令和元年東京都議会会議録第十一号

○議長(尾崎大介君) 二番けいの信一君。
〔二番けいの信一君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○二番(けいの信一君) 初めに、自転車の安全活用について質問します。
 自転車は、日常生活における便利な交通手段としてだけではなく、近年では被災地における復興支援での活躍、さらには電動アシスト自転車の普及、流通業での活用やシェアサイクルなど、活用方法は多彩な広がりを見せています。
 しかし、こうした広がりに対して、自転車についての安全意識の向上が十分なされているとはいえません。
 自転車は、道路交通法上、車と同様に扱われる軽車両であり、交通規則の遵守が求められます。一方、車の運転手も自転車を車両として受容し、互いに尊重し合った安全運転に努めなければなりません。
 例えば、ヨーロッパでは、まちの中と外の区別が明確で、速度規制にめり張りがあります。まち中の制限速度は低く抑えられており、車やバイク、自転車もゆっくりと走行することによって共生がなされています。
 日本では、エンジンを載せる原動機付自転車、いわゆる原付バイクが全ての公道で時速三十キロに速度制限される一方で、人の力だけで走る自転車が追い越していくような場面も見受けられます。スピードを上げて走行すると安全確認が不足し、出会い頭の衝突など、交差点付近で事故が起きやすくなります。
 二〇一七年の警視庁の統計によると、自転車事故の相手は八〇%が車であり、とりわけ事故の七五%は交差点内で発生しています。見逃せないのは、その約半数は一時不停止や交差点安全進行義務違反など、自転車側に交通違反があったという点です。自動車の運転免許を持たない方は、交通規則を学ぶ機会が少なく、意図せずに違反をし、事故に遭ってしまうケースもあります。
 そこで、五月に設置された自転車の安全で適正な利用に関する検討会議において、免許を持たない方などへの安全対策強化を検討していくべきです。都の見解を求めます。
 また、ハード面の整備も必要です。
 昨年我が党は、全国で百万人訪問調査運動を行いました。その中で、ある市議会議員が介護に関しての調査を行ったところ、八十八人中六人が、自転車で車道を走行中、歩道に斜めに乗り上げる際に、段差にハンドルをとられて転倒したことが原因で要介護状態になったとのことです。私も地元荒川区在住の要介護の方七名にお聞きしたところ、一名が同様の要因でした。
 都道における車両乗り入れ部の整備では、歩車道境界の段差が従来のマウントアップ形式では五センチであるのに対し、セミフラット形式では二センチの段差で整備が可能です。
 そこで、自転車の転倒事故を少しでも減らすために、セミフラット形式に改善していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、高齢者の運転について質問します。
 内閣府の高齢運転に関する調査によると、八十歳以上の四人に一人が車を運転しており、そのうち、ほとんど毎日運転すると回答した方は六〇%に上りました。
 都内だけでも、高齢ドライバーの運転操作ミスと思われる悲惨な事故が相次いで発生し、連日にわたり報道されております。そうした中、都内で自動車運転免許を自主返納した方は、五月の一カ月間だけで、過去最多の五千七百人を超えたそうです。
 都は昨年度から、運転免許を返納した高齢者を対象とした自転車の安全教室を四回開催していますが、返納後も社会に参画していくために非常に重要な取り組みであり、さらに多くの高齢者が参加できるよう取り組むべきです。
 また、講習会では、普及が進む電動アシスト自転車も用意していると聞きますが、車体が重いことや、勢いがつきやすいことなどに注意が必要です。
 体力に自信のない方や体型に合わせたサイズや形状など、希望する全ての方が安心して電動アシスト自転車の運転体験ができるよう、多彩なタイプを用意すべきと考えます。さらに、市区町村への連携支援を含め、あわせて都の見解を求めます。
 次に、海洋人材について質問します。
 我が党は先月、都立大島海洋国際高校を視察してまいりました。校長先生からは、世界の海洋課題の解決に資するような海洋人材を育成していくため、海洋環境課題等に関する教育の充実や、そうした教育に対応した新たな実習船「大島丸」の建造など、令和三年度から予定している学科改編に向け、具体的な検討を行っているとの説明がありました。
 一方で「大島丸」の運航に当たっては、これまで船員の確保がままならず、航海が予定どおりに実施できない状況がありました。新たな実習船を建造している今、充実した航海実習のためには、船員の確保こそ喫緊の課題であります。
