令和元年東京都議会会議録第十一号

   午後五時五分開議

○議長(尾崎大介君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十二番もり愛さん。
〔二十二番もり愛君登壇〕

○二十二番(もり愛君) SDGs、誰ひとり取り残さない社会の実現に向けて、誰もが自分らしく生きられる東京の実現を願い、社会のきずなと社会的孤立が生んだ八〇五〇問題について質問させていただきます。
 私たち都民ファーストの会は、昨年来、ひきこもり対策の所管を青少年・治安対策本部から福祉保健局に移管すべきであることを主張してまいりました。その理由は、青少年・治安対策本部では三十四歳までしか施策の対象としておらず、国に準じて年齢を引き上げたとしても、青少年という縛りがある限り、三十九歳までしか対象とできないことにありました。八〇五〇問題を抱える中高年のひきこもりは、都の行政の制度のはざまで、支援の手が届いていなかったといえます。
 内閣府は、自宅に半年以上閉じこもっているひきこもりの四十歳から六十四歳が推計六十一万三千人、十五歳から三十九歳が推計五十四万一千人との調査結果が公表され、初めて、全国で実に百万人以上もの方が、支援を必要としながら行政の対象から外されていたことが明らかとなりました。
 東京都が、この内閣府の調査結果に先駆けて、年齢を問わないシームレスなひきこもり対策を行うために、福祉保健局に所管がえしたことを高く評価いたします。
 先月、川崎市登戸駅付近で、登校中の児童、保護者二十名が刃物で切りつけられ、うち二名が死亡するという大変痛ましい事件が起こりました。犯人が五十代のひきこもりであったと報道されるにつれ、識者からは、ひきこもりと殺傷事件とを結びつけて、それを一般化することは誤りだという見解が示されています。
 犯罪予防の対象者として監視、隔離するのではなく、生きるための支援をしてほしい、これが、ひきこもり当事者や親の団体が、青少年・治安対策本部から福祉保健局に移管してほしいと願った理由の一つでした。
 川崎の事件では、親族が市の精神保健福祉センターに面談で八回、電話で六回、合わせて十四回相談したことがわかっていますが、有効な手段を講じることができたでしょうか。即効性のある対策はありません。
 東京都でも、中高年のひきこもり対策をようやく福祉施策として所管がえを行ったところであり、スピード感のある対策が求められます。
 そのためには、必要な対策を検討するための基礎的データとして、ひきこもり当事者や親の意見も聞きながら、東京都のひきこもりの実態調査を早急に行うことが必要だと考えますが、都の見解を伺います。
 また、その際に、最も大切なことは、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たちのことを私たち抜きに決めないでという原則です。
 ひきこもり当事者や親の会の意見も聞きながら、今後の都としてのひきこもり支援施策を構築していくために、当事者、家族会の声が都政に反映されるよう、協議会の設置と参画が望まれます。都の見解を伺います。
 その上で、これまで東京都のひきこもり支援団体二十二団体の活動、若ナビα等、青少年対策として行われてきた事業については、その効果やあり方を検証し、改善すべきだと考えます。
 支援のあり方について、万策尽きた親が連れ出し支援団体に依頼し、暴力的に連れ出す事例や自立支援の押しつけがなされることもありますが、いずれもよい結果は生まれません。ひきこもり対策においても、多様な選択肢を用意することが効果的ではないかと考えます。
 まずは、不安を抱えるご家族に寄り添い、悩みを打ち明けられる家族会を都内で地域ごとに整備していくこと、そして当事者や家族会が実施している居場所づくりの活動を支援することなど、当事者とともに施策を実施することが大切だと考えます。
 現在の都の就労支援に対して、本人のニーズに合わせた居場所の整備、就労支援の手前の中間的な居場所を求める声がありますが、都の見解を伺います。
