令和元年東京都議会会議録第十五号

○議長(尾崎大介君) 三十七番栗林のり子さん。
〔三十七番栗林のり子君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○三十七番(栗林のり子君) 国連が二〇三〇年に向けた世界の共通目標として掲げる持続可能な開発の目標、九月下旬に予定されている国連総会に合わせて、SDGs首脳級会合が開かれます。そこでは、二〇一五年の目標設定から、この四年間における各国の進捗状況を話し合うことになっています。十七の共通目標に対し、対応を怠れば壊滅的未来が待ち受けているといわれています。
 それを回避するためには、生活の中に十七の目標を行動のベースに取り入れることが重要であり、特に人生基盤の形成期に習慣づけることが必要です。そこで大事なのが、子供たちへの意識啓発であります。
 私の地元、世田谷区立喜多見中学校では、ESDの視点を各教科の授業に取り入れ、学んだことを行動に起こすようにしているとのことです。その一つに、生徒会の提案で、福島ひまわりプロジェクトという企画があります。ヒマワリを育て、収穫した種を送り、福島の大地にヒマワリの花を咲かせるという夢のある活動です。この一つの企画で、福島の復興支援、学校や地域に元気を与える、地球温暖化の防止という三つの目標達成を目指しています。
 こうした学校の事例紹介や交流、またSDGs普及活動に取り組むNPOや民間団体などとも連携し、子供たちにわかりやすく、理解しやすい学習にする必要があります。
 小学校では令和二年度から、中学校では三年度から、新学習指導要領が全面実施となり、これまで以上にSDGsに関する教育の充実が求められます。都教育委員会の取り組みについて所見を求めます。
 次に、十七の目標のうち、四つのテーマに関係することから質問します。
 初めに、障害ひとり親に関する支援について質問します。
 都内では、約十三万世帯のひとり親家庭が生活しています。一生懸命働き、子育てしていたひとり親が、ある日突然、事故や病気で重度の障害者になった場合、そのひとり親を障害ひとり親といいます。多くのひとり親家庭は、働く親の収入に加え、児童の心身の健やかな成長という観点から、児童扶養手当が支給されます。
 一方、障害ひとり親には、働くことが困難になることから、障害年金が支給されるようになります。しかし、障害年金受給者となったことから、それまで支給されていた児童扶養手当の支給はなくなるのです。それは、国民年金法の併給禁止規定により、年金と手当の同時支給が認められていないからです。
 ひとり親に支給されていた児童扶養手当の受給権がなくなるということは、手当だけではなく、JR定期の割引や上下水道減免などの児童扶養手当受給者向けサービスが対象外ということになるのです。ひとり親が障害を抱え養育を担う中、この経済的な打撃ははかり知れません。
 行政に相談すると、生活保護受給か、子供は児童養護施設へとの案内になることが多く、家族が離れ離れになる事態を避け、自力で頑張ろうとする選択の先は大変苛酷なものです。そのため、障害ひとり親家庭は少数といわれています。
 そして、その実態は把握されず、国の法改正の際にも見落とされました。たとえ少数でも、この問題は放置してはならないと、公明党はこの実態を踏まえ、障害年金と児童扶養手当の併給を認める法改正を国へ要求したところであります。
 しかし、子供の成長は待ったなしです。親に障害があるため、子供との外出に制限があるだけでなく、所得も低いことから、旅行やレクリエーション、さまざまな体験、学習の機会も失われます。
 そこで、国の法改正までの間だけでも、都として独自の支援を図るべきと考えます。都の所見を求めます。
 次に、東京都若年被害女性等支援モデル事業について質問します。
 性虐待や性暴力、AV出演強要、JKビジネスなど、若年女性を危険な環境から守るモデル事業が昨年十月スタートしました。都議会公明党が何度も支援の必要性を求めてきた事業であります。
 虐待や性暴力の被害を受け、心に傷を抱える少女や、家や学校に居場所がなく、公園のベンチやネットカフェで過ごす少女、詐欺被害に遭い風俗等に誘導されるなど、一刻も早い救出が求められる中、本事業は大変重要な役割を果たしています。繁華街をパトロールし、キャッチしたSOSを支援につなげるまで、宿泊体制も整えサポートしています。
 先日、事業の委託先を視察させていただきました。事業運営者も若者たちで、相談者との距離が近く本音の相談ができるため、必要な公的支援にも迅速につなげることができるとのことでした。