 こうした困難な状況の中、これまで努力をされてきた現在の船員の方々の処遇にも十分に配慮した上で、技術と実践力を備えた外部の力を積極的に活用すべきと考えます。都教育委員会の見解を求めます。
 我が国は、物流の九割以上を海運に頼る海洋立国であり、その首都である東京は、海運の中心となる東京港や伊豆・小笠原海域など、大変豊かな海洋資源を持つ海洋都市ともいえます。
 一方、世界では、海洋を取り巻く状況は変化しており、海洋資源の保全や海洋ごみの問題などの早急な課題解決が求められています。
 都内の高校で唯一、海洋を学べる大島海洋国際高校が、海洋ごみ問題などの環境諸課題の解決に資する意欲と実践力を持つ人材を育成していくべきです。
 そこで、大島海洋国際高校において、今後の施設や人材の充実はもとより、海洋問題に詳しい大学と連携した実習を実施するなど、世界をリードする海洋教育への改革に取り組むべきと考えますが、都教育委員会の見解を求めます。
 次に、障害者施策について質問します。
 近年の医療技術の進歩や在宅医療の普及を背景として、たんの吸引、経管栄養などの医療的ケアを必要とする児童生徒が増加しており、都立特別支援学校では全ての学校で、児童生徒個々の状況に応じて、医療的ケアが実施できる体制を整えています。
 しかし現在、特別支援学校以外の都立高校では、医療的ケアが必要な生徒には保護者が付き添っている状況があります。障害のある生徒の進学ニーズは多様であり、今後は都立高校においても、医療的ケアを必要とする生徒への対応が求められます。
 都立高校における障害のある生徒へのさらなる支援を進めるべきです。都教育委員会の見解を求めます。
 次に、公共交通における障害者への配慮について質問します。
 障害者の方は、公共交通機関などで割引を受ける場合には、窓口で障害者手帳の提示が必要です。腕や指先が不自由な方にとっては、かばんから取り出し、手帳を開いて、必要な部分を提示する作業は大変な負担であると聞きます。
 関西地方の交通事業者で構成するスルッとKANSAIでは、加盟事業者の鉄道やバスで利用可能な障害者用のICカードを発行しています。これは事前にチャージをしておけば、一般の交通系ICカードと同様に、改札機にかざすだけで障害者割引が適用され、通過することができるものです。
 公共交通のバリアフリー化促進の観点から、都においても、障害者割引に対応したICカードの発行を交通事業者に働きかけていくべきと考えますが、見解を求めます。
 福祉保健局関係の質問に入る前に一言申し上げます。
 児童虐待防止を呼びかける都のホームページに、児童虐待推進キャラクターと誤って表記されていたことが昨日、報道によって明らかになりました。当事者にとっては断じて許されないことであり、福祉保健局は緊張感を持って仕事に取り組んでいただきたいと申し上げておきます。
 それでは、障害者手帳について質問します。
 現在、障害がある方に交付される障害者手帳は、紙の手帳が基本です。日常生活で使用する機会は多く、持ち運びの不便さや汚れなどがかねてからの課題です。このため、以前からカード化を求める声が出ており、我が党にもこうした要望が寄せられております。
 厚生労働省は、二月の社会保障審議会障害者部会で、障害者手帳のカード化を認める省令の改正案を示し、四月一日に施行されました。
 この省令改正を受け、カード型障害者手帳を希望する方々に対し、一日も早い交付を実現できるよう、都としても準備を進めるべきと考えますが、見解を求めます。
 さらに、将来的にはICカード化やマイナンバーカードとの連携も視野に入れることで、飛躍的に利便性の高い社会の形成にも通じていきます。
 また、利用者の利便性だけでなく、社会全体への周知徹底も喫緊の課題であります。
 昨年行われた人気歌手の引退コンサートツアーでは、入場時に身分証明書の提示を求められました。知的障害がある方が都の療育手帳である愛の手帳を提示しましたが、開催地が他県であったことや、療育手帳に対する係員の認識不足などから、入場を断られるという事態が生じました。同行したご家族だけで入場するわけにもいかず、楽しみにしていた最後のステージを見ることなく、ご家族は帰宅したそうです。
 入手困難なチケットの不正転売防止のための本人確認であることは十分理解できますが、制度の無理解から、障害者が不利益を受けることは断じてあってはなりません。
 さらに、療育手帳をめぐる問題は、こうした認識不足ばかりではありません。
 知的障害者児に対する療育手帳は、都は昭和四十二年から愛の手帳として発行していますが、その後、昭和四十八年には、国の通知により各自治体が実施要綱等を定め、現在に至っております。しかしこの間、各自治体間で判定基準にばらつきが生じており、転居した際に、これまで手帳を受け取っていた方が対象から外されるという事態が発生しています。