 ひきこもり状態にある方は社会から見えづらく、困難を抱えたご家族も声を上げづらい現状があり、社会的な孤立を放置しておくべきではありません。これまで支援を必要としながら、高齢の親御さんとひきこもりのお子さんの支援窓口が別々で、行政の支援の手が差し伸べられてこなかった方々に、家族の課題を総合的に包括した支援体制の構築、福祉的資源を活用し、ひきこもり当事者と家族の声を施策に盛り込んだ支援の拡充が求められます。
 高齢者や家族に対する総合的な相談、支援を行う地域包括支援センターとの連携や、川崎市のケースでは相談窓口が精神保健福祉センターでした。当事者や親にとって、どこに相談してよいのかわからないのが実態です。
 ひきこもり対策は、多くの法律や機関にまたがっていることから、まずは、福祉保健局にワンストップの相談窓口を開設することを求めます。
 東京都では、ひきこもりサポートネットが支援窓口になっているとのことですが、現在、ひきこもり家族会連合会には、問い合わせや相談の電話が鳴りやまないとの声が聞かれますが、ひきこもりサポートネットが十分な受け皿になっていない現状があります。所管がえを機に、本当に支援を必要とする方々にとって、わかりやすい、使いやすい窓口の強化に取り組んでいただきたいと考えます。
 ひきこもり支援施策に年間約八千万円の予算がついておりますが、当事者の方からは、相談のみで支援につながっていないとの声が上がっています。さきの代表質問でもご答弁をいただいておりますが、相談窓口機能のあり方についても検討すべきだと考えます。都の見解を伺います。
 次に、東京都としての豊かな公共空間のあり方と道の可能性について質問させていただきます。
 先日、知事は、大手町・丸の内・有楽町地区で開催されていた丸の内ストリートパークを視察されました。このイベントは、大・丸・有地区のエリアマネジメント活動の一環として実施されたもので、千代田区道である丸の内仲通りの一部を、区等の許可を得て、延べ五日間、丸の内ストリートパークとして開放し、緑豊かな憩いの空間とにぎわいが創出されたと聞いています。
 長時間車両通行どめにして公園化するのは、この地区では初めての試みとのことですが、海外諸都市でも、公共空間を生かした都市の魅力向上の取り組みが行われています。東京の魅力を発信する上でも、大変有意義な取り組みであったのではないかと考えます。
 そこで、国内外から多くの来訪者が東京を訪れる東京二〇二〇大会に向けて、都内各地で、このような取り組みによる地域のにぎわいづくりを盛り上げていくことはとても意義があると考えます。知事の見解をお伺いいたします。
 道の使い方で、まちはもっと豊かになる、車中心社会から人中心のまちづくりは、私が区議会時代から取り組んできたテーマでもあります。
 かつて、高速道路に河川をよみがえらせ、虫や鳥が戻ってきたソウル市の清渓川やオランダの自転車道の整備等、私も実際に現地で取り組みを見てまいりました。東京都においても、日本橋川の再生や今後の自転車走行空間の整備等、人と自然が調和する環境先進都市へと東京大改革を進めていただきたいと願っております。
 地元蒲田のさかさ川通りでは、以前は植栽に多くのごみが捨ててあった裏通りが、国のエリアマネジメント特区事業を活用したおいしい道計画では、フードカーや芝生を敷いて道路上でピクニックを楽しむ姿など、人が集う道が憩いの場になっています。
 広場に変わって十年、サディク・カーンさんのタイムズスクエアの事例では、車両の移動速度は最大一七%改善し、四一%もCO2を削減させたと伺いました。加えて、小売店の四九%で売り上げが伸び、賃料は上昇し、地域の価値そのものが上昇したことが挙げられていました。
 また、歩行者が三五%増加し、歩行者負傷者数が三五%減少との報告に、近年多発している子供を含む歩行者が巻き込まれる交通事故を見ても、日本は諸外国に比べて歩行者が被害に遭う率が高く、交通事故の減少にも寄与するのではないかと思います。
 都市と都市を結ぶ幹線道路は必要ですが、かつて、道は子供たちの遊び場であったように、子供たちの命を守り、誰もが憩える道へ、車中心社会から人を中心としたまちづくりへ、まちのマインドを変えていく東京大改革になるのではないでしょうか。
