令和元年東京都議会会議録第十五号

○議長(尾崎大介君) 七番ひぐちたかあき君。
〔七番ひぐちたかあき君登壇〕

○七番(ひぐちたかあき君) 昨年の第四回定例会において、東京のすぐれた資産である水を生かし、また、地域が本来持っているさまざまな資源を生かし、東京の新しい活力、地域の振興につなげるべく質疑いたしました。
 本日は、引き続き、水辺や地域資源の活性化について伺うとともに、地域コミュニティ、水素社会、そして動物福祉について質問いたします。
 まず、水辺について伺います。
 私の地元にも、神田川、日本橋川、外堀といった貴重な水辺資源がありますが、昨年第四回定例会では、水辺を生かしたまちづくりの必要性について、知事からも前向きな答弁をいただきました。
 例えば、平成十五年に策定された、地域の特性を生かせる大変いい制度であります、東京のしゃれた街並みづくり推進条例における街区再編まちづくり制度は、水辺にも柔軟に対応することも可能と聞いています。ぜひ今後も、都の前向きな姿勢のもとで、水辺に顔を向けた民間開発を政策誘導として促していただきたいと思います。
 そこで、開発の機会を捉えて、例えば、流水の占める面積、河積を侵さず引き込む形での船着き場、船だまり、揚げ場、またデッキの整備など、水辺を生かしたまちづくりを積極的に誘導すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 これら民間事業者により新しくつくられる船着き場とともに、既存の防災船着き場の活用が大切であります。
 都の管理下における防災船着き場においては、一般の利用に向け、さらに積極的に開放していくべきであります。都の見解を伺います。
 なお、都の管理下にある防災船着き場の利用申請は、現状の電話、ファクスから、将来的にはオンデマンドな活用にも対応し得るシステム化が必要と考えます。港湾であれ河川であれ連携するなど、使いたいときに使える船着き場に向けて、利用申請のあり方を検討するよう要望いたします。あわせて、防災船着き場の整備に当たっては、観光や日常交通、にぎわいの観点も入れるよう求めます。
 さて、水辺空間の活性化には、河川敷地の活用も極めて重要であります。
 河川沿いでは、水辺のにぎわいに資する民間開発の計画があるほか、河川に水舞台、台船を浮かべ、川沿いのテラスと一体となり音楽やアートイベントを行うなど、民間団体からは発想豊かな提案が出されています。
 私は、河川管理、治水や安全性の確保とにぎわいは、必ずしも対立するわけではないと考えます。これからは、河川管理においてもエリアマネジメントのように地域の関係者とともに連携し、にぎわいをつくり、河川の魅力を再び高めていく必要があるのではないでしょうか。
 そこで、河川管理における治水など従来の機能とともに、観光、日常交通やにぎわいに資するような視点を入れた民間事業者や地域と連携し、特例占用などを生かし、河川のにぎわい創出に積極的に取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。
 さて、水辺空間の活性化には、今まで申し上げてきた機能面に加えて、景観も大切な要素であります。
 先日、九月二日の都市計画審議会では、首都高地下化の計画が承認されましたが、工事の実施に伴い常盤橋の保存が注目されています。日本橋川には、江戸時代から石積みの護岸や昭和前期につくられた川に顔を向けた建物、そして常盤橋など近代のアーチ橋といった、水面から眺めやると大変美しい空間があります。
 そこで、常盤橋の現状を維持するような地下工事の可能性について、土木技術や費用面での試算などもしていくべきと考えます。現在の検討状況を伺います。
 水辺に限らず、地域に根づいた資源を活用し、いかに地域の活性化につなげるかが大切だと申し上げてきました。実際に、都においては、成り立ちのあるまち並みや寺社仏閣、歴史的な建築物など中小のユニークベニュー開発が進み始めています。ただし、これらのにぎわいが地元を素通りであってはなりません。ユニークベニュー施設の利用とともに、地域の特色ある飲食店や老舗商店、旅館、ホテルなどでも飲食や買い物、滞在してもらうなど、地域の活力向上につなげるべきであります。そのためには、各施設はもとより、主催者である外国企業や企画を請け負う旅行会社などにしっかりと働きかけるべきでありますが、都の見解を伺います。