 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳は法律で規定されているのに対し、療育手帳は発行する都道府県によって名称や形が異なることが多く、障害者手帳として認識されにくいことが原因です。
 また、知的障害の定義や判定基準などが国から明示されていないことも問題であり、知的障害認定に係る統一的かつ安定的な制度の確立が求められています。
 そこで、知的障害の定義や判定基準の統一化も含め、療育手帳の法制化を国に強く働きかけていくべきです。
 知事の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) けいの信一議員の一般質問にお答えいたします。
 私からは、療育手帳の法制化ついてお答えをさせていただきます。
 身体、知的、精神の障害者にとりまして、障害者手帳は、税の減免や交通運賃の割引などを受ける際の必要な証明書であると同時に、身分証ともなるものでございます。
 身体障害者と精神障害者の手帳は法律で定められておりますが、知的障害者に交付される療育手帳というのは、国の要綱に基づいて、手帳の名称や形式、判定基準等を各都道府県及び政令市が定めているところでございます。
 このため、療育手帳を所持している方が転居した際に、障害の程度などの判定内容が変わったり、お話のように、民間事業者が療育手帳を身分証として認めない事例なども生じております。このようなことは大変残念なことでありまして、障害者の支援や社会参加を進めるという観点からも改善すべきと考えます。
 都はこれまで、療育手帳の法制化につきまして、他の自治体と連携して国に働きかけてまいりました。今後、都といたしましても、独自に国に対して、知的障害者福祉法に知的障害の定義及び手帳制度を規定するように提案要求をしてまいります。
 なお、その他のご質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立大島海洋国際高校実習船「大島丸」の運航についてでございますが、近年の国内の船員数の著しい減少や海を隔てた大島という地域特性などの背景から、船員の確保は大変厳しい状況にございます。
 こうした状況の中、これまで船員の病気などの不測の事態では、臨時の船員を採用することや派遣船員の活用により運航体制を整えてまいりました。
 また、船員の退職などが見込まれる場合には、関係機関への個別の働きかけも含め、広範な採用募集を行うなど、船員の確保に努めてまいりました。
 今後は、実習船「大島丸」の安心・安全で安定的な運航を確保し、さらに充実した航海学習を実施するため、外部の民間活力の導入などの検討を進めてまいります。
 次に、都立大島海洋国際高校での今後の海洋教育についてでございますが、これまで大島海洋国際高校では、航海実習における海水温や透明度などの観測調査や小笠原海域での漁獲による海洋生物調査など、海洋における環境諸課題に関連した教育を実践してまいりました。
 都教育委員会は現在、海洋ごみの状況を大学と連携して調査する取り組みへの支援や、水中生物や海底資源等を映像や音波、捕獲などの多様な方法で調査することを可能とする新たな実習船「大島丸」の建造を進めております。
 今後、大学や関係機関との連携のもと、令和三年度に予定している学科改編に向けて具体的な検討を進め、持続可能な社会の実現に貢献する人材の育成を図るため、海洋教育の全国的なモデルとなり得る取り組みを推進してまいります。
 最後に、都立高校における障害のある生徒への対応についてでございますが、都教育委員会はこれまで、生徒の障害の程度や状態に応じて、施設のバリアフリー化やICT機器等の整備を進めるとともに、生徒の障害に起因する困難さを補うため、非常勤の介助職員を配置してまいりました。
 その一方で、現在、医療的ケアが必要な生徒については、保護者の付き添いを依頼しております。
 そのため、今後、都立高校における医療的ケアへの対応に向け、インクルーシブ教育システムに関する調査研究で、先進的な取り組み事例を把握するとともに、医学的見地や医療安全の観点を踏まえた専門家等による検討会を立ち上げ、障害のある生徒に対する支援の一層の充実に向けた検討を行ってまいります。
〔東京都技監佐藤伸朗君登壇〕

○東京都技監(佐藤伸朗君) 障害者割引に対応したICカードについてでございますが、誰もが生き生きと生活できる都市を実現するには、駅のエレベーター設置やノンステップバスの導入など、公共交通のバリアフリー化を促進することが重要でございます。
 お話の障害者割引に対応したICカードにつきましては、利用の都度、駅の係員やバス乗務員に障害者手帳等を提示する手続が不要となり、鉄道やバスがさらに利用しやすくなる効果がございます。
