令和元年東京都議会会議録第十五号

○議長(尾崎大介君) 二十二番内山真吾君。
〔二十二番内山真吾君登壇〕

○二十二番(内山真吾君) まず、児童相談所一時保護所についてお伺いをいたします。
 昨日の我が会派の代表質問でも取り上げさせていただきましたが、七月十八日の朝日新聞一面に「一時保護所 子の人権侵害」「私語禁止・会話制約」「目を合わせるのも禁止」といった見出しの記事が掲載をされました。
 私もこの記事のもととなりました意見書を読ませていただきましたが、ルールを破ると課せられる個別指導という実質上のペナルティーは、これまで都市伝説とも思われてきたような内容である、体育館を百周だとか、壁に向かって一人でひたすら辞書の書き写しをさせるであるとか、廊下に布団を敷いて寝かせる、食事を壁に向かって一人でとらせるなどが問題点として指摘をされてきました。
 しかも、この破ったルールというのも、私語禁止であるとか、入所時の髪染めに応じなかったなど、そもそもルールに問題があるようなケースが多く、職員が発する、いうことを聞かないと個別指導にするよといった言葉をおどし文句にしての指導が常態化している保護所もあるということです。
 この間、私も一時保護所に入所経験のある子供たちや、支援団体の皆さんからもお話を伺ってきました。その内容は、この意見書の内容と完全に合致しており、心の傷やトラウマを抱えている子供たちに対して、どなり声を上げる、階段の踊り場や廊下に隔離し孤立させるというのは、虐待やネグレクトを想起させる不適切きわまりない指導であると思います。
 主訴が非行である子供たちも、もとをただせば家庭環境に問題を抱えた被害者であるケースが多く、こういった内容が一時保護所の中で行われてきたということは、甚だ遺憾に思います。子供の心のケアを最優先に考えなければならない施設なだけに残念でなりません。
 本年三月の予算特別委員会において、このような内容の一部を指摘し、子供たちが安心した生活を送れていない状況について、そのあり方を質問し、早期の改善を求めました。
 局長より、外出、通学の保障や私物の持ち込み、一時保護児童への支援体制の強化策等について検討していくとの答弁がありましたが、この半年間、本質的な改善が具体的に形になってこなかったのも、重ね重ね残念でなりません。
 人員の加配や定員の拡充等は、実現には少し時間がかかるものもあるのは理解をします。しかし、すぐにでもできることや、数カ月かければできることも多々あり、運営のあり方などは、極端なことを申し上げれば、あすにでも変えられるものです。
 そこでお伺いいたします。
 都は、予算特別委員会からの半年間、一時保護児童への支援体制の強化に向けて、どのように検討を進めてきたのでしょうか。
 また、長期的には人員配置の大幅な見直しと定員の拡充を図らなくてはならない一方で、早期にできることは直ちに着手していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 一方、一時保護所の問題というのは、一時保護所だけに問題があるというものではありません。
 入り口としての保護需要は年々高まってきているものの、出口の受け皿としての児童養護施設の定員にはあきがなく、里親委託もなかなか進まない現状において、一時保護所への滞在の長期化や、一三八%から一五〇%という驚異の入所率の高さというのは、前述いたしました一時保護所の問題の遠因となっているものと考えられます。
 そういった中で、自立援助ホームについても例外ではなく、需要はあるものの、なかなかあきがなく、支援につなげられないという声を耳にします。
 自立援助ホームとは、虐待等何らかの理由で家庭にいられなくなったり、児童養護施設等を退所したりし、社会的自立のために働かざるを得なくなった、原則として十五歳から二十歳までの青少年たちに暮らしの場を与え、自立に向けて支援をしていく施設です。余り認知度は高くありませんが、まさに多くの傷を負いながらも、セーフティーネットに救われ、ここからいよいよリハビリをしながら自立をしていくために頑張っていく子供たちを支える重要な施設です。
 入所率は七七・八%と一見高くないために、既に数としては足りているとの誤解を受けやすい施設ではありますが、そもそも定員が決まっているために一〇〇%を超えての運用ができる施設ではないこと、六名定員の施設が多い中、入所率は月初めの計算となるため、一名でも例えば予約で埋まっていて、月初めにいないということなると、一名で一七%、二名であれば三四%、入所率が落ちてしまうということが指摘をされています。
 また、後述いたしますが、運営資金補助が十分でないため、苛酷な労働環境になりやすく、スタッフの人員確保ができず、定員分受け入れができないなどの現状があり、入所率が一〇〇%に満たないという理由で自立援助ホームは既に足りているという判断にはならないと思います。
 そこでお伺いいたします。
 入居要請があっても断らざるを得ない状況があるなど、現場の声を伺ってみると明らかに自立援助ホームは不足をしており、増設も必要と考えます。今後、まずは入所率によらない需要の実態把握をしていくべきであると考えますが、いかがでしょうか、都の見解を伺います。
 一方、運営面から見たときに、決して潤沢といえないどころか、この事業単体では到底運営できないという切実な声が寄せられています。人件費を初め、運営に要する経費について、さらなる財政支援の拡充を図るべきと考えますが、いかがでしょうか、都の見解を伺います。
 続きまして、フリースクールに通う子供たちへの支援についてお伺いをいたします。
