令和元年東京都議会会議録第二十号

○議長(石川良一君) 四十六番中山ひろゆき君。
〔四十六番中山ひろゆき君登壇〕

○四十六番(中山ひろゆき君) 長期戦略について伺います。
 ことし十月七日に、日経新聞の一面で、出生数九十万人割れという記事に衝撃を覚えました。団塊ジュニア世代が四十代後半になり、出産期の女性が減ったことが大きな要因であります。
 日本人女性は、四十代が九百七万人に対して、三十代は二三%少ない六百九十六万人、二十代は三六%少ない五百七十八万人であり、人口減少社会が加速度的に進むことが予想されております。
 人口減少社会は、経済成長に影を落とすことは確実視されております。未来の東京への論点でも、少子化や人口減少が継続すれば、生産力や都市の活力に大きな影響を与えると示されております。
 知事就任以来、子育て支援策や私学授業料無償化など、保育、教育両面から強化され、目標出生率二・〇七も掲げられております。
 もちろん子供を産む産まないはあくまでも個人の自由であり、産みたいのに妊娠できず苦しんでおられる方々への配慮も重要です。
 一方で、経済的な理由で出産をちゅうちょしてしまう世帯も大勢おります。願望があれば、一人産んだ人が二人目を、二人産んだ人が三人目を安心して産める総合的な施策が効果的であります。
 そこで、長期戦略では、多子世帯への支援の強化を図るべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 観光振興について伺います。
 いよいよ二百二十日余りと迫った二〇二〇大会開催は、外国人観光客のさらなる受け入れを進めるための絶好の機会であります。つまり、未来の東京への論点の中で特に重要と思うのは観光振興であり、稼ぐ東京の原動力であります。
 観光産業の優位性は経済活動の裾野が広い点であり、交通、ホテル、外食産業、伝統工芸など、それを支える産業までもが経済活動に結びつきます。
 観光都市を推進する上で、多くの訪日外国人観光客より指摘されている点として、日本の夜はつまらないといわれております。事実、観光客における娯楽サービスの消費割合は、日本は約二・五%、アメリカは約一二%、フランスは約一一%と数字にもあらわれております。
 私の地元台東区でもホテルが急増している中で、夜の時間をどう楽しんでいただくかが消費動向の鍵になっております。
 こうしたことから、課題解決のため、都では、地域が新たに取り組むナイトライフ観光の振興に向けたイベント等への支援をしております。
 そこで都は、外国人旅行者が東京の夜を楽しめるようナイトライフの取り組みを強化すべきと考えますが、見解を伺います。
 観光バス駐車場について伺います。
 都は、東京二〇二〇大会に向けて、訪日外国人二千五百万人を目標に掲げ、観光PRや旅行の受け入れ環境整備等、官民を挙げたインバウンド施策を推進しております。
 その結果、平成三十年に都内を訪れた外国人観光客は前年比三・四%増、過去最多の約一千四百二十四万人となり、そのうち観光バス利用客は一割余りといわれております。
 そのため、都内の観光地等の周辺では、観光バスの乗降場所や駐車場が絶対的に不足していることから、路上駐車による交通渋滞や周辺住民とのトラブル、観光客の路上乗降における交通安全上の問題などが生じているとともに、周辺の渋滞の一因にもなっております。基礎自治体の対応策では既に困難な状況にあります。
 二十三区区長会や議長会からも、観光バス駐車場対策のため、都有地の優先的な活用や財政的支援の拡充、国への働きかけなど、要望項目に上がっております。
 私の地元台東区では、現在、観光バスに向けた四カ所の区営駐車場を設け、五十七台分用意し、乗降場は五カ所設置した上で、インターネット経由で駐車場と乗降場の利用を予約した旅行会社やバス会社が利用できる仕組みを採用しております。
 台東区が二〇一五年三月にまとめた調査によると、台東区にやってくる観光バスは一日平均百九十二台であり、二〇二〇年には二百七十五台にふえる見通しとなっており、都内の外国人旅行者のうち四五%が台東区に訪れることを考えれば、ふえる一方であります。
