平成三十一年東京都議会会議録第五号

○議長(尾崎大介君) 十六番細田いさむ君。
〔十六番細田いさむ君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十六番(細田いさむ君) がん対策について質問をいたします。
 がんを患う都民の三人に一人がAYA世代、そして働く世代の方々です。そして、がんと診断されたときに就労していた方の四人に一人が退職をされています。
 私のもとにも、がん治療と仕事の両立に悩まれたり、不安を抱えたりしている方から相談が寄せられています。
 今後、都立病院において、退職せずに働きながらがん治療を受けられる新たな取り組みを、まずは、がんの中核的病院である都立駒込病院で実施すべきです。都の所見を求めます。
 都立墨東病院では、四年前より、医療従事者と社会保険労務士の連携による独自の患者支援が行われ、効果を発揮しております。私は、この取り組みを今後、他の都立病院にも広げていくべきと考えます。都の見解を求めます。
 今後、社会の高齢化はますます進んでいきます。これに伴い、がん患者においても、血管病や心臓病を併発するケースの増加が考えられます。さらに、抗がん剤の副作用で心臓に悪影響が出たり、がんにより血液が凝固しやすくなるなどの研究も進んでいます。
 したがって、今後は、がん専門病院と循環器系病院の連携が重要になってきます。既に、近年には日本腫瘍循環器学会が設立され、昨年十一月には、第一回の学術集会が開かれました。
 例えば、東京における代表的ながん診療病院として、都立駒込病院とがん研究会有明病院が挙げられます。都内では、この二つが都道府県がん診療連携拠点病院に指定されていますが、前者は総合病院であり、がん医療と循環器系医療の連携は容易ですが、後者はがん専門病院であり、他の循環器病院との連携が不可欠です。
 都内には、質の高い高度ながん医療を提供する地域がん診療連携拠点病院も多くあります。がん医療の病院と循環器などの病院が、今後、綿密に連携が図れるように都は積極的に取り組んでいくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次いで、ユニバーサルデザインタクシー、いわゆるUDタクシーについて質問します。
 東京オリ・パラ大会では、障害のある方、高齢の方など、国内外の多くの方々が東京を訪れます。
 知事は、誰もが快適に滞在し、スムーズに移動できるまちを実現したいと表明していますが、UDタクシーは、通常のタクシー料金と同額で誰でも乗ることができ、車椅子の利用者、ベビーカー持参の子供連れの方、妊産婦や年配者、そして健常者など誰もが利用しやすい移動手段です。
 都は、平成三十二年度までの五年間で、環境性能の高いハイブリッド車などを対象としたUDタクシー一万台を目指し、補助事業を展開しています。エコと福祉の両方を合わせたUDタクシーは、最近、都心で見かけるようになってきましたが、多摩地域を初め、まだ地元で見かけないという声や、これから申請する予定だが、人気があるので都の補助金はなくならないか不安だとの事業者からの声も聞かれます。
 本事業は、次世代タクシーの普及促進事業基金で運営されておりますが、今後の申請が増加した場合には、きちんと対応することが必要です。現在までの実績と今後の見込みについて、都の見解を求めます。
 一方、国会で我が党の山口那津男代表がUDタクシーについて、車椅子の方を乗せるのに二十分以上かかることなどから、車椅子の方が乗車を断られたと感じる事例などもあるようだと取り上げました。私のところにも同様な声が何件も届いております。
 都としても、車椅子利用客が乗降しやすくなる環境整備に向けて支援をするべきと考えます。UDタクシーの現状を改善するための都の取り組みについて答弁を求めます。
 現在、自動車メーカーが、新たに短時間で乗降可能な車両を整えるとしています。しかし、今後、乗降のしやすさの点で改良された車両の配置が進んだとしても、現在営業を続けている車両における課題はそのまま残ることになります。
 都として、ハード、ソフトの両面にわたり、既存のUDタクシーでも車椅子利用者の快適な乗降が確保できるよう対策を講じるべきです。都の見解を求めます。
 加えて、車椅子利用者が多く集まる施設の周辺でUDタクシーを余り見かけない、UDタクシーが走行していないために利用者が乗れないという声も聞かれます。
 こうしたミスマッチの解消を図るべく、都は事業者と連携して工夫を凝らすべきです。都の見解を求めます。
 次いで、ポリ塩化ビフェニル、いわゆるPCBの処理について伺います。
