令和元年東京都議会会議録第十一号

○議長(尾崎大介君) 三番成清梨沙子さん。
〔三番成清梨沙子君登壇〕

○三番(成清梨沙子君) 二〇二〇改革プランについて伺います。
 昨年三月に示された二〇二〇改革プランの初めてのバージョンアップが行われ、改定版のプランが本年三月に示されました。初めてのバージョンアップである今回の改定版のプランをしっかりと検証することは極めて重要です。
 二〇二〇改革の原則は、職員がみずから進める自律改革ですが、二〇二〇改革の実効性を高めるためには、外部の視点を取り入れていくことも有用です。
 昨年度、特別顧問が廃止され、職員主体の体制に移行し、その上で、経営者、行政改革などの専門家による都政改革アドバイザリー会議が新たに設置されました。
 万が一にも、職員主体となったことにより改革が停滞してしまっているのではないかという懸念を都民に持たれることのないように、こうした外部の意見も活用しながら、PDCAサイクルを絶え間なくバージョンアップしていく必要があります。
 二〇二〇改革プランのバージョンアップに際しての都政改革アドバイザリー会議の活用状況と、それを踏まえて、今後のPDCAサイクルのあり方について、都の見解を伺います。
 政策連携団体における役員の構成について伺います。
 これまでの政策連携団体改革の流れを受け、政策連携団体は都とともに政策実現を目指していく団体としての位置づけが明確にされ、各団体にはさらに高度な役割が期待されることになりました。
 こうした期待のもと、政策連携団体の機能強化を実現していくためには、経営層の果たす役割が重要です。
 また、平成三十一年二月に出された東京水道サービス株式会社に対する特別監察報告書では、TSS社の管理職や役員ポストのほとんどを都派遣と都OB職員が占めているという問題点や、取締役会及び監査役が形骸化しているといった問題点が挙げられています。
 政策連携団体は、都が出資、出捐を行うなど、都関係者が役員を担うことに一定の合理性はありますが、今後はコンプライアンス強化、経営力の強化のために、民間人材や現場を最もよく知るプロパー人材を経営層へ登用し、理事会や取締役会を活性化していくことが重要であると考えます。
 都庁グループの機能を高めるため、民間人材の登用を含め、今後の団体の役員の構成をどのように見直していくのか伺います。
 都立病院について伺います。
 都は、医療サービスの向上に貢献するため、八つの都立病院を運営しています。現在、東京都における一般会計から病院会計への公費投入額は約四百億円に上り、行政的医療について都立病院に課せられる役割は重要ですが、都立病院の経営と、それを取り巻く環境については長年の課題となっています。
 都立病院新改革実行プラン二〇一八に示された計画では、六年間での収支の累積改善額は約五十一億円であり、一年間では約八・五億円程度となります。年間の公費投入額が約四百億円であることに照らすと、一層の経営改善が必要不可欠であることはいうまでもありません。
 また、地元区民からは、都立墨東病院の優秀な医師は他の病院に引き抜かれてしまうという声が届くなど、人事面、運営面でも改善が必要です。これらの課題解決のため、独立行政法人化に向けた検討も現在行われているところであり、最適な組織形態のあり方について速やかに検討していただくことを求めておきます。
 そして、その結論を待たずしても、持続可能な行政的医療の提供のための抜本的な経営改革を行うことは急務です。都立病院が提供している医療の中には、民間病院でも提供している分野もあり、改めて民間のノウハウを参考にすると同時に、民間病院等との機能分担を踏まえた繰入金の対象、算定方法の精査といった経営改革に早急に取り組むべきであると考えます。都の取り組みを伺います。
 病児保育について伺います。
 先日公表されましたように、都内全域で待機児童数が大きく減少しています。保育サービスは、定員拡大という量の点に加えて、都民の多様なニーズに対応することも重要です。
 通常の保育園では対応できない病児、病後児の保育施設は、区市町村の整備状況が一様ではありません。さらに、病児保育特有の問題として、利用当日のキャンセル発生と、キャンセル待ちの親とのマッチングがスムーズに行われない等の問題もあります。
 引き続き、区市町村に対して、国や都の支援を活用して病児保育施設数をふやすよう促すとともに、私たちの提案を受け、都の本年度予算に盛り込まれた新規事業である既存の病児保育施設の稼働率を向上させるための取り組みを推進すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 男性都庁職員の育児休業取得促進について伺います。
 国会において、男性の育休義務化を目指す議員連盟が発足するなど、男性の家庭活躍を促す機運は高まっています。都庁においてもさまざまな取り組みを進めてきましたが、平成三十一年度の男性職員の育児休業取得率の目標値が一五%であるのに対し、直近の平成二十九年度の数値は七%となっており、より一層の取り組みが求められます。