 さらに、都の施策である東京国際ターミナルふ頭が開港すれば、寄港者は大概バスで都内を観光するため、バスの需要を押し上げることが想定できます。
 こうした現状を鑑みれば、広域行政の役割がますます高まっており、都としてしっかりと取り組むことが重要であると考えます。
 そこで、観光バスの駐車スペースの確保に当たって、都の見解を伺います。
 浅草の駅の連携について伺います。
 都営地下鉄浅草線は、昭和二十九年三月に都議会で都営による地下鉄の建設を決議した後、昭和三十三年に、当時一号線、現在の浅草線の免許を取得し、昭和三十五年十二月に押上─浅草橋間を開業いたしました。
 一方で、東京メトロの前身である東京地下鉄道株式会社は、銀座線を今から八十年以上前の昭和二年に、浅草─上野間二・二キロメートルを開業いたしました。東洋で初めての地下鉄が東京に誕生したことは、日本の近代化のあかしでもありました。
 このように両浅草駅は古いことから、継ぎはぎ構造であるため、利便性、快適性を提供できているとはいえません。ましてや、羽田空港、成田空港と通じる都営浅草線と、東京を代表する繁華街、上野、銀座、渋谷などと通じる東京メトロ銀座線は、外国人にとっても欠かすことのできないルートであり、浅草駅が一つの接点でもあります。
 今後は、両者が共有できるエレベーターなども整備することとされておりますが、国際観光都市浅草にふさわしい両駅の連携がさらに必要不可欠であります。
 そこで、こうした取り組みも含めて、都営、東京メトロのサービスの一体化を強化すべきと考えますが、当局の見解を伺います。
 さらに、都営浅草線の浅草駅は、エレベーターのワンルートは確保しているものの、エレベーターの空間が狭いことに加え、地上出口は観光名所の雷門とはるかに遠い距離に位置しており、雷門に近い出入り口を目指そうと、重そうな荷物を持つ観光客に遭遇すると、リピーターの足が遠のくのではないかと心配さえしてしまいます。
 そのため、交通局は、経営計画二〇一九では、浅草線のリニューアルプロジェクトを推進するため、雷門への玄関口として、バリアフリー化された新たな出入り口を新設する準備に取りかかっております。一歩踏み込んだことに、まちの期待は高まっております。
 かつて東京メトロ銀座線浅草駅ビルを改築する際には、地域の方々と東京メトロとの対話の中で、駅構内には浅草寺本堂の瓦を使った装飾や町会のおみこしを通年安置し、駅におりたお客様が地域の伝統や歴史を感じていただくように工夫をいたしました。鉄道は、お客様を安全・安心に運ぶだけではなく、まちとお客様を結ぶ役割もあります。
 そこで、駅の大規模改良計画に際して、古きよき伝統を守りつつ、国際観光都市東京の玄関口として、魅力ある浅草らしい駅とすべきと考えますが、見解を伺います。
 都職員の採用について伺います。
 バブル経済崩壊後、一九九〇年半ばごろから景気が冷え込み、就職難が続き、社会問題化した時期に、企業が新卒採用を大幅に抑えて、フリーターや派遣など非正規労働者がふえました。ちょうどそのころ、私自身も、私の周辺も、就職に大変苦労したことを記憶しております。
 内閣府の発表によれば、一九九三年から二〇〇四年に大学を卒業後、就職したが、希望する職につけないなど、不安定な仕事をしている人たちが三十代半ばから四十代半ばを中心に百万人いると見込まれております。就職氷河期世代は、不景気の影響で新卒時に正規雇用の道を閉ざされ、今も非正規で働く人たちが多いとされております。
 そのため、兵庫県宝塚市では、行政機関が安定した働き方を提供しようと、就職氷河期を対象にした採用試験を実施いたしました。さらに先日、政府も、就職氷河期世代の支援として、国家公務員の中途採用枠で積極的に採用する方針を表明いたしました。
 そこで、就職氷河期世代など、幅広い世代の方々を対象に、都の職員として採用試験を実施することが重要と考えますが、都の見解を伺います。
 本年五月二十九日、厚生労働省就職氷河期世代活躍支援プランが取りまとめられました。
 就職氷河期世代の中には、これまで不安定な就労を繰り返しており、自己評価が低い傾向にあることや、安定就労に向けてスキルアップや転職活動を行う時間的、経済的、心理的余裕がないことから、就労や正社員化に向けた具体的な行動を起こせずにいる方々が一定数いるといわれております。