 最近は一時保護のケースが増加し、部屋が不足し対応が困難になっているため、拡充が必要と感じました。都は既存の婦人保護施設を設置していますが、古くからのイメージもあり、若い女性たちにとり、かなりハードルは高いことから、こうした若年女性専用の一時保護施設は必要です。若い女性の孤立を防ぎ、適切に支援を行う取り組みが大変重要と考えます。
 モデル事業を視察され、また女性活躍を積極的に推進される小池都知事の所見を求めます。
 次に、医療的ケア児の支援について質問します。
 都は都議会公明党の要望を受け、昨年度より特別支援学校への通学支援を開始したことは高く評価いたします。昨日の我が党の代表質問でも、特別支援学校における体制強化を求めました。人工呼吸器が必要な児童生徒も、親の同行なしで通学できる日を待ち望んでいます。
 その解決策の一つとして、訪問看護師が自宅に出向き、一定時間ケアを代替し、家族の休養を図る在宅レスパイト事業を学校でも活用できるようにすることです。
 現在、都の包括補助では、利用上限が年二十四回、一カ月四回と限られていますが、この利用時間、回数をふやすことができれば、週に一、二度でも親の同行なしで通学が可能です。
 在宅レスパイト事業の拡充について、都の所見を求めます。
 また、医療的ケアを必要とする障害児にとり、安心して利用ができる通所施設も必要です。事業者からは、都の重症心身障害児者通所事業所運営費補助の対象が重症心身障害児者に限られているため、医療的ケア児を対象とする事業所の整備が困難との声があります。
 都が制度をつくったころは、医療的ケア児は法律に位置づけられておらず、時代に合わせ、医療的ケア児も対象とする制度が必要です。都の所見を求めます。
 次に、多様性の尊重について質問します。
 このたび条例に続き、東京都性自認及び性的指向に関する基本計画(素案)が策定されました。我が党の要望の多くが反映されており、高く評価するものです。
 しかしながら、本年三月の予算特別委員会で、都議会公明党が取り上げた都のパートナーシップ制度については記載がありません。
 先日私は、四十七都道府県初のパートナーシップ制度を創設した茨城県を訪ね、担当者の説明を伺ってきました。県は、新たな条例を制定したのではなく、男女共同参画推進条例の一部を改正し、いばらきパートナーシップ宣誓制度を制定。要綱をつくり運用しています。県は、宣誓書を受領した際に受領カードを発行し、そのカードを県営住宅の申し込みや県立病院での手術同意等の際に利用できるとのことでした。
 また、民間団体にも適用拡大の周知を図り、不動産取引関係、生命保険関係、医療関係などに協力を依頼しているようです。このように証明書を提示することで、説明が省かれることが重要と考えます。
 こうした制度がつくられることで、社会の認知もより変わり始めます。住みにくさ、生きづらさを取り除き、多様な生き方の尊重という観点からも、都のパートナーシップ制度を基本計画に明記するべきと考えます。都の所見を求めます。
 次に、動物との共生社会について質問します。
 私は昨年の四定でも、ペット殺処分ゼロに協力してくださるボランティアへの支援強化について質問をしました。保護から譲渡へと、地域で汗を流し活躍してくださるのがボランティア団体の皆様です。知事も感謝状授与式など企画され、参加者からは喜びの声が届いています。
 しかし、ボランティア活動を続けるためには大きな費用が必要であり、そのほとんどをボランティアの負担や寄附に頼っているのが現状です。持続可能な制度にするためには、ボランティアの負担軽減策を講じるべきと考えますが、知事の所見を求めます。
 次に、都立産業技術高等専門学校体育館への空調設備の設置について質問します。
 教育庁は我が党の要望を受け、公立小中高等学校体育館の空調設置を進めています。しかし、都立産業技術高等専門学校は教育庁所管ではないため、設置対象施設にはなっていません。
 学生等の利用者の安全を守るためにも、また防災の観点からも、体育館に空調を設置すべきと考えますが、都の所見を求めます。
 最後に、東京ふたり応援会議について質問します。
 結婚を希望する人たちにとっての応援ポータルサイト、TOKYOふたりSTORYがスタートし、大変喜ばれています。私は、この結婚支援の推進を初質問より十年、一貫して求めてきたところですが、このように大きく前進させることができたのは、小池知事の力強いリーダーシップによるものであり、高く評価いたします。
 ことし十一月には、全国結婚支援セミナーin東京が開催されると聞いております。東京から全国へと新たな人と情報の交流も生まれることを期待するものです。