 男性が育休を取得しない理由としては、職場の理解、忙しさなどが挙げられますが、都庁においても、より詳細な理由を調査する必要があると考えます。また、昨年開催された都政改革アドバイザリー会議では、組織のトップが育休を取得したことをきっかけに、男性職員の育児休業取得率が大きく上がったということが例示され、男性管理職の目標をしっかりと上げていくことの重要性が指摘されていました。
 そこで、管理職を初めとする男性都庁職員の育休取得を推進すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 子育ての見守りについて伺います。
 子供連れが出かける際に最も困るのは、バス、電車などでの移動の際に子供が泣いてしまうということです。子供が公共の場で泣いてしまうことでのいづらさを感じる親も多く、また、保育園などでは、騒音をめぐって近隣から苦情を受けるなどの事象も多く見られます。
 公共の場での配慮はもちろん必要であることはいうまでもありませんが、子供を育てやすい環境をつくり上げていくためには周囲の寛容さが不可欠であることもまた事実であります。
 来年、いよいよ東京二〇二〇大会が開催されますが、子供連れの外国人の方々も多くいらっしゃることと思います。子育て、子供に優しい環境を整えることは、ホストシティーとしての責務ともいえます。
 こうした観点から、私たち都民ファーストの会東京都議団は、今の東京における子育てのしづらさ、不寛容さともいうべきものを変えていくための取り組みの一つとして、子育て応援車両を導入すべきと提案し、関連施策に盛り込まれています。
 そして今、個人の意思表示として、泣いてもいいよシールというものに注目が集まっております。
 東京都としても、都営地下鉄の子育て応援スペースというハード面での整備にあわせ、公共の場での子育て見守りの機運醸成をさらに進めていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 子供、子育て支援を進める上で、児童虐待は断じて許されません。昨日、福祉保健局のホームページにおいて、本来、東京都児童虐待防止推進キャラクターと記載すべきところを、東京都児童虐待推進キャラクターと誤記されているという信じられないニュースが報道されました。当然、人の行うことには間違いが生じることもありますが、その中にも絶対に間違えてはいけないこともあります。
 折しも、札幌市で二歳の女の子が児童虐待により衰弱死するという痛ましい事件が起き、児童相談所のあり方そのものが問われている中で、この間違いは決して起こってはならないものでした。心から残念に思うとともに、憤りを感じます。
 そこで、今回発生した誤記の事態をどのように捉えているのか、知事の考えを伺います。
 また、加えて、当事者である福祉保健局においては、こうした公表物に対してどのようなチェック体制を設けているのか、そして、こうしたあるまじき事態の再発防止に向けてどのような対策を講じていくのか伺います。
 都立学校における新たな学びのあり方について伺います。
 教育こそ人への投資の最たるものです。ソサエティー五・〇においては、グローバル化の一層の進展やAIの台頭など、変化の激しい時代となり、その中をたくましく生き抜く力を子供たちが身につけられるよう、特色ある学校教育をさらに推進していく必要があると考えます。
 今般、東京都教育委員会では、国内外の多様な機関と連携したダイバース・リンク・トウキョウ・エデュを構築する取り組みを開始したと伺いました。この取り組みを世界をリードするグローバル人材育成につなげていくべきと考えますが、ダイバース・リンク・トウキョウ・エデュの具体的な目的や取り組みについて伺います。
 最後に、大規模水害対策について伺います。
 水害が心配される季節となりました。東部低地帯五区を初めとした都市部においては、一たび大規模水害が発生すると、人的のみならず経済的にも甚大な被害が発生し、深刻な影響をもたらします。
 江東五区大規模水害広域避難計画によれば、台風が接近する七十二時間前には避難開始時期等について共同検討を開始することとされています。
 また、避難実施の際には、行政区域を越えた避難先や移動手段の速やかな確保が必要となります。いつから避難を始めるのかといった判断や、広域避難を行うための避難場所や手段を検討していく必要がありますが、これらを実施するためには、都が主導的な役割のもと、区市町村を支援していく必要があります。
 そのため、都は国と共同で、首都圏における大規模水害広域避難検討会を設置し、広域避難のあり方の検討を進めています。