 そのため、国のプランでは、本人やその家族関係者に対して、安定就職、社会参加の道を社会全体で用意し、応援していますということを効果的に伝えるため、関係省庁、経済団体との連携や地域ごとのプラットホームの活用など、あらゆるルートを通じて戦略的な広報の展開を図りながら、さまざまな施策を実施していくとのことであります。
 これまで、都において都民の雇用や就業を支援するため設置した東京しごとセンターでは、相談、アドバイスから就職に必要な知識、技能の習得、職業紹介と、段階的な支援を展開しております。
 そこで、国のプランの趣旨を踏まえ、就職氷河期の方が、さらに非正規雇用から正社員として就職できるように、都におけるプログラムを強化すべきと考えますが、見解を伺います。
 以上で質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 中山ひろゆき議員の一般質問にお答えいたします。
 長期戦略における子育て政策についてのお尋ねでございます。
 子育てに対します負担感、将来への不安などを背景として、子供を持ちたいと思いつつ、踏み切れない人がふえております。東京の合計特殊出生率は一・二にとどまっております。
 ちなみに、お隣、韓国のソウルにおきましては〇・七と、一にも満たない状況まで落ち込み、また、台北でも同様に低出生率が続いていると聞いております。
 少子化が進行した人口減少社会におきましては、将来の担い手が不足し、社会の活力が低下するなど、さまざまな面で大きな影響が生じてまいります。我々は強い危機感を持って、この問題に正面から向き合っていく必要がございます。
 このため、私は、子供を持ちたいという個々人の願いをかなえるとともに、人口減少に歯どめをかけるという強い思いで、二〇四〇年代の目指す東京の姿として、人口維持に必要な水準である合計特殊出生率二・〇七を掲げたところであります。
 東京が持続的な発展を続けていくために、未来を担う子供への投資に本気で取り組むことが、今我々に課せられた大きな使命と考えます。
 子供を産み育てたくなる社会を実現するためには、お話の多子世帯を含めまして、経済的、精神的負担への対応や、子育てしやすい社会環境の整備など、さまざまな課題があると考えております。
 年末の長期戦略ビジョンの策定に向けまして、こうした課題を含め、安心して子供を産み育てられる環境の整備に向けました多面的な政策につきまして検討を進めてまいります。
 みんなで子育てを応援することで、社会全体のマインドチェンジを促し、子供が笑顔で過ごせる社会の実現に向けまして、大きなビジョンを打ち出してまいります。
 なお、その他のご質問につきましては、東京都技監及び関係局長からのご答弁といたします。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 観光バスの駐車スペースの確保についてでございます。
 浅草や新宿など、観光バスの駐車場が不足する地区では、地域の実情を踏まえ、地元自治体が主体となって対策を行う必要がある一方、観光バスは都内各地を巡回することから、広域的な視点に立った対策も必要でございます。
 このため、都は、学識経験者や関係機関で構成する検討会を設置し、観光バスの駐車状況や駐車場の利用意向などについて調査を行ってまいりました。これらの結果を踏まえ、検討会において、本年三月、エリアごとの駐車需給バランスを踏まえた既存駐車場の有効活用などの方策を示した観光バス駐車対策の考え方を取りまとめ、対策を促進しております。
 引き続き、こうした取り組みを通じて、地元自治体が行う観光バスの駐車対策を支援してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ナイトライフ観光の振興についてですが、夜の時間帯のさらなる活用を図ることは、旅行者の滞在時間の延長等により、高い消費拡大効果が期待されます。