 私は、東京のこれからを考える際、その社会の基礎は地域コミュニティにおけるきずなの強化にあると考えています。地元にも彩り豊かな地層を重ねてきた地域コミュニティがありますが、地域を回る中で、町会員の高齢化、マンション住民との関係づくり、イベントや祭礼の運営など、地域が直面するさまざまな課題を伺ってきました。
 そうした中で、東京都は平成二十九年度から、こうした団体を支援するため、企業の社員が仕事で培ったスキルを生かして行うボランティア活動であるプロボノを活用した地域の課題解決事業を実施しています。
 私の地元千代田区においても活用した町会からは大変好評をいただいております。本年度は三年目となり、これまでの実績を踏まえ、より多くの町会など団体に活用してもらうべきと考えますが、都の見解を伺います。
 なお、千代田区においては、区民の約九割がマンションなどの集合住宅に居住しておられます。特に、セキュリティーの厳重なマンションは、例えば、首都直下型の震災時などの連携のあり方も課題でありますし、また、日ごろの地域コミュニティにおいても隔絶した存在であってはなりません。マンションに対しても課題解決の支援を求めておきます。
 次に、水素社会の実現に向けて伺います。
 都では、ゼロエミッション東京を掲げていますが、実現には水素エネルギーの活用は欠かせません。既に行われているハード面の支援とともに、世論の理解を深めていただくための施策を加速させるべきであります。都民の皆さんに水素がいかに身近な存在として感じていただけるか、そしてまた、発生原理や安全性など、科学、技術的な説明にとどまらない、体感してもらえるような施策が重要です。
 都は、水素エネルギー見える化実行委員会を立ち上げ、本年度から、まずは取り組むこととなっていますが、今後は、例えば、燃料電池で必要な電力を全て賄うようなアーティストによるコンサート、水素を燃料とするような調理、料理、あるいは医療現場での水素の活用など、より一層民間を巻き込み、取り組むことが求められます。
 そこで、真の水素社会の実現には、日本の水素技術を五感に訴えることで、水素社会を実感してもらうべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 最後に、動物福祉について伺います。
 地元千代田区は、二〇一一年、全国に先駆け、猫の殺処分ゼロを達成し、現在も継続しています。東京都も、昨年度、前倒しで達成しました。
 行政当局とともに、地域住民の皆さん、ボランティアの皆さんのこれまでのご労苦があってこそ、なし遂げたものと認識しています。改めて、ボランティアの負荷軽減にも配慮しながら取り組みを進めていただくよう求めます。
 これからは、ゼロを継続させ、殺処分という言葉自体をなくしていかなければなりません。
 しかし、継続させるに当たって克服すべき課題の一つは、多頭飼育にまつわるものだと考えます。多頭飼育崩壊に至る理由はさまざまですが、高齢化し、あるいは病気の発症、失業、家族の死亡などで飼い主が社会的孤立を深めるなど、ライフステージの変化に起因することも多く、今後もますます増加が想定されます。
 そこで、東京都においても、動物行政と福祉、保健行政がこれまで以上に協力連携し、こうした課題に対して取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。
 さて、飼い主がいない猫は、住宅密集地や交通量が多い地域など、それぞれ環境は異なりますが、さらに来年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。東京駅などの大規模なターミナル駅、オリ・パラ競技会場の付近は、特に大勢の人や車が行き交い、こうした場所で猫がさまようような状況は、負傷するおそれなども含めて好ましくありません。
 ギリシャにおいても、五輪の前年に、アテネ市が路上などで保護された犬を施設に収容した事例もあり、また熊本地震の際には、被災地の犬や猫を一時的に預かるシェルターをつくった例もあります。
 世界の注目が東京に集まる今だからこそ、オリ・パラ開催前後の期間限定で、譲渡対応もしやすい保護シェルターを開設するなど、ボランティアなどとともに対策を行っていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 さて、かねてより申し上げておりますとおり、これからの日本の首都東京には、大都市の総合力が求められているのだと思います。豊かな自然をも取り込んだ都市の風格、歴史を背景とした厚みのある文化を備え、地域社会、共生社会のもとで多彩な活動が生き生きと展開される、そして、訪れる人々に感動を与える、そういった首都東京であります。