 このイベントの狙いと今後の結婚支援の取り組みについて知事の所見を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 栗林のり子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、若年女性への支援についてのお尋ねがございました。
 虐待や貧困などで家庭に居場所がないなど、さまざまな困難を抱えた若年女性の自立を図るためには、個々のケースに応じたきめ細かな支援が必要であります。
 都は昨年の十月に、こうした女性に対する支援のノウハウを持つ民間団体と連携をいたしまして、SNSを活用した相談や夜間の見回り等のアウトリーチ、一時的な居場所の提供などを行うモデル事業を開始したところであります。
 この事業では、民間団体と福祉事務所、医療機関などが密接に連携をした上で、相互に情報を共有しながら調整等を実施いたしまして、一人一人の状況に応じた適切な支援を行っております。
 また、お話にございましたように、先日、居場所となっている民間団体のシェルターを訪問いたしまして、保護されていた女性たちから直接お話を伺ったところであります。
 また、SNSによる相談の様子を間近に拝見もいたしました。困難を抱えた若年女性への支援が重要だと、このことを改めて認識した次第でございます。
 今後とも、民間団体を初め関係機関と連携をしながら、若年女性への支援を着実に推進をしてまいります。
 次に、動物愛護ボランティアの負担の軽減についてのご指摘でございます。
 私は、二〇二〇年に向けた実行プランで、誰もが優しさを感じられるまちの実現を目指して、動物の引き取り数の減少や譲渡機会の拡大に向けました取り組みを進めることで、動物の殺処分をゼロにするという目標を掲げまして、動物愛護施策を進めてまいった次第でございます。
 この目標を一年前倒しで達成できておりますのは、多くのボランティア団体の方々の献身的な活動によるところが大きいものがございます。
 また、去る五月には、動物の殺処分ゼロの達成に大きくご貢献いただいた方々に、私から直接感謝の言葉も述べさせていただいております。その折にも、日々の取り組みの中で地域の理解が得られないこともあるなど、さまざまなご苦労があることも伺いました。
 動物の殺処分ゼロを継続して、人と動物との共生社会を実現していくためには、これからも多くのお力添えが必要不可欠だと考えております。
 引き続きまして団体の方々と連携協力をいたしまして、動物愛護の取り組みを進めていけますよう、今後、ボランティア団体等の負担軽減に向けた支援につきましても検討してまいりたいと思います。
 最後に、結婚支援の取り組みについてのご質問がございました。
 都は、結婚を希望しながらも一歩を踏み出せないでいる人を後押しする、そのために結婚に向けた機運の醸成に取り組んでおります。
 これまでポータルサイトによる情報発信や、さまざまな主体との連携による出会いの機会の提供、ライフプランを考えるセミナーの開催など、幅広く取り組みを展開してまいりまして、セミナーの参加者の八割を超える方々から、結婚や婚活に対して前向きになれたとのご回答をいただくなど、手応えを感じているところでございます。
 ことし十一月に開催をいたします全国結婚支援セミナー東京ふたり応援会議におきましては、全国の行政関係者など一堂に会しまして、地域が抱えます結婚に対する課題の議論や、また先進事例の紹介を行います。これによって、自治体間でさまざまな知見を共有して、日本全体で結婚支援を推進する契機としてまいりたい。
 また、今年度はさらに、多様な夫婦のエピソードを募集いたしまして、結婚を希望する人が自分らしい結婚や婚活について考える際の参考としていただきたいと存じます。
 また、結婚に関心のある多くの都民が参加できます結婚応援イベントを開催して、機運の醸成を一層図ってまいります。
 今後とも、個人の価値観や人生観に十分配慮しつつ、結婚支援に積極的に取り組んでまいります。
 残余のご質問は、教育長及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長藤田裕司君登壇〕

○教育長(藤田裕司君) SDGsに関する教育についてでございますが、これからの社会に生きる子供たちには、自然環境や地域、地球規模の諸課題等をみずからの課題と捉え、協働して解決するなど、持続可能な社会のつくり手としての資質や能力を身につけることが求められております。
 そのため、都教育委員会は、小中高等学校等の中から、持続可能な社会づくりに向けた教育推進校を指定し、その実践の成果を都内全ての公立学校に周知するなどして、各学校の実態に応じた取り組みを促進してまいりました。
