令和元年東京都議会会議録第十一号

○議長(尾崎大介君) 八十八番村松一希君。
〔八十八番村松一希君登壇〕

○八十八番(村松一希君) 昭和から平成への御代がわりでは、世界では米ソ冷戦が終結し、二つの経済圏に分かれていた市場が一つになり、世界経済は大きく拡大しました。他方で、政治的には、イスラム過激派との戦いや各地の内戦により、多くの難民が発生し続けています。
 平成から令和への御代がわりでは、中国共産党一党支配体制を維持しつつ自由主義経済に参加した中国が、その蓄積した富で一帯一路経済圏の形成と軍事力の拡大に邁進し、世界への影響力を拡大しています。米中経済摩擦は、このような状況の中で起きているものであって、世界経済や日本経済への影響は、広範かつ長期にわたることも予測されます。
 とすれば、景気動向に左右されやすい収入構造にある東京都の財政は、来年度からの本格的な国による都税の収奪や景気後退の事態にも対応しつつ、都民生活の需要を満たすことができるよう、一層賢い支出を推進し、本格的な行財政改革、東京大改革に着手していかなければなりません。
 国では、水道法を初めとして、既に地方公営企業の経営見直しや民営化が進められています。
 水道法改正の趣旨は、スケールメリットを生かして効率的な事業運営を可能にする広域連携の推進、水道管の計画的な更新や耐震化を進める基礎となる適切な資産管理の推進、民間の技術力や経営ノウハウを活用する多様な官民連携の推進にあると説明されています。
 また、今回改正により、給水責任を自治体に残した上で、厚生労働大臣の許可を受けてコンセッション方式を実施可能になりました。
 東京都でも、この水道法改正を受け、さまざまな検討を進めることと理解していますが、東京都がほかの地方自治体と根本的に異なるのは、政策連携団体が、人事的にも経営的にも都庁への依存度が非常に高いことです。これでは、水道法改正の趣旨である民間の技術力や経営ノウハウを活用する多様な官民連携の推進ではなく、水道局が外に拡大しただけということになります。
 水道局では、政策連携団体を統合し、その強みを生かして都の水道事業の一翼を担うとともに、包括委託等の受け皿としての事業展開を検討するとしていますが、その具体的な方策について、ご所見を伺います。
 東京水道サービス株式会社で続発する不祥事に関する都の特別監察においては、同社の内部統制やコンプライアンスに対する意識の低さ、課長ポストの約九割を都派遣と都OB職員が占め、固有社員のモチベーションが喪失されるなど、不正の温床となり得る危険性を内在した社員構成や人事システム、水道局への依存と主体性の衰退、水道局のガバナンスの甘さなどが、同社の内部統制上の課題として指摘されています。
 このような内部統制上の課題の改善に向け、真に物いう民間人材の経営層への登用など、外部の第三者目線による監視、内部統制の確立について提言されています。
 コンプライアンス確保は、公的サービスの担い手である政策連携団体においては大前提です。
 政策連携団体の活用方策として、先月、東京都政策連携団体活用戦略が発表されました。これまでの監理団体制度を見直し、現在の都政との関係性に着目した上で、一定の基準を満たす団体を事業協力団体として、その中でも特に都政との関連性が高い団体を政策連携団体として定義するとともに、団体の事業や都との役割分担などの将来像について描かれており、非常に重要な視点であると理解をしております。
 しかしながら、前述した東京水道サービス株式会社に対する都の特別監察で指摘されたような構造的な課題に対応する内容にはなっておりません。
 各政策連携団体について、構造的な課題は、団体の内部だけでは解決できないと感じます。第三者の意見を取り入れながら、課題解決に向けた取り組みを進める必要があると考えますが、知事の見解を伺います。
 続いて、現在行われている事業の見直し、効率化について伺います。
 水道局では、水道事業の理解促進とニーズ調査を目的とし、水道あんしん診断を実施しています。事業目的は理解できますが、事業目的に対してその内容が過剰である点は、我が会派の監理団体検証チームを初めとした議員から、機会を捉えて指摘してまいりました。
 事業計画では、七百五十万件の水道使用者に実施予定ですが、四年間で三十六億円をかけ、昨年度までに終了した五百七十五万件の水道あんしん診断事業による漏水発見件数も〇・〇八七%であり、成果とは受け取れませんし、この事業によりアンケートをとっておりますが、アンケートの方法や内容についても課題と感じます。
 全水道使用者の診断を目標に掲げて事業をスタートしたということですが、事業を進める中で目的達成のための手法を検証し、変えていく必要があり、効果が見られない事業については途中でやめることも必要であると考えます。
 水道あんしん診断については今年度が最終年度とのことですが、水道あんしん診断事業にかかわらず、今後の事業執行に当たっては、事業の途中であっても見直しをし、水道事業のさらなる発展のために効果的に予算を配分しなければならないと考えますが、都のご所見を伺います。
 次に、水道局におけるICTを用いたお客様サービスの向上についてです。
 今後、都民の安定給水を確保し、水道事業を持続的に展開していくには、ICTの活用が不可欠です。とりわけ、事業の最前線であるお客様サービス部門において、ICTの導入を積極的に進めていく必要があります。