 都内中学校における不登校出現率は年々増加傾向にあり、直近の平成二十九年度では三・七八%、数にして八千七百六十二名で、これは、平均で一クラス当たり一名から二名の不登校生徒がいるという計算になり、平成三十年度の数字はまだ公表されておりませんが、各自治体の状況や昨今の上昇率を見てみると、既に四%を超え、一万人に迫る数字であるということは容易に想像がつきます。
 私は、保育園の待機児童が解消した後には、必ずこの不登校生徒の数が社会問題となってくると確信をしており、早期の対策が求められると思います。
 不登校対策においては、三鷹市のように、〇・三%まで出現率を下げ、ここ数年間その数字を維持している成功した取り組みに学び、出現率を下げるとともに、それでも出てしまう不登校生徒に対して多様な受け皿、学びを保障していくというのが、本来であれば順序であると思います。
 しかし、残念ながら、そうはなっていない現状を考えると、今起きている不登校に対しては、しっかりと社会とつながる支援の枠組みを整えるべきであると感じています。
 その上で、教育支援センター、適応指導教室には、不登校生徒の二割弱の生徒しか支援につながれていない中では、フリースクールの果たしている役割は極めて大きいと思います。
 しかし、フリースクールには学費の補助がないため、家庭の財政的に通える家庭とそうでない家庭が出てきてしまいます。フリースクールの情報があっても、家庭に経済的な余裕がなければ、せっかくつながれたフリースクールに通えないという事態が出ております。
 そのような中、文部科学省は、令和二年度の概算要求の中で、フリースクールに通う不登校児童生徒に対して経済的支援を行う方針を決めたという報道が出ました。
 フリースクールとの連携を強化し、対象児童に対し適切な情報が行くような取り組みを進めるとともに、都としても、都内の学校に在籍する不登校の子供たちが経済的支援を受けられるような支援を行うべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 続きまして、都立学校の校則について伺います。
 先日、柴山文科大臣は、一般的に校則については、各学校がそれぞれの教育目標を達成するために必要かつ合理的な範囲で定めるものであり、校則に基づいて、具体的にどのような手段を用いて指導するかについても、各学校において適切に判断されるべきと考えると述べました。
 その上で、内容については、学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況変化に応じて、絶えず積極的に見直す必要があるのではないか、校則の見直しには、最終的に校長の権限において適切に判断されるべきことだが、校則見直しの際には、児童生徒が話し合う機会を設けたり、保護者から意見を聴取するなど、児童生徒や保護者が何らかの形で参加した上で決めることが望ましいと述べました。
 生徒が、例えば生徒会等において、自分たちで守るべき校則のあり方を議論し、校長に提案し、よりよい学校生活のための議論を重ね、絶えず校則を見直していくということは、自治の校風を育むことにもつながり、生徒たちが校則を自主的に守ろうという意識を醸成することにもつながります。
 逆に、自分たちで議論し、提案したものが一顧だにされず、理由もわからず却下されるということは、真逆の作用を生み出すことにつながり、生徒会が暴走したらどうするんだというような議論は、みずからの指導力や理解力のなさを棚に上げてという指摘もあります。
 そこでお伺いいたします。
 生徒たちが校則を自分たちのものと捉え、議論し、よりよいものにしていくというのは、教育上の観点からも極めて重要だと思います。
 校長の裁量権を制約するものではありませんが、例えば生徒会から上がってきた要望に関しては、必ず校長はその件に対しての判断について説明責任を負うとともに、その内容を公開するなど、その判断が間違った方向に行かないような仕組みづくりは極めて重要です。都教育委員会の見解を求めます。
 一方、まさにこの間、話題に上がってきた黒染め指導なども、校則を変えることができていれば起きなかった問題で、校長の人権意識の欠如や、学校がつい二年ほど前まで、こういった状態の中、生徒を数人で囲んでスプレーを吹きつけ、自主退学まで追い込むような指導が、生徒のためという美辞麗句で行われてきたことの猛省の上に立っていかなくてはなりません。
 そこでお伺いいたします。
 学校が生徒の頭髪を一律に黒染め指導をしないようにするための都教育委員会の対応についてお伺いをいたします。
 最後に、TOKYO子育て応援幼稚園について伺います。
 三月の予算特別委員会でも取り上げさせていただきましたが、待機児童解消に向けては、ゼロ歳児から二歳児への定員拡充こそが、その本丸といっても過言ではありません。
 東京の私立幼稚園では、既に多くの園で、入園前の二歳児に対する、いわゆるプレ保育を実施しております。
 しかし、昨年度の実施が四園にとどまっている状況を見ると、せっかくの取り組みが、よりよくしていこうとの思いから複雑な制度設計になっているため、市区町村や幼稚園の現場で正しく理解されていないケースをこの間、現場からも伺ってまいりました。
 そこでお伺いいたします。
 私立幼稚園での二歳児の受け入れを一層進めていくため、現場の意見を拾いながら、各園の実施に向けた柔軟な支援や説明をしていく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 内山真吾議員の一般質問にお答えいたします。
