令和元年東京都議会会議録第十五号

○副議長(長橋桂一君) 十一番伊藤しょうこう君。
〔十一番伊藤しょうこう君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○十一番(伊藤しょうこう君) 初めに、建設残土の処分場における安全対策について伺います。
 私の地元八王子市には、建設残土の処分場が幾つもあり、このうち上川町にある処分場では、一昨年の台風により大規模な土砂崩落事故が発生しました。付近の都道美山通りが約二カ月間通行どめになるなど、都民生活に甚大な影響を及ぼし、人的被害の可能性すらありました。
 ことしの予算特別委員会においても指摘しましたが、今後こうした事故を起こさないようにすることは、都の重要な責務であります。
 今回の事故現場は、建物を目的としないため、都市計画法の開発許可は適用されず、自然保護条例のみの対象となっていました。すなわち、自然保護条例の開発許可基準は、自然の保護と回復を目的とするため、都市計画法などに比べ、土砂災害を未然に防ぐ点では不十分です。
 また、建設残土の事業者にも、安全に施工を行う者もあれば、不誠実な事業者や、今回の事故現場のように途中で頓挫する可能性もあります。
 よって、事故の再発防止に向けて、都は、監視、指導手法の見直しや地元自治体との連携強化を図るとともに、開発許可制度の見直しにも着手すべきであります。
 豪雨による土砂災害が近年頻発しておりますので、速やかな対応が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、都営住宅に関して二点伺います。
 今年度の組織改正により、住宅政策本部が設置されましたので、迅速な対応を期待し、まず、宅配ボックスの設置について伺います。
 報道によると、ネット通販の普及により宅配便は増加しており、一昨年の取扱個数は約四十二億個で、十年前の約一・三倍となる一方で、再配達率は約一五%とのことです。物流業界も人手不足は深刻で、宅配ボックスの普及は業界負担軽減の切り札として期待が高まっており、宅配便の約九割をカバーするヤマト運輸、佐川急便、日本郵政の大手三社での共用ボックスの検討も進んでいるようです。
 さて、都営住宅は、都内に約二十六万戸、一千六百団地があり、都営住宅内での宅配ボックスの設置は、入居者の利便性向上とともに、深刻な人手不足の解消の一助ともなり得ます。
 さきの第二回定例会でも、我が党が主張した都営住宅での宅配ボックスの設置について、宅配事業者の動向などを把握し、検討を進めるとのことでしたが、その後、どのような検討がなされ、また、設置に向けてどう取り組んでいくのか伺います。
 次に、都営住宅の併存店舗について伺います。
 高度経済成長期において、居住者の利便性向上を目的として誘致した店舗は併存店舗と呼ばれ、昨年時点で約一千区画が残っています。時代が変わり、併存店舗の閉鎖も目立ってきたため、平成十年以降は、都と他の権利者が区分所有する併存店舗つき住棟の建てかえ時には、都が権利を買い取り、都営住宅のみの建設を進めており、三百区画は買い取り済みですが、多くが折衝中であるとのことです。
 このため、現在は、郵便局や診療所など居住者や周辺住民の生活に必要な店舗についても、他の場所への移転を余儀なくされることや、または近隣での移転先用地の確保が困難なケースもあると聞いています。
 よって、建てかえをスムーズに進めるためにも、店舗権利者が近隣で営業継続を希望する場合は、建てかえに協力しつつ営業継続ができる仕組みを整えるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、とうきょう元気農場の今後について伺います。
 都心の学校給食に東京の農産物を供給するため、中央道八王子インターチェンジすぐ近くの都有地を活用して、都は、平成二十三年に、圃場面積約六ヘクタールのとうきょう元気農場を開設いたしました。
 そして、地元の農業者などでつくられた生産組合により、都内十六区、約二百五十校の小中学校に大根、ジャガイモなどの新鮮な農作物を供給しております。学校関係者からも、新鮮でおいしい野菜を届けていただきありがたいと非常に好評であると聞いています。
 現地で生産者にお話をお聞きしましたが、当初は、草が伸び、荒れ放題で厳しい状況であったが、四、五年前ぐらいにようやくいい農地になり、施設や機具も充実し、農作物の供給も安定してきたそうです。また、子供たちに新鮮な野菜を味わってもらい、農業への理解を深めてもらうこの取り組みは、非常にやりがいがあるとの声も聞くことができました。