 今後、新学習指導要領を踏まえ、地域や関係団体の方を招いて、子供たちがSDGsに関する内容について体験を通して学ぶといった先進的な学校の取り組みを広く全都に発信するなど、持続可能な社会の実現のために貢献できる人材の育成に向けた教育の一層の充実を図ってまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、障害のあるひとり親家庭への支援についてでありますが、都は、ひとり親家庭自立支援計画に基づき、相談体制の整備、就業支援、子育て支援・生活の場の整備、経済的支援を柱に、ひとり親家庭への支援に取り組んでおります。
 ひとり親家庭の生活の安定と自立の促進を目的とする児童扶養手当は、児童扶養手当法に基づく国の制度であり、公的年金等と両方を受給する場合の取り扱いにつきましては、お話のように、国の責任で対応すべきものと考えております。
 一方、都は、公的年金等の受給にかかわらず、児童育成手当を独自に支給しているところでございます。
 都は現在、次期計画の策定を進めておりますが、さまざまな状況にあるひとり親家庭が安定した就労や生活のもと児童を健全に育めるよう、支援の充実を図ってまいります。
 次に、在宅レスパイト事業についてでありますが、都は、重症心身障害児者や医療的ケア児の家族の休養を目的に、看護師が自宅を訪問し、家族にかわって一定時間ケアを行う在宅レスパイト事業を実施する区市町村を包括補助で支援しており、現在二十一区六市が医療的ケア児を対象とした事業を実施しております。
 本事業を拡充するためには、医療的ケア児等の支援に対応できる訪問看護師や事業者の確保が課題となっております。
 このため、都は、訪問看護師の育成研修を行うとともに、支援のノウハウを有する訪問看護ステーションが他の事業者からの運営相談に応じたり、同行訪問などの実践的な研修等を行うモデル事業を実施しており、今後もこうした取り組みを通じ、区市町村が在宅レスパイト事業を活用できるよう、積極的に支援してまいります。
 最後に、医療的ケア児を対象とする通所事業所についてでありますが、都は、重症心身障害児者が通所する事業所が、看護師等の増配置やリフトつきバスの確保など、都が求める水準を確保できるよう独自の基準単価を定め、国の報酬額による報酬単価との差額を補助しております。
 医療的ケア児に対応する通所事業所につきましては、昨年度の障害福祉サービス等報酬改定で、医療的ケア児を受け入れるための看護職員加配加算等が創設されましたが、医療的ケアの内容、心身の障害の程度や重複の状況など、その特性を踏まえたさらなる評価が必要であると考えております。
 このため、医療的ケア児の受け入れ状況等の実態を踏まえ、適切な報酬上の評価について検討を行うよう国に提案要求するとともに、医療的ケア児の特性や取り巻く環境等も踏まえ、支援の充実に取り組んでまいります。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都性自認及び性的指向に関する基本計画についてでございますが、今般、人権尊重条例に基づき基本計画の素案を策定し、都庁各局の施策現場において、当事者が直面するさまざまな場面での困り事を可能な限り解消していくための取り組みを示し、現在パブリックコメントを行っているところでございます。
 一方、同性パートナーシップ制度は、婚姻関係のあり方そのものにかかわるものでございまして、戸籍制度や住民基本台帳制度との整合などの課題もあることから、広範な国民的議論が必要であると認識をしております。
 引き続き、さまざまな意見を伺いながら、社会情勢やそれぞれの現場における実態も踏まえ、基本計画の策定を進めてまいります。
 次に、都立産業技術高等専門学校の体育館への空調設備の設置についてでございますが、高専品川、荒川両キャンパスの体育館は、学生の教育活動に使用されるだけではなく、災害時には地元区との協定により、周辺住民の避難所や他自治体等から派遣され、対応に当たる応援職員の宿舎等として使用されます。
 昨今の厳しい暑さの中、このように平時の学生利用に加え、災害時の活用も予定される体育館への空調の設置は、利用者の安全を確保する上で非常に重要でございます。
 そのため、まず今年度、体育館の構造を踏まえた適切な空調方式や設備の設置場所、電源の確保、断熱措置などの方法について調査を行うことといたします。
 体育館の安全・安心な利用に向け、調査結果を踏まえた整備が着実に進むよう、都としても支援をしてまいります。

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