 PCBは、主に変圧器やコンデンサー、照明用安定器などの絶縁油として使用されてきましたが、毒性があることから昭和四十七年に製造が中止され、現在に至っております。現在、照明用安定器は、いまだに学校の教室などにおいて破損し、PCBが漏えいする事故が発生しています。
 処理期限が四年余りと迫る中、速やかに処理していくには、専門のノウハウを持つ民間業者の協力が必要です。都に毎年届け出されているPCB保有情報の公開時期が、我が党の要望により、昨年、年度末から年末に前倒しされたことは評価をいたします。
 さらにPCBを使用した照明用安定器の処理を促進するためには、その所在を明確にすることが重要です。
 都は、掘り起こし調査を実施していくとのことですが、PCB有無の確認には、建物所有者が照明器具内にある安定器を確認する必要があり、その際には高所作業や感電のおそれが伴うなど、さまざまな困難が想定されます。
 我が党は、昨年の第二回定例会代表質問において、PCBを抱える事業者の処理促進に向けたさらなる支援の必要性を指摘し、都は、民間ノウハウの活用方法について新たに検討すると答弁をいたしました。
 今後の取り組みについて、とりわけ資金が十分でない中小企業を支援する取り組みが必要不可欠ですが、都の見解を求めます。
 次いで、地下鉄八号線について伺います。
 東京メトロ有楽町線の豊洲─住吉間の延伸は、東京区部東部の南北交通の利便性を高め、臨海部とのアクセスを向上させるとともに、東京メトロ東西線の日本一の混雑率を緩和させる重要な路線です。
 本路線は、豊洲市場開場への条件として、平成二十三年に当時の副知事が江東区を訪問し、実現に向け、江東区と連携し、最大限の努力を傾注していく決意であると約束をした路線です。
 昨年十月、都民を初め多くの関係者のご尽力のもと、大きな期待を担い、活況の中で豊洲市場も船出をいたしました。
 開場三カ月前の昨年六月に、都は、東西線の混雑緩和、豊洲市場の開場と東京オリ・パラ大会などで変化する臨海地域の発展への寄与、高い整備効果などを理由に挙げて、平成三十一年三月三十一日を目途に地下鉄八号線延伸の具体化に向けて取り組んでいくことを公表しました。期限まで残すところ一カ月です。早く進めていくべきです。
 私はもちろんのこと、江東区民などは大いに期待をしているところですが、地下鉄八号線の延伸の具体的な状況について知事に所見を求めます。
 次いで、舟運についてです。
 知事は、さきの施政方針で、最寄り駅から会場までのラストマイルで円滑な競技運営のための取り組みを着実に進めると表明しました。東京オリ・パラ大会時には、特に競技会場周辺のラストマイルとなる道路や鉄道の混雑が予想されています。これを緩和するために、また、東京臨海部の魅力を広くPRしていくために舟運を活用すべきと考えます。
 とりわけ、海の森水上競技場及びクロスカントリーコースについては、近くに鉄道駅が全くなく、海に面した会場になります。
 都議会公明党は、舟運の活用のため、海の森に一定の人数を運べる水上バスなどが発着可能で、レガシーとなる船着き場の整備をこれまで提案してまいりました。
 先ごろ、同競技場で行われるボート競技の開始時刻が八時三十分からと公表され、五から八キロメートル離れた近隣駅から多数のシャトルバスが往復する姿が目に浮かびました。バスでの観客輸送だけでは対応に難しさがあります。観客の乗降が可能な船着き場を整備して、観客輸送に舟運も活用し、円滑で魅力的な観客輸送を実現することを提案しますが、都の見解を求めます。
 最後に、東京フォレストビジョンの視点から、森林環境譲与税と区市町村への支援についてお尋ねします。
 東京には、多摩地域と島しょ部を中心に、二十三区の面積を超える森林が広がっており、都の面積の約四割を占めています。多摩の市街地に近い丘陵地には多様な樹種の里山林が広がり、島しょには固有で魅力的な景観とともに、生態系を育む豊かな天然林が形成されています。
 森林環境譲与税は、都と区市町村に交付されますが、この使途は、間伐や人材育成、木材利用の促進などに定められており、今後、多摩や島しょ地域での森林整備の促進や多摩産材の利用拡大が期待されます。
 しかし、多摩や島しょの市町村では、森林整備を進めていくためのノウハウや専門職員が不足しています。また、譲与税は人口も算定基準として案分されるため、森林は多く所在するものの、人口の少ない多摩や島しょの自治体では、譲与額が森林整備を進めていく上では十分とはいえない状況です。
 そこで、森林環境譲与税の導入を契機に、多摩や島しょでの森林整備を促進していくために、市町村における森林整備に対する支援が必要と考えますが、都の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 細田いさむ議員の一般質問にお答えいたします。
 がん医療の提供体制についてのお尋ねがございました。