 そのため、都は、区市町村や観光協会等が行うライトアップやプロジェクションマッピングを活用した夜間の集客効果を高める取り組みを支援しているところでございます。また、今年度からは、音楽イベントやナイトマーケットなど、新たな夜間のイベントを実施する事業者等への支援を開始し、地域のにぎわいや観光資源の創出に取り組んでおります。
 今後は、こうした夜間のイベント等のさらなる充実とともに、東京の魅力を生かした新たな体験コンテンツの創出への支援を検討し、外国人旅行者に多様な夜の過ごし方を提供してまいります。
 次に、就職氷河期世代に対する就労支援についてですが、この世代には、長期にわたり非正規での不安定な就労を余儀なくされている方が数多くおり、こうした方への就労支援を強化し、正規雇用化を図っていく必要がございます。
 都はこれまでも、しごとセンターにおいて専任のアドバイザーによるキャリアカウンセリングを初め、職務実習により実践的なスキルを磨き、就職から定着まで、きめ細かく支援するプログラムなど、さまざまな事業を継続して実施し、氷河期世代の正規雇用での就職につなげてまいりました。
 今後、こうした支援に加えて、氷河期世代の方が一定の期間、派遣社員としてさまざまなスキルを身につけながら、派遣先企業において正規雇用を目指す事業を行うなど、新たな支援プログラムの実施について検討を進めてまいります。
〔交通局長土渕裕君登壇〕

○交通局長(土渕裕君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京の地下鉄のサービス一体化についてでございますが、交通局では、東京の地下鉄の利便性を高めるため、東京メトロと連携し、サービスの一体化に取り組んでおります。
 具体的には、乗りかえルートのバリアフリー化や案内サインの統一、無料Wi-Fi環境の整備を進めるとともに、観光スポットを選択することで乗車券を購入できる八言語対応の券売機を共同で開発し、外国人旅行者の多い浅草駅等に順次導入しております。
 さらに、年度内には、都営地下鉄と東京メトロの全線を割安で利用できる旅行者向けの企画乗車券Tokyo Subway Ticketにつきまして、オンライン決済により購入できるようにいたします。
 今後とも、誰もが利用しやすい東京の地下鉄の実現に向けまして、両地下鉄で連携し、サービスの一体化に取り組んでまいります。
 次に、浅草駅の大規模改良についてでございますが、交通局では、来年開業六十年を迎える浅草線につきまして、古きよき伝統を守りつつ、現代的な地下鉄に生まれ変わらせるため、駅の改良などを計画的に行うこととしております。
 浅草駅につきましては、雷門方面につながる出入り口の混雑対策やバリアフリー機能の充実が課題でございますが、改修に当たりましては、一定期間、出入り口を閉鎖することになります。
 このため、代替ルートとなり、また、大型エレベーターやエスカレーターを備え、新たなバリアフリールートともなる出入り口の新設に向けまして、現在検討を進めております。
 あわせて、駅全体を改装することとしておりまして、木目調の素材を用いるとともに、伝統工芸品をイメージしたデザインを取り入れ、下町情緒あふれる和の空間を演出するなど、浅草にふさわしい駅としてまいります。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 就職氷河期世代の都職員への採用についてでございますが、都において多様で幅広い年代の方々が意欲や能力を生かして活躍できる組織づくりは重要でございます。
 このため、平成二十一年度から、いわゆる就職氷河期世代を含む幅広い年齢層を対象とした経験者採用選考を実施しており、これまで約一千四百名が合格をしております。
 一方、国は、就職氷河期世代への三年間の集中支援プログラムを策定するとともに、今後、国家公務員の中途採用に取り組む方針を示しております。また、既に採用試験を行った自治体もございます。
 このため、都においても、こうした国や他の自治体の状況を踏まえ、現行の経験者採用選考に加えて、就職氷河期世代を主な対象とした採用試験を来年度から実施する方向で検討を進めてまいります。

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