 その東京の総合力を最大限に発揮できますよう、今後も力を尽くしていくことを申し上げまして、私の一般質問を終えさせていただきます。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) ひぐちたかあき議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、水素技術を五感に訴えるという点でございます。
 水素は、利用の段階で二酸化炭素を排出しない、将来、CO2フリー水素を大量に製造、輸送する技術が確立されますと、ゼロエミッション東京の実現に大きく貢献できるものであります。
 こうした水素エネルギーを広く普及させるには、実際に利用する都民の皆さんに環境性能や将来性を理解していただく、そのことが必要でございます。
 都はこれまで、水素情報館東京スイソミルなどを活用いたしまして普及啓発を行ってまいりましたが、水素エネルギーを身近に感じていただくためには、視覚や聴覚などの五感に訴える発信も重要となります。味覚も含まれます。
 今年度は、官民連携で初めて、都民や国内外からの観光客が多く集まる羽田空港やお台場などにおいて、水素を身近に感じられるイベントを実施いたします。
 例えば、水素で発電した電気を使いましてプロジェクションマッピングを実施するとか、AIロボットの稼働を行う、そしてまた、目で見て実感していただくほか、ミニコンサートで用いる楽器機材の電源として、聴覚にも訴えてまいります。
 今後、こうした取り組みを踏まえまして、都民に水素を実感していただけますように、民間企業等とも連携をいたしまして、視覚、聴覚、味覚など五感に訴える多様な催しの活用を検討しまして、さらなる理解の促進、利用拡大につなげてまいりたいと考えております。
 次に、人や車の往来の激しい地域での猫の保護についてのご質問がございました。
 都は、動物の愛護及び管理に関する法律などに基づきまして、負傷した犬、猫などが発見されたという通報を受けた場合には、動物愛護相談センターなどに収容しまして治療などを施しておりますけれども、そのほとんどは猫であります。
 お話のように、東京二〇二〇大会の競技会場の付近などでは人や車の往来が激しくなることが予想されます。そこで、飼い主のいない猫が事故などで負傷することもふえると予想されるわけでございます。
 そのため、大会期間中やその前後の期間には、猫を一時的に保護する施設の設置を含めました環境の整備など、対策を検討していきたいと考えております。
 残余のご質問は、東京都技監、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、水辺を生かしたまちづくりについてでございますが、都市の生活にゆとりや潤いを創出する貴重な資源として、水辺をまちづくりに積極的に生かすことは重要でございます。
 都は、民間の創意工夫を生かす都市再生特別地区を活用したプロジェクトにより、芝浦運河沿いなどで水上テラスの設置など、質の高い親水空間の整備を図ってまいりました。
 さらに、再開発等促進区など容積の緩和を伴う開発手法により、隅田川や神田川などの水辺を生かした取り組みを推進するため、本年三月、この開発手法の運用基準などを改定し、容積緩和の対象拡大などを図りました。
 これらの仕組みにより、民間開発の機会を捉え、関係機関と連携しながら、船着き場や川沿いなどの歩行者ネットワーク、水辺に開かれたにぎわい施設などの整備を促進し、魅力や潤いのある水辺空間の創出を図ってまいります。
 次に、首都高地下化に伴う常盤橋の検討についてでございます。
 首都高日本橋区間にあります常盤橋は、二連アーチの震災復興橋梁であり、千代田区景観まちづくり重要物件に指定されております。
 この橋は、先日の都市計画審議会で了承された首都高地下化の工事の影響範囲にあり、その取り扱いに配慮が必要でございます。区は、常盤橋が周辺の日本銀行本店などとともに歴史的な景観を形成していることから、その保存に向けた検討を要望しております。
 こうしたことから、現在、首都高速道路株式会社が中心となり、日本橋川の安全性等を確保しつつ、二連アーチの構造を残す方向で検討しており、都も、関係機関との調整などを行っております。工事の具体化に合わせて検討が深まるよう、引き続き取り組んでまいります。
〔建設局長三浦隆君登壇〕