 局では、現在、お客様対応についてAIの活用に取り組んでいると聞いていますが、公営企業委員会の質疑の中で、我が会派の鈴木議員からも指摘いたしましたお客様センターのAI活用については、実現に向けた検討を速やかに進めていただくよう要望いたします。
 また、キャッシュレス決済の拡大も重要です。
 二〇一七年六月に閣議決定された未来投資戦略二〇一七では、十年後、二〇二七年までにキャッシュレス決済比率を四割程度とすることを目指すとしており、東京二〇二〇大会を踏まえて、キャッシュレス決済は拡大の一途をたどっています。
 税金や公共料金の分野でも、私の地元練馬区でも、本年四月から区民税納付のキャッシュレス化が実現しています。水道料金の支払いは、口座振替等もありますが、まだ請求書払いが行われています。キャッシュレス化が進む現在、水道料金の支払いにおいても、早急にキャッシュレスの拡大を進めるべきと考えます。
 AI、キャッシュレスなどICTの進展が加速化する中、お客様サービスにこうした技術を積極的に導入して、お客様の利便性の一層の向上を図るべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、下水道事業について伺います。
 東京二〇二〇大会を来年の夏に控え、大会の開催に向けた準備の総仕上げの期間といえます。都としても、各局でレガシーの創出を意識されていることと思います。
 一九六四年の前回大会では、新幹線等の交通網や下水道が飛躍的に整備されるなど、大会を契機としたインフラ整備は、高度経済成長を牽引したとともに、水環境の改善に大きく貢献したと理解しております。
 汚れた水を浄化し、再び水循環のサイクルに戻している下水道の役割は、その後さらに広がり、現在では、下水処理水をさらに高度に処理した再生水をトイレ用水に活用するなど、持続可能な資源循環型社会の実現に大きな役割を果たしています。
 東京二〇二〇大会では、安全・安心の大会開催に向けた取り組みはもとより、世界が気候変動や天然資源枯渇の懸念など共通の課題に直面している中、持続可能な社会の実現に向けたインフラを都民の貴重な財産として未来に引き継いでいく取り組みも必要だと考えます。
 大会を契機に、東京がさらに成熟した都市として進化し、次世代への価値あるレガシーを創出していくためには、再生水の活用を拡大すべきと考えますが、下水道局の所見を伺います。
 次に、東京二〇二〇大会に向け、また、その後のレガシーを意識した都営地下鉄のインバウンド対策について伺います。
 近年、訪都外国人旅行者は年々増加しており、五月末の産業労働局の発表によると、平成三十年に都を訪れた外国人旅行者数は約千四百二十四万人に上り、過去最高を更新しました。そして、令和の時代を迎え、ラグビーワールドカップ二〇一九開催までちょうど百日となり、東京二〇二〇大会もいよいよ一年後に迫るなど、まさに今、東京は世界から最も注目される都市となっており、今後、さらに訪都外国人旅行者は増加することが予想されます。
 そのため、都は、東京二〇二〇大会の開催都市として、大会期間中に東京を訪れる外国人旅行者が、快適に、そして安心して都内を移動できる環境を整備していくことが必要です。
 都営地下鉄ではこれまでも、多言語による案内や無料Wi-Fiが利用できる環境の拡大など、さまざまな取り組みを進めていますが、それにとどまらず、東京二〇二〇大会の成功に向け、都営地下鉄における外国人旅行者の受け入れ環境の整備をさらに加速させていかなければならないと考えます。
 そこで、東京二〇二〇大会に向けた都営地下鉄におけるインバウンド対策について、今後の具体的な取り組みを伺います。
 以上で質問を終わります。
 ご清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 村松一希議員の一般質問にお答えをいたします。
 政策連携団体の課題解決に向けた取り組みについてのご質問がございました。
 私は常々、改革の担い手は一人一人の職員であり、都政改革の柱は自律改革、自分で律する自律改革と申し上げてまいりました。
 都とともに政策実現を目指します政策連携団体においても自律的な改革を進め、課題解決に邁進していくことは重要でございます。
 一方で、団体による改革の実効性を高めていくためには、団体や団体を所管する局以外の第三者的な立場からの意見、そして助言を得ていくことも有効でございます。
 現在、都では、政策連携団体に対しまして、コンプライアンスなどの自己点検の実施を求めております。今後、点検結果を踏まえて、団体の内部統制、コンプライアンス意識の向上などについて、全庁的な立場から指導助言を強化していく。それに加えまして、団体改革の実施方針を踏まえて、団体経営のチェックを担います常勤監事、監査役に専門人材を積極的に登用していくなど、団体の経営レベルにおきましても、ご指摘のように、外部からの視点を取り入れていきたいと考えております。
 都民から信頼される政策連携団体としていくためにも、多様な視点から団体の運営を検証いたしまして、自律的な改革を促進してまいります。
 残余のご質問につきましては、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔水道局長中嶋正宏君登壇〕