 このように、学校側も生産者側も高く評価していることから、引き続き、こうした取り組みを実施するとともに、農作業体験などにより、その魅力を現場で伝えることで、子供たちに将来の東京の農業の応援団となってもらうことも必要です。
 そこで、とうきょう元気農場について、学校給食の食材供給拠点としての活用に加え、今後は、地産地消の拡大や食育などの機能のさらなる充実を図ることが重要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、八王子インターチェンジ周辺の都有地の今後について伺います。
 この都有地付近一帯は、ひよどり山と呼ばれ、全体で約二十四ヘクタールもの広さがあり、中央道八王子インターチェンジや国道に囲まれた極めてアクセスのいい場所であります。もともと昭和四十年ごろに、東京都住宅供給公社が住宅用地としての買収を始めましたが、その後の住宅事情の変遷などがあり、結果として住宅の整備を断念し、財務局へ引き継がれたそうです。
 地元八王子市としては、隣接する都立小宮公園の拡張を要望していますが、現在、全体のうち、元気農場を含む農地として産業労働局へ約八ヘクタール、市民農園やキャンプ場として八王子市へ約五ヘクタール貸し出しをしており、残り十一ヘクタールを財務局が管理しています。
 当初の取得目的とは異なっても、農業振興や青少年健全育成などを目的に利用していることは評価できる一方で、都有地と隣接する生産緑地などの民有地も含め、一体として利活用ができれば、さらなる活用の効果も見込めるところであります。
 さて、都が進める大学研究者による事業提案制度でも、緑地と農地と市街地とが一体となった新しいまちづくりの展開を目的として、今年度から調査が始まりました。その中で、このひよどり山を対象に、緑農住のモデルとなる計画の策定や検証を行うことになっています。
 また、都市農地貸借円滑化法が施行され、生産緑地の貸借が可能になるなど、時代の変化に合わせた動きも始まっています。
 よって、地元市や関係者とも意見交換をしながら、この広大な都有地を今後に向けてどのように管理または活用していくのか、都の見解を伺います。
 次に、子供の東京二〇二〇大会観戦に向けた取り組みについても伺います。
 都教委では、オリンピック・パラリンピック教育の集大成として、都内の子供たちが学校単位で競技を観戦する機会を企画しています。公立と私立学校の合計で約九十万人の子供たちが観戦を希望し、現在、チケットの暫定割り当て案を提示していると聞いています。
 さて、オリ・パラ期間中には一千万人を超える観戦客等が東京を訪問すると予測されていますが、真夏の酷暑の中、子供たちを会場へ安全に往復させるのは大変な困難も予想されます。
 移動手段は原則として公共交通機関の利用が前提ですが、多摩地区、特に八王子を含む西部地区では、最寄りの駅まで長時間かかるケースもあり、全ての児童生徒を安全に連れていくためには、貸切バスの使用も必要になる学校も多数存在すると思われます。
 よって、競技会場から遠距離に位置する多摩地区の市町村については、長時間にわたる移動や公共交通機関の不便さを考慮し、幼児や低学年のみならず小中学生にもバスの手配を検討するなど、よりきめ細かく対応すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。(拍手)
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 伊藤しょうこう議員の一般質問にお答えをいたします。
 子供の大会観戦についてでございますが、東京二〇二〇大会を実際に観戦することは、子供たちにかけがえのない心のレガシーを残す貴重な機会でございます。
 会場周辺は交通規制に伴う混雑が予想されますことから、観戦競技の割り当てに当たりましては、安全面への配慮はもとより、公共交通機関の利用を原則といたしまして、移動距離や時間も十分考慮した案を区市町村、学校に提示しているところでございます。
 今後、観戦競技を確定させていく過程において、最寄り駅までの道のりが遠い学校などから寄せられる輸送体制などの声について丁寧に聞き取り、安全な観戦となるよう関係機関と連携しながら適切に対応してまいります。
〔環境局長吉村憲彦君登壇〕

