢水原因の検証に加えて、水位上昇の要因となる狭隘箇所や河道内の堰など構造物の状況を把握する調査を実施し、局所改良などの対策を検討いたします。
 また、河道内の土砂や樹木につきまして、流水の妨げとならないよう、引き続き適切に管理するとともに、平井川などでは流下能力を向上させる護岸整備を着実に推進いたします。
 今後とも、多摩地域を流れる河川の豪雨に対する安全性向上に向け取り組んでまいります。
 次に、山間・島しょ地域の道路整備についてでございますが、道路は地域の生活や産業経済を支える極めて重要な社会基盤であり、東京の強靱化を推進するためには、避難、救援活動の生命線ともなるダブルルートの確保などにより、地域の孤立化を防止することが重要でございます。
 このため、バイパス機能等を担う多摩川南岸道路や秋川南岸道路の整備を進めております。
 また、本年八月に掘削を開始した日の出町と青梅市を結ぶ梅ヶ谷トンネルにつきましては、着実に工事を実施しております。
 小笠原父島におきましては、津波避難道路となる行文線や、また三宅島伊ヶ谷地区では、港へ接続する代替路の事業化につきましても検討を進めているところでございます。
 今後とも、地域振興や防災性向上に寄与し、命の道となる山間・島しょ地域の道路整備を推進してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、台風による農林水産業被害への対応についてですが、都は、被災後直ちに職員を現地に派遣し、市町村と連携して被害状況を調査いたしました。
 その結果、ワサビ田の流失やマス釣り場の施設損傷等、大きな被害の発生を確認いたしました。調査結果を踏まえまして、奥多摩ワサビに関し、ワサビ田や生産施設等の復旧に対する支援のほか、生産継続に向け技術指導等を実施するとともに、マス釣り場の営業再開に向け、養殖施設や安全柵等の再整備に要する経費を補助してまいります。
 こうした取り組みにより、台風被害からの早期復旧を図ってまいります。
 次に、中小企業による防災製品の実用化等についてですが、都では、中小企業が取り組む新規性の高い防災技術の実用化のため、実証実験や改良に係る経費を助成しており、これまで六十を超える製品化に結びつけております。
 また、製品の普及を後押しするため、展示会出展等への経費助成、危機管理産業展でのブース設置のほか、都が試験的に製品を購入する認定制度への参加も促しております。
 今後とも、中小企業のすぐれた技術を用いた防災製品の普及を促進し、東京の産業振興と防災力向上を図ってまいります。
 次に、森林環境譲与税の活用についてですが、区市町村が森林環境譲与税を多摩産材の利用拡大に活用することは、東京の林業振興を図る上で重要でございます。
 都は今年度より、譲与税の活用等に関する相談窓口を設けるほか、専門のアドバイザーを都市部の自治体に派遣し、多摩産材活用に係る情報交換を行っているところでございます。
 こうして得た活用ニーズを産地にフィードバックするとともに、その一層の利用拡大に向け、都市部の自治体に、よりきめ細かな情報提供を行うこととしております。
 森林環境譲与税を活用し、多摩産材の利用拡大を進め、東京の森林循環に結びつけてまいります。
 次に、東京農業の担い手の確保と育成についてですが、東京の農業を振興する上で、新規就農者の確保、育成や意欲ある農業者の経営力向上への支援は重要でございます。
 都は、都内の就農希望者と農業者全てを対象に、総合的な育成プログラムとして、東京農業アカデミーを来年度から開始いたします。アカデミーでは、就農希望者に中核農家での実習を含む二年間の長期研修等を実施いたします。
 また、ステップアップを目指す農業者に、ICTを活用し生産性を高める栽培技術や、ジャムなどの加工品販売など六次産業化に向けたマーケティングの研修などを実施いたします。
 これらにより、東京農業の一層の振興を図ってまいります。
 最後に、多摩の観光振興についてですが、大会期間やその前後に多くの旅行者に多摩地域を訪れていただくためには、地域が一体となって観光資源を磨き上げることが重要でございます。
 このため、都は、地元の特色を生かしたイベントなど、観光協会や企業等の連携による誘客を支援しているところございます。
 具体的には、御岳山の神楽などの伝統芸能を外国人旅行者が楽しめる体験プログラムの支援や、ホストタウンとなる地域では、国内外の旅行者が住民とともに地元の食や農業等を体験する交流型イベントの事業化を図ることとしております。
 こうした取り組みを通じて、多摩地域の魅力を一層高め、さらなる旅行者の誘致を進めてまいります。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 西多摩地域における災害時のドローンの活用についてでございますが、台風第十九号では、奥多摩町において、道路崩落により孤立地区が発生したことから、ドローンの目視外飛行での物資輸送を実施いたしました。
 その結果、準備段階で離発着地点の選定や電波状況等の調査に時間を要したことや、機体の輸送能力が十分でないことなどが明らかとなったところでございます。
 また、あきる野市においては、大型ドローンによる物資搬送の実証実験を行っております。
 これらを踏まえ、今回の検証結果に基づき複数の地区を選定し、ドローンの目視外飛行に必要な要件等に関する実証実験について検討してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 介護療養病床から介護医療院への移行に関するご質問にお答えいたします。
 国は、平成十八年の医療制度改革において、介護療養病床を廃止することとし、介護老人保健施設等への転換を図りましたが、転換が進まないことから、廃止期限を延長するとともに、新たな施設類型の検討を行い、平成三十年に慢性期の医療、介護ニーズに対応した介護医療院を創設しました。
 都は、介護医療院への移行を促進するため、廊下幅の基準を条例で独自に緩和するとともに、居室の改修等への補助を実施しております。
 また、許可申請から開設までの手続やスケジュール、補助金の内容などをわかりやすくまとめた手引を作成し、ホームページに掲載しているところでございます。
 現在までに五施設が介護医療院に移行しており、今後とも移行を支援してまいります。

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