 今回、丸の内の中心で実現されたストリートパークの取り組みは、まさにその一歩であると感じました。東京の道というキャンバスを彩り未来を変えていく、そこに住む人、来る人、みんながわくわくするような豊かな公共空間の創造に向けて、都も環境整備に努めていく必要があると思います。
 道路空間を生かしたにぎわいづくりを都内全体で推進していく上で、区市等と連携し、取り組みを進めることが重要であると考えます。都の見解をお伺いいたします。
 最後に、東京都の国際空港へのアクセス強化として、新空港線整備計画について質問します。
 私の地元大田区の中心拠点である蒲田は、戦後復興の土地区画整備事業によってまちが形成されてから約半世紀が過ぎ、機能更新の時期を迎えていますが、蒲田駅周辺は羽田空港の飛行ルートに当たるため、建物の高さが約八十メーターに制限されていることもあり、これまで大規模な再開発がなされてきませんでした。
 蒲田駅は、首都空港である羽田空港から一番近い交通結節点にあるにもかかわらず、近隣駅ばかりの開発が進み、地域の方から、このままでは蒲田のまちが衰退してしまうのではという心配の声が聞かれます。空港に近接した蒲田のポテンシャルを最大限に引き出し、東京全体の都市機能を向上させるためにも、一刻も早い機能更新が求められます。
 まちの大改革にはしかるべき機会が必要ですが、その絶好のチャンスとなるのが、大田区で長年準備が進められてきた新空港線の整備だと考えます。二つの蒲田を結ぶ路線ですが、東急東横線、東京メトロ副都心線などとの相互直通運転を行うことで、渋谷、新宿、池袋といった副都心と羽田空港とのアクセスを強化する路線であり、国の百九十八号答申においても、国際競争力の強化に資する路線とされ、地元大田区以上に東京全体に与える影響が大きいことから、私は、そもそも基礎自治体の事業というよりも、鉄道整備の検討は、本来、鉄道事業者と広域自治体である都の役割だと考えています。この新空港線の整備についても都が応分の費用負担をすべきだと考えております。
 東京都にとって、国際空港へのアクセス強化は大きなメリットになると考えています。新空港線整備に対し、都は応分の費用負担を行い、事業を推進すべきだと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) もり愛議員の一般質問にお答えいたします。
 私からは、にぎわいづくりについてお答えさせていただきます。
 丸の内仲通りで、これまで長い時間をかけ、地元のエリアマネジメント団体などが、にぎわいづくりに取り組んできたことを承知いたしております。
 その結果、かつてのオフィス街は、土日もさまざまな人が集ってにぎわう歩行者中心の歩いて楽しいまちとなっております。
 丸の内ストリートパークでは、この取り組みをさらに一歩進めて、都心の真ん中に都民が憩える緑の空間、芝生を敷き詰めて、そんな空間をつくりました。五日間で十万人が訪問、歩行者の数はふだんより二割ほどふえたと聞いております。
 地域のにぎわいを創出する地元の取り組みが都内各地において活性化していくということは、東京の価値を高めるという上で大変有意義なことと私は考えております。
 東京二〇二〇大会に向けまして、日本橋仲通りや新虎通りなどを初めとして、こうした取り組みが進むように、規制緩和の手法なども活用しながら、さまざまな形で支援をして、東京の魅力を世界に発信していきたいと考えております。
 残余のご質問は、東京都技監及び福祉保健局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、道路空間を活用したにぎわいづくりについてでございますが、東京の魅力と価値を高めていくためには、地域特性を踏まえながら、道路空間をゆとりやにぎわいの場として活用していくことも重要でございます。
 道路の活用に当たっては、地元の主体的な取り組みが不可欠であり、これまでも関係機関等との連携のもと、丸の内仲通り、池袋駅東口グリーン大通りなどで、国家戦略道路占用事業等を活用した地域団体等によるにぎわいづくりが進められております。