○建設局長(三浦隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、防災船着き場の一般開放についてでございますが、災害時の船による帰宅困難者や緊急物資の輸送等に備えて整備をした防災船着き場を、平常時においても有効に活用し、舟運の活性化を図ることは重要でございます。
 このため、観光施設や後背地の状況、利用者のニーズ等を踏まえまして、これまでに、隅田川の越中島など五カ所の船着き場において、平常時に観光船など一般船舶に開放しており、多くの方々に利用していただいております。
 さらに、今月には、舟運事業者のニーズが高い箱崎町におきましても、地元の理解が得られたことから、新たに開放を行います。
 防災船着き場の一般開放をより一層進めまして、舟運を生かした水辺空間の魅力向上を図ってまいります。
 次に、河川のにぎわい創出についてでございますが、水辺の魅力をさらに高めるためには、治水機能などを確保した上で、河川の特性を踏まえ、周辺地域と一体となったにぎわいの創出が重要でございます。
 これまで日本橋川などにおきまして、規制緩和により、水辺で飲食が楽しめるかわてらすが設置されるなど、河川敷地の利用を進めてまいりました。
 また、隅田川沿いの両国におきまして、水辺とまちが結びつくよう、都が進めるスーパー堤防の整備や防災船着き場の増設にあわせ、民間によるホテルや子育て支援の施設等の整備が進められております。
 今後とも、川沿いの民間開発の機会を捉えまして、地域や民間とより一層連携し、特例占用を活用したにぎわい施設の設置など、まちづくりと一体となって、多くの都民や観光客が訪れる魅力ある水辺空間の創出に取り組んでまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) ユニークベニューの活用による地域活性化についてですが、ユニークベニューを訪れた外国人に、周辺での観光も楽しんでもらうことは、地域の活力向上につながるものと考えております。
 このため、都は、ユニークベニュー専用のウエブサイトにおいて、各施設とともに、周辺エリアの宿泊施設や飲食店、観光スポットなど、地域の多様な観光資源を紹介しているところでございます。
 また、今年度は、MICEの主催者となる企業や都内ユニークベニューの関係者に加えて、MICEの企画運営に携わる旅行事業者等も招き、伝統文化のアトラクションや食べ歩きなど、地域と一体となったショーケースイベントの体験の機会を提供してまいります。あわせて、ユニークベニュー活用の好事例として、広く発信してまいります。
 これらにより、地域活性化の視点も踏まえたユニークベニューの活用が他の施設にも広がるよう取り組んでまいります。
〔生活文化局長浜佳葉子君登壇〕

○生活文化局長(浜佳葉子君) プロボノプロジェクトの活用促進についてでございますが、都は、町会、自治会の課題解決のため、企業で培った経験やスキルを生かしたボランティア活動、いわゆるプロボノを活用した支援を実施しております。
 今年度は、町会、自治会の要望を踏まえ、周知、募集期間を十分にとったところ、申し込み前の課題整理を行う準備講座に六十一団体の参加がございました。参加者からは活用に前向きな反応がありましたが、各町会、自治会に効果が十分に伝わりづらかったことなどから、実際の申し込みは二十二団体にとどまったところでございます。
 このため、今後は従来の事例集等による周知に加え、プロボノプロジェクトの効果や成果を実感してもらえるようなきめ細かな取り組みを新たに検討いたします。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 動物の飼い主の高齢化への対応に関するご質問にお答えいたします。
 高齢者は、体力の低下等から動物を適切に飼うことが困難となり、とりわけ、多数の動物を飼っている場合には、生活環境が悪化してしまう深刻な事例も生じております。
 このため、都では、散歩の代行等の民間サービスの利用や地域の動物愛護推進員への相談など、飼養を継続するための助言を盛り込んだ高齢者向けのパンフレットを作成し、区市町村の福祉部門等を通じて配布しております。
 また、多頭飼育問題の対応について、都と区市町村の動物愛護担当者との会議で意見交換等を行っているところです。
 今後は、こうした会議等の場を活用し、高齢者福祉等の関係者との情報共有も進め、都及び区市町村の関係する部門が密接に連携する関係づくりを進めてまいります。

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