平成三十一年東京都議会会議録第五号

○副議長(長橋桂一君) 二十七番おときた駿君。
〔二十七番おときた駿君登壇〕

○二十七番(おときた駿君) 初めに、オリンピック・パラリンピックにおける障害者などのボランティア参加についてお伺いいたします。
 定数を上回る応募のあったシティキャストの選考、採用においては、障害の有無などにかかわらず、多くの方々に活躍いただけるよう取り組むとされています。実際に、百四十名の障害者、何らかの支援を必要とされる方がシティキャストに応募されていることが、さきの特別委員会でも明らかにされたところです。中には、難病や重症心身障害による寝たきり状態の方もいらっしゃいます。その彼らが、参加方法として使用を希望されているのが分身ロボットです。
 昨年、都内で行われた分身ロボットカフェという企画では、等身大の分身ロボットを操作して、いわゆる寝たきりの方々が接客業を行ったことが大きな話題となりました。その小型版のロボットを少しご紹介したいと思います。
 こちらの小型版分身ロボットは、スマートフォンで指一本で操作することが可能であり、ネット環境さえあれば、ロボットの目を通じてこの光景が操作者にシェアされ、もちろん会話に参加することも可能です。このように腕や顔も動きます。単なるテレビ電話とは臨場感が全く異なり、実際に利用した障害者からは高い評価を得ています。
 こうしたロボットを通じて、寝たきり状態にある方が通訳や会場案内でボランティア参加をしたとすれば、まさに五輪史上初めての出来事であり、ダイバーシティーを目指し、二度目のパラリンピックを迎える東京都にとって大きな一歩となり得ます。
 分身ロボットによるシティキャスト参加をぜひ実現すべきと提案いたしますが、知事の見解をお伺いいたします。
 また、現在、実際に応募が来ている分身ロボット使用を希望する方に対しては、今後、どのような対応を行っていくのか、都の見解をお伺いいたします。
 次に、組織改編についてお伺いいたします。
 年明けに急遽発表された住宅政策本部新設を初めとする組織改編は、余りにも突然のものでありました。昨年末の定例会で、知事が、二〇二〇東京大会後の組織再編を示唆してから数カ月とたたずに今回の発表です。知事の任期は既に終盤に差しかかっており、通常、こうした組織改編というのは、みずからの公約を達成するために任期の序盤に行うべきものです。
 なぜ、ご自身の選挙が迫ったこの時期なのか。そこには、都民のため以外の何らかの意図があるのではないかと感じられてしまいます。
 とりわけ住宅局は、都市計画との一体化を目指す観点から、都市整備局に統合された経緯があります。空き家が増加し、都営住宅の見直しも指摘される今こそ、むしろ一体的、総合的な政策が必要です。組織が膨張することは、都政改革とも逆行します。また、議会承認が不要である本部で組織改編を行うことにも疑問を覚えます。
 なぜ昨年末の方針を転換して、今、組織改編を行ったのか、とりわけ住宅政策本部は本当に都民にとって必要な組織改編なのか、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、都政改革についてです。
 都政改革は完全に停滞しています。改革のエンジンであった特別顧問たちが去って以降、見える化改革は従前の方針をなぞるばかりとなり、抜本的な改革をしようとする意思は目に見えて失われてしまいました。今こそ改革の原点に立ち戻らなければなりません。
 そこで、旧都政改革本部が残した魂ともいえる遺産が公営企業の民営化、下水道コンセッションの導入です。昨年の国会で水道法が改正され、水道事業における民営化、コンセッション方式の導入に注目が集まっています。
 また、東京都水道局では、入札情報の漏えいや外郭団体における虚偽報告などの不祥事が頻発しており、公共でやれば民間より安心・安全というのは幻想であることは明らかです。むしろ、民営化という選択肢を持つことで、行政への緊張感が生まれ、市場原理が働くことでサービス向上も見込めます。
 こうした公営企業の民営化に向けて、浜松市や大阪市でも先進事例が生まれつつある下水道コンセッションに東京都が踏み出すことは、非常に大きな意味のある一歩です。
 当時の知事は、提出された改革案に対して、コンセッションを真剣に考えてほしいという旨の言葉を残されておりました。全く正しいことだと思います。
 この知事の思いに変わりはないのか、下水道コンセッションを断固として進めていく意思はあるのかどうか、知事のお考えをお伺いいたします。
 最後に、築地市場跡地と市場会計についてお伺いいたします。
 一昨年から、本会議、予算特別委員会で知事に直接、何度も申し上げているとおり、知事が都民に約束した基本方針は、完全に変節しています。市場を残す、業者が築地に戻るお手伝いをする、食のテーマパークをつくる、いずれも影も形もございません。
 考えや政策が変わることは、望ましいことではありませんが、状況によってはあり得ることだと思います。最もやってはいけないのは、自身の変節を認めず、それをごまかすために、新たな行政負担、都民負担を生じさせることです。