○水道局長(中嶋正宏君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、水道局所管の政策連携団体、東京水道サービス株式会社及び株式会社PUCの統合後の事業展開でございますが、当局では、政策連携団体と一体的に事業運営を行うことで、広域水道としての事業を進めてきております。
 統合後の新団体は、水源から蛇口までの維持管理を初め、お客様サービスの提供に至るまでの水道事業全般を一手に担える団体となります。そのため、包括的な委託が可能となり、団体が創意工夫と責任を持って一層効率的な業務運営を行うことが期待でき、東京水道の経営基盤強化につながってまいります。
 また、新団体は、多摩地区市町水道の一元化を通して得た経験を生かし、全国の水道事業体が今後取り組む広域連携への貢献や官民連携に対する技術的支援などを行い、経営の自主性を向上させてまいります。
 こうした取り組みにより、持続可能な東京水道を実現するとともに、全国の水道事業の課題解決に貢献してまいります。
 次に、水道事業の効率的な運営についてでございますが、当局では、公営企業として、中期の事業計画と財政計画である経営プランを策定し、経済性の発揮と公共性の実現に努めております。毎年度の予算は、このプランに基づくとともに、料金収入の変動などを踏まえ、適切に編成しております。
 また、執行過程におきましても、各事業の進捗状況や課題を検証し、柔軟に見直しを行っております。
 お話のあんしん診断につきましても、今年度が最終年度となりますが、事業効果をより一層高めるため、アンケート項目を追加し、都民ニーズのさらなる把握に努めております。診断で得ました水質、サービス、危機管理など、幅広いご意見を分析、検証し、今後の水道事業に的確に反映してまいります。
 こうした取り組みを初め、今後とも事業執行について不断の見直しを行い、効率的な事業運営に努めてまいります。
 最後に、ICTを活用したお客様サービスの向上でございますが、当局では、水道料金の支払い方法について、これまで口座振替及びクレジットカード払いの導入を進めてまいりました結果、約七割のお客様のキャッシュレス支払いが実現しております。残る約三割のお客様につきましては、請求書による現金払いとなっており、最新のICTを活用した決済方法を導入することで、利便性の一層の向上が期待できます。
 このため、現在、自宅でも支払いが可能なスマートフォン決済やコンビニエンスストアでのキャッシュレス支払いの早期実現に向けまして、関係事業者と具体的に調整を進めております。
 今後とも、お話のお客様センターにおけるAIの導入なども含め、ICTを積極的に活用し、お客様サービスの一層の向上と効率的な事業運営を推進してまいります。
〔下水道局長和賀井克夫君登壇〕

○下水道局長(和賀井克夫君) 東京二〇二〇大会を契機とした再生水の活用拡大についてでございますが、成熟社会である東京が、持続可能な社会の実現に向けたこれまでの取り組みをさらに発展させ、課題解決のモデルを国内外に示していくことは重要でございます。
 下水道局では、都市の貴重な水資源である再生水をビルなどのトイレ用水として、臨海副都心地区など七地区、百九十二施設に、一日当たり約一万立方メートル供給しております。
 本年五月には、大会会場である有明アリーナ、有明体操競技場、有明テニスの森へ再生水を供給する配管工事が完了しており、今後、会場の整備状況に合わせて再生水の供給を開始してまいります。
 今後とも、こうした取り組みをレガシーとして、供給地区内の再開発等に合わせて再生水の一層の利用を促してまいります。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 都営地下鉄のインバウンド対策についてでございますが、交通局では、外国人旅行者の利便性の向上を図るため、案内サインの多言語化やコンシェルジュの配置拡大等、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
 東京二〇二〇大会に向けて、多言語による案内や乗車券の発売等を行うツーリストインフォメーションセンターを、新たに新橋駅及び新宿西口駅にも開設をいたします。
 また、八言語に対応した大型ディスプレーに表示された路線図や観光スポットなどから行き先を選択できる券売機を増設し、今年度中に全ての会場最寄り駅への設置を完了させます。
 さらに、外国人旅行者向けに新たにデザインした優待特典つきのPASMOを、ことし九月から発売をいたします。
 引き続き、外国人旅行者の受け入れ環境の充実を図り、開催都市の公共交通事業者として、大会の成功に貢献をしてまいります。

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