 がんは二人に一人がかかるといわれ、都民の死亡者のおよそ三人に一人ががんで亡くなっておられます。今後、高齢化が急速に進む都では、がん患者の一層の増加が見込まれるところであります。
 高齢のがん患者は、高血圧、糖尿病など、ほかの病気を抱えている方も多く、治療に当たりましては、がん診療を担う医師とがん以外の専門医療を担う医師が連携をして適切な医療を提供することが必要となります。
 そのため、がん患者が安心して治療に取り組めますように、拠点病院などにおけます手術療法、放射線療法等の組み合わせによる集学的治療や、看護師、薬剤師、栄養士などの多職種によるチーム医療を進めております。
 また、患者が希望する場所で適切な治療や支援が受けられますように、お話のがん診療と循環器診療の連携など、病院間の得意分野を生かした連携を深めまして、がん医療の提供体制の一層の充実を図ってまいります。
 次に、お地元、地下鉄八号線の延伸についてのご質問でございます。
 東京の持続的な成長を実現するためには、東京の強みであります鉄道ネットワークを生かして、これをさらに充実させていくことは重要であります。
 今年度、都は、鉄道新線建設等準備基金を創設することで、事業の裏づけとなります財源をあらかじめ確保いたしまして、新線整備に対する都の取り組み姿勢を明確に示したところでございます。
 地下鉄八号線は東西線の混雑緩和はもとより、臨海地域の今後の発展などにも寄与する重要な路線と考えております。現在、事業採算性や費用負担のあり方、事業主体などの課題につきまして、国、鉄道事業者などと検討を進めております。
 引き続き、関係者との協議、調整を加速いたしまして、この路線の実現に向けてしっかり取り組んでまいります。
 残余のご質問は、関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔病院経営本部長堤雅史君登壇〕

○病院経営本部長(堤雅史君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、駒込病院におけるがん患者の治療と仕事の両立を支援するための取り組みについてでございますが、がん患者が働きながら治療を継続していくためには、患者個々の病状や治療状況に適切に対応しつつ、生活面や心理面にも寄り添ったきめ細かな支援が重要でございます。
 駒込病院は、都のがん医療における中核的な役割を担う拠点病院として、医療ソーシャルワーカー等の専門相談員が常駐いたしますほか、週に一度ハローワークの担当者による出張相談を行うなど、就労支援にも積極的に取り組んでおります。
 こうした取り組みに加えまして、来年度からは、長期にわたる通院治療が必要ながん患者が、仕事を継続しながら治療を受けられるよう診療体制を強化し、平日の夜間等に化学療法や放射線治療を行う先導的な取り組みを新たに実施いたします。
 次に、都立病院における社会保険労務士との連携による患者支援の取り組みについてでございますが、都立病院ではこれまで、患者支援センターの医療ソーシャルワーカーを中心に、診療や就労継続等に関する相談に広く対応してまいりました。
 また、お話いただきました墨東病院では、平成二十七年度から、労働や社会保険に関する専門的知見を有する社会保険労務士による個別相談を実施し、傷病手当金の申請やさまざまな休暇制度の活用等の助言を患者に対して行いまして、収入や就労継続における不安軽減に取り組んでおります。
 来年度は、社会保険労務士による両立支援相談を全ての都立病院に拡充し、相談支援体制を強化するとともに、蓄積された相談事例を病院間で共有し、対応力の向上を図ってまいります。
 今後も、働く世代の患者に対して、治療と仕事の両立を支援するための方策を一層充実させてまいります。
〔環境局長和賀井克夫君登壇〕

○環境局長(和賀井克夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、UDタクシーへの補助事業についてでございますが、都は、ハイブリッド車など、環境性能が高く車椅子のまま乗車できるユニバーサルデザインタクシーの普及を目的として補助制度を設けております。
 補助金の原資として、平成二十八年度に六十一億円を東京都環境公社に出捐しており、制度開始から本年一月末までの補助実績は、累計二千二百九台、約十二億円でございました。
 また、既に三千台を超える申請を受け付けており、今後とも、二〇二〇年までに一万台の導入を目指し、取り組んでまいります。
 次に、PCBを使用した照明用安定器の処理促進についてでございますが、照明用安定器におけるPCB含有の調査に当たりましては、照明器具の取り扱いにたけた電気工事業者等の専門ノウハウの活用が有効であると認識しております。