 一方、事業者からは、各社で割引制度が異なることや、自動改札等の機器、運賃の計算システムの改修を伴うこと、その改修費用の負担等の課題があると聞いております。
 都といたしましては、国の動向等を見ながら、事業者に対し、障害者割引用のICカードの発行を働きかけるなど、誰もが利用しやすい公共交通の環境整備に努めてまいります。
〔都民安全推進本部長大澤裕之君登壇〕

○都民安全推進本部長(大澤裕之君) 二点についてお答えいたします。
 初めに、自転車の安全対策強化についてでありますが、都はこれまでも、自転車のルール、マナーの向上に向け、春、秋の交通安全運動や自転車シミュレーターを活用した交通安全教室などで啓発用リーフレットの配布を行うとともに、自転車の購入時にも、販売店を通じて安全利用に向けた確認書を交付するなど、さまざまな機会を活用して自転車の安全で適正な利用について、理解の促進を図ってまいりました。
 現在、都では、さらなる自転車の安全で適正な利用の促進に向け、専門家会議を設置し、五月の末には第一回の会議を開催いたしました。
 今後は、当該会議での議論を踏まえながら、お話の免許を持たない方などへの対策の強化も含め、交通規則の遵守、マナーの向上に向け、さらなる普及啓発に努めてまいります。
 次に、高齢者向け自転車安全利用講習会についてでありますが、この事業は、運転免許証を返納した高齢者等の日常の交通手段の安全対策を図るため、平成三十年度から開始したもので、自転車のルール、マナーについての講義や自動車教習所のコースを使った安全な乗り方の実技に加え、電動アシストつき自転車の試乗も実施しております。
 今後は、より多くの高齢者に参加していただけるよう、自治会、町内会や交通安全協会を通じた参加者募集の広報啓発を強化してまいります。
 また、形状や大きさが異なる電動アシストつき自転車を用意することで、全ての参加者が体格などに合った自転車で安心して試乗ができるようにしてまいります。
 さらに、講習会の独自開催を計画する市区町村に対しては、自転車シミュレーターの手配や講習会用自転車を提供する企業を紹介するなど、積極的に支援を行ってまいります。
〔建設局長三浦隆君登壇〕

○建設局長(三浦隆君) 都道における車両乗り入れ部の段差改善についてでございますが、都は、東京都道路バリアフリー推進計画に基づきまして、歩道の段差や勾配の改善に取り組んでおります。
 車道と歩道の境界部の段差が五センチメートルで整備されている車両乗り入れ部につきましては、歩道改良工事等の際に、地域の状況や要望に応じて、道路工事設計基準に基づきセミフラット形式での整備を実施いたしますことで、車道と歩道の段差を二センチメートルに改善をしてまいります。
 また、道路の新設や拡幅工事におきましても、沿道の利用状況などに応じまして、引き続き歩道のセミフラット化を実施してまいります。
 今後とも、沿道住民の方々の理解と協力を得まして、安全で快適な道路空間の確保に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) まず、ご答弁差し上げる前に、先ほど、けいの議員からもご指摘いただきました、このたび、私ども福祉保健局が所管しますホームページ上で、児童虐待防止に係るキャラクターの表記につきまして、誤植、一部ございました。まことに、児童虐待防止を推進し、それを所管し、また、オール東京でこれをやっていこうと、児童虐待防止を進めていこうという中、その所管する局の責任者として、まことにざんきの念にたえません。本当に申しわけございませんでした。
 改めまして、職員一同、一丸となって児童虐待防止を推進してまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、答弁に移らせていただきます。
 障害者手帳のカード化に関するご質問にお答えいたします。
 国はこれまで、身体障害者手帳及び精神障害者保健福祉手帳につきまして、厚生労働省令で様式等を定めておりましたが、本年三月末に、この省令を改正いたしまして、従来の紙の手帳の様式例を削除し、自治体の判断でカード形式で手帳を交付できるようになりました。
 同時に、技術的助言として通知を発出し、カードの形状や材質、偽造防止対策の方法、視覚障害者が判別しやすい加工を施すことなど、カード形式で手帳を発行する際の仕様を示しております。
 都は、国通知の内容を踏まえるとともに、障害者団体を通じて、利用者である障害当事者のご意見を伺いながら、カード形式での障害者手帳の発行について検討を進めてまいります。

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