 こうした取り組みの成果も踏まえまして、都は、魅力ある歩行者空間のさらなる創出に向け、道路管理者でもあり、地域のまちづくりを担う区市等とともに会議体を設置し、先進地区などの情報共有や技術的支援を行っております。
 引き続き、区市等と連携し、道路空間を生かしたにぎわいづくりを推進してまいります。
 次に、新空港線の整備についてでございますが、矢口渡駅から京急蒲田駅の区間は、国の答申において、東急東横線等との相互直通運転を通じて、国際競争力強化の拠点である新宿等や東京都北西部、埼玉県南西部と羽田空港とのアクセス利便性が向上するとの効果が示されておる一方、関係地方公共団体、鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべきとの課題が示されております。
 このため、大田区や鉄道事業者など関係者と連携して、事業費の精査や採算性などの課題について検討を行ってまいりました。
 引き続き、大田区が想定している都市鉄道利便増進事業を活用した場合の費用負担のあり方などの課題について、関係者との協議、調整を進めてまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、ひきこもりの方の現状把握についてでありますが、ひきこもり状態となる要因には、不登校、職場の不適応、人間関係の不振など、多岐にわたる事情が背景となっており、当事者や家族の悩みに対応するための必要な施策を検討するに当たっては、まずは、そのさまざまな実態を把握することが必要であります。
 このため、都は、保健所等での相談支援の実施状況や、ひきこもり当事者とそのご家族等の現状を明らかにするため、区市町村等の関係機関や家族会等の関係団体との意見交換を行っているところでございます。
 今後とも、こうした意見交換や相談会などさまざまな機会を通じて、ひきこもり当事者やその家族の実態把握をまずは進めてまいります。
 次に、ひきこもり当事者やご家族の声についてでありますが、都は、ひきこもりの方やその家族への支援策の検討に向け、区市町村等の関係機関から相談体制の現状について聞き取るとともに、家族会、当事者団体から、これまでの施策についての意見なども伺っております。
 今後とも、こうした取り組みを重ねることで理解を深めるとともに、有識者からの意見も伺いながら、ひきこもりの方やその家族への支援のあり方を検討してまいります。
 次に、ひきこもりの方の居場所についてでありますが、都は、ひきこもり相談窓口を紹介するリーフレットを作成し、その中で、ひきこもり状態にある若者等の社会参加を支援するため、自宅以外の居場所の提供や社会体験活動等を実施しているNPO法人等の連絡先や活動内容を紹介しているところでございます。
 ひきこもりの方の中には、ひきこもりの状態が長期化し、四十代、五十代となった方もふえていることから、個々の年齢、心身、生活状況等に応じまして、それぞれの方が抱える悩みも多岐にわたっております。
 今後、区市町村等の関係機関と連携しながら、中高年層も含め、ひきこもりの方の個々の一人一人の状況に応じた支援について検討してまいります。
 最後に、ひきこもり相談窓口についてでありますが、都は、一次相談窓口である、ひきこもりサポートネットにおいて、電話やメール、家庭への訪問により悩みや相談を受け付け、区市町村等と連携し、ひきこもりの方の状況に応じて適切な支援につなげております。
 今年度からは、所得や就労などに悩みを抱える中高年層等への相談にも適切に対応するため、家計、財産等の課題に対応できるファイナンシャルプランナーや福祉支援を専門とする社会福祉士を新たに配置するとともに、訪問相談の対象を三十五歳以上に拡大するなど、相談体制を強化しているところでございます。
 都といたしましては、当事者団体や家族会などの意見も踏まえながら、相談窓口の利用促進に向けて取り組んでまいります。

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