○環境局長(吉村憲彦君) 残土処分場の安全対策についてでございますが、自然保護条例の開発許可制度では、残土処分場を設置する際、都市計画法等が適用されず条例のみの適用となる場合がございますが、その場合に、土砂災害未然防止等に十分対応できないことが課題であると認識しております。
 こうした課題に対応するため、都市計画法を参考に、盛り土の安定等の基準を抜本的に見直してまいります。
 今後、自然環境保全審議会に諮問し、年度内を目途に、監視指導や定期的な巡視、立入検査体制の構築など、見直しの方向性を検討し、自然の保護と回復のみならず災害の未然防止にも一層配慮した制度へと見直してまいります。
〔住宅政策本部長榎本雅人君登壇〕

○住宅政策本部長(榎本雅人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営住宅の宅配ボックスについてでございますが、宅配ボックスの設置は、昼間不在にしているファミリー世帯を初め、居住者の利便性の向上に資するものと考えております。
 複数の配送事業者が共同利用できる宅配ボックスを設置する事業者にヒアリングをし、宅配ボックス利用者の意向、団地の規模など事業性確保の条件、管理方法や費用負担などについて情報収集を行っております。
 今後、配送事業者への利用意向調査や居住者の世帯状況も踏まえた設置場所の検討など、都営住宅における宅配ボックスの設置について、引き続き検討を進めてまいります。
 次に、都営住宅の併存店舗についてでございますが、併存店舗は、都営住宅の建設時に居住者の利便施設として低層階に店舗を建設し、借地権つきで分譲したものでございます。
 こうした店舗では、建てかえや維持管理に当たり、区分所有建物特有の権利関係の複雑さなどが課題となる場合も多いことから、都は、建てかえに際し、再整備は行わず、権利を買い取ることにより事業を進めております。
 しかしながら、近年では、買い取りに当たり、団地内または近隣での営業継続を希望する権利者との折衝が難航し、建てかえがおくれる事例も生じております。
 今後とも、都は、建てかえを円滑に進めていくため、営業継続を希望する事例への対応について方策を検討してまいります。
〔産業労働局長村松明典君登壇〕

○産業労働局長(村松明典君) とうきょう元気農場の活用についてですが、東京農業に対する都民の理解を促進するためには、東京産農産物を味わう地産地消の推進とともに、その生産過程などについて学ぶ食育の取り組みが重要でございます。
 これまで都は、八王子市内の都有地を活用して、とうきょう元気農場を運営し、東京産農産物を給食の材料として都内の小中学校へ安定的に供給してまいりました。
 今後、地産地消や食育の充実を図るためには、より多くの農産物を給食として提供できるよう、生産の拡大に取り組むことに加え、子供たちの収穫体験や農産物の生産に関する学習の機会をふやすことが課題となっております。
 こうしたことを踏まえまして、とうきょう元気農場のさらなる活用について、今後とも取り組んでまいります。
〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 八王子インターチェンジ付近の都有地についてでございますが、都有地は都民から負託を受けた貴重な財産で、都政の課題解決のため利活用を図る必要がございます。
 本用地は、当初、住宅供給公社が住宅用地として買収を進めたことから、広大ではあるものの不整形で、また、高低差のある起伏した形状となっております。
 このように、活用には困難が伴う地形ではあるものの、これまで地元市の意向を踏まえながら、都における農業振興策や市の事業などで活用を図っており、引き続き、庁内、地元市との連携のもと、利活用の推進に努めてまいります。

○議長(尾崎大介君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時五十分休憩

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