 検討会では、昨年度末に広域避難に係る基本的な考え方を取りまとめているところですが、今年度、その具体化に向けどのような検討を進めていくのか伺い、質問を終了します。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 成清梨沙子議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、男性職員の育児休業取得についてのご質問がございました。
 男性の育児参加は女性がさらに活躍していくために、働き方の見直しとあわせまして重要な課題でございます。また、男性職員にとっても、育児は人間性を成長させるとともに、自身の働き方を見詰め直すことにつながる貴重な機会でもございます。
 都はこれまで、男女ともに職員が育児と仕事を両立しながら力を発揮できるように、テレワークや柔軟な勤務時間制度を導入するなど、働き方改革を強力に進めてまいりました。
 さらに、ことしの一月からは、配偶者の妊娠が判明した男性職員に対しては、休暇取得や育児期の働き方につきまして、上司が面談を行うなど、男性職員の育児休業取得を後押ししております。
 今後は、職員の育児休業取得に関しての実態調査を実施いたしまして、管理職を含めた男性職員の一層の取得促進に活用してまいります。
 こうした取り組みを進めることで、職場全体で育児を支援する機運を醸成して、育児休業取得率の向上とともに職員のライフワークバランスの実現を目指してまいりたいと考えております。
 次に、子育てを応援する機運の醸成についてでございます。
 お話がありましたように、子育てに関して周りの理解が得にくい、そのために子供を連れて外出することに不安を感じる方もいらっしゃるということについては認識をいたしております。
 誰もが安心して子供を産み育てることができる、そんな環境を整備していくためには、都民、企業、そして行政など、社会全体が連携して取り組むということが重要であります。
 そこで、都といたしまして、経済、流通、交通、教育、保育など、さまざまな分野の機関、そして学識経験者で構成をいたします、子育て応援とうきょう会議を設置いたしております。この会議の趣旨に賛同する約六百の団体が地域で協働して、ともに働いて、機運醸成に取り組むとともに、子育てに役立つ情報を発信するなど、さまざまな取り組みを進めております。
 また、子育て家庭や妊婦さんを対象として、地域の店舗などが、おむつかえスペースであるとか商品の割引サービスなどを提供したりと、子育て応援とうきょうパスポート事業というものがございますが、現在約四千四百の店舗などの協賛を得ているところでございます。
 東京全体にこうした取り組みが広がりますように、地域で子育て支援に積極的に取り組んで、団体や事業者のネットワークを生かしながら協働の輪をさらに広げて、社会全体で子育てを応援する機運の醸成を一層推進してまいりたいと考えております。
 最後に、児童虐待防止公式ホームページの誤った記載、誤記についてのご指摘がありました。
 今般リニューアルした都の児童虐待防止公式ホームページでございますが、そこにあってはならない誤記があったことについて、知事として重く受けとめております。心からおわびを申し上げます。また、常に緊張感を持ちまして業務を遂行して、皆様の信頼回復に努めますように、所管局に指示をしたところでございます。
 なお、その他のご質問につきましては、教育長及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) ダイバース・リンク・トウキョウ・エデュの目的や取り組みについてでございますが、子供たちがソサエティー五・〇の社会において活躍できるようにするためには、世界的な視野や深い思考力、他者と協働する力、創造性等を培うことが重要でございます。
 このため、都教育委員会は、海外の教育行政機関や国内外の大学、グローバル企業等の協力を得て、社会や世界と学校とをつなぐ新たな学びのプラットホームとして、ダイバース・リンク・トウキョウ・エデュを構築してまいります。
 具体的には、拠点となる都立高校等において、英語やICTを積極的に活用し、大学教員や企業の社員、国内外の学校等との対話的な活動や、文系、理系を融合したカリキュラムにより、体験的で高度な探求学習を実施してまいります。
 こうした取り組みを順次広げ、東京ならではのネットワークを最大限に生かした新しい学びを実現してまいります。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、都政改革のPDCAサイクルについてでございますが、都政の自律改革を着実に推進していくためには、幅広い観点から意見を取り入れていくことが重要でございます。そのため、昨年度には企業経営などの専門家で構成する都政改革アドバイザリー会議を設置し、ペーパーレス等の三つのレスや女性活躍の取り組みを強化するなど、委員からの助言を二〇二〇改革プランの改定に反映をいたしました。