 今、知事が進もうとしているのは、まさにそのイバラの道であります。
 有償所管がえは、従来から我々も主張してきたことではありますが、都知事選の一年前となるこのタイミングでなぜ補正予算なのか、なぜ基本方針が変わったのか、疑問は尽きません。
 知事は、考え方は全く変わっていないと強弁されておりますが、知事の心の中はどうであれ、都議選前の発表によって、多くの都民、市場関係者が築地に市場を残すと受け取ったことは、紛れもない事実であります。
 知事は、その事実をどのように受けとめていらっしゃるのでしょうか。都議選前に公約した基本方針が撤回されたことを認め、都民の疑問に正面から答えるべきと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
 築地跡地活用も不透明です。現在示されているプランだけでは、市場の建設費用をどのように回収するのか見通しが立たないばかりか、新たな箱物運営にさらなる都民負担が生じかねません。
 知事は、二言目には民間の活用と述べておられますが、定期借地で大型投資を行う民間事業者があらわれることは極めて考えづらく、民間の力というものを余りにも都合よく解釈し過ぎではないでしょうか。
 都が保有したままで、まとまった収益を上げるとすれば、集客施設はカジノを含むIRとする以外は考えづらく、それ自体は一考に値するものの、全てを未定としたまま都税を投入しようとする姿勢は余りにも、余りにも不誠実です。現段階の生煮えプラン、無為無策の開発スキームでは、議会側が補正予算案の賛否を明らかにすることは困難です。
 知事は、補正予算案を撤回し、プランを再考の上、時期を置いて再提出すべきと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
 さらに一方で、築地市場跡地を一般会計に売却したとしても、市場会計の永続性が全くの未解決です。年間約百六十億円の継続的な賃料収入で市場会計を維持するという荒唐無稽なプランも消えた今、市場会計にお金を入れても、それは穴のあいたバケツに水を注ぐことに等しい状態です。赤字が慢性化している中央卸売市場というモデルそのものを見直さなければ、場当たり的に都税を投入することは認められません。
 代表質問でも、市場の民営化を求める声が上がりました。この提案には、我々も大いに賛成です。実際、大阪府は、二〇一二年から中央卸売市場に指定管理者制度を導入しており、収支改善と市場の活性化に成功しています。
 しかし、昨日までの答弁を聞いておりますと、知事と市場長の考え方に隔たりがあるようにも感じられます。豊洲市場を含む中央卸売市場は、できる部分からコンセッション方式、指定管理者制度を導入するなど民営化を進め、長期的には完全民営化まで視野に入れた検討を早急に始めるべきと考え、提案をいたしますが、東京都の統一的な見解を知事にお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) おときた駿議員の一般質問にお答えをいたします。
 障害者のシティキャストへの参加でございますが、都はこれまで、多くの障害者の方々に参加いただけるように、募集説明会などを通じまして、障害者ご自身のボランティア体験を広くお伝えし、障害者が介助者などと一緒に活動できるように、グループでの応募にも対応してまいりました。
 今月から行っております面談におきましては、都の職員が応募者ご本人と直接お会いしまして、ご意向やご都合、配慮、そして支援を必要とする内容を丁寧にお伺いをいたしておりまして、バリアフリーの整った場所への配置や、また柔軟な休憩時間の設定など、細やかに対応してまいります。
 障害等のために外出が困難な方々につきましても、本人のご意向などを踏まえまして、活動内容について幅広く検討してまいります。
 大会時に多くの障害者がシティキャストとして活躍いただくことで、障害のある人もない人も、全ての人が互いに尊重して支え合う共生社会づくりのきっかけとなるように取り組んでまいります。
 組織改正についてでございますが、組織の見直しに当たりましては、将来的な東京の姿を見据えて、中長期的な視点から、都庁全体のあり方について検討する必要がある一方で、喫緊の課題にスピード感を持って、事業動向に即した執行体制を整備する、そのことが重要と考えます。
 ご指摘の住宅政策本部でございますが、世帯の単身化や住宅ストックの老朽化が進む中で、老朽マンションや空き家への対策、セーフティーネットの構築など住宅政策を機動的に展開するために、まちづくりとの一体性を確保しながら、本部組織として設置をすることといたしたものでございます。
 引き続き、都の抱えるさまざまな課題に的確に対応していくために、限られた資源を効率的かつ効果的に活用した執行体制を構築してまいります。