 フリースクールとの連携についてのご指摘がございました。
 たとえ不登校の状況に至ったとしても、子供たちが学習の機会を失ったり、社会的な自立を妨げられたりすることなく、みずからの将来を切り開いていくことができるように、多様な学びの場で、一人一人の子供に適した支援が行われることは大切であります。
 これまで区市町村の教育支援センターにおきまして、子供の学校復帰に向けた支援などを、民間のフリースクールでは、子供の個性を伸ばす支援などを行って、不登校の子供たちの学びを支えてまいりました。
 教育委員会は、本年度、学校とフリースクールとの間で、子供に身につけさせたい資質、能力や、子供に内在する力を引き出すノウハウを共有するなど、連携のあり方について検討いたしております。
 今後、国の動向も踏まえながら、社会全体で明るい未来を紡いでいくことができますように、東京で学ぶ全ての子供たちを大切に育んでまいりたいと存じます。
 残余のご質問は、教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、校則に関する生徒会等からの要望への対応についてでございますが、生徒会活動及びホームルーム活動は、教員の適切な指導のもとに行われる生徒の自発的、自治的な活動でありますが、こうした活動にも一定の制限や範囲がございます。
 校則等の見直しに関して、生徒会等から要望が出た場合には、生徒の自主性を重んじつつも、その扱いは最終的に校長が判断するものでございまして、その際、生徒が納得するよう指導することが大切であるというふうに考えてございます。
 次に、都立高校等における頭髪指導についてでございますが、学校における生活指導は、一人一人の生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動でございます。
 都教育委員会は、平成二十九年度以降、学校における生徒指導の一環として行われる生徒の頭髪にかかわる指導が適切に実施されるよう、生来の頭髪を一律に黒染めする指導の禁止を徹底してきたところでございます。
 また、校長が保護者から、生徒の生来の髪の毛の色などに関する届け出を求める場合の留意事項についても、あわせて周知を図ってまいりました。
 今後、生徒一人一人の状況を踏まえ、学校と生徒及び保護者との信頼関係に基づいた生徒指導が一層適切に行われるよう、各学校の取り組みを支援してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、一時保護所についてでありますが、都は現在、第三者委員の意見書や外部評価の結果も踏まえ、専門家の意見を聞きながら、一時保護に関して、改めて職員が方針を共有するための要領の策定を進めており、今年度中に取りまとめてまいります。
 また、一時保護所職員としての基本姿勢や、児童への援助方法等を具体的に定めた運営の手引につきましても、要領の策定にあわせて改正することとしており、その中で、個別指導のあり方等も検討してまいります。
 今月から、他の児童に威圧感を与えるなどの理由で実施していた入所時の髪の黒染めを取りやめ、児童の声を聞くための意見箱を設置するなど、改善できることは着手してまいります。児童がより安心して生活できるよう、一時保護所の支援力の向上を図ってまいります。
 次に、自立援助ホームについてでありますが、自立援助ホームは、児童の社会的自立と豊かな人間性の形成に寄与することを目的として、児童養護施設の退所児童等に対し、相談その他の日常生活上の援助及び生活指導等を行っているところでございます。
 本年八月一日現在、都内には自立援助ホームが十八ホームあり、児童の入居定員は百二十六名、全体の平均入居率は約七八%となっております。
 入居実績が低いために一時的に定員を減らさなければならないホームがある一方、入居に期間を要する場合もあると聞いており、今後、入居までに要した期間、その間の調整状況、入居に至らなかった理由など、児童の入居状況について実態を把握してまいります。
 最後に、自立援助ホームへの支援についてでありますが、都として望ましいサービス水準を確保するため、自立援助ホームに対し、国基準を上回る職員配置などに係る経費を都独自に補助するとともに、児童の希望を踏まえた資格取得等の支援を行っております。
 また、児童福祉の実務経験者をジョブトレーナーとして独自に配置し、入居児童及び退去児童の就労定着を促進しているところでございます。
 自立援助ホームの国の職員配置基準は、さまざまな困難を抱える入居児童への支援に十分に対応できるものではないことから、国に対して、被虐待や発達障害など処遇困難な児童への支援を強化するため、人件費加算を創設するよう提案要求しており、引き続き、社会的養護のもとで育つ子供の自立を支援してまいります。
〔生活文化局長浜佳葉子君登壇〕

○生活文化局長(浜佳葉子君) TOKYO子育て応援幼稚園における二歳児の受け入れ促進についてでございますが、都が今年度調査を行ったところ、新たな職員の配置が困難であったり、長時間の二歳児の受け入れが不安であるなどの課題が改めて明らかになりました。
 今後は、この調査から明らかになった課題などを分析し、事業開始に意欲的な園の個別の状況に応じた丁寧な助言を行ってまいります。
 また、TOKYO子育て応援幼稚園事業の実施主体である区市町村に対しては、事業の活用が一層進むよう働きかけを強化し、二歳児の受け入れを着実に進めてまいります。

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