 今年度から、都政改革のPDCAサイクルを徹底するため、新たに政策評価を導入し、今月には、アドバイザリー会議のもとに設置した政策評価分科会において、評価制度の具体的検討を開始いたします。
 今後とも、こうした評価制度を初め、外部有識者の知見を活用しながら、PDCAの質を高め、さらに改革を推進してまいります。
 次に、政策連携団体の役員構成の見直しについてでございますが、都が抱える課題を解決し、三つのシティーを実現していくためには、政策連携団体がその役割を高度化させ、新たなミッションに取り組むとともに、その知見を都の施策にフィードバックするなど、都と政策連携団体を含めた都庁グループ全体の機能を高めていくことが重要でございます。
 こうした認識のもと、改革の実施方針に基づき、個々の団体の特性やガバナンスに配慮しつつ、経営戦略について多角的な検討ができるように、常勤役員のポスト数や都関係者の割合を見直すことといたしました。
 今後、コンプライアンスや内部統制を含め、団体の経営戦略の実現に適した民間人材や、業務に精通したプロパー職員等を積極的に登用して、役員構成のベストミックスを図り、団体の経営力をさらに強化させてまいります。
 最後に、東部低地帯における水害対策についてでございますが、都が国と共同で設置した検討会では、本年三月、広域避難場所や避難手段の確保について、基本的な考え方を取りまとめました。
 これに基づき、今年度は、台風や高潮などの災害のパターン別に、区市町村が広域避難を行う際の手順などの枠組みを検討するとともに、鉄道事業者との間で臨時ダイヤを盛り込んだ運行計画を策定するなど、広域避難時の住民の移動手段を検討いたします。
 また、区市町村間の移動経路や避難者数を考慮したシミュレーションを行いまして、広域避難自治体と受け入れ自治体との組み合わせ案を策定してまいります。
 こうした検討を進め、今年度末に、区市町村を初めとする関係機関の役割分担や時系列的な連携のあり方を最終報告として取りまとめてまいります。
〔病院経営本部長堤雅史君登壇〕

○病院経営本部長(堤雅史君) 都立病院における経営改革の取り組みについてでございますが、病院経営本部は昨年度、全ての都立病院の副院長が参画する経営改善推進プロジェクトチームを設置いたしました。このPTでは、民間病院の取り組みを含めたすぐれた事例を共有し、可能なものから導入を図ってきております。
 都立病院が、行政的医療を将来にわたり提供していくためには、一般会計からの適正な繰り入れは不可欠でございますが、都はこれまでも、繰入金の対象範囲などについて見直しを行ってまいりました。
 今後も、都内の医療提供体制の充足状況等を踏まえつつ、対象範囲の厳格化や繰り入れ算定方法のさらなる精緻化など、繰入金の適正化に取り組んでまいります。
 こうした取り組みを進めまして、安定的かつ継続的に行政的医療を提供することで、都民の生命と健康を守るという使命を果たしてまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まずは、先ほど知事からもお話がありました児童虐待防止公式ホームページの誤記についてでございますが、本年四月から東京都子供への虐待の防止等に関する条例を施行し、社会全体で児童虐待防止への理解を深め、その防止に関する取り組みを推進していこうとする、まさにそのやさきにこのようなミスを起こしたことに対しまして、所管局長として責任を痛感しております。
 都議会の皆様、都民の皆様に対し、不快や不安な思いを抱かせてしまったこと、改めまして、心よりおわび申し上げます。
 今回の事態は、児童虐待防止に係る普及啓発強化のために、ホームページをリニューアルする際のチェック体制が不十分だったことから生じたものと認識しております。
 今後、このようなことを二度と起こさないよう、局事業全般にわたり、職員一人一人が細心の注意を払って職務に当たるとともに、各段階におきます二重、三重のチェック体制を設けるなど、まさに私、局長、率先して再発防止に徹底してまいりたいと思います。
 次に、病児保育事業についてでございますが、都は、区市町村の病児保育の取り組みを促進するため、病児保育施設の整備費や改修費を補助するとともに、複数の区市町村で利用する施設を整備する場合には、整備費や賃借料等の区市町村負担分を全て都が負担しているところでございます。
 また、病児保育施設が、病児の利用の少ない日に、施設の人材やノウハウを活用して、地域の保育所への情報提供、巡回支援等を行う場合に支援しているところでもございます。
 さらに今年度は、施設の利用を希望する方がインターネットで施設の空き状況の照会や予約を行えるよう、システムを構築する区市町村への補助を開始いたしました。
 今後も、利用者の利便性、施設稼働率の向上に取り組む区市町村を支援してまいります。

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