 このため、都はこれまで、電気工事業者の団体に対し、建物所有者からの調査依頼に対する円滑な対応について重ねて協力を要請してまいりました。
 また、中小企業等への支援策として、来年度新たに照明用安定器のPCB含有に係る調査費に対する補助制度を創設いたします。
 さらに、これまで実施している変圧器、コンデンサー等の収集運搬費の補助対象に来年度から照明用安定器を追加いたします。
 これらの取り組みにより、PCBを使用した照明用安定器の期限内処理を促進してまいります。
〔政策企画局長梶原洋君登壇〕

○政策企画局長(梶原洋君) 三点の質問にお答えをいたします。
 まず、ユニバーサルデザインタクシーの現状を改善するための都の取り組みについてでありますが、車椅子のまま乗車可能なユニバーサルデザインタクシーは現在、都内で四千台以上が導入をされております。
 しかし、そのほとんどは乗降用スロープの組み立てにかなりの時間を要するタイプであり、車椅子利用者が円滑に利用するためには改善の余地があることから、都はこれまで、タクシー業界団体や自動車メーカーに乗降用スロープの改善などを求めてまいりました。
 その結果、ことしの春には、短時間で組み立てができるように改良された乗降用スロープを備えた車両が発売される予定となってございます。
 次に、ユニバーサルデザインタクシーに円滑に乗降するための対策についてでありますが、ご指摘のとおり、改良された乗降用スロープを備えた車両が販売されましても、既に走行している四千台以上のユニバーサルデザインタクシーでは、車椅子利用者の乗降に時間を要するという状況は変わりございません。
 このため、都は今年度、車椅子利用者が円滑に乗降できるよう、利便性の高い外づけスロープを、ホテル、病院等に試行的に設置をしております。
 また、タクシー業界団体に対しましては、乗務員に外づけスロープの設置場所、利用方法を周知することや、研修の充実により、乗務員の意識向上を図ることなどを働きかけております。
 これらハード、ソフト両面の取り組みを速やかに展開をし、車椅子利用者の円滑な乗降を支援してまいります。
 最後に、車椅子利用者がユニバーサルデザインタクシーを利用しやすくするための、事業者と連携した工夫についてでありますが、都は今後、外づけスロープがより活用されますよう、スロープを設置したホテル、病院などの施設を掲載したマップを作成いたします。このマップをユニバーサルデザインタクシーの車内に備えつけることや、タクシー事業者のホームページ等に掲載することをタクシー業界に呼びかけますとともに、都のホームページ等にも掲載をしてまいります。
 都として、こうした工夫を行いながら広く周知に努め、車椅子利用者が快適にユニバーサルデザインタクシーを利用できるための環境整備を進めてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) 海の森の観客輸送への舟運の活用についてでありますが、舟運の活用は、会場周辺の道路や鉄道の混雑緩和策になることに加え、東京の水辺空間の魅力を観客に発信できる効果的な交通手段になり得ると認識しております。
 現在、海の森水上競技場及びクロスカントリーコースについては、徒歩圏内に鉄道駅がないことから、周辺駅からのシャトルバスの運行を予定しておりますが、必要バス台数の確保の課題などもございます。
 このため、海の森公園に整備が計画をされております水上バスも利用可能な船着き場を大会時にも活用し、舟運による観客輸送を実施する方向で調整してまいります。
 今後、組織委員会や舟運事業者等と連携し、バス輸送への負担を軽減し、同時に東京臨海部の魅力を感じられる発着地や航路の設定等について検討を進めてまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 市町村の森林整備に対する支援についてでございますが、森林環境譲与税を効果的に活用し、多摩や島しょ地域の森林整備を推進していくためには、市町村における担い手の育成とともに、観光資源としての森林整備など、各市町村の実情に応じた多様な取り組みを支援していく必要がございます。
 このため、都は来年度、市町村からの相談に対応する森林整備アドバイザーを新たに配置し、間伐等の実施に必要な技術的助言等を行いますとともに、事務所等の賃料の補助により、林業事業体の新規参入を促進するなど、担い手の育成を強化してまいります。
 これに加えまして、島しょ地域では、観光資源としての森林の魅力を高める景観改善やツバキ林等の整備など、町村が行う森林整備への支援を開始いたします。
 これらの支援を通じまして、市町村と連携した森林整備を促進し、健全で活力ある森林を次世代に継承してまいります。

ページ先頭に戻る