 下水道につきましてでありますが、平成二十九年十二月に、私を本部長とする都政改革本部会議で、下水道局から、今後とも安定的に都民サービスを提供していくため、監理団体との役割分担の見直しとあわせまして、新たな官民連携の手法による施設運営について検討を進める旨の報告が出されております。
 私からは、コンセッションや包括的民間委託などについて一つ一つ真剣に考えるように、下水道局に対して指示をしております。
 現在、施設の老朽化や豪雨の増加など、事業環境の検証や、また、ほかの都市、ほかの事業の官民連携調査などを進めていると承知をいたしております。
 下水道は、東京が持続可能な都市として成長するために必要不可欠なインフラでございます。
 今後とも、都市活動や都民の生活を支え続けられるように、改革に向けました手綱を緩めることなく、幅広く多角的な検討を進めてまいります。
 基本方針についてでありますが、基本方針でお示しをいたしました築地の市場に関する内容でございますが、市場業者を初め、東京の食文化を担う多くの方々の努力で、長い歴史の中で育まれてまいりました築地ブランドでございます。それをさらに発展させていきたいとの思いで述べたものでございます。
 この基本方針をベースに、都として検討を行いまして、一昨年七月、市場移転に関する関係局長会議におきまして、築地については民間主導で再開発を進めるといたしまして、その後、有識者の意見もいただきながら検討を重ねてきたことでございます。
 かねて申し上げましたとおり、都が中央卸売市場として運営していくのは豊洲市場でございます。豊洲市場への移転を済ませた後の築地再開発におきましては、都が改めて卸売市場を整備をすることはないと考えております。
 一方で、築地にとりまして、食文化は重要な要素の一つで、まちづくり方針の素案でも、こうした歴史的、文化的なストックも十分に生かすということとして示しております。
 民間のさまざまな知恵も活用し、築地を先進性と国際性を兼ね備えました東京の顔として育て、築地に期待を寄せられる人々に応えていきたいと、このように考えております。
 有償所管がえの予算措置についてのご質問がございました。
 今回の有償所管がえでございますが、築地まちづくり方針の素案が固まって、まちづくりのために築地の用地が必要となったことから、関係規則にのっとって、適正な価格のもとで一般会計に移しかえるものでございます。
 今年度末に策定をいたします築地まちづくり方針に基づいて、事業実施方針などを作成いたします。そして、民間事業者からの提案を受けながら、まちづくりを具体化してまいりますが、今般、一般会計への移しかえにいち早く着手することで、民間事業者の参画意欲を早期かつ最大限に引き出す。そして、都といたしましても、円滑にまちづくりの具体案を検討することが可能であり、有償所管がえの経費を計上いたしました補正予算案をこのたび提出したものでございます。
 今後の市場経営についてのご指摘でございます。
 都内の中央卸売市場が、都民に生鮮食料品等を円滑かつ安定的に供給する基幹的インフラとしての役割を引き続き果たしていくためには、卸売市場法の改正などもございました。取り巻く環境変化を踏まえた上で市場の活性化に取り組んで、産地、そして実需者に支持される市場としていかなければなりません。
 そのためには戦略的な経営、そして、強固な財務体質の確保が必要でございますが、経常収支の大幅な赤字が見込まれる中で、市場経営のあり方につきましては、長期的な視点から検討が必要であると認識をいたしております。
 このため、市場の維持管理経費の圧縮など、当面の経営改善の取り組みに加えまして、実効ある計画の策定に向け、外部有識者の知見を最大限に活用して、コストの縮減や収益の向上に向けました経営の合理化、民間経営手法の導入など、今後さまざまな観点から検討を進めてまいります。そして、市場経営の抜本的な改善を図ってまいります。
 なお、現時点で十一市場の民営化であるとか、経営統合するとか、そのような具体的な検討を進めている事実はございません。
 残余のご質問は、オリンピック・パラリンピック準備局長からのご答弁とさせていただきます。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) 障害のある応募者への面談についてでありますが、都は今月よりシティキャストへの面談を開始し、これまでに四千人を超える応募者にご参加いただいております。
 面談は応募者のご都合や意向等を丁寧に伺う場としていることから、応募者の負担にも配慮しながら、可能な限り直接お会いしてコミュニケーションを図ることが重要と考えております。
 また、障害のある方が面談に参加される場合は、筆談や手話による通訳、資料の読み上げなど、本人のご意向等を確認の上、必要な対応を行っております。
 お尋ねの病気や障害等のため、外出困難な応募者につきましては、ご自宅等にいながら面談をさせていただける方法を検討するなど、個々の状況を踏まえ